読書日誌
2006’1〜3月

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06'03'31 はじめの一歩75
森川ジョージ (検索) <amazon> <楽天>
 千堂武士の後輩である星が板垣に挑戦状を叩きつけた。板垣を破り、一歩への挑戦権を手に入れようと言うのだ。しかしスランプにあえぐ板垣は絶不調のまま。その運命のゴングが鳴らされる。一方、一歩は宿敵宮田との再戦を目指し、トレーニングに余念がなかったが…

 相変わらず一歩をのけ者にして試合が続けられているが、その辺はパターンを踏襲しているので展開は見えている。ただ一歩と宮田の再戦は一体いつになるやら。その部分だけが全く分からない。一体この二人の対戦はいつになるんだ?優に100巻を超えそうな感じがする。
<A> <楽>
06'03'27 C.W.ニコルの野生記 (著)C・W・ニコル <amazon>
 自然を愛し、日本の自然を愛する著者が描くエッセイ集。
 時折こういうアウトドアについて描かれたエッセイ集を読みたくなる。それは著者であったり、開高健であったり、野田知祐であったり、椎名誠であったりするのだが、全員自分の主張が強いのが特徴か?著者の場合外面的なものだけでなく内面世界までも考察しているのが興味深い。自然を愛するってことは、それだけ精神的なものと言っても良いのだろうか。
06'03'25 存在の耐えられない軽さ (著)ミラン・クンデラ <amazon>
 いくつもの偶然が重なった結果出会ったプラハの有能な脳外科医トマーシュと片田舎で虐待されて育ったエルザ。二人は一緒に住むことになったが、トマーシュの女好きは彼女と一緒でも全く変わることが無かった。そんな二人を冷ややかに見守る芸術家のサビナの視点も交えて、プラハの春というチェコの激動の時代を通して描く。
 私は映画の方を先に観て、その完成度の高さとヴィノシュの可憐さにすっかり参ってしまった口だが、原作を読んで驚いた。映画とは全く別物。というか、原作はもの凄い哲学的な命題を持った作品だったと言う事実を知った。表題の「存在の耐えられない軽さ」も、そもそもは“あらゆるものの重さ”という命題から導き出されたものであり、哲学的、社会的、そして個人的な部分に到る、それぞれの“重さ”こそが重要だったのだ。そもそも形而上学的な作品を映画にするなら、ストーリーを追う事しか出来ない訳か。なるほどこういう映画の作り方もあるんだ。と逆に感心させてもらった。原作である本作と映画版は、いわば補完しあって出来上がっているので、もし映画を先に観て「面白い」と思った人だったら、是非本作は読んでいただきたい。
存在の耐えられない軽さ
06'03'22 キノの旅IV
時雨沢恵一 (検索) <amazon> <楽天>
 キノとエルメスの二人の旅は続く。「像のある国」「XXXXX」「二人の国」「伝統」「仕事をしなくていい国」「分かれている国」「ぶどう」「認めている国」「たかられた話」「橋の国」「塔の国」に掌編「紅い海の真ん中で」を収録する。
 そもそもSFとは現代社会を皮肉る姿勢があってこそ面白いものだが、そう言う意味では本シリーズは上手くSFしている。度合いもこれまで以上に明確になっているし、読んでいてやっぱり楽しい。流石にこの辺りになるとオチの付け方は予測が付くけど、発想の良さで持って行けるのが強味。
<A> <楽>
06'03'19 終戦のローレライIV (著)福井晴敏 <amazon>
 テニアン島から東京に向けて原爆搭載機が発進しようとしていた。なんとしてもそれを止めようと伊507はまっすぐテニアンに向かう。だが、その前にはあらかじめそれを予測したアメリカ海軍によって鉄壁の守りが固められていたのだった。罠と知りつつ、更に搭載兵器も限りがある状態でそこを突っ切るしかない伊507。そして最後に征人とパウラに与えられた任務とは…
 いよいよクライマックス。大局を見据えつつ、敵味方のお家事情から個人的な繋がりまでをきちんと見せ、ストーリーに破綻を起こさせない著者の筆力が冴える。特に盛り上がりにかけて、武器のない状態でどうやって攻撃をするか、時間の描き方とアイディアは本当に見事。映画版との終わり方は随分違っているけど、これも又良し。
終戦のローレライ〈4〉
06'03'16 フランケンシュタインの方程式 (著)梶尾真治 <amazon>
 著者によるナンセンスどたばたSF集。「フランケンシュタインの方程式」「干し若」「宇宙船<仰天(う゛ぃーくり)>号の冒険」「無き婆伝説」「ノストラダムス病原体」「地球はプレーンヨーグルト」の6編を収録する。
 最近ライトノベルを読むことが多くなったが、やっぱり私はこういった70年代の雰囲気を持つSFが一番好きな事を再確認。古いタイプの日本人SF作家は特に冷たい方程式が好きのようだ。私が知ってる限り、「タヌキ」であったり、「ナメクジ」であったり、「お茶の間劇場」であったりするわけだが(さて、誰の作品でしょうか?)、これも巧く仕上げていた。他にも数々の海外SFが用いられていて、元ネタを知っている身としては、大笑いしっぱなし。無茶苦茶気持ちが良い作品だった。ラノベと較べてしまうと何だけど、やっぱりエセエフ(?)はいいなあ。
 そう言えば「無き婆伝説」は昔私が選挙活動手伝ってたことを思い出させてくれて、これも大笑い(あの時は夏の暑い時にパンダの着ぐるみ着てビラ配ってたんだよ)。
フランケンシュタイン
06'03'10 からくりサーカス41
藤田和日郎 (検索) <amazon> <楽天>
 一人宇宙に行ってしまったフェイスレスは全人類に対する怒りを露わにし、残り2週間でゾナハ病に罹った人間を滅ぼすと語る。それを防ごうと、フウは鳴海としろがねを乗せたスペースシャトルを宇宙ステーションに連れて行こうと絶望的な計画を立てる。だが、自動人形の生まれ変わりとおもわれているしろがねは生き残りの人間全てから疎まれていた。そして彼女に対する怒りを隠そうともしない鳴海…
 いよいよラストに向けて疾走する物語。私なりに本作のキー・ポイントは笑顔だと思うのだが、この巻では本当に笑顔が少ない。笑っているのは新しい顔を手に入れたフェイスレスと、ついに最後を迎えたギイの寂しそうな、そしてすべき事を全て成し遂げた満足そうな笑顔だけ…それも含め、買って良かったと思うよ。
 そうそう。前々から「これはどうなったのか?」と思ってた設定上の問題点がちゃんと明らかにされているのもチェックポイント。巧い作りだ。
<A> <楽>
06'03'09 幽霊たち (著)ポール・オースター <amazon>
 一本立ちしたばかりの私立探偵のブルーはホワイトという男から奇妙な依頼を受ける。ブラックという男をひたすら監視するというのがその依頼だったのだが、当のブラックは家に閉じこもり、本を読んでいるばかり。一体何のための監視なのか?ブルーはただひたすら見守り続けるのだが…
 1980年代のアメリカ文学を代表する作品だそうだが、ものとしては日本の夢野久作や安部公房の作品とよく似ている。つまり、現実と幻想が渾然一体となる作品で、言うなればメタ作品。形として推理小説の形式を取っているのも、考えてみると共通するな。こう言うのは無茶好み。
06'03'06 芸術とは何か (著)S・K・ランガー <amazon>
 哲学者ランガーによる「芸術」を題材にした講演を一冊にまとめた作品。
 本差kを読んだのは結構前の話だったが、さすが哲学者で、何が書かれていたのか当時は全然分からなかった(笑)。それで今なら多少分かるかも?と思い、読み返してみたのだが…結果、やっぱりよく分からなかった(笑)。それでも著者の言いたいことを敢えて説明するならば、「芸術とは生きものであり、技術ではない」という一事なのだろう。
 芸術って何?という疑問を提起されたところが現時点の私には精一杯かな?
06'03'02 脱出 (著)吉村昭 <amazon>
 長かった太平洋戦争も終わろうとしていた。その中にあって、これからの身の振り方に生き方を変えらずを得ない人間模様を描く短編集。「脱出」「焔髪」「鯛の島」「他人の城」「珊瑚礁」の5編を収録する。
 敗戦直前と終戦後の人間模様について特化した作品で、多くは少年の目を通して見た戦争を描く。辛い現実の中で、あくまで生活を描くのはやはり著者ならでは。描写はやっぱり良いね。
06'02'28 燃えるワン・マン・フォース フルメタル・パニック17 (著)賀東招二 <amazon>
 日本で全てを失ってしまった宗助は、けじめを付けるためアマルガムの影を求め、紛争の続く東南アジアの小国ナムサクにいた。そこで行われているAS同士の格闘大会にナミという少女率いる弱小チーム員として参加するのだが…
 新展開で日本を離れた宗助の活躍が描かれる。新たに仲間となった面々と、その人間関係が見事に崩れていく様が冷静なタッチで描かれている。今までとはまるで違う展開だけど、これはなかなか楽しい。
 ここでの見せ場はやっぱりナミの存在だろうけど、これに関しては割と面白い展開。ネットでは死亡フラグなるものが上げられることがあるけど、ナミの描き方は見事なほどに典型的死亡フラグにあった。「ああ、こりゃ死ぬな」とか思って読んでたら、ナミには意外な秘密が…ちょっと混乱した。
燃えるワン・マン・フォース
06'02'27 荒野の蒸気娘1
あさりよしとお (検索) <amazon> <楽天>
 化石エネルギーが枯渇してしまった近未来。エネルギーを持つものと持たざるものの格差が広がる某国。荒野に放り出された、何者かに父親を殺されたアンとアリスの二人の“箱入り娘”が、父親以外初めて見た人間の小悪党のジョンを頼りに旅を続ける物語。お互いしか頼る者のない二人の薄幸の少女が売り飛ばされそうになったり、体を探られたりされつつも、健気に生きる姿が描かれる。(間違ったことは言ってないけど、文字通り読んではいけません)
 掛け値無しにデビュー当時から著者の作品を読んでるけど(何しろ初めて買った漫画雑誌に著者のデビュー作が載ってたくらいだから)、最近は毒気がどんどん抜けてきてるのがちょっと気がかりだったが、『WAHHAMAN』に出てきたオシリスを主人公にしたような話で、久々に本作は毒気が楽しめる。昔ほどではないにせよ、著者らしさはよく出ていると思う。尚、帯に「要脳内補完コミック」と書かれていたが、脳内補完できるなら、確かに典型的萌え作品と言えるかも知れない。
<A> <楽>
06'02'23 上京ものがたり (著)西原理恵子 <amazon>
 四国から上京した著者が学校とアルバイト、そして甲斐性無しの男との関わりを通して、東京と自分の関係を描く作品。
 女の子ものがたりの姉妹編で手塚治虫文化賞受賞の作品。
 これまで数多く著者の作品を読んできたが、確かにこの手の物語は完成度が高く、私も好きな方だけど、だけどなんだか本作は今ひとつという印象。思うにこの手の作品は著者の毒気だらけの作品群の中にあってこそ映えるのだ。しんみりしたのがずーっと続くと、今ひとつ映えない。
 そう言えば営業ものがたりの大阪巡業で「これは外した」と言ってたのは、なるほど意味がよく分かった。
上京ものがたり
06'02'21 ボルボロスの追跡 グインサーガ106
栗本薫 (検索) <amazon> <楽天>
 フロリーとシェティの存在を知ったアストリアスは、モンゴール再興の切り札として二人の身柄を確保しようとする。一方リギアと合流することが出来たグイン達は逃避を続ける。追っ手を完全にあきらめさせるべく、グインは大胆不敵な手を敢行する。

 単なる偶然の出会いのはずが、フロリー、アストリアス、リギアと、これだけ重なると些か引く。どこにいようと、グインいる所がいつの間にかそこが中原の運命の中心になると言う展開はいつも通りか。たとえ記憶を失っていてもグインはやっぱりグインだったし。
 それより本作の中身はともかく、早川の宣伝で「永遠の戦士エルリック」のチラシが入っていたのに驚かされた。エルリック・サーガは昨年まで続いていたんだね。エターナル・チャンピオン・シリーズは昔無茶苦茶はまったもんだから、これはとても楽しみ(全7巻中3巻が新作)。
<A> <楽>
06'02'19 無責任艦長タイラー 宇宙一の無責任男1 (著)吉岡平 <amazon>
 惑星連合宇宙軍にその人ありと謳われつつ、その実強運とゴマスリで出世したと言われるジャスティ・ウエキ・タイラー。彼が指揮する乗艦“阿蘇”が、彼のお陰で被った被害と赫躍たる戦果。そして宇宙軍の宿敵ラアルゴンとの戦いの行方を描く、無責任男第一作。
 ライトノベル発掘の中で読んでみた作品。思えばこれが出てから17年か。単に都築和彦のイラストが気に入らないというだけの理由でこれまで読んでなかったのだが…これは大失敗。17年前にこれを読んでいたら、これまでに読んだライトノベルの数は跳ね上がっていただろう。何でこんなにツボにはまる作品をここまで読んでなかったのやら。
 後書きで分かったんだけど、大昔に『クレイジー大逆転』と『海底軍艦』(1963)の二本立てを映画館で観て以来、このカップリングで小説を書いてみたかったとか…道理でツボにはまる訳だ。
 多分、これまでの空白期間を埋めるために次々と読んでいくことになるだろう。
06'02'14 格闘探偵団5 (著)小林まこと <amazon>
 成り行きで誘拐犯の片棒を担ぐことになってしまった三四郎。誘拐犯の水谷研と誘拐された自閉症のタクとの奇妙なトリオがいく。そして三四郎が救うはずの女の子亜理沙の命はどうなってしまうのか?
 本作がシリーズ最終作となる。改めて見てみると本作は大変完成度が高いことに気づかされる。ここまで色々なものを詰め込んでおいて、きっちり終わらせることが出来るのは、やはり著者の力量を思わされる。
 しかし「1、2の三四郎」「三四郎2」「格闘探偵団」と来て、流石に続編はないかな?
格闘探偵団 5 (5)
06'02'13 あやし (著)宮部みゆき <amazon>
 江戸の町に起こる不思議な事件を描く時代劇短編集。「居眠り心中」「影牢」「布団部屋」「梅の雨降る」「安達家の鬼」「女の首」「時雨鬼」「灰神楽」「蜆塚」の9編を収録する。
 時代劇のホラー、言ってしまえば怪談話を描いた話で、著者らしく、短編でありながらも読み応えは満点で内容もきっちりしている。エンターテインメント作家としての著者の力量は改めて凄いと思う。決して読みやすい作品とは言えないが、大変楽しんで読むことが出来た。
あやし
06'02'10 格闘探偵団4 (著)小林まこと <amazon>
 三四郎のレスラー生命を絶った守山の親分が突然三四郎の探偵事務所にやってくる。実は彼の孫娘が誘拐され、10億の現金受け渡しに三四郎を指定してきたというのだ。その相手というのが実はかつて三四郎が関わった事件で三四郎に恨みを抱く猫頭だったのだ。殺される覚悟で受け渡し場所に向かった三四郎だったが…
 4巻5巻の同時刊行という珍しい形でリリースされた作品の前編。話が意外な方向に進みっぱなしでこれまでの話も含めて様々なキャラも登場してくるし、個性たっぷりの新キャラも登場。娯楽作なのにしょうがい者を直球で描くというやりにくいネタをよくやってくれている。
格闘探偵団 4 (4)
06'02'08 女の学校・ロベール (著)アンドレ・ジッド <amazon>
 恋に憧れる少女エヴリーヌが結婚という現実を目の当たりにし、長きにわたる夫との確執を赤裸々に描いた二部作の「女の学校」と、エヴリーヌの夫であるロベールの弁明を描く「ロベール」を収録した作品。
 人間の生き方というものに対する批判精神に溢れていながら、キリスト教価値観を尊いものとして貫く著者のアンビバレンツがよく出た作品で、割と短い作品なのに読み応えは充分で、男の私から見ると痛々しい描写に溢れているのが特徴。時折こういう文学は、やっぱり読んでおくものだ。どしっとした重みを感じさせてくれる。
06'02'04 夜明けのヴァンパイア (著)アン・ライス <amazon>
 夜更けの酒場で作家の青年が出会った不思議な人物。ルイと名乗った彼は自分がヴァンパイアと紹介する。若者の求めに応じ、ルイは自分の過去を話し始めるのだった。彼をヴァンパイアにしたレスタト。そしてルイ自身がヴァンパイアに変えたクロウディアという少女の事…三人の共同生活がどのように崩れていったかを…
 映画『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(1994)の原作。一読して思うのは、本作は決して映画向きの作品ではなかったと言うこと。吸血鬼の公開ばかりが延々と繰り返され、読んでいてどうにもすっきりしない。実際出来た映画も耽美性ばかりが強調され、内容そのものは本作の表層をなぞっただけという印象だったし。それでもこの原作をきちんと映画化できたというだけでも評価すべきか?
 実際はどうもすっきりしないまま。このシリーズは続いているはずだけど、続きを読むかどうかも分からず。
06'02'02 強殖装甲ガイバー23 (著)高屋良樹 <amazon>
 カブラールに操られるアプトムを救うため、なんとかその細胞を手に入れようとするガイバーIと速水。だがそれを察知したカブラールの執拗な妨害に遭い、アプトムの技に苦しめられる一方だった。更に速水が人質に取られてしまうのだが、その時、速水は…
 アニメが始まってようやく新しい巻が発売された。やはりアニメの影響が大きいのか、結構売れているみたい。
 本作は副題が「受け継がれる魂」となっており、速水の決断とアプトムの完全復活が描かれる。盛り上げ方は充分とは言え、展開はやっぱりゆっくり。ギガンティックが晶の元に来たのは良いけど、そうなるとガイバーIIIはどうなるのかとかは次巻の持ち越し。ところで復活したギュオーの話はどうなったんだろう?
強殖装甲ガイバー(23)
06'01'30 ふりむかない男 グインサーガ外伝20
栗本薫 (検索) <amazon> <楽天>
 レムスとナリスの政治的な確執によって混乱が起こっている時代のパロ。その中で潰された塾と、新興塾との間で行われた肝試しが元で四人もの死者が出てしまった。生き残った塾生も錯乱したまま「ふりむかない男がふりむいた」と繰り返すばかり。時ならぬ幽霊話にパロは包まれていく。弱った宰相のヴァレリウスは動くことの出来ないナリスに助言を求めるのだが…

 外伝で展開中の「アルド・ナリスの事件簿」の第2巻。外伝でも20巻に当たり、これだけでも充分に大作なんだけど、本当に好き放題やってる感じだ。前の話はナリスがまだ若い頃の話だったが、この話は動けなくなった時のナリス。これこそ究極のアームチェア・ディテクティヴで、多分著者はこれをやってみたかったんだろう。和風のネロ・ウルフってところか。そうするとやっぱりヴァレリウスがアーチーか…結構はまってる気もする。
<A> <楽>
06'01'27 金色のガッシュ17 (著)雷句誠 <amazon>
 隙のない強さを誇る千年前の最強の魔物デモルトを前に諦めを見せないガッシュに新しい呪文が与えられた。一方、親友を救うため、ゾフィスを追いつめるシェリー&ブラゴだったが…千年前の戦士編最終回。
 アクション系の少年漫画の場合、フォーマットは大体決まっており、終わり方も大体は似たようなものになる。結果として過程をどのように演出するか。と言うことが重要になる訳だ。ここまで引いて楽しませてもらった本作も、一旦の区切りが付き、なんとなくほっとしたが、やっぱり終わり方はあっさりしていた感じ。
 ようやく一区切り付いたので、後はしばらくしたら又続きを読み始めるとしようか。
06'01'24 …ひとりでいいの (著)内館牧子 <amazon>
 綺麗な顔が自慢のまどかはこれまで多くの男とつきあい、その中で一番条件の良い星野からプロポーズを受けることに成功する。周囲の女性達から白い目で見られることも意に介さず、幸せになろうとした矢先、次の日に会社の上司として赴任してきた津村に本気で恋をしてしまう…OL達の恋模様を描く作品。
 著者の作品はこれが初めてとなるんだが、どうやら見くびっていたらしい。思った以上に出来が良い。ここまでぐちゃぐちゃした人間関係をしっかり収束させてくれるとは思ってもみなかった。人間関係を描くにはきちんとした才能が必要だけど、どうやら意識的にそういう作品を読んでなかったんじゃなかったんじゃなかろうか?色々読んでるつもりでも、まだまだ読書は深いものがあるらしい。
06'01'23 とかげ (著)吉本ばなな <amazon>
 主に普通とはほんの少しだけ違う体質を持つ女性の恋愛物語を描く短編集。「新婚さん」「とかげ」「らせん」「キムチの夢」「大川端奇譚」「血と水」の6編を収録する。
 心地よく染み入ってくるような作品群で、清涼剤を飲んだ気分にさせてくれる。著者の作風は独特なのだが、そのユニークさが不思議な感じで迫って来るという感じ。これまでのもそうだったけど、時折読み返したくなる作品だ。こうやって読むべき著者作品がどんどん増えていって、いつの間にか読まなくなるというパターンが多くなってるな。
とかげ
06'01'20 ジパング21 (著)かわぐちかいじ <amazon>
 「みらい」に戻るため、老朽潜水艦「伊152」で南方へと向かう角松。しかし、彼を「みらい」に近づけたくない草加は、対潜水艦の名手立石の乗艦「島風」をシブヤン海に配備していた。極秘任務のため姿を見せることが出来ない「伊152」を米潜水艦と判断した立石から何とか逃げようとするのだが…
 「沈黙の艦隊」で分かるとおり、著者は潜水艦アクションを描かせたら一級品。その腕を存分に発揮した話となった。政治的駆け引きとかも多く、ストレスがたまりがちの本シリーズで、ここまで胸のすくアクションを描いてくれたことが嬉しい。
 しかし、一体これからどういう展開を見せるんだか、全く予想が付かない。
ジパング 21 (21)
06'01'19 終戦のローレライIII (著)福井晴敏 <amazon>
 アメリカ軍の追撃を振り切り、とりあえずの目的地であるウェーク島へとたどり着いた伊507だったが、休む間もなく次の指令が下った。アメリカへの特攻というのが指令内容だったが、実はこれこそが本作を発案した浅倉大佐の張り巡らせた罠に他ならなかった。何も知らされずに繰艦していたクルーは、恐るべき事実を知らされることに…
 いよいよ本式に物語に入ってきたが、これを知ると、改めて映画はよくこれをまとめたものだと思える。本巻のイベントもかなり端折られてはいるけど、出来るギリギリの所まで演出していたようだ。小説版としても完成度は高い。
終戦のローレライ〈3〉
06'01'17 金色のガッシュ16 (著)雷句誠 <amazon>
 人間の精神を操る月の石を破壊するため、最上階へと向かう清麿達を防ぐために現れたのは、パティとビョンコ、そしてなんとかつて清麿達を助けたレイラだった。一体彼女の身に何が起こったのか。そして月の石を守る最強の魔物とは…
 千年前の魔物との戦いもクライマックスに向けて疾走中。あまりにも強すぎるデモルトを相手にして、ようやく仲間になったパティとビョンコも消え去ってしまった。演出はやっぱり巧いな。それと本作全体を通しての特徴とも言えるけど、一巻の中に必ず泣ける場所と笑える場所を配置してくれる。特に本巻はレイラの個性がなかなか楽しくて良し。
金色のガッシュ!! (16)
06'01'16 天翔ける女 (著)白石一郎 <amazon>
 江戸から明治へと時代が移る時、長崎に女手一つで巨額な茶貿易を成した女傑がいた。日本初の女貿易商大浦慶(1828〜1884)の生涯を描いた作品。
 こういう類の経済小説は読んでいて非常に楽しい。特に身一つから始め、どんどん成り上がっていく過程が大好き。それがあるからこそ、最後の落ちぶれ方のギャップが楽しめる。それに本作は殊に茶の話だけに、大変興味深く読ませてもらった。こんな人が日本にもいたんだな。リアルな舞台設定も興味深い。
 その内ここから得たものを茶の話に上げる予定。
06'01'14 キノの旅III
時雨沢恵一 (検索) <amazon> <楽天>
 キノとモトラドのエルメスの旅を描く第3巻。「愛と平和の国」「城壁のない国」「説得力」「同じ顔の国」「機械人形の話」「差別を許さない国」『終わってしまった話」を収録する。
 相変わらず不思議な感触を与えてくれる作品で、オチの付け方とかのセンスは相変わらずたいしたもの。3巻になると文体そのものもかなり手慣れたものとなり、勢いではなく、落ち着いた雰囲気を見せるようになった。オチの付け方も面白い。読んでる途中で「これはこういう風になるだろう」とか考えていて、ぴったりそうなると、なんか嬉しい(結構そう言うのが多い)。
<A> <楽>
06'01'11 げんしけん7 (著)木尾士目 <amazon>
 コミフェスに受かったが、それでも自分がオタクであると認めたくない荻上はグジグジと悩み続ける。そんな彼女を意識し始める笹原と、いろんな意味で荻上をけしかける大野。彼女たちの行く末は…
 かなりイタい作品ではあるが、意外に現代風の真っ当な青春群像でもある。いろんな意味で恥ずかしく、読むのが意外に困難だったりするが、だからこそ手元に置いてちらちらと眺めるには良い作品。少々ねじ曲がっているけど、大野さんの友人ってのがなかなか面白い味を出してる…まさか初対面の人間に「あー、やっぱり総受けなんだ」とか言うイタすぎる発言はともかく…一体どういう伝え方をしたんだろう。
げんしけん 7 (7)
06'01'10 怪奇小説集 (著)遠藤周作 <amazon>
 著者が雑誌で連載した怪奇スポットの特集に著者の小説を加えて収録した短編集。「三つの幽霊」「蜘蛛」「黒痣」「私は見た」「月光の男」「あなたの妻も」「時計は十二時にとまる」「針」「初年兵」「ジプシーの呪い」「鉛色の朝」「雲の中の声」「生きていた死者」「甦ったドラキュラ」「ニセ学生」の14編を収録する。
 積ん読の中にあった本なのだが、これって私が子供の頃に父の蔵書の中にあった本だ。当時読んでもよく分からなかった気もするが、今改めて読み返してみると、やっぱり別段怖い話じゃないと言うことが分かった。孤狸庵先生の部分が強い著者の作品はさほど合うものじゃないことが改めて分かったことくらいか?
怪奇小説集
06'01'08 検屍官 (著)パトリシア・コーンウェル <amazon>
 一人暮らしの女性ばかりを狙った連続暴行殺人事件が発生した。リッジモンド警察の検屍官ケイはその残虐な手口に怒りを覚え、自分の出来る知識を総動員して犯人を特定しようとやっきになる。だが、彼女が一生懸命になればなるほど、捜査妨害の手が…彼女自身を狙ったとしか思えぬハッキングに、証拠物質捏造の疑いまでかかってくる。そんな困難の中、捜査を続けるケイの奮闘を描く。
 著者のデビュー作にして、私にとっては初めての著者作品。文体は大変読みやすいし、展開も巧い。さすがベストセラーと言えるだけの内容だ。オチ部分は“凝りに凝った”というのとは少々違っていたけど、逆にそれが新鮮だったな。
検屍官
06'01'07 オーケンの、私は変な映画を観た!!
大槻ケンヂ (検索) <amazon> <楽天>
 映画通…と言うか、変な映画を観たことにかけては一言ある著者がこれまで自分の観てきた“変な映画”を自身の映画にかける思いを込めて言いたい放題言っている作品。

 自分自身映画のレビューをサイトでやってるし、数多くの人の書いた映画レビューを読んでもきた。時折腹を抱えて笑えるようなレビューもあり、心の底から感心し、「いつか私もこんなレビューを書いてみたい」と思わされることも多々。そう言う人達の映画評というのは、やっぱり自分の思いを出すだけでなく、媚びない所が良いんだと思う。自分自身の映画にかける思いってやつをストレートに出していくことが、映画評の大切な部分だ…それが分かっていても、やっぱり媚びてしまう自分自身が情けない。
 それで著者の映画評はこれも又独特で、特に私が「駄目作品」と断じた作品をおもしろおかしく書いてくれるため、大笑いしながら、又観てみたくなるような事がよくある。尤も、ここで紹介されている映画の大半は私自身が全く知らないものばかりなんだが…これからの映画生活の参考にさせてもらった。
<A> <楽>
06'01'06 からくりサーカス40
藤田和日郎 (検索) <amazon> <楽天>
 囚われのしろがねを救いに来たはずが、フェイスレスの罠にはまり、ついに記憶のダウンロードを受けてしまった勝。勝は新しいフェイスレスとしてしろがねと共に宇宙に行ってしまうのか?そしてその勝を手助けする面々はそれぞれ最強のオートマタ“最後の四人”を前にどう戦うか…
 丁度良い所で前巻が終了し、その盛り上がりが継続された話となった。それぞれに相手が決まっているというのはやはり少年漫画の王道だが、結構意外な展開が待ってもいた。
 特にこれまで“最古の四人”として人類に敵対していたそれぞれのオートマタが人間側に与するようになり、更にその一人コロンビーヌが死んでしまうという展開はなかなか泣かせる。
 …しかし、こう見てみると、やっぱり著者が『金色のガッシュ』著者雷句誠の師匠と言うことがよく分かる。
<A> <楽>
06'01'03 ブギーポップは笑わない (著)上遠野浩平 <amazon>
 失踪事件が相次ぐ高校で、不思議な人物を見たという目撃情報が相次ぐ。ある者は吸血鬼として、ある者はこの世ならぬ少年として、そしてある者はブギーポップを…それぞれの少年少女の思惑をはらみ、それぞれのドラマが展開していく。
 最近の自分自身の企画「ライトノベルを読もう」の一環として、有名だからということで読んでみた。設定も面白く、物語そのものも良いと思う。実際こういう発想の元でよく描けたものだ。しかし、残念なのが良い設定を活かすに足る描写力が無かったと言うこと。登場人物の数に描写力が足りてなかった。素材は好みなんだけどなあ。
ブギーポップは笑わない

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