ネバダ州にある人里はなれた小さな町パーフェクションで便利屋をしているヴァル(ベーコン)とアール(ウォード)はある日、この付近の地質調査にやってきた女性研究者ロンダ(カーター)という大学院生と出会い、数日前から異常な地中の震動が記録されていることを知らされた。その日から、町の人々が次々と不審な死を遂げるという事件が起きるのだった。やがてヴァルたちは、その原因が巨大な地底生物の仕業であることを知るに至るのだが、その頃には町は電話が不通となり道路も寸断され、すっかり陸の孤島と化してしまった…
「陸のジョーズ」と呼ばれる作品で、B級作品にしかならないはずの素材を魅力的に仕上げた新人監督アンダーウッドの出世作となる。
ハリウッド製の特撮作品、殊に怪獣ものはほとんどの場合は巨大化した地球上の生きものとなることが多い。典型的な例で言えば『ジョーズ』(1975)に始まる巨大鮫もので、これは時代を超えて今も尚作られ続けている。これはおそらく人間の科学が生み出してしまった。という後付の理由のためだろうけど、純粋な意味での怪獣ものというのは驚くほど少ないのが日本のものとの大きな違いであろう。日本では怪獣はやや神がかった描写が成されているのに対し、ハリウッドでは怪獣とはあくまで自然の驚異であり、それをどう退治するか、あるいは逃げるかと言うことに主眼が置かれている。
そう言う意味ではこういう純粋な怪獣ものというのは珍しい。物語の構成そのものはハリウッドのフォーマットに則っているとは言え、その怪獣描写が良く、しかも怪獣の強さが絶妙なバランスに立っているため、観ている側も「ひょっとしたら?人間の方が勝てるんじゃないのか?」という思いにさせてくれる分、単純に動物パニックになってないのも好感度高し。何せ初めてこの怪獣グラボイスを見た人間が、地下室に山のように積まれている銃を徹底的にぶっ放したら見事に殺すことが出来たくらい(この描写は白眉だ)。しかも戦いの大部分は白茶けた大地の中、白昼堂々と行われており、それが緊張感と言うよりはほのぼの感を醸しているのもなかなか面白い。何より本来必死のはずの主人公の行動一つ一つも、白昼で見ると、単なる馬鹿にしか見えないというのは、本作が作り出した大きなトピックだし、それが本作の面白さにつながっているのは事実だろう。
それにとぼけた感覚で笑わせてくれるベーコン&ウォードのコンビも良い。ベーコンはすっかりB級俳優になってしまったんだなあ。と当時は思ったものだが(今はしっとりとした良い役も演ってるけどね)、それはそれで私にとっては結構嬉しい。と思わせてくれた。
そうそう。冒頭でこの二人がジャンケンをやってるシーンもあった。日本式のジャンケンがここまで受け入れられてるという事実もなんか嬉しい。
決して大作ではないけど、細かい所で嬉しい演出が映える作品だった。 |