特撮館Top

事典目次

火星の女王

火星の女王事典
<amazon> <楽天>
書籍

 

主な登場人物
話数 タイトル コメント DVD
第1話   演出:西村武五郎
      川上剛
  脚本:吉田玲子
 2125年。人類が火星に入植して40年が経過した。過酷な環境での重労働に不満が高まり、ISDA(International Space Development Agency) 国際宇宙開発機構による「地球帰還計画」が採択された。ここに根を下ろし居住を続けようとする勢力との間に火星社会は不穏な空気に包まれる。そんな時、地球帰還計画を推進するISDA日本支局長タキマ・スズキの娘リリ-E1102が突如拉致される。犯人のシュガーは計画の即時中止を要求する。

 テラフォーミングが進んだ火星を舞台にしたSF作品。一話目である本話は火星の状況を説明しつつ、事件の予兆、そして緊張感を描くこととなる。
 出てくるキャラが皆名優ばかりなので、NHKの底力を感じさせられる。この話では全員抑えた演技のため、だいぶ落ち着いた感はあるが、話が短いので、もう少し演技力全開で演じて欲しかったのは確か。
 ただ、一話目を観る限りでは、SFとはいえ、ヒューマンドラマが中心で、SF設定は小道具として使われる程度といった印象。そもそも謎が多いために確実に語れる部分が少ない。
 とりあえずここで分かったのは、火星の生活が過酷であることと、火星を脱出して地球に帰還したい勢力と、それでも火星の生活にしがみつきたい勢力での静かな争い。そして火星には人類の行く末を左右する重要なお宝が眠っていると言うこと。その辺がとりあえず抑えておくべき所。
 登場人物としては、中心となるのはリキ・カワナベ、リリ-E1102、白石アオト、マルの四人。その四人の視点で語られることになる。
 まず吉岡秀隆演じるリキ・カワナベは科学者で、火星で研究中に未知の物体を発見するが、その危険性を探知し、その事をISDAにも黙っている。このまま人間が地球に帰ってしまうと、それを放置して良いのかと悩んでいる最中。
 白石アオトはISDA職員の地球人で、現在地球にいて火星人の受け入れ体制を整える任務に就いているが、火星赴任時代にリリと知り合っており、少なからずリリ誘拐事件に関わろうとする。
 そして火星生まれの少女リリ-E1102。彼女は何者かによって突然連れ去られてしまう。視力は無いが、聡明で周囲の様子を記憶に留めている。
 マル-G4131はリリの誘拐捜査の担当刑事で、真面目だができるだけ人と関わらないようにしている。彼女の地道な捜査がリリへとつながっていく。

 物語は複雑に絡み合って得体が知れない状態だが、とりあえず分かるのは、地球から離れた火星では地球人による差別構造、そして逆に多数を占める火星人が地球人を排除する構造があり、一触即発の状態。
 そんなピリピリした空気の中でも火星生まれの人間は稼いで生きる事に誇りを持っている人もおり、行き詰まりの中で、それでも何か起こることが期待されている。
 そこで火星と地球の二つの物語が展開する。火星で起こったリリの誘拐事件は、当初混乱している火星社会の中で起きた事件の一つのように思えたが、何故か社会に与えた影響がとても強い。その理由を探ること。そしてリキ・カワナベが発見した「漆黒の球体」がどれだけ危険なものかどんな真実を掴んだのかというのが二つの方向性となる。一応全員の顔合わせが終わったところ。
 そしてリキ・カワナベが発見した物体が発見した強力なエネルギー体は、このままでは地球と火星を滅ぼす武器になりかねないことが分かり、その研究の即時中止を求める地球と、それを地球に対する切り札として使おうと考える火星の駆け引きへと展開していく。
第2話   演出:西村武五郎
      川上剛
  脚本:吉田玲子
 リリを拉致したチップは、地球によって差別されてきた火星移民が地球に戻ることの危険性を語り、リリも又その危険性を感じ始めていた。地球ではアオトが失踪中の父の恵斗を探しだし、リキ・カワナベの発見した物質が既に父によって提唱されていたものだったことを知る。

 前話で地球に帰ることを喜ぶ市民が描かれ、リリを誘拐したテロリストは問答無用で悪かと思われていたが、彼らには彼らなりの理由があり、このまま帰還したら人口減らしを推進中の地球人によって火星移民団は差別の対象にされてしまう。それは22年前に地球が火星移民団を切り捨てたことからそれは明らかだという。それを聞かされたリリは人質の身でありながら、それに共感してしまう。しかしリリ救出に来たISDA警察によってチップが殺されてしまう。
 そのリリを心配する地球の白石アオトは火星のリキ・カワナベが発見したエネルギー体が過去地球で提唱されたものだと分かり、失踪したその博士を追うことになる。その博士こそ、かつて家族を捨てて失踪してしまったアオト自身の父親白石恵人だった。そこでアオトは何故父が家族を捨てて失踪せざるを得なかったのかの事情を知らされる。実は恵人はスピラミンを保有しており、誰にもそれを取られてはならないという使命感からだったことが分かった。ただ、火星にしかないスピラミンが何故か地球でも同時に見つかった理由は現時点では不明だが、どうやら火星に現れた時とほぼ同時期に地球でも現れたようだ。
 マルはリリの誘拐事件の捜査の過程で、かつて火星の反乱事件の首謀者シュガーの正体を知る。そしてジュリというシュガーの妹の存在を知り、接触を取るが、それは火星移民には地球に希望はないという絶望を上書きするだけだった。ジュリ自身は兄とは違う方法で火星移民の独立運動を進めようとしていて、その思いに共感を覚えていく。
 未だスピラミンの真実は明らかにされていないが、これが発見された事と、火星移民団の地球帰還計画が密接な関係を持っていたことが分かってきた。そして帰った移民団が待つ運命と、移民団が去った後の火星は悲惨なものになっていくことも暗示される。この論理で言うと、行為はともかくテロリストの語った主張は決して間違っていない。みんながそのことに徐々に気づいている状態。
 そんな中、地球側から軍隊が火星に向かって行く。
第3話   演出:西村武五郎
      川上剛
  脚本:吉田玲子
 地球移住を拒否する火星植民団に対して憲兵隊が送り込まれた。マルが彼らを足止めし、スピラミンの秘密を握るリキ・カワナベとリリを逃がす。だがそれを契機に火星の独立運動も盛り上がり、事態はのっぴきならないものとなりつつあった。

 最終話。スピラミンの真実が明らかになる話で、地球と火星が破壊されるほどの恐ろしい威力を持った物体と言われていたスピラミンが、実は次元を超えた通信装置だったというオチだった。その程度のことと一瞬思うが、これによって、本作のテーマがはっきりした。本作は人間の意思疎通についての問題提起であり、言葉の大切さと無益さを同時に提示していると考えると、大変重要な意味を持ったものだった。
 火星と地球の通信には10分程度のタイムラグがあり、それを利用してわざと仲違いさせようとした者がおり、それに踊らされていたが、スピラミンによって瞬時にメッセージが伝わるようになると、そのトリックが使えなくなる。実はかつての火星の暴動は地球から送り込まれたスパイによってなされたことも発覚する。その張本人はファン総長だった。
 実はスピラミンというのは異星人によってこの太陽系に送られてきた探査機だったことが分かった。これは異星人による侵略ではなく、この世界にメッセージを届けるためのものだった。たまたまリリが発する声と同調したためにその存在が理解出来るようになった。
 結果として火星移民は自由意志で地球帰還するか火星に残るかを決められるようになったことと、通信技術の画期的飛躍とワームホール研究が火星でなされるようになったため、科学の最先端基地が火星で作られる未来を暗示させる。
 どうやってオチ付けるのかと思ったら、意外にもきちんとSFマインド溢れる終わり方をしていてかなり感心。SFはこう言うのが良いんだよ。

 ラストだが、リキ・カワナベはスピラミン探求の第一人者として火星で生活し、リリとアオトは地球で再会してる。科学の進歩が人類の進歩へとつながる終わり方だった。

 

書籍