2057年。太陽の活動が急激に衰え、地球は滅亡の危機に陥った。人類は太陽の活動を促すため、核爆弾を太陽に撃ち込む計画“イカロス計画”を立ち上げた。だが1号機は太陽へと向かう途中で交信を断ち、計画遂行不能状態に陥ってしまう。そして7年後、船長カネダを始めとする8人のエキスパートが乗り込んだ最後の核爆弾を積んだイカロス2号が太陽に向かって発進するのだった。航行は順調だったが、太陽に近づいたその時、イカロス1号の救難信号を受信する…
毎回変わった手法で映画を作るボイル監督の最新作。今回は宇宙を舞台としたSF作品。
はっきり言ってしまうと、ボイル監督作品はどうにも肌触りが合わない所があって敬遠しているのだが、たまたま映画観る時間に丁度合ってしまったために鑑賞。まあ、真田広之がどんな役やってるのかな?と言う好奇心も多少。
…だけど、やっぱり合わないわ。この監督。
以降は読むと不快に思われるかも知れないので、ご注意を。
冒頭の観ただけで気持ちが萎えた。なんだこれ?『スター・ウォーズ』(1977)か?それとも『2001年宇宙の旅』(1968)か?何というオリジナリティのないオープニングだ。しかも続いてのタイトルロゴは『エイリアン2』(1986)か?それとも『ザ・コア』(2003)か?
冒頭だけで「はははは」と心の中で乾いた笑いが出た。こりゃ駄目だ。
実際物語自体がオチまで含めてほとんど『2001年宇宙の旅』をベースにして『エイリアン』(1979)と『アルマゲドン』(1998)くっつけただけ。あんまりにもそのまんまで、溜息しか出ず。どーしようもないわ。この監督。
キャスティングも折角の多国籍を活かすことができず、何の意味もなく喧嘩して、一人一人死んでいく。キャラも何考えてるのか分からない奴らばかりで感情移入一切出来ず。期待していた真田広之も苦手な英語を喋るだけで手一杯と言った感じ。ミシェル=ヨーも全然活躍出来ず。そもそもアクション俳優を配しておいてアクションも全くなし。何のためにこの人起用したんだ?
話も、かなり哲学的にしたつもりなのだろうが、単に分かりづらいだけでしかなし。キューブリックの真似しても無駄だよ。はっきり言って物語自体が古すぎ。
大体なんで太陽行くのに「イカロス」などという不吉な名前を使うんだ?「昔ギリシアのイカロスは〜」って「みんなの歌」でやってたね。
ただ強いて良い所を言うなら、演出は独特で、アングルはともかく(『エイリアン』とか『13日の金曜日』(1980)とか観てる気分)、ぐにゃりと映像が歪んだり、無関係の映像を突然挿入したりと、なかなか面白い演出ではある。それが面白いと言えば面白い所。
しかし、一つ本作で分かったことがあった。
ボイル監督は誰かに媚びることだけはしない。自分の作りたいものを作りたいように作ることができる珍しい監督だと言うこと。
確かにこれまでの作品を改めて考えてみると、ボイル監督が作ってきた作品というのは時代や流行りとは全く無関係に作られている。「分かる奴だけ付いてこい」という突き放しと強引さがあるので、合う人間にはとても合うのだろう。『トレインスポッティング』(1996)はそれが上手く機能し、時代の方が映画に付いてきたと言った感じがする。ある意味この姿勢はイギリス監督の最も重要な要素を示している。この人が今の時代のイギリス監督の代表格と言っても良いだろう。だから合う人にはとことん合うと思うよ。私には全然合わないけど。 |