読書日誌
2014’4〜6月

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14'06'30 奇面城の秘密 少年探偵18
江戸川乱歩(検索) <amazon> <楽天>
 レンブラントの名画を高額で買った実業家の神山の元に怪人四十面相から予告状が舞い込む。心配になった神山は明智小五郎探偵に相談を持ちかける。そこで分かったのは、三ヶ月前に明智によって捕まっていたはずの四十面相は、とっくの昔に脱獄に成功していたという事だった…
 「宇宙怪人」(9巻)の直後から始まる作品で、これも掲載雑誌が違うものらしい。そのため今回はポケット小僧が大活躍する話になっている。掲載誌によって物語性も変えてくるのは面白いところだ。
14'06'22 アンダー・ザ・ドーム 下
スティーヴン・キング(検索) <amazon> <楽天>
 “ドーム”に覆われたチェスターミルズでは、ビッグ・レニーが独裁者として君臨していた。そのための目障りな存在とされたデイル・バーバラは無実の罪を着せられ、刑務所に入れられてしまう。そのデイルに依頼されたラスティは“ドーム”の中心に向かうが…

 実に読み応えのある作品で、特に後半部分はほとんど一気読み。ここまで集中して読んだのは久しぶり。これまでの著者の作品の多くは明確な主人公がいたが、この作品は群像劇となっていて、それでもきちんと作品が構成されているのが凄い。
14'06'20 スティーブ・ジョブズ2 (著)ヤマザキマリ <amazon>
 インドへの旅を経てアメリカに帰国したスティーヴはアタリ社員として新しいゲーム作りにいそしんでいたが、やがて友のウォズニアックと共に、パーソナル・コンピューターを作り上げるに至る。
 いよいよ世界に革命を起こしたとまで言われるアップルIIの誕生までが描かれることになる。ジョブズとウォズニアックの二人で作ったと言う事は念頭にあったが、実はほとんどウォズニアック一人で作り上げたもので、ジョブズはそれを売り込む役だったというのがはっきりと示していた。
 はっきり言って、やっぱりジョブズは嫌な奴としか。
14'06'19 パイの物語 下
ヤン・マーテル(検索) <amazon> <楽天>
 ベンガルトラのリチャード・パーカーと共に漂流生活を送った少年パイ。長い漂流生活の中で起こった不可解な事件や、リチャード・パーカーとの心の交流があった。そんな航海をパイの口を通して語る。
 海上の「ロビンソン・クルーソー」と言った風情の作品だが、最後の最後でこれが妄想であるという可能性が出たのは、一種のどんでん返しかな?元々映画でもそれはあったけど、小説の方では突き放しっぱなしって感じになっていて、それがちょっと落ち着かない気にさせられる。
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14'06'14 パイの物語 上
ヤン・マーテル(検索) <amazon> <楽天>
 インドで動物園を営んでいたパテル家がアメリカに移住する事になり、日本の貨物船に乗り込んだ。だが台風の直撃により船は沈没。救命ボートに投げ出されて一人命を長らえた一人の少年パイ。だがボートに乗り込んでいたのはパイだけではなかった。シマウマ、ハイエナ、そして虎…
 映画の美しさが印象深かったので、原作を読んでみようと購入。映画とは随分印象が違っているが、読み物としては、これはこれで結構面白い作品でもあり。
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14'06'10 ハチミツとクローバー1 (著)羽海野チカ <amazon>
 貧乏アパートに住む森田忍、真山巧、竹本祐太の美大生。それなりに充実した日々を送っていた三人だったが、そんな時に大学教師の花本から姪の花本はぐみを紹介される。まるで妖精のようなはぐみに一目惚れしてしまう祐太…
 「人が恋に落ちる瞬間を初めて見てしまった」という台詞で有名になった少女漫画の第1巻。
 久々の少女漫画だが(映画の方は既に観ている)、タッチの緻密さと柔らかさがほどよい感じで、あんまり違和感なく読めてしまう。今のところ恋愛と言うよりも変人達がわいわい楽しくやってるって感じが強いが、貧乏学生の頃を多少なりとも思い出させてくれる描写が嬉しい。
14'06'07 三匹のおっさん
有川浩(検索) <amazon> <楽天>
 還暦を迎えた町内の幼なじみ三人組。剣道師範のキヨ清田清一、柔道家で居酒屋の元主人シゲ立花茂雄、工場経営者で機械に滅法強いノリ有村則夫は、第二の人生を迎えるにあたって、自主的な町内の正義の味方をすることとなった。町内無敵の三人組がぶつかった事件を描く連続短編集。
 壮年三人組の胸の空くような活躍が描かれる話。とにかくすいすいと読めるし、何より読んでいて楽しい。主人公をこの年齢にしたのは慧眼と言っても良い。
14'06'01 銃とチョコレート (著)乙一 <amazon>
 移民の子として生まれた“ぼく”リンツは、父の死の直前に一冊の聖書を買ってもらった。その聖書に挟まれていた紙片が、この国を騒がす怪盗ゴディバのものではないかと推測した“ぼく”はゴディバを追っている名探偵ロイズにその事を告げる手紙を書くのだが…
 途中までは定番の名探偵と怪盗の知恵比べになるかと思って読んでいたのだが、途中から予想も付かない展開へとなだれ込んでいき、一気に読ませていただいた。著者の作品で読んだものはそう多くないけど、こんな作品も描けるんだと妙な感心もしてしまう。
14'05'30 県立地球防衛軍3 (著)安永航一郎 <amazon>
 復刻版「県立地球防衛軍」の第3巻。巻末に、かつて著者が描こうと思って描けなかったという、女になったサンチンの物語を新録。
 巻末のサンチンの話を読んでると、30年を経て随分タッチが変わっている事に気づかされる。女性はやや丸みを帯びた幼児体型に、男性は妙な色気が出るようになってきたようだ。
 ただ、この内容の話では、OVAでもあった(悪評を浴びた)森田とバラダギの初デートの話が面白い。二人が観ていた映画の題名が『シェリブールの花笠』で、そこで「どすこおい。花笠仮面見参」とか描かれていて、これが忘れられずに『シェリブールの雨傘』レンタルして観た覚えがある。
14'05'26 小説 仮面ライダーファイズ (著)井上敏樹 <amazon>
 突如現れ、人類に対して攻撃をかける謎の存在オルフェノク。そんなオルフェノクと戦う異形の存在があった。一つは対オルフェノク機関が生み出したカイザシステム。そしてもう一つは、謎の戦士ファイズ。偶然ファイズベルトに適合してしまったがために、人知れずファイズとなって乾巧と、そんな彼につかず離れず、時に敵対し、時に協力するオルフェノクの一団があった。
 一人で仮面ライダーファイズ全話の脚本を書いたという著者によるノベライズ。前に「異形の花々」という作品も書いているが、それとは別物らしい。本作は設定から物語に至るまでほぼ完全オリジナル。概ね“中途半端”なんだが、何よりも人の感情を描こうとする著者らしい物語にはなっている。
14'05'24 腰抜け愛国談義 (著)半藤一利宮崎駿 <amazon>
 戦後の日本の歴史と思想について造詣が深い著者と、「風立ちぬ」で零式艦上戦闘機を設計した堀越二郎を描いた監督が、「風立ちぬ」鑑賞前と、鑑賞後の二つの対談を描く。
 宮崎監督の願いで成立した対談と言う事だが、それだけに監督の趣味に溢れた話になっている。話題の中心は昔の東京の町並みの話とゼロ戦、戦艦の話。本当に監督って、兵器が好きなんだなあ。その矛盾がこの監督の作品を形作っているんだろう。でもまあ、とにかく面白い作品ではあった。
14'05'15 月光条例27
藤田和日郎 (検索) <amazon> <楽天>
 おとぎ話のキャラクターが選んだ方法。それは月の光を浴びて自らを月打させて、月の軍勢と戦うことだった。だが、それは最早物語には戻れないと言う事を意味する、死を覚悟してのギリギリの選択だった。一方、月の軍勢を退けるためにはオオイミを直接狙うしかないと軍勢の中核に突っ込む月光だが…
 命を賭けた決断を描くと、やはり著者は最高の演出力を持つ。読み応えはたっぷりあるし、少しずつ少しずつキャラが倒れていく描写には、流石にこみ上げるものがある。いやはや巧いね。
<A> <楽>
14'05'11 魔法人形 少年探偵17
江戸川乱歩(検索) <amazon> <楽天>
 人形好きの少女ルミは精巧な人形を持った腹話術師の誘いに乗ってしまい、囚われの身となってしまう。身代金を要求された両親が明智探偵事務所に連絡を取り、留守番役だった小林少年がその任務に就くこととなった。人形師の赤堀鉄州という人物に当たりを付けた小林だったが…
 これまでの少年探偵ものの中ではかなり怪奇趣味に偏った話で、著者らしい人工の楽園を主題にした不思議な作品に仕上がっている。緊迫感の演出も中々良いのだが、設定上のアラがちょっと目立っており、物語上無理が生じてしまってる。まあ、それも魅力の一つか。
14'05'09 アンダー・ザ・ドーム 上
スティーヴン・キング(検索) <amazon> <楽天>
 メイン州のキャッスルロックにつながる片田舎にある町チェスターミルズは、ある日突然透明の障壁によって外界から閉ざされてしまった。その覆いから全く行き来が出来ないのみならず、空気すらほとんど通過しなかった。だがそんな町の実力者ビッグ・ジムはこの混乱に乗じ町を完全に掌握しようとしていた。たまたまこの町から出ようとしていた流れ者のデイル・バーバラは否応なく町に残ることとなってしまうのだが…

 かなり長い事積ん読になっていた作品だったが、やっと手を付けることが出来た。小松左京の「首都消失」をアメリカの小さな町に置き換えたような設定だが、ドームの中が話の中心になっているのが違いか。出来は文句なしに面白い。著者が「アクセル踏みっぱなし」と言っているのがよく分かる。久々に素直な気持ちで楽しめる著者作品に出会えた感じがする。
14'05'07 パーマネント野ばら (著)西原理恵子 <amazon>
 娘を連れて故郷に帰ってきた“わたし”は実家の美容室を手伝うことになった。ここは毎日村の女達がやってきては、虚々実々の恋の話を続けていく。あたかも懺悔室のような空間で語られる物語と、“わたし”が毎晩のように会っている彼氏との物語。
 自分の売りは貧困と言い放った著者だけに、それを徹底した作品はやっぱり面白い。逞しく、それでも恋に弱い女達。ちょっとだけ狂気の内に足を踏み入れている人々。それを描く事が著者の一番の強みであろう。
14'05'03 魔人ゴング 少年探偵16
江戸川乱歩(検索) <amazon> <楽天>
 明智小五郎探偵の元に新しい少女助手マユミがやってきた。少年探偵団の面々も大喜び。だがそのマユミをターゲットにした脅迫電話が明智の元へとかかってくるのだった。その時に東京上空に浮かぶ巨大な顔があった。誰とも無く、それは魔人ゴングと呼ばれるようになるのだが…
 ここに来て初めて少女探偵助手が搭乗。なんでもこの話は少女文芸誌に掲載された作品とのことなので、それは納得。いつもは罠にはめてばかりの二十面相が今回は罠にはめられるという、ちょっとだけいつもとは違った展開も、特徴的でよし。
14'04'29 解放者 カルテット4 (著)大沢在昌 <amazon>
 クチナワから3人に新たに出された指令は、東京各地で行われているというゲリラライブの背後関係を調べろと言うものだった。そこで出会ったホウの旧友でダンサーのケンに心惹かれるカスミ。そんなカスミの心を忖度して心穏やかではいられないタケル。その些細な行き違いが三人に危機を呼び起こす…
 これが一応の最終巻のはずだが、この話は物語として全然まとまってない。それに物語自体が全然終わってない。結局はこれまでのところ全部巨大な悪が背後にいるって部分が小出しになってただけで、その肝心な部分には全く手つかずのまま。なんとも中途半端な話だ。話はこれからなのかも知れないが、なんせ出てないからなあ。
14'04'23 スティーヴ・ジョブス1 (著)ヤマザキマリ <amazon>
 後に世界を変えることとなる人物、スティーヴ・ジョブスが幼少時から青年期に至るまでどのような生活をしていたかを描く、著者流のジョブス伝記。
 アイザックソンによるスティーヴ・ジョブスの伝記を元に、著者が描き上げた作品。著者自身があとがきで書いているが、鼻持ちならない人物を淡々と描いているところが流石と言うべきか。読んで楽しいか?と言われたら、少々疑問だが、ザ・70年代って感じで面白くはある。
14'04'18 指揮官 カルテット3 (著)大沢在昌 <amazon>
 三人組の結束を高めようとカスミはアツシとホウを麻薬中毒の更正施設をしている知り合いを訪ねた。そこで自分の過去を打ち明けるのだが、その夜、何者かの襲撃を施設は受けてしまう。しかもその襲撃者が持っていた武器は8年前にアツシの家族を殺したものと同じものであったことが分かり…
 1巻が出会い、2巻が結束、そして3巻で一度バラバラになる。ちゃんと起承転結を考えた物語構成となっているようだ。でも話がまとまっているようで拡散しているような、危うい印象を受けるのも確かなんだが。
14'04'15 KEYMAN4
わらいなく(検索) <amazon> <楽天>
 新聞記者のサリーの情報によって、初代キーマンの母と会いに行くアレックス。だがそこにも新しいキーマンが現れて襲いかかる。あらかじめ張っておいた罠によって撃退と捕獲に成功したのだが…

 しばらく読むのを忘れていたが、久々に読んでみたら、やっぱりやたら面白い。どうやら私の感覚にぴったりと合った作品なのかも知れない。
 本作はキーマンという存在のヒーロー性を描く事によってヒーロー論がしっかりしているところが良い。
14'04'12 狼と香辛料10 (著)支倉凍砂 <amazon>
 ホロの故郷ヨイツの手がかりは島国ウィンフィール王国の修道院にあるかも知れないという情報を得たロレンツ、ホロ、コルの3人は一路ウィンフィールへと向かう。だがその修道院に入るのは一筋縄ではいかず、巡礼者に扮して修道院近くまでは来たものの…
 なんだかんだ言っても相変わらずのクォリティで安心して読める作品。ドラマを盛り上げつつ、しっかり経済について語る語り口には感心出来る。経済というプラスがなければ単純なメロドラマになってしまうところを美味くつなぎ止めていると言うべきか。
14'04'09 県立地球防衛軍2 (著)安永航一郎 <amazon>
 復刻版「県立地球防衛軍」の第2巻。巻末にマッスル日本とグリコーゲンXの対決(?)を描いた掌編を収録。
 流石にネタが古すぎる感はあるが、今となって読むと、色々と特撮ネタが見えてくることも多い。しかし、ここまで特撮ネタを山のように詰め込んだ作品だとは思ってなかったな。実に30年を経て知るネタって、どんだけハイブロウな作品だったんだか。
 ちなみに本編では絡むことがなかったマッスル日本とグリコーゲンXが初対決をしているが、実際には仲良くすき焼きを食べてるだけ。それも本作らしさか。
14'04'05 パロの暗黒 グイン・サーガ131 (著)五代ゆう <amazon>
 息子に会うためミロク教の総本山ヤガへと向かっていたはずのイシュトヴァーンは、なんと傭兵の姿でパロに舞い戻っていた。その狙いはリンダをおのが妻として迎えること。だがそれは既にヴァレリウスによって感知されており、その野望は食い止められてしまう。だが、そんなイシュトヴァーンの前に現れた者が…
 亡くなった栗本薫に代わってグイン・サーガを語り継ぐプロジェクトの第1作目。あとがきで栗本薫本人だったら絶対描かないようなものを描くと書いていたように、本当に物語の根底を揺るがしかねないような設定となっている。コアなファンだったら多分、絶対にこれ受け入れられないだろう。
14'04'03 中国嫁日記3 (著)井上純一 <amazon>
 著者と月(ユエ)が結婚してしばし。生活の拠点を中国にしようという著者に、反発する月。しかしそれでもなんとか中国での新生活を始めた二人の生活を描く。結婚当初に行った家族旅行や写真撮影などのエピソードも盛り込んで描く第三巻。
 1巻と2巻は日中の文化の違いによる月の奇行が中心になっていたが、今巻は逆に中国に行くことによる、著者のカルチャーショックが中心になっている。そのため元々あった魅力が少々減じられてしまった感じもある。その分過去のエピソードを挿入したことで、なんとかページを保たせたって感じかな?ブログで読むには丁度良いんだが、本になってしまうと、ちょっと読み応え無くなってしまったかな?