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紅茶の話

紅茶の話 その1〜20   その21〜40
紅茶の話 その41 紅茶の量について。
 前に一度一杯の紅茶の量について書いたことがあった。
 茶葉は人数分プラス一杯。これがイギリス風の紅茶の淹れ方の基本である。昔CMで日本でもやっていたから、一定の年以上(笑)の人はそれを覚えておられるかも知れない。
 しかし、これはイギリスの水が硬水だからであり、日本のような軟水の場合、よく抽出されるのでそうたくさん茶葉を入れる必要はない。一人分に大きめのスプーンで山盛り一杯で充分。
 だけど、飲み較べてみると分かるが、紅茶というのは面白い性質がある。
 スプーン山盛り一杯分の茶葉で一杯分の紅茶を淹れる場合と、スプーン普通盛りで二杯分の茶葉を使い、二杯分の紅茶を淹れる場合、どっちがおいしいかというと、
間違いなく二杯分の紅茶の方
 これは恐らく茶葉のジャンピング/ホッピングに理由があるんだろう。
 これも前にも書いたと思うが、
紅茶の旨味というのは、熱湯の中で泳がせることによる。熱湯だと対流が強いので、その分茶葉は湯に揉まれ、自然な抽出がなされる。紅茶を淹れる場合、熱湯を用い、茶葉を押しつぶさないこと。それは苦みが出るだけ
 そうなると茶葉がゆったりと泳げるようなスペース、つまりお湯の量が必要となる。
 こう考えると明らかだろう。スプーン山盛り一杯の茶葉に少量のお湯と、スプーンに普通二杯の茶葉に倍の量のお湯。ゆったり茶葉を泳がせることが出来るのは勿論後者だ。
 カレーと同じでたくさん作ればおいしくなるのが紅茶だ
(カレーと違うのは量に限度があることだが)

 私は一人暮らしなので当然紅茶は一人で飲むことになるが、大分前から普通のティーカップの倍くらいの大きさの器を使うようにしている。これは昔たまたま大きなティーカップをおもしろ半分に買ってみて、それで紅茶を飲んでみたらとてもおいしく感じた事と、やっぱりたくさん飲めるのも魅力だからだが、実際にちゃんとおいしい理由が考えつく。

 余計なことかも知れないが、私の紅茶の淹れ方をここで紹介したい。充分に暖めた二杯用のティーポットにスプーン二杯の茶葉を入れる。このスプーン、私はマドラススプーンという柄の長いスプーンを用いている。本当はこれ、カクテルなどの攪拌用のスプーンだから本来の用途とは違っているのだが、茶葉を大盛りにしてもこぼれないし、缶の底まですくえるので重宝している
(これがとても気に入ってるので昔から愛用してる)。これで山盛り二杯(普通のスプーンより受け皿がやや小さいため)の茶葉を取ってさっとポットに放り込んで、沸騰してるお湯を目分量で好きな量注ぎ込む。それからティー・コジー(保温用の布)を用いてポットをくるんでおく。
 抽出時間は二分から三分。だが、
私はこれは適当に取るようにしてる。毎日変わった味になるし、これでぴたりと美味さが符合した時は凄い幸せになるから(今住んでいるところは水道水がおいしいので、抽出失敗しにくいのも助かってる)。
 それからおもむろに茶こしを使って大ぶりのティーカップに注ぐ。茶こしは最後まで空中に浮かして絶対お茶にはつけない。それで出来る限り最後の一滴まで注ぐ。
 と、こんな感じ。

 私は中国の紅茶を愛飲してるのでこういう淹れ方をするが、これがスリランカ茶なんかの場合、違った楽しみ方が出来る。
 同じように二杯分の紅茶を作ってから、普通のティーカップに一杯分だけ淹れ、ストレートティーで楽しんだ後、ポットの中で濃くなった二杯目を、今度は砂糖とミルクを入れて飲むと言う手も使える。これはこれでなんだか落ち着く飲み方だ。

 ま、
紅茶の淹れ方は人それぞれ。要するに自分で一番おいしいと思える自分流の淹れ方を見つけるのが楽しい。是非色々試して、結果自分の一番を見つけて欲しい。
紅茶の話 その42  今中国茶をよく飲んでいるが、中国茶というのは本当に奥が深い。種類も多い。最近は日本に入ってくる中国茶もかなりの数に上り、ありがたい限り。色々飲み較べたりしてる(紅茶ほど飲んでる訳じゃないけど)。
 で、この前購入したのは東方美人(ドンファンメイレン)というお茶
(尚、これは俗名で、正式には白毫烏龍茶)。これは日本でも高級茶として割合ポピュラーな中国茶。その名前に負うところが大きいのかな?ちなみにこれは台湾産の青茶。
 この特徴はと言えば、先ず
値段の高さ。私がいつも飲んでいる紅茶(中国産のキーマン)で100グラム1200円程度。ところが同じ店でこの東方美人を見ると、何とその倍以上。50グラムで1500円位する。お茶にしてはずいぶんと高額な…
 それでもやっぱり一度は飲んでみたいので50グラムほど購入してきた。
 まず茶葉を目で見てみる。茶葉はかなり長く、曲がりくねっている。一切ブロークンしてないのがこれから分かるが、こんなにひん曲がるのは珍しい。
 それに、色が面白い。紅茶は黒っぽい褐色をしているが、中国茶は様々な色がある。例えばここで書いていた名間金萱(ミンチェンチンシェン)だと鮮やかな緑色。水仙は褐色。黄金桂は深い緑。そしてこの東方美人だが、これはくすんだ灰色をしている。白っぽい茶葉は紅茶ではシルバー・ティップスなどと呼ばれ、最高級の茶葉と言うことになるのだが
(中国茶の場合白毫と呼ばれる。最高級の証)、なるほど高い訳だ。その白いのを中心に茶色や黒っぽい葉が結構含まれている。面白い色合いの茶だ。
 それで味を知るために先ず一煎。
 あれ?薄いぞ。前に書いた黄金桂と同じ程度の蒸らし時間だったのだが、どうやら蒸らしが足りなかったようだ。
 それでも中国茶の良さは2煎目。こちらは良く出ていた。
 それで飲んだ感想。これは確か青茶だったはずだが、紅茶に近い味がする。だから蒸し時間は紅茶に準じた方が良さそうだ。と言うこと。
 それでもう一度、
紅茶と同じくらいの蒸らし時間で淹れてみる。
 うん。確かにこれは美味い。
 紅茶っぽいとは言え、やっぱり味そのものは青茶。ほのかな甘みと喉ごしの良さ。すっきりした後味は確かに青茶の特徴だ。
 それでちょっとネットで調べてみることに。
 
ネットでは絶賛されてる。水色(すいしょく)の良さや蜂蜜のような味わいとか…
 ところで調べてみて面白い事が分かった。このお茶の特徴は、虫食いの葉を使う点にあるそうだ。虫と言っても大きく葉をかみ切るのじゃなくて、葉からエキスを吸う虫。いわゆるウンカと言う奴だ。稲にこれがたかると米の出来が悪くなるけど、茶葉に付くと、その味わいが深まるのだとか。
先に不思議に思った茶葉のひん曲がり方はこのためらしい。虫を必要とするんだったら、確かにこれは台湾だけでしか摘むことができない。無農薬で夏の暑い盛りに手摘みで摘まれるので、どうしても高くなるらしい。
 尚、この名前だが、一説によると、イギリスのビクトリア女王がこの茶を飲んだ時、
「オリエンタル・ビューティ」と感嘆したからだとか(直訳すると確かに東方美人になるな)

 お茶好きな人にはお勧めできる。ただ普通の中国茶と較べて心持ち長く蒸らし時間を使うことをお勧めする。

 …しかし、こう言っちゃなんだが、やっぱり私には高すぎる。前に飲んでいた黄金桂が私には丁度良いレベルかな?
紅茶の話 その43  今日はちょっと変わった紅茶の飲み方のお話。

 紅茶やコーヒーを飲む時、みなさんはどうしているだろうか?
 カップは勿論必要なのだが、それ以外のものを使う事があるかどうか。
 私の場合は一人で飲む場合は基本的にカップのみ。何せカップが大きいので、それに合うソーサー(受け皿)は無いし、あったとしても一人で飲む場合は気取る必要性が無いのでそのまま飲んでいる。
 しかし、お客さんが来た時なんかは話が違っている。迎えるという意味もあって小さめのカップを使うし、それに合わせてちゃんとソーサーを出すし、スプーンも置く。ストレートで飲ませるのでなければ砂糖もいる。レモンやミルクなどを添えるのも、いかにも紅茶っぽくて良い。
 ところでこのソーサーだが、紅茶を飲む際、カップやスプーンを置くと言う以外に用法があるのをご存じだろうか?
 イギリスの方では一時期トラディショナルとなった方法らしいが、このソーサーを用いて紅茶を飲むと言うのがあったそうだ。
 先ずソーサーに置かれたカップに、ミルクピッチャーからたっぷりとミルクを注ぐ。そしてよくスプーンでかき混ぜてから、スプーンをテーブルに置き、ソーサーごと持ち上げる。それでカップの紅茶をソーサーにこぼして、そのソーサーから紅茶を飲むと言うもの。
 つまり、
片手に紅茶のカップを持ち、もう片手にソーサーを持って、ソーサーの方に口を付けて紅茶を飲むことになる。
 …これがトラディショナルとはとても思えないし、ましてや日本でそんなことを公式の席でやろうものなら、顰蹙の目で見られるだろう。しかし、一時期とは言え、イギリスではそれがトラディショナル・マナーだったと言う。お茶会にはみんなソーサーからずるずると紅茶を啜っていたのだろう
(ちょっと表現が悪いな。やっぱりこれにも作法があったと思われる)
 どこかの本でこのことを読んだ時は妙な習慣があるもんだけど、半ば
ホンマカイナ?とか思っていたものだが、複数の文献に書かれていたからどうやら本当らしい事が分かった。今はどうだか分からないけど、20世紀初頭まではこれをやってた人も結構いたらしい(「1984年」や「動物農場」の作家ジョージ=オーウェルは無類の紅茶好きでも知られるが、殊更この飲み方を好んだと、ある伝記に書いてあった)
 更にアニメで
「赤毛のアン」(勿論日本製のアニメだ)を観ていた時、マリラが全くそのやり方で紅茶を飲むシーンがあった。あのアニメ、元から質が高いと思ってたけど、このシーンを目にした瞬間、私の中での評価は極端に跳ね上がったもんだ

 そんなもんで大分前に一回、自分でもやってみた。
 …やっぱりというかなんというか、変な飲み方だったので、
一回こっきりでもうやってない

 これについて日本人を揶揄するジョークにもなってる
(何故か全然違う本で3度も目にしたから、かなり有名なジョークなんだろう。人と時代は違えど、三つとも日本人についてだった)
 大正時代(この辺は脚色が多いらしく、戦後になってるのもあった)にイギリス王室に招かれた日本の外交官(これも色々ヴァリエーションあり。多分その時々の日本の外交官や代議士がやり玉に挙げられるのだろう)が、王室の作法が分からずこちこちになってお茶の時間になる。彼(若しくは彼女)はトラディショナル・マナーが分からないので、お茶の作法は全部真似しようと心に決めるのだが、最初貴族が(エリザベス女王になってたのもあった)紅茶のカップを傾け、ソーサーに紅茶をこぼす。勿論日本人もそれに倣う。そして貴族は優雅にそこにミルクをたっぷりと入れる。日本人もそれを横目で見ながら真似をする。その後、貴族は砂糖壺を手に取り、少量ソーサーにこぼす。日本人もそれを真似する。
 そして、貴族は優雅な物腰で座ったまま上体を椅子の下に入れる。日本人はなんの疑問もなく、その格好を真似する。
 そして、貴族はテーブルの下で丸くなってる猫の前にそのソーサーを置く。

 …と、言うもの。私の書き方の問題もあるが、あんまり面白いジョークではない。少なくとも日本人向けではないな。
紅茶の話 その44  そう言えば今まで殆ど触れることが無かったが、今日は紅茶のメーカーの話をしてみたい(そもそも一番最初にやっておくべきでは?)

 紅茶のメーカーというと数多くあるが、日本では殆ど日東紅茶がそのメインとなってる
(実の話、私は大学の就職活動で真っ先にここを受けて見事に落ちた経験あり。本当に本当の話)
 ただ、日本においても紅茶というとイギリスのメーカー製品が比較的安価で売られているので、そちらの方で買う方も多いと思う。その中でいくつくらい挙げられるだろうか?思いつくままに挙げてみよう(今回は主にイギリスのもの)。
 
ブルックボンド。これはイギリスにおいて最大のメーカーで、1869年にアーサー=ブルックによって創立されたもの。日本では比較的少ないかな?大衆用の紅茶(つまりミルク・ティによく合う紅茶)を多く作っている。イギリスのティー・バッグの殆どはこのメーカーのが飲まれている。ちなみにここには中国茶がないので、私はこのメーカーの紅茶を意識して飲んだことはない(スリランカ茶あたりだったらどこかで飲んでるんだろうけど)。この高級版としてアーサーブルックというのもある(これは完全に未飲)。
 
ウィッタード・オブ・チェルシー。1886年に創立したメーカーで、非常に良心的なメーカーとして知られる。ここのキーマンはおいしいという話を聞いたことはあるのだが、残念ながら未飲。
 
ウェッジウッド。日本でも比較的手に入れやすいメーカーの一つ。ただ、キーマンの味に関してはあんまりお勧めではないが、ピーター・ラビットをあしらった缶はセンスが良く、贈り物用にはピッタリ。
 
フォートナム・アンド・メーソン。これは日本でも高級茶としてデパートの地下などでよく見かけるメーカー。本店はロンドンのピカデリーにある総合食料品店。紅茶のみならず、ジャムなどでも有名。紅茶缶は特徴のある緑色。高級茶と言うだけあって、それなりに値段は高いが、味としてはおとなしめ。最近は殆ど買うこともなくなった。
 
ハロッズ。これも高級茶としてデパートなどでは定番。有名なデパートとして日本でも知られているが、元々は紅茶店。ここの紅茶は缶入りと密封パック入りがあり、密封パックの方が安いので、買う時は専らこっち(昔日本でも某デパートで量り売りしてくれるところがあったが、随分前に私自身が引っ越ししてしまったので、今もあるのかどうか、少々疑問)。ここでのキーマンは非常に味が鮮烈。淹れ方をちょっと間違えると苦くなる。チャレンジし甲斐のあるメーカーだ。
 
ジャクソン。紅茶のメーカーとしては古い伝統を持つメーカーだが、このメーカーが有名になったのは、中国茶とインド茶のブレンド・ティであるアール・グレイ(直訳すると「グレイ伯」だが、それはこの紅茶の秘伝を持ち帰ったグレイ伯爵にちなむ)を最初に売り出したから。ここの紅茶も純正の中国茶は見たことはない(あるのかな?)
 
リプトン。日本では古くから最も有名なメーカー。日本で飲まれるティー・バッグのかなりのパーセンテージを誇るが、元々は高級茶として日本に最初に持ち込まれていた。戦前の日本で飲まれていた紅茶の大部分はこれ。いわゆる青缶と呼ばれるスリランカ茶が最も有名。私が紅茶飲み始めた頃はこれをよく飲んでいた。
 
メルローズ。スコットランドにある伝統的な紅茶店で創立は1812年。記憶では一度だけここのキーマンを買ったことがあるが、記憶が薄いので、さほど特徴のある紅茶ではなかったのだろう。
 
リッジウェイ。これもイギリスの老舗。創立は1830年。缶の形状も他のものとは異なり、高級感溢れる感じを受ける。特に王室御用達と呼ばれるだけあって、キーマンは現時点ではこのメーカーのものが一番だと思う…が、しかし、一体どこに売ってるのかが分からない。インポート店で一軒だけ、昔見つけたことがあるばかり。ちなみに最近では高級ティー・バッグのメーカーとしても結構有名になっていて、こっちは比較的手に入りやすい。
 トワイニングス。日本でイギリス紅茶と言ったら、一番親しまれているだろう。昔はCMでもよく流れていた。創立は1706年で、イギリスに紅茶が輸入され始めた最初期に出来たメーカーで、このメーカーはイギリスの紅茶の歴史そのものとまで言われている。ブレンド茶も数多くある。このメーカーのキーマンが、私のキーマンとの出会いとなった。何せ一番手に入れやすいので、今でも時折飲む。
 
ロイヤル・ドルトン。高級茶として売られているらしいが、私は未飲。ただ、あんまりこれが「おいしい」と言った噂は聞かず。
 
テトレー。主として大衆用紅茶のメーカーで、ブルックボンドと並んでミルク・ティ用の紅茶を多く販売している。
 この辺がイギリスのメーカーだが、これ以外にも
ロイヤル・コペンハーゲン(デンマーク)、マリアージュ(フランス…これはひょっとして日本?)、フォション(フランス)、レピシエ(フランス)、ゴディバ(ベルギー)など、探せば色々出てくる。
 データの裏付けを取るためにネットを巡ってみると、いかに世界の紅茶というのが奥深いものか、正直圧倒されてしまった。日本にも
「キームンジャパン」なるメーカーを発見。ちょっとネットショッピングして一パックほど買ってみようかと思ってる。
紅茶の話 その45  今日も中国茶の話。今回購入して飲んでみたのは名間四季茶(ミンシェンスーチーチュン)というやつ。これは台湾の青茶だが、とても響きが良いので、どんな味かと思って買ってみた。
 四季茶という名前はちゃんと理由があって、この茶葉は非常に成長が早く、通常の農閑期である晩冬や新春にも茶葉が摘めるので、四季を通じて茶が摘めるって言うのが理由。その分生産量が多いので、日本にもかなり入ってきてるようだ。
 春夏秋冬の茶があるが、やはり寒い時期に摘まれたものが一番高級らしい。実際、厳しい気候で育った茶葉がおいしいというのは通説となってる。私が購入したのは新茶の冬茶。
 それでまず一煎。
 
うわ。よく出るな。ってのが最初の印象。極めて緑茶に似た味だ。萎凋(いちょう)が短いためなんだろう。それにしてもこの味って確かに青茶のものに違いないけど、日本茶っぽさも感じる。ちょっとえぐみも感じるが、すっきりした青茶の中では比較的味わい深い。
 それで二煎目淹れてみる。
 今度はかなり薄くなってる。淹れ方を少々間違えたか?
 これはチャレンジし甲斐のあるお茶だ。是非本当においしく淹れて飲んでみたい。
 …と言うことで、本当においしくなったら、又リポートさせていただこう。

 …えー、それで追加なのだが、私は
大きな間違いを犯していたことに気付いた。
 最初に淹れた時、茶葉があまりにも多すぎたのだ。そりゃ確かに東方美人と同じ感覚で茶葉を入れて淹れると、茶葉が多くなりすぎる。当たり前のことだ。
 それで適正な茶葉の量が分かってから改めて、レポートさせていただくと…
 
「見つけた!」
 だった。
 無茶苦茶好みの味だよ。青茶らしいすっきりした味わいだけでなく、緑茶の渋さもやや入っていて、更に後味がほのかに甘い。いくつかの中国茶はこれまでも飲んできたけど、これほど好みの味は今まで無かった。しかも3煎まで充分飲める。値段の安さもあり(
それでも100グラム1200円くらいするけど)、これにはまりそうだ。

 思い起こせば、キーマンを最初に飲んだ時と似てるよ。正直これは絶対駄目だと思ったものだ。100グラム缶を一缶飲み終えた時にはすっかりファンに変わってたけどね(笑)…あの時、何気なく淹れて飲んだ瞬間感じた甘さは、本当に衝撃だった。今回のもかなりそれに近い。
紅茶の話 その46  だいぶ前にロイヤルミルクティの話を書いたことがあった(その15)。これはイギリスでは飲まれてないとも書いたのだが、相変わらず日本では普通に「ロイヤルミルクティ」という名前で売られている。
 それで私はそれに否定的なのか?と言われると、そうでもない
(そうでもなくなったと言うべきか?)。当たり前だが紅茶とは嗜好品なので、「こうしなければならない」というレシピはない。大切なのは自分の舌においしいと感じるかどうかであり、それが人気あるなら、それで良いじゃないか
 …と言うことで、ちょっとロイヤルミルクティについてちょっとだけ。
 日本では結構好まれるが、実はこれ、レシピはいくつかあるようなのだ。調べてみたら3つほどレシピが見つかった。
 
1つ目はポットで作る方法
 ポットで作ったら普通のミルク・ティとどこが違うのか?と言う話もあるが、作り方によって、これもロイヤルミルクティと呼ばれる。
 先ず茶葉の量は通常で、お湯の量を半分にして濃い紅茶を作る。その後、暖めた牛乳をそこにお湯と等量入れる…カフェ・オ・レと同じ方法なので、
ティ・オ・レとも呼ばれる。
 
2つ目は鍋で作る方法
 これは牛乳のみで作る場合と水と牛乳を等量入れる方法の二つに分かれる。
 作り方は同じで、一旦鍋に牛乳若しくは牛乳と水を入れ、沸騰直前まで煮て、その後茶葉を入れて蓋をする。その後漉していただく。
 個人的言わせてもらうと、牛乳のみで作るより、水と牛乳を等量に入れたものの方が味は多少すっきりしてておいしいと思う。
 
3つ目も鍋で作る方法
 一旦水を沸騰させてから茶葉を入れ、弱火で煮出した後、牛乳を加え、蒸らした後に漉していただく。これはむしろチャイに近い淹れ方…有り体に言ってしまえば、
スパイスを入れないチャイ
 お店でロイヤルミルクティを頼んだ時、これはどういう作り方をしてるか、舌だけで分かったらたいしたものだが、微妙にそれぞれ味が違うので、挑戦してみても面白いだろう。
 店で頼む紅茶はなかなか個性が出しにくいが、これに関しては同じ茶葉を使っても店のレシピで随分味が変わるので、楽しいもの。
 むしろ日本の独自のお茶の飲み方として、発展していってほしいものだ。
紅茶の話 その47  ここのところコーヒーも飲み始めたが(相変わらず味は分からないんだけど)歴史に関してちょっとだけ調べてみた(コーヒーが廻り世界史が廻る)。それで歴史的に見る限り、歴史に影響を与えたのはは紅茶よりもコーヒーと言うことが分かってきてなんかちょっと悔しいものがあるが(笑)、ここに面白いことが書かれていた。
 ほかのヨーロッパの各国と違い
、何故イギリスはコーヒーではなく紅茶を選んだのか。と言うこと。フランスではカフェ・オ・レ、イタリアではエスプレッソなどと、色々なコーヒーの飲み方があるのに、イギリスにはほとんどそれがない。今まで読んできた紅茶の本では、何故イギリスは紅茶を飲むようになったのかは書かれていても、何故コーヒーを飲まなくなったのかは書いてなかった。
 これを揶揄して
「何故イギリス人が熱心な紅茶党かは、彼らのコーヒーを飲めば分かる」などと言われることがあるそうだが(要するに、それだけイギリスのコーヒーは不味いってことなんだろうけど)、ちゃんと歴史的にも意味はあった。
 先ず何故他のヨーロッパ各国が紅茶ではなくコーヒーを受け入れたのか。
 それは単純な理由で、
輸入されるのが紅茶より早かったから。最も単純に言えばそれに尽きる。産地を考えてみればそれは明らかだろう。初期のコーヒーの輸出元は中東に限られていたのだが、それに対し紅茶は中国まで脚を伸ばさねばならなかった。明らかに距離的には中東の方が近い。
 中東では5C頃には既にコーヒーは飲まれていたそうだが、ヨーロッパに入ってきたのは実は意外に遅く、15Cになってから
(紅茶に先行すること100年ほど前)である。それまででも中東とヨーロッパを結ぶ交易地であるヴェネツィアでは細々と飲まれていたようだが、このコーヒーがヨーロッパに多量に入ってきたのは大航海時代の幕開けによる。
 大航海時代というと、イメージとしては大西洋の大海原に一隻の帆船が帆を翻して…なんて事になるかもしれないが、事実は先ず最も近いところから交易品になりそうなものをかき集めるところから始まった。
 ここに登場するのが新興国であるオランダである。オランダは中東のある港町を植民地としていたのだが、その港の倉庫には多量在庫のコーヒー豆が眠っていた。コーヒーは他の穀物類とは異なり、虫やネズミに食われることがないので、日持ちがして、その分多量のストックが港には積まれていた。これが頭を悩ませる種となった。交易品としても、ヨーロッパ人が飲まないものではどうしようもない上に、他に売れそうな産物が少なかったのだ。
 その港町の名前が
モカ。ここからこの多量在庫を売るためのオランダ商人の努力が始まった。
 商業の近代原理として、
「需要がなければ需要を作れ!」というのがある。オランダ人がとった方法はまさにそれだった。
 栄養素がほとんど無く、ネズミも食わないようなコーヒー豆だったが、これには一つ大きな強みがあった。コーヒーには
高い常用性があるのである。
 オランダは自国の海運ネットワークをフル活用してヨーロッパ中の港にコーヒーを運び込んだ。そして先ず自分たちが率先してコーヒーを飲むことから始めたのである。いったい彼らは何を飲んでいるのか?と興味を持たれたらしめたもの。一回飲んで「不味い」と思ったとしても、その味は忘れられなくなり、又飲みたくなってくる。これがその町の有力者だったりしたら、当然彼らは町中にこの飲料を広めることになる。
 これが大当たり。ヨーロッパ中はコーヒーを求めるようになり、オランダはバブル経済に大浮かれする結果となった。
 それで周りが海で囲まれているイギリスが実は一番最初にコーヒーのお得意様となった。そしてあっという間にヨーロッパ中で最大のコーヒー消費国となったのである…意外と思えるが、本当の話である。
 そしてできあがったのがコーヒーハウス。これは男しか入れなかったが、様々な階層の人々に開かれていた。コーヒーを痛飲しながら、夜通し語り合える場所となったのである。やがてコーヒーハウスはロンドン中に出来、男達はそこで政治談義を花開くことになる。
清教徒革命はこのようなコーヒーハウスから生じたと言っても良い
 だが、その乱立したコーヒーハウスの寿命はそう長くなかった。
 理由は
三つ考えられる。
 
一つは革命が成功した時点でその存在意義は充分果たされ尽くしたこと。やがてコーヒーハウスに集まり、意見を戦わせていた面々はそれぞれ自分たちの居心地の良い場所を求めるようになり、クラブへと発展していったのである。ここでもコーヒーは出されただろうが、むしろ酒が中心となっていくようになる。
 そして
二つめに、オランダに続き、イギリスが海運国になっていったこと。スペイン、ポルトガル、オランダというイベリア半島に独占されていた交易を、革命後のイギリスは目指すことになった。そうなると、オランダの独占品であるコーヒーを買い続けることに抵抗を感じるようになっていったのである。むしろコーヒーに変わるものを探し当て、それを独占することによって、そこからの収益を得ようと考えた(言うまでもないが、それが紅茶である)
 これら二つの要因は確かにあったものの、実はコーヒーをイギリスから閉め出した本当の原動力は他にあった。
 コーヒーハウスというのは、身分の区別なしに集まれる社交場として発展していったのだが、やはりそこには差別というものがあった。
 コーヒーハウスは男しか入れない場所だった。その結果、家を空け、毎晩のようにコーヒーハウスに行ってしまう夫を持った女性達が、とうとう怒り出したのだ。
 彼女たちは様々な攻撃をコーヒーに対して加えた。曰く、コーヒーは健康に悪い。これによって男達はやくたいもないおしゃべりをするようになった…しかし、その本当の意味は、
家庭で持つ夫婦の時間が極端に少なくなってしまったと言うこと。それに尽きた。このパンフレットに書かれていることを、やや失礼ながら引用させていただくと、「怠惰な木偶の坊たちは、今では馬鞍よりは拍車をほしがるのです。余分のお勤めを果たすことからは一切遠ざかり、わたしたちには彼らが、彼らの義務であり、かつ私たちの期待が要求するところの務めを果たすことが出来ようとは思えないのです」とある。これの意味するところは想像にお任せするが(だいたいこんなもの書いたのはたぶん男だろう)、いずれにせよ、彼女たちは家に帰りもしない夫をどれだけ軽蔑していたかがよく分かる記述であり、それをコーヒーの責任にしていたのである。
 これらの誓願を一笑に付すことも出来たのだが、議会は前述した二番目の理由もあって、これを認めた。コーヒーハウスを違法化して次々につぶしていったのだ。
 やがてコーヒーに変わる飲み物で、安価に手に入り、しかも家庭で簡単に作ることが出来る紅茶の方を広く男女とも受け入れるようになったと言うわけである。コーヒーと違い紅茶は家庭でみんなで飲むことが出来る。むしろこちらを常用させるようにして、夫が家にいるようにさせることに成功したのだから。
紅茶の話 その48  お茶の効用に関して前に書いたが()、面白いニュースを見かけた。イギリスの英ニューカッスル大学の科学者チームによる報告(2004'10'25)で、「茶の飲用はアルツハイマーの予防になる可能性がある」とその研究成果を発表している。これはなんでもお茶の成分が記憶障害の原因となる物質の抑制に有効かもしれない。としている。
 尤もこれはあくまで「かもしれない」と言うレベルで、更に根本的な治療にはならないとされているが、お茶好きとしてはやはりなんか嬉しい気がする。
 しかし、果たしてこれだけ毎日お茶を飲んでる私が果たして記憶力の減退を招いていないか?と思うと、その辺は微妙。数十年後、私自身がアルツハイマーになったとしたら、あんまり効果がないと言うことになるだろう。
こういう人体実験だったらいくらでもやってやるよ

 元々お茶というのは薬用として用いられていたのだから、もっと明確な薬効があって欲しいとは思うのだが。
紅茶の話 その49  紅茶がコーヒーに勝るものと考えると、まあ色々あるだろうが、その種類の豊富さが一つにあるだろう。
 実際紅茶には本当にたくさんの種類がある。私が良く行く紅茶屋では300種類もあるとあるが、実際には数千種類はあると思われる。産地の数は限られているのになんでそんなに種類があるのかと言うと、その大部分はフレーバードティと言うものだから(日本では主にフレーバーティと呼ばれることが多い)。
フレーバードティ。日本語では着香茶(ちゃっこうちゃ)と書くが、これは乾燥仕上げした茶葉に香りを添加したもの。
 これには大きく分けて
3種類ある。
 一つは茶葉に香料を吹き付けたもので、正確に言うなら、これが
フレーバードティと呼ばれる。
 これで代表的なのものはアールグレイ。これはイタリア産の柑橘類であるベルガモットで作られる香油を乾燥させた茶葉に噴霧したもの。主に中国産の紅茶が用いられるが、ダージリンやスリランカなど他の茶葉で作られたものもある。他に有名なものとしては紅茶ではないが、ジャスミン茶もフレーバードティとして有名。
 二つ目は茶葉に花や果実、スパイスなどを混ぜ込んだもので、これは細かくはフレーバードティとは区別され、
センテッドティと呼ばれている。
 このセンテッドティこそが紅茶の多様性を表していると言っても良い。乾燥した茶葉は強い吸着性を持つことを利用し、様々な香りをそういう形で付け足す訳である。
 これは本当に色々なものがある。私のいきつけの紅茶屋では200種類もの種類を誇るが、その大部分はセンテッドティである。実際センテッドティはいくらでもできる(それが美味しいかどうかは別問題だが)。果実系だとアップルティやストロベリーティ、ピーチ、ライチなど。花だとローズヒッブティを始め、ラベンダーなどがあり、日本では桜の花びらを使ったものもある。又、ハーブティもハーブのみを使ったものだけではなく、茶葉に混ぜるものもあり、これもセンテッドティとして飲まれる事も多い。
 最近になって日本でもよく飲まれるようになったチャイも、本式には普通の茶葉を煮出し、いくつかのスパイスを混ぜ合わせるが、今ではスパイス入りのティバックも結構売られており、これもセンテッドティの一種と言って良かろう。
 上記の二種類のフレーバードティは一応個人でも作れるものの、基本的にはそのまま売られているものを購入することになるが、もっと定義の範囲を広げるならば、もっと簡単にこれらでも出来る。
 ありていに言ってしまえば、我々が割合普通に飲んでいるレモンティがその代表。いれたセイロン茶にレモンスライスを入れるだけでレモンフレーバードティの出来上がりだ。シナモンティなどもその一つのヴァリエーションだし、オレンジの輪切りを紅茶に浮かべるとシャリマティになる。

 我々が普通に飲めるフレーバードティは、このみっつがあるが、結構ややこしいのがレモンティだったりする。実はレモン果汁を茶葉に噴霧した、文字通りのフレーバードティもあるし、乾燥させたレモンピールを茶葉に混ぜ込んだセンテッドティもある。
一口にレモンティが好き。と言う場合もちょっとだけ注意して欲しい

 さて、蘊蓄はともかく、家庭で作ることが出来る簡単なアップルティのレシピなどを公開しておこう(生リンゴを用いる場合)。
 1.リンゴを皮付きのまま四つ切りにし、それを銀杏切りにする。
 2.一人分あたり2〜3切れのリンゴを茶葉を入れたポットに入れ、普通にお湯を入れて紅茶を作る。
 3.カップにリンゴ1〜2切れを入れ、上から紅茶を注ぐ。
これだけ。
 スリランカ茶を用いるのが一番良く、心持ち茶葉を少なくするのが良い。ほのかな甘さを楽しむならストレートで。ふくやかさを味わうためならミルクティで(砂糖は入れない方が良い)。それと、リンゴは是非紅玉を使って欲しい。
 これは応用が利くので、リンゴだけじゃなく、イチゴやマスカット、ライチと言った果実でも出来る…やったこと無いけど。

 要するに、紅茶は色々と応用が利く。と言うことだけ覚えてもらえれば。