16'09'30 | 代体 (著)山田宗樹 <amazon> 近未来。重傷を負って長期入院を強いられた人のため、人の記憶を移し替え、代わりの肉体として使用される、代体と呼ばれる医療用ロボットが普及し始めていた。そこで代体技師として働く八田は、大体二記憶を移した後、手術失敗で本体が死んでしまうと言う特種な事態に直面する。この場合、代体のバッテリー切れと共に、その人物の意識も消えるはずなのだが、その代体が失踪し、その後八田の前に違った人物の姿で現れる。あり得ない事態に戸惑う八田だが、これはこの世界そのものの存続に関わる始まりに過ぎなかった… 近未来を扱ったSF作品ということになるが、全ての伏線をきっちり回収しつつ、ちゃんとドラマとして成り立っていて、SFとしてはかなし優れた出来となっていて、これだけのハードSF作品を描ける人が日本にもいるのだとしみじみ感じさせられる。 強いて言えば人物の感情描写まではしてないため、ややドラマが薄目に感じられるが、SFだからこその驚きを邪魔しないようにしたのかな? ここ何年か、ラノベの方で新しいSF作家を探してきたけど、そうではなく、単行本の方で探すべきであったか?と今更ながら反省してる。 |
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16'09'28 | ドリフターズ5
話はかなりまとまってきており、いつの間にか最終決戦目前といった風情だが、相変わらずとても面白い。信長が治政担わされ、へろへろになりながら戦略練ってる一方、総大将の豊久が全くいつもと変わらず、戦い以外何もしようとしないところか、その対比の巧さと、政治的な駆け引きの演出が巧みで、繰り返し読んでも楽しい。 一方これまで添え物のような描かれ方をしていた菅野の山口多聞のエピソードが重要な一手になりそうな感じ。 そう言えば10月からテレビアニメが始まるそうだが、どこまでやるんだろうね? |
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16'09'24 | 劔岳・点の記 (著)新田次郎 <amazon> 日露戦争後、国内地図作成を急務とする陸軍は、未登頂とされる劔岳に山岳会に先んじて登頂し、三角点設定を命じる。その候補に挙げられたのは陸軍文官の柴田芳三郎だった。発足したばかりの日本山岳会に先んじて急峻を制覇するよう命じられたが、この地は聞きしに勝る難解な山だった。 かつて日本で最も峻厳な山とされた劔岳登頂の様子を小説化したもの。まさに激闘の書と言った感じ。著者の描く実録小説はどれも冷徹な描かれ方をするため、身の引き締まるような思いをさせてくれる。映画以上に山登りのきつさを感じられるほど。 |
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16'09'22 | ワンパンマン5
今巻は主人公サイタマがほとんど登場せず、他のヒーローたちの絶望的な戦いがひたすら展開する。いわゆるタメ回というやつだ。何せサイタマが出た途端全てが終わってしまうのだから、そこに至るまでを徹底的にタメ作って描かねばならないという苦労が忍ばれる。読んでる側としても、最後にすっきり終わるための時間だと思って読んでるから、それで良いんだけど。 |
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16'09'18 | ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘 (著)水木悦子、赤塚りえ子、手塚るみ子 <amazon> 日本を代表する偉大なる漫画家を父に持つ三人の娘たちが、マンガ化の過程に生まれ育ったことで困ったこと、共通に味わったこと、そして何より父親の思い出を語り合った対談集。 そしてそれぞれの父親のあまり知られていない短編漫画水木しげる「猫」、赤塚不二夫「レッツラゴン」、手塚治虫「ペックスばんざい」を合わせて収録する。 共通の職業の家族がいると言うだけでこれだけ話が広がるものか。という面白さと、共通して放任主義家庭に育てられ、結果として父親の仕事の整理の仕事に入るという共通項もあるためか、非常に深く、そして暴露話になっているのが面白い。 |
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16'09'11 | テラフォーマーズ15
前巻ラストで、既にテラフォーマーは地球に来ているという事実が発覚。つまりワクチン製作のための火星で一定数のテラフォーマー捕獲という前提条件が無意味なものになってしまった。結果として火星での戦いは国家間の代理戦争になってしまっただけという問題点が出てきた。火星の話はもう限界だろうな。 ただ、これまでの確執を捨て、全ての班の班長が力を合わせて戦うと言う展開は燃えるのは燃える。 |
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16'09'09 | 罪の終わり (著)東山彰良 <amazon> 六・一六という小惑星衝突によって世界の文明は崩壊した。そんな中、アメリカ大陸でモラルの秩序を再構築しようとする白聖書派に属するネイサン・バラードは無人の荒野を旅し、荒野の中で共同体を作っている一つの集団を探しだし、その中心人物“黒騎士”ナサニエル・ヘイレンを殺すよう命じられる。まずはナサニエルの経歴を調べるネイサンだが… 秩序崩壊社会の中で一つの宗教的共同体を作り出した人物を描いた架空伝記。。その文体はとても日本人によるものとは思えないほどに硬質。SFでありつつも伝記作品としてちゃんと読めるので、非常に読み応えあり。 しらんかったが、これは続編だとのことなので、後でその前の作品を読んでみることに使用。 実はこの手の架空戦記とか人物を扱った作品って大好きなんだよ。 |
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16'09'07 | 夏目友人帳7
これまで少しだけ存在を匂わせてきた的場家が本格的に登場。夏目にとっては名取も苦手なのに、それ以上に妖を使い潰すという的場に対し、夏目自身は何も出来てないというのが本巻の特徴。 まだまだ夏目が成長しなければならないことを示しているのだろうが、主人公のあまりの無力ぶりにちょっと読んでいて疲れを覚える。 ただ、メインの物語がかなり緊迫したものと言う事もあってか、おまけのエピソードは妖たちと夏目が影踏み鬼をやるというほのぼの路線。こっちの方が面白かったりする。 |
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16'09'02 | 昭和な街角 (著)火浦功 <amazon> 1980年代後半から90年代にかけて著者が雑誌連載で書いていた数々の小説を、連載中止のものも含めて収録する。「ただのバカ一代」「聞いた話」「終わる日」「アモルフの棲む街」(未完)「キャロル・ザ・ウェポン」(未完)「明るい世紀末の過ごし方」「閉じこめられて」を収録する。 タイトルこそ「昭和」だが、実際は元号が変わってからのものが中心。その中には実際に私がリアルタイムで読んでいたものも何本か。いやでも正直、著者の本物の新作が読みたいとしみじみ思う。 イラストの竹本泉とのコンビは、なんだか懐かしくて和む。 |
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16'08'27 | ワンパンマン4
ヒーローの戦いとは超常的な戦いであり、そこでは周囲への被害や、どうしても救えない人々が存在する。そんな中、どうしても選択しなければならないヒーローのあり方を描くことになる。 ヒーローとは何か?根源的な問いかけがなされた話ではあるが、その答えは思った以上に単純なものだった。目の前の悪を粉砕し、目に見える範囲の人間を出来るだけ救う事。確かにこれはこれまでのヒーロー達が常にしてきたことだが、それをはっきり口にした作品ってのは今までなかったから。 |
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16'08'24 | 神様のコドモ (著)山田悠介 <amazon> 休暇で神様が不在の天界で、神様のコドモである“僕”は人間界を見張るという役目を引き継いで下界を眺めていた。基本的に退屈なだけの任務だが、時に人間の愚かな行いに干渉してみたり、正義の味方っぽく振る舞ってみたり。そんな神様のコドモの手の上で踊らされる人々の姿をコミカルに描き出す。 一本一本が小説のネタになりそうな、ちょっと多い付いたことをオチもなく書き綴ったという感じの作品。どれを読んでも中途半端な上にオチさえ放棄しているものばかり。ただ、全編独特の雰囲気があるので、その点を肯定的に見られれば、それなりに楽しめる。 …乗り切れないと残念なだけで終わるので、リスキーな作品ではある。 |
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16'08'20 | アオイホノオ15
それぞれ着実に将来の道を歩み出そうとしている面々を描いている。 …はずなのだが、これまで以上にマンガ編集者及び漫画家及びオタクの王様らに対する当てつけが最大規模に達している。特に小学館の内部を描くようになってからは、編集者の実名を挙げての糾弾が冴え渡ってるような?あだち充に対する当てこすりはいつも通りだが、今回はついに大御所新谷かおるにまで手を伸ばしてる。 よほど事前に手回しをしているんだろうな。さもないと訴えられても文句言えんぞこれは。 |
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16'08'19 | 激光の大天使 アクセル・ワールド14
綸を救うためには四神セイリュウの元からアクア・カレントを助け、その後四神と同格とも言われる大天使メタトロンを攻略。サラには罠の待ち構えているISS本体を破壊という手の込んだミッションが始まることになった。今巻で最初のミッションのアクア・カレント救出は成功したが、まだまだ先は長い。 |
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16'08'18 | KEYMAN8
あれだけ盛り上げておいて、あっけない終わり方をしたものだ。しかしそれも又これからの物語の伏線なのかも。 ネクロがアレックスを頼った理由というのがここで明らかにされるのだが、「これだけ?」というあっけないものだった。ネクロにしては最大限家族を考えてのことだから、あっけないとか言ってはいけないのかもしれないけど。 |
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16'08'14 | 戦車のような彼女たち (著)上遠野浩平 <amazon> 日本に似た、いつかの時代の話。ここでは市民を守るため、陰で危険を排除する組織が存在した。そこで兵器として使われるのは、少女の姿をした合成人間達だった。その人間兵器の一人琥依は、危険人物とされる一人の男の監視を命じられるのだが、さりげない接触を何度か繰り返していくウチに、なんとその対象者である古猟邦夫は、琥依に交際を申し出る… 第二次世界大戦時のドイツ戦車のコードネームとそれに似た能力を与えられた少女達(と何人かの少年達)による、暗中模索の戦闘風景が描かれる。 著者の作品は「ブギーポップ」一冊しか読んでないけど、共通しているのは個人個人のミニマムな話だけで終始し、政治的に関わる大きな話の部分はほとんど語られないと言う事。一時期流行ったセカイ系も又、著者も一翼を担ってきたことを改めて思わさせる。 ちなみにこの作品、某原稿を書くにはとても役立ってくれた。 |
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16'08'11 | テラフォーマーズ14
一難去ってまた一難が延々と続く感じになっており、テラフォーマーとの戦いが終わったら人間との戦いになり、それが終わったら又…という話が続く。話がどうにも一定しない感じで、メインの物語に割り込む挿入された話が少々無駄に感じられてしまうのも問題だな。 ラストシーンに唖然とした展開が待っている訳だが、なんでこうなる? |
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16'08'09 | ムーミンパパの思い出 ムーミン童話全集3
ムーミン谷の面々の出生のことが同時に描かれるムーミンパパの冒険譚。旅の仲間になったロッドテールとソースユールからはスニフが、ヨクサルとミムラからはスナフキンが生まれたことが分かる。ただし、今巻ではミムラは前夫?の子としてミイを産んでいる描写があり。ミイって実はムーミン谷の子ども達の中では一番年上なんだな。 |
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16'08'07 | 月刊少女野崎くん4
相変わらず小ネタがとても楽しい作品で、ついつい笑ってしまうネタが多く、見事に私の感性とはかみ合ってるようだ。今巻では新キャラとして野崎の弟が登場。何もかもが面倒くさがりというキャラ付けだが、妙に他の人たちが放っておけず、色々面倒なことになるという位置づけ。なんだか不思議と笑えてしまう。 |
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16'08'03 | ナイト・ダンサー (著)鳴海章 <amazon> 1991年。アメリカに向けて成田を離陸したジェット機M航61便。この中にはアメリカに密輸されようとしていたアルミニウムを著しく腐食させるという細菌NC90Y菌が積まれていた。偶然の重なりでこの菌が解放されてしまう… 設定がバブル期にあるため、日本が世界的にトップに立っているという前提で描かれているのが時代性を感じるし、今読むなら兵器も古びてる。しかしそんな時代性など吹き飛ぶくらいに描写が冴え渡り、臨場感にも溢れている。これだけビジュアル性に優れた作家もまだまだいるもんだな。 |
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16'07'31 | 新仮面ライダーSpirits13 (著)村枝賢一 <amazon>
今巻でニードルが今の状況を全部語っている。バダンは一枚岩ではなく、三つに分かれている。一つはバダン首領の完全配下のデルザー軍団で、彼らは異次元に封じられているスサノオをこの世界に引っ張り出すというもの。二つ目は暗闇大使とバダン主流で、スサノオを完全に封じ込め、自らがバダンの首領となろうとしていると言う事。スサノオを封じ込める方法を探るため、ライダーマン結城丈二は敢えて暗闇将軍と手を組んでいる。更にそこにタイガーロイド=三影英介とクローン村雨しずかによる、村雨良のスサノオとしての覚醒を促して、良を世界の王にしようとする一派。この辺の事情が絡まってこれまでよく分からなかったのだが、これですっきりした。 でもこの巻ではむしろ、「ストロンガー」本編に出てこなかったジェットコンドルが暗闇大将軍に変身するという、ファンの二次創作を描いている事と、変身出来なくなった風見志郎が、仮面ライダー1号の技の風車と2号の力の風車のパワーを同時に注ぎ込むことで、待ちに待った変身を成し遂げたということ。燃える展開だった。 |
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16'07'27 | 鳥打ちも夜更けには (著)金子薫 <amazon> 島特有の蝶アルバティロオオアゲハを観光資源と位置づける新町長の号令で蝶を襲う海鳥を吹き矢で殺すという“鳥打ち”の職業がある“架空の町”。そこで鳥打ちの職に就く三人の青年がいた。そのうちの一人天野は、徐々に鳥を殺すという自らの職業に疑問を感じ始め、精神的に不安定になってしまう。謹慎処分を受けた天野の代わりに鳥打ちを続ける沖山と安田だが… 現実から多少遊離したファンタジックで不安定な世界の物語。強いて感想を言えば「不思議な雰囲気を持つ作品」だが、単に雰囲気だけの作品にしか思えず。 |
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16'07'19 | ワンパンマン3
単に強いだけではヒーローになれないと言う事で、ヒーロー試験を受けたら、今度は座学の成績が悪すぎたため、最低ランクにしかなれなかったというオチ。ただし、強さが些かも弱まるわけでは無く、相変わらず強すぎる無敵キャラとしての地位は安泰で、再戦を望むソニックをあっけなく下してしまった。現時点でサイタマに敵うキャラはどこにもいない。 |
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16'07'13 | カエルの楽園 (著)百田尚樹 <amazon> 凶悪なダルマガエルに追われ、自由の国を求めて旅に出たアマガエルのソクラテスとその仲間たちは、幾多の困難と犠牲を経て、ツチガエル達が住むナバーシュという国にたどり着いた。そこは何の危険も無く、毎日楽しく過ごすまさにカエルの楽園だった。そこに住むツチガエル達によれば、この平和は「三戒」と呼ばれているものによって守られているというのだが… 寓話という形で現代の日本を評したような作品。現在の国際情勢の中、日本がどれだけ危なっかしい立場にあるのかを鋭く語り、これから目を背けることは出来ない。 ただ一方、著者の極めて差別的な視点は読んでいて辟易してしまい、どうにも居心地が悪い。読みやすいのに読みにくかった。 |
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16'07'07 | 水木しげるの異界探訪記
著者の最晩年に描かれた新作マンガで、自分自身の先祖のルーツを探るというもの。出てくるのは大和時代の霊なんだが、ルーツは戦国時代。毛利に滅ぼされた尼子の武将だったとか。それで水木家が裏切ったために尼子滅亡の遠因になったとか…山中鹿之助あたりに思いっきり祟られそうな行いをしてきたんだな。 自分自身のルーツを探ると言う事で、かなりメタフィクショナルな話になっているが、自身の創造物である目玉親父が案内人になってたりと、これこそ本当に最後のマンガ作品として読めるので、なんだかしみじみしてしまう。 |
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16'07'03 | おのれ筑前、我敗れたり (著)南條範夫 <amazon> 下克上の戦国時代にあって、数多くの武将達が覇を競っていた。その中で斎藤山城守道三、おうち左京大夫義隆、滝川左近将監一益、宇喜多和泉守直家、龍造寺山城守隆信、吉川治部小輔元春、丹波五郎左衛門長秀、島津兵庫頭義弘、佐々陸奥守成政、真田安房守昌幸、石田時部少輔三成、加藤左馬助嘉明の12人を描く。 その中で比較的知られてない武将をピックアップし、世間の評判と比較し、実際の文献から読み取った実像との違いを比較したもの。自分の中にもやっぱり大きな先入観があったことを痛感させられたのと、こういうマイナー武将も調べてみると面白いのがたくさんいる事が分かったのが成果。 中でも真田昌幸、島津義弘に関しては、丁度関心が向いてる折、とても面白かった。島津の関ヶ原参戦は、本当に何で西軍だったの?と言う疑問もますます増えた。ちなみに平野耕太著「ドリフターズ」主人公島津豊久の戦死の模様もちゃんと描かれていた。名前出たのは一行だけだけど。 |
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16'07'01 | テラフォーマーズ13 (著)貴家悠、橘賢一 <amazon> アネックスの奇襲は成功し、地球に救難信号を送ることは出来た。だが既に第4班の母国はなりふり構わぬ燈とミシェル捕獲作戦を敢行しようとしていた。そしてその当の燈は、テラフォーマーズとのギリギリの戦いの中、本来持っていたもう一つの昆虫の能力を引き出す… 結構長引いたアネックス奪回作戦も一段落。話は主人公の膝丸燈に帰ってきて、自分でも知らなかったカマキリの能力に目覚めたと言う事が一応クライマックスになるのかな? ただ、この巻での圧巻はむしろ、全滅したはずの第5班で生き残りがいたという事だろう。生き残るって言うか、最早ここまで来ると本当に人間ベースなの?と言いたくなるような、トンデモ設定。あのあっけない全滅はこの伏線だったの? |
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