読書日誌
2002’8〜10月

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07'12'30 金色のガッシュ31 (著)雷句誠 <amazon>
 クリア復活まで10ヶ月。ガッシュ達は完全体となったクリアに備えてデュフォーの指導の下、トレーニングを開始する。その中で最も早く自分の能力を開花させたのがキャンチョメだった。そんなキャンチョメとフォルゴレの前に、クリアの配下であるゴームが現れる…
 ラス前。今回は最初から最後までキャンチョメが中心となった話となる。キャンチョメの真の能力ははっきり言って裏技に近い。一対一で対峙した場合、クリアを含めあらゆる魔物を凌駕する。しかしその能力の使い道を知った時、キャンチョメは性格そのものまで変わってしまう。結局キャンチョメとフォルゴレのコンビというのはやっぱり名コンビだった。これまで何故か生き残っていたパピプリオとルーパーのコンビの話もあって、なかなか読ませてくれる。
 残りの魔物もキャンチョメ、パピプリオ、ゴームの三体が消えて残りが五体となった。連載の方はもう終了だそうで、後は残り一巻となった。
金色のガッシュ!! 31
07'12'27 軍国美談と教科書 (著)中内敏夫 <amazon>
 太平洋戦争前後で日本の教科書は大きく様変わりした。教科書検定委員会による検定を受けた教科書がどのように変わっていったのか、そして同じ話が時代によってどのように変えられていったのかを考察する。
 何かと叩かれる事が多い教科書検定委員会だが、それは戦前からの伝統みたいなものだ。事実は一つとしても、見方をちょっと変えるだけで全く話は別になるし、“ちょっとした演出”が全く話を変えてしまう事もあり得る。面白いと言えば面白いけど、怖いと言えば確かに怖い話でもある。
07'12'26 運命の三人 下 ダーク・タワー2
スティーヴン・キング(検索) <amazon> <楽天>
 エディという仲間を加えて二人となった“塔”を目指すローランドの旅は続く。そして二人の前に現れたもう一つの“門”それはエディの時と同様、ただし20年ほど過去のニューヨークへと続く回廊だった。そこでローランドはオデッタという女性を見出す。だがデッタという下品極まりない二重人格を持ち、車椅子を必要とするオデッタを加えた事で旅はますます困難度を増していく。

 ダーク・タワー第2巻の完結編。まだまだ“塔”までの道のりは遠いが、一人旅を続けてきたローランドに仲間が出来たのが大きな特徴だろう。仲間と言っても個性的な奴らばかりで、しかも三人目はローランドが殺してしまう訳だが…あれれ?
運命の三人〈下〉
07'12'20 ジパング31 (著)かわぐちかいじ <amazon>
 原爆を積んだ大和を阻止すべくその進行方向にたちはだかる“みらい”。こちらから攻撃は行わず、大和の主砲をかわし続ける“みらい”。だがその時上空に現れたのは…
 これまで耐え続けた“みらい”がその真価を発揮する時。やってることは…やっぱり耐える事(笑)。それにしてもその性能の高さがここではっきりと示された訳だ。1巻から展開してきた角松VS草加の対立構図もここにきてますますはっきりしてきた。これはクライマックスに向けて加速なのか?それともまだ一波乱あるのか。先が全然読めない。
ジパング 31
07'12'18 木下恵介の遺言 (著)横堀幸司 <amazon>
 映画監督木下恵介を、木下映画の助監督を務めていた著者の目を通して描く、身近な人の目から見た木下恵介論。
 それなりに木下監督は評価しているつもりだし、資料としては決して悪くはないのだが、監督の心酔者が描いた作品だけに、主観が入りすぎてていて、なんか読みにくい作品としか思えなかった。ま、本当に資料としてのみ考えておけばいい作品なんだろう。
木下恵介の遺言
07'12'16 マルドゥック・ヴェロシティ3
冲方丁(検索) <amazon> <楽天>
 謎の人物L4Aに率いられた傭兵集団カトル・カールとの死闘を強いられる09だが、様々な陰謀が絡み、一人一人と命を落としていく。その中で09の生き残りをかけて捜査を続けるボイルドとウフコック。だがマルドゥック・シティを覆う陰謀は着実にボイルドを蝕んでいく。
 「マルドゥック・スクランブル」に続くボイルドの物語の完結編。どのようにしてボイルドがウフコックと別れてしまったのか、マルドゥック・シティが現在どのような勢力に牛耳られているのかが描かれていく。ただその整合性はかなり強引な感じ。2巻までに見られた描写がやや生彩に欠いてるかな?それでも充分読ませるのが著者の実力。
マルドゥック・ヴェロシティ 3
07'12'15 鉄腕バーディー17 (著)ゆうきまさみ <amazon>
 室戸の記事作りにつきあわされ、湯治がてらに雪国へとやってきたつとむ達クラスメートの面々。この温泉場の地下には本物の鬼が眠っていた。突如復活する鬼をバーディーは古いバーサーカーの一体だと見るが…
 外伝的な寄り道かと思っていたが、なんかメインストーリーの方にちょっと関わりを持ち始めてきた感じ。てっきり数話で終わると思っていただけに意外。ただ、話をだらだら続けているだけのような気にもさせられるのだが…はてさて、これがどのように話の展開を果たしていくやら。
鉄腕バーディー 17
07'12'12 DDD2 (著)奈須きのこ <amazon>
 アリカこと石杖所在が迦遼海江と初めて会った日。アリカの生活は一変した。カイエから借り受けた左手と共に悪魔憑きの前に放り出される羽目に陥ってしまう。そんなアリカにとって一番最初の事件。SVSというこの町限定で流行っている賭け野球ゲームへの関わりを描く。
 1巻で色々搦め手を使った物語構成だったが、今回は割と素直な作品。どんでん返しをあまり用いておらず、その分物語で見せようとしているのが分かる。
 1巻は既に生活に馴れてしまったアリカと、逆にそれ以前の病院の生活ばかり。そこで出てきたキャラも消えてしまったのが多いが、今巻では関係が長引きそうなキャラが何人か登場。更に最後にとんでもない事態が登場。あるいは次の巻が最終巻になるのかな?まだまだ続けられそうではあるけど。
DDD 2
07'12'09 司馬遼太郎全講演1 (著)司馬遼太郎 <amazon>
 1964年から1974年までの著者が様々な地方で行った講演を並べた講演集。
 講演の原稿読んでると、流石に著者は知識豊富で話題が次々と出てくるのだが、場所に合わせて話の内容どころか著者の考え方まで変わっているように見えてしまう。これは著者が調子良いのではなく、多角的な目でものを観ているために、様々な側面を浮き彫りに出来るんだろう。なるほど著者が良く言われるのは、こういう視点を持っているからなんだろうね。
司馬遼太郎全講演1
07'12'08 トライガン・マキシマム13 (著)内藤泰弘 <amazon>
内藤泰弘 (検索) <amazon> <楽天>
 天空では自らの忠誠心の強さを証明するためだけにバッシュを前に敢えて自らの武器を封印して戦いに挑むレガート。一方核爆弾倉庫の中ではエレンディラ・ザ・クリムゾンネイルとリヴィオとの戦いは佳境を迎える。実力では到底敵わないエレンディラに対し、リヴィオが使った作戦とは…
 全編アクションという作品で、雑誌掲載版と較べても密度は相当に上がってる。しかもほとんど絵に説明が付けられていないために何度か読み返さないと理解出来ないという。読むのには結構苦労するけど、それだけの事はあり。さて、次はいよいよ最終巻。
<楽天>
07'12'06 鏡の国の戦士 グインサーガ外伝21
栗本薫 (検索) <amazon> <楽天>
 七人の魔導師事件も過去の話となり、ケイロニア王グインの愛妾ヴァルーサはグインの子を身籠もっていた。そんな中、グインの周囲には怪異が相次ぐ。この世ならざる妖魔とグインとの戦いを描いた三編の中編「蛟が池」「闇の女王」「ユリディスの鏡」を収録する。
 これまで何と最も初期に書かれた外伝の1巻が時間軸では最も先を行っていたのだが、ついにそれを超えるものが出た。ここではなんと外伝1で出会った踊り子ヴァサールの間に子供が出来た事が発覚。しかし、一体正伝ではどこまで行けばここに来るんだろう?
 ところで著者の栗本薫は現在病気で入院中だそうで、本当に生きている間に全部終わるのか本気で心配になってきたよ。
<A> <楽>
07'12'01 ダウン・ツ・ヘヴン (著)森博嗣 <amazon>
 空を飛ぶ事以外何の欲もない“キルドレ”の少女草薙水素。空戦で負傷した彼女は病院に入れられたが、その間に自分が英雄に祭り上げられてしまったという事実を突きつけられる。ただ空を飛んでいたいだけの彼女にとってそれは戸惑う以外に何もないはずだったが…
 後に「スカイ・クロラ」で主人公カンナミに殺される事になるクサナギの過去の物語。どうやらこれは3巻らしいが、草薙とティーチャーと呼ばれる人間との妙に微妙な関係が描かれている。
 「スカイ・クロラ」もそうだけど、文体そのものが非常に特殊な感じで、これまで読んだ事のない不思議な読後感を味わえるのだけど。未だにこれが合うのか合わないのか判断付かない。
ダウン・ツ・ヘヴン
07'11'29 黒博物館スプリンガルド
藤田和日郎 (検索) <amazon> <楽天>
 19世紀初頭スコットランドヤードが出来たばかりの頃。ロンドンにバネ足ジャックと呼ばれる愉快犯が登場した。暗闇の中で飛び回り、出会う人々を恐怖に陥れた怪人だが、ある時ぷっつりとその行動を止めていた。そして3年後、再びジャックは帰ってきた。だが今度のジャックは平気で人殺しをする存在として。調査に当たったロッケンフィールド警部は正体に心当たりがあると言うのだが…
 知らなかったが、切り裂きジャック事件の前にもロンドンにはこういう事が起こったのか。色々勉強になったし、物語の展開そのものも、そのままハリウッド映画にしても良いくらいの見事なバランスの良さ。著者の実力はまだまだ上がっている事がよく分かる。
 ただ、なんで少年サンデーにこだわり続けてあれだけの影響を与えた著者がモーニングで?小学館は取り逃がすべきじゃなかったと思うのだが。
<A> <楽>
07'11'26 とり・みきの映画吹替王 (著)とり・みき <amazon>
 戦後、特にテレビの普及に伴い数多く輸入された海外ドラマシリーズ。これらは吹き替えによって日本に紹介されたが、その当時から現代に至るまで活躍し続けているのが吹き替え俳優。いわゆる声優の存在だった。吹き替え映画の大ファンである著者が、特にヴェテラン声優を中心に対談した模様を描いた作品。
 我々は普通に「声優」と言っているが、これはかつてはコンプレックスを喚起する言葉であり、一種の蔑称とも言えるものだった。これを芸として研ぎ澄ますまでの苦労と、声優一人一人が行っている役作りなど、話題は多岐にわたり、著者が子供の頃の思い出も多数登場。読んでいてなかなか楽しかった。海外俳優に決まった声優が声を当てるのがフィックスと言われているのもこれで初めて知ったし。
映画吹替王
07'11'24 渇きの海 (著)アーサー=C=クラーク <amazon>
 月の開発が一段落し、月が観光地化された時代。22人の乗客を乗せた観光船セレネー号は渇きの海を航行中、突然の地盤沈下を受けて塵の下に埋まってしまった。月の砂漠の奥に埋まった船からいかにして乗客を助けるのか。そして船の中の混乱をいかにして抑えるのか。様々な見地からこの救出計画を描いた作品。
 SF作家との相性という意味では著者が一番しっくりくるが、予想に違わず実に読み応えがあり、楽しい作品だった。まあアポロの月面着陸の前に書かれた作品だから、月が塵に覆われているというのは現実とは異なるのだが、SF作品としての完成度とは全く関係なし。しかしこの邦題は最高だな。原題よりもはまってるよ。
渇きの海
07'11'22 キノの旅7
時雨沢恵一 (検索) <amazon> <楽天>
 キノとエルメスの二人旅を描くシリーズ。他に剣使いのシズと犬の陸。「師匠」と呼ばれる女性と弟子の男の話などをまじえつつ描かれる。「迷惑な国」「ある愛の国」「川原にて」「冬の話」「森の中のお茶会の話」「嘘つきの国」に、数年前キノが師匠と共に過ごしていた時代の「何かをするために」を収録する。
 これまでの話と較べ、本巻にはいろいろとイレギュラーが多い。キノの滞在が3日を超えてみたり(結果的には越えなかったのかも知れないけど)、一冬を同じ場所で過ごしていたりする。物語は相変わらず。ただ、最後のキノの過去の話は劇場版で使われていたやつだね。
<A> <楽>
07'11'16 仮面ライダーspirits13
村枝賢一 (検索) <amazon> <楽天>
 月面に移動した四国ではサタンニウムを用いた大首領復活の時が近づいていた。それを阻止すべく立ち上がったV3は、満身創痍で最後の必殺技火柱キックを放つ。そしてV3の加勢に来たZXはその衝撃波に巻き込まれてしまう。ライダーマン結城丈二の決断とは。そして異空間に放り込まれたZXの戦いは…

 V3編が決着。風見は命だけは助かったものの、もう変身は出来なくなってしまった。そして大首領を前にしたZXはなんと大首領が次々変化する歴代ライダーと戦う事に。ライダー同士の戦いという展開は全く読めず、とても燃える。
 あとがきに書いてあったけど、連載開始から既に7年。もはや仮面ライダーのコミカライズというよりは独自の路線を突き進んでいる感があり。
仮面ライダーSPIRITS 13
07'11'15 マルドゥック・ヴェロシティ2
冲方丁(検索) <amazon> <楽天>
 マルドゥックの裏組織を束ねるニードル一族に関わる事になったボイルド達スクランブル09の面々。組織に追われる事となったニードルの娘ナタリアの保護に向かうボイルドの前に凄腕の傭兵達カトル・カールが立ちふさがる。彼らは一体誰に依頼されたのか?そして09とカトル・カールの勝負の行方は?
 2巻に入り、描写はますます過激に、筆運びも映える。特に特徴のあるアクション主体の文体は慣れるのが大変だが。
 それにしてもほとほと感心するのは、カトル・カールの変態っぷり。全員が全員激しいサディストなのだが、全員傾向がまるで違う。よくここまで無茶苦茶なキャラを考えついたものだ。その描写だけでも感心するよ。
マルドゥック・ヴェロシティ 2
07'11'11 ジパング30 (著)かわぐちかいじ <amazon>
 マリアナ沖海戦たけなわ。日米の総力を挙げての戦いの中、一艦の船が戦線離脱した。その船の名は大和。なんとその中には草加が作らせた原子爆弾が鎮座していたのだ。アメリカにその威力を見せつけるため、後詰めの補給艦隊に向かって突進していく大和。その動きを察知した“みらい”は、その動きを阻止するため大和を追う。
 これまで雌伏していたみらいがいよいよ動き出す。元々の主人公達がようやく活躍の場を見つけたって感じ。それでもこれ読んでるとつい大和による原爆成功した方が良いと思えてしまう自分がいる。こんな感情が私にもあったんだね。
ジパング 30
07'11'08 ぶたもおだてりゃ木にのぼる (著)笹川ひろし <amazon>
 手塚治虫のアシスタントになるため会津から上京。その後漫画家として一本立ちした後、タツノコプロの設立に関わり、アニメーターとして、ジュブナイル作家として有名となった著者の自伝。
 アニメ黎明期からアニメに関わってきた著者だけに、本作に書かれている出来事や人物は資料性が高いものばかり。特に70年代の最もタツノコが輝いていた時代の、とんでもないスケジュールでの質の高い作品連発の辺りは読んでいてとても楽しかった。押井守の著鞘に対するコラムなどもあり。実に面白い。
ぶたもおだてりゃ木にのぼる
07'11'07 蝉しぐれ (著)藤沢周平 <amazon>
 東北の小藩海坂藩の跡目争いに巻き込まれ、切腹を命じられた父を持つ文七郎。それまで剣の修行に明け暮れた少年時代は終わり、否応なく藩政に、そして陰謀に関わらざるを得なくなってしまった地方武士の青年の意地を描く。
 先に映画版蝉しぐれ(2005)を観ていたが、こちらはさほど印象に残ってなかったが、原作の方は実によい作品だった。生活感と、体制の中に残された武士の意地の持って行き方が良く、なるほど著者らしい作品に仕上げられている。確かに長いので映画には難しかったのかな?
蝉しぐれ
07'11'04 ジパング29 (著)かわぐちかいじ <amazon>
 日米戦力が拮抗した最大最後の海戦となるマリアナ沖海戦。空母による航空戦では決着が付かず、ついに戦艦同士の撃ち合いへと転換していく。双方甚大な被害を被る中、それでも未だ動くことのできない“みらい”。戦いの帰趨は…
 架空の戦いであるマリアナ海戦が展開。ここまでためておいた全てを吐き出すかのような話の展開で、特に戦艦同士の戦いは非常に見栄えがする一方、その被害も丁寧に描いている。その分割食ったのがみらいの方で、ジリジリと待つだけ。こちらの方はストレスが溜まる。
ジパング 29
07'10'31 父親たちの星条旗 (著)ジェームズ=ブラッドリー <amazon>
 1944年。日本軍の守る硫黄島は太平洋戦争最大の激戦地となった。そしてここに撮られた一枚の写真。20世紀の最も有名な写真となったものが、一体どのようにして撮影されたのか、そしてそれに関わった人間に訪れた出来事は…
 父親たちの星条旗(2006)の原作。伝聞と様々な資料を用いたドキュメンタリー手法で描かれており、作品自体もとても面白いのだが、改めてこれをあんな映画に出来たという事が驚き。本作の1/4以下の部分で映画一本作ってしまった訳だから。改めて良い映画だったと実感。
父親たちの星条旗
07'10'27 ドラキュラ戦記 (著)キム=ニューマン <amazon>
 ドイツ皇帝と共にヨーロッパを手中にせんとするドラキュラは1918年イギリスに対しドイツ軍と自らの軍勢を放ち大攻勢をかける。欧州に数多く存在するヴァンパイア達は人間と共に戦いを開始するのだが、その中でドイツの凄腕パイロット“レッド・バロン”ことリヒトフォーヘン率いる航空部隊はめざましい活躍を見せた。彼の率いる航空隊の謎を解き明かすべく、イギリスの情報員ウィンスロップは自ら進んで従軍写真家として危険な宙域に乗り込むのだが…
 これは実は2作目で一作目はドラキュラ紀元という作品なのだが、そちらの方は未読。それでも本作は本作で単体で楽しい作品だった。吸血鬼が存在する事で、現実がねじ曲げられ、フィクションの世界の住民達までが大挙して登場。それら一人一人の名前を見てるだけで楽しくなってくる。ここまで無茶苦茶やるといっそ立派。
ドラキュラ戦記
07'10'25 毎日かあさん 出戻り編 (著)西原理恵子 <amazon>
 二人の子供と、その友達連中に囲まれて暮らす著者の日常を描く第4巻。離婚した夫が帰ってきて、そのまま癌で死んでしまうまで、重い話を含めて描く。
 元より著者のファンではあり、ギャグ部分はますます脂が乗った軽快さを描いているのだが、同時に死というとてつもなく重い話も同時展開。凄まじい迫力がある物語となっている。出来は最高で、今年読んだ漫画の中ではおそらく最高作品では無かろうか?改めてこの人の作品読み続けていて良かったと思う。
毎日かあさん4 出戻り編
07'10'23 命の森 (著)石原慎太郎 <amazon>
 東城学園に入学し、同じクラスとなった学生達。保守党代議士の息子で空手家の勝見明、沖縄出身で沖縄の本土復帰を夢見る当麻英夫、元華族の今西冴子、夜のバイトを強いられる工藤葉子とその工藤の雇い主である加納…青春真っ只中の彼らは、それぞれの生き方を大学生活の中で模索していく。
 映画などでは何作か作品を観たが、著者の作品は、実は本作が初めてとなる。著者の若者に対する目線とエネルギーに期待する部分がよく分かる作品。著者は保守的性格を持っているのは事実だが、むしろ著者の目線は若者のエネルギーの方に向いているのかも知れないな。それをふまえてもう一度映画の方も考えてみるべきか。
07'10'20 まんが極道1 (著)唐沢なをき <amazon>
 漫画家、あるいは編集者、あるいは読者。様々なマンガにまつわる人々の、もろもろの悲劇や喜劇を描いた作品。
 なんか久々に著者の漫画を手に取ったが、何というか、もの凄い痛々しい作品で、初見でこれ読んだ時はあまりに痛くて満足に読み進められなかった。ここに描かれているのは全てフィクションとはいえ、それ故に典型的な人間が多数登場し、読んでるだけで「俺かよ!」と叫んでしまいそうになるのが多々…この辺の描写にかけては著者は名人芸とまで言って良い。そう言えばこの人デビューから20年?その間、よくこういう痛い作品をずっと描き続けられるものだ。
 マンガ好きな人には是非読んで欲しい作品。なんか続けて読んでみたくなってきた。
まんが極道 1
07'10'17 佐賀のがばいばあちゃん (著)島田洋七 <amazon>
 漫才師である著者は子供の頃、8年の間佐賀で祖母に育てられた。貧乏な家庭ながら明るさを忘れず、頭の回転も速いばあちゃんから著者が学んだことを、子供の頃の思い出と共に書きつづったエッセイ。
 本作ですっかり有名になった著者だが、これまで読んでなかったので、そのオリジナルを読んでみた。なるほどこれは大変面白い。
 ただ、このヒットもあって続編の方がどんどん出ているようだが、そこまで行くと創作が多くなってそうだから、もう読まなくても良いだろう。
佐賀のがばいばあちゃん
07'19'16 ドラゴン・パール 下 (著)シリン・パタノタイ <amazon>
 文化大革命が始まり、にわかに緊張度の増す中国国内。当然ながら留学生である著者も大きな転機を迎える事となった。中国に取り残される形となった著者が味わった苦しみと、その痛みを通して綴られる中国史。その中を生きた著者の生き方を描く。
 文化大革命とは一体何であったのか。それが毛沢東の主張とどれだけずれ、どのように暴走していったのか。実際にその中におり、父を糾弾せねばならなかった著者の言葉は大変な迫力がある。実際の空気を吸っていたからこそ描けた物語と言えよう。中国史を考える上で大変参考になる。
07'10'14 金色のガッシュ30 (著)雷句誠 <amazon>
 フランスのブラコの前に現れたゴームと、最後の魔物クリア・ノート。クリアの力はあまりにも強く、ブラコでさえ全く歯が立たなかった。だが絶体絶命の危機に陥った時、クリアの気配を探知したアシュロンとガッシュが間に合う。
 最終章「クリア・ノート編」の本格的な始まり。“竜の神童”と言われるアシュロンでさえ、ガッシュやブラコの力を借りてようやくクリアに相打ち。しかもクリアは生き残っており、10ヶ月後に再戦という事になった。次巻からは本当の地上での最後の戦いが始まる事になるのかな?
 これで残る魔物は9体になったが、そう言えば未だパピプリオが残ってるんだよな。なんで?
金色のガッシュ!! 30
07'10'13 ドラゴン・パール 上 (著)シリン・パタノタイ <amazon>
 タイの交換の娘で、国家正常化の架け橋として中国へと送られた過去を持つ著者が、幼き日に出会った人々、殊に自分たち兄妹に対して親切に遇してくれた周恩来、寥承志の二人の交流を通し、当時の中国の状況を今に伝える作品。
 かつて「ワイルド・スワン」を読んで、ようやく中国の文化大革命の中の生活が分かったものだが、本作はそれに劣らず面白い作品だった。こちらは外国人として上から見た中国と言った風情。当時の共産党のあり方と、そこから生み出されたもの、諸外国との国交樹立に向けての努力なども見えてくる。実に興味深い。
07'10'08 運命の三人 上 ダーク・タワー2
スティーヴン・キング(検索) <amazon> <楽天>
 黒衣の男から“タワー”へ行ける存在である事を告げられたローランド。だが、その直後事故に遭い、右手指2本を失う大怪我を負ってしまう。瀕死の重傷を負い死にかけたローランドが見つけたもの、それは“扉”だった。その扉はアメリカに住む麻薬中毒者エディに繋がっていた…

 一応今回も主役はローランドだが、部隊はいきなり70年代あたりのアメリカに変わっている。異世界からの侵入というのが著者の特徴だとするなら、これは侵入する側の方から描いてみた作品であると言えるか。大変興味深い。
運命の三人〈上〉
07'10'06 はじめの一歩81
森川ジョージ (検索) <amazon> <楽天>
 “魔術師”の異名を取るフィリピンチャンピオン、ゲドーと一歩の試合が始まった。勝った者が300万円の総取りという異例の試合に、背水の陣で臨む一歩。だが何から何まで一歩先を行く“魔術師”の技に翻弄され続け、一方的な試合を強いられる一歩…

 久々の一歩の戦いで見所はあるのだが、如何せん今まで散々やってきたパターンの繰り返しとなってしまったのが残念な所。どれほど一歩が自分を追い込んだとしても、どれほど危機に見舞われようとも、逆にそれが絶対に勝つパターンだから、今ひとつ盛り上がらない。一方的な試合だからこそ、なおさら読んでる方は醒めてしまう。
<A> <楽>
07'10'03 キノの旅6
時雨沢恵一 (検索) <amazon> <楽天>
 キノとエルメスの二人旅を描く第6巻。「入れない国」「中立な話」「戦車の話」「誓い」「彼女の旅」(2編)「花火の国」「長のいる国」「忘れない国」「旅の途中」「祝福のつもり」を収録する。
 相変わらずの二人旅だが、本作にはいくつかトピックがあり。「彼女の話」というのが2編あるのもそうだが、サイドストーリーであるシズと陸の話が終わりに近づいているらしいことと、金儲け第一主義の女性と、それに従う男のペアの話が入り込んできた。全話ショートショート的な物語なので読みやすいのが強味。
<A> <楽>
07'10'02 シルマリルの物語 下
J.R.R.トールキン (検索) <amazon> <楽天>
 悪の存在モルドールは消滅した。その頃中つ国に現れ、またたく内にその勢力を拡大し、版図を広げていった人類。エルフと交友を持ち、穏やかな存在の人類もいたのだが、多くは自分の欲望に忠実で、それ故にモルドールを継いだ悪の存在サウロンの影響を強く受けてしまった。人類と長寿族にとって、新しい試練を描く。
 第三紀と呼ばれる時代、直接「ホビットの冒険」へと繋がる壮大な物語で、シルマリルオンが決着付いたら、今度はサウロンが作り出した指輪の物語へと移行していくことになる。一つの時代にも多くの存在がおり、それぞれが自分たちの生き方を生きている。それだけ多くのパワーを持った作品だと言うことになるのだろう。
シルマリルの物語〈下〉