うる星やつら総評
1〜10話

Home
Back

第1話 うわさのラムちゃんだっちゃ
第1回Aパート 押井守:絵コンテ・演出
1981年10月14日放送
あらすじ  冒頭、あたるは女に見とれて軟球の直撃を喰らい、そこに怪僧・錯乱坊がいきなり登場。顔を見るなり「おぬしの顔、救いようの無いほど悪い」と言われてしまう。直後謎の黒服に連行され、自宅へ強制送還されてしまうあたる。そこで待っていたのは巨大な鬼(ラムの父ちゃん)だった。なんとあたるはインベーダーから選ばれた地球の戦士だったのだ。最初は渋るあたるであったが、勝負の内容が鬼ごっこ、しかもその相手がビキニ姿の美女ラムと知った途端、快諾してしまう。勿論、眼前の美少女に抱きつき放題と言う妄想の故である。しかし、動機が不純なだけに相手のことを何も知らず、空中を飛べるラム相手に悪戦苦闘する。様々な兵器を用い、何とかラムに迫ろうとするが、全て徒労に終わる。最終日、しのぶの「勝ったら結婚してあげる」の言葉に奮起したあたるは吸盤銃でラムのブラを奪い、角をつかむことに成功する。ところが、ケッコンケッコンと口走ったがために、ラムにプロポーズだと誤解される結果に終わる。
カラス  大平首相、江川などがテレビの中でコメントしているが、首相が死んだのは丁度この頃ではないだろうか。ローラーゲームなど、今の人が見たらさっぱり分からないであろうネタもある。また、原作には登場しない黒服や戦車・歩兵・上空警戒中のF-15などが、若干現在の押井風味に通じていると言えなくもない。なんで吸盤が毛皮のブラに吸い付くのか疑問だが。当時あんまりぴえろは力を入れていなくて(力を入れられなくて?)、作画スタッフも戦力不足だったと言われる。また、ラムの乳首が見えることに関して、フジテレビと押井監督がかなりもめたらしい。
甘崎  記念すべき第一話。冒頭からあたるの女好きを印象づけるが、結果、シリーズ全体が「あたるの女好き」を主軸に展開していくことになる(原作の前半はむしろあたるの「不運さ」にスポットが当てられていた)。この鬼ごっこは後々尾を引き、劇場版第2作「ビューティフル・ドリーマー」(以下BD)や制作がディーンに変更したTV版130話「 異次元空間・ダーリンはどこだっちゃ!?」。そして劇場版「完結編」など、様々な所でこの歴史が繰り返される。錯乱坊登場時の台詞「おぬしの顔、救いようの無いほど悪い」は原作よりも良く状況を言い表しており、台詞が良く練れていた事が窺える。原作ではラムのブラは前日に奪われているが、それも説得力を増すためか、当日に変更されている。筆者から一言言わせてもらうと、当時のラムは体型がアンバランスで、不慣れな平野文氏の声の演技と合わせ、お世辞にも魅力的とは言えず、むしろあたるの暴走ぶりの方が見ていて面白かった。ちなみにラムの語源は原作連載当初のアイドル、アグネス=ラム。
第2話 町に石油の雨がふる
第1回Bパート 押井守:絵コンテ・演出
1981年10月14日放送
あらすじ  ラムちゃんが忘れられず、再び地球に召還するため暗躍するメガネ達四人組(以下「四人組」)+サド山。「紹介しよう、ラムちゃんを呼び戻すための貴重な餌だ。国外逃亡を図って失敗し、我々が奪うことに成功した諸星あたるであ〜る(メガネ)」。メガネ達の数々の「説得」の前にあたるは屈服し、ラム召還の協力を承認する。円陣を組み「ベントラベントラスペースピープル」を唱える面々。しかし現れたのはラムのUFOではなかった。「う〜む、こういう場合は全く予想していなかった」無責任なメガネの台詞と共に全員UFOに吸い上げられてしまう。「離せ!俺は家へ帰るんだ」あたるのその一言に、妖しく微笑む運転手。直後、一行は諸星家の屋根に放り出される。実はこのUFOは宇宙タクシーで、あたるのテレパシーに呼ばれてきたのだという。ちなみに料金を尋ねると、学校から諸星家までの運賃は地球の石油埋蔵量と同じだと言われる。体の良い雲助タクシーに捕まってしまったわけである。暴利だとごねるあたるに交渉は決裂、世界各地の石油コンビナートから町の灯油屋に至るまで、あらゆる所から強引に油を吸い上げ始める。周辺住民のリンチに怯える面々の前にラムが颯爽と登場。料金を肩代わりする代わりに諸星家への同居を持ちかける。最初拒否するあたるもメガネらによる肉体を駆使した(?)「説得」の末、同意。ラムは諸星家の二階にあたると同棲することになる。ただ、タクシー代の返品として、それから地球にはしばらくの間石油の雨が降ったという。
カラス  サド山は「拷問研究会の同志」と紹介されている。ベントラベントラスペースピープルとはUFO召還の呪文として当時有名だった物。「犬からの手紙1」で甘崎庵氏が指摘しているが、原作では本来これは3話で、2話にはラムが登場しないための措置だと思われる。
甘崎  サド山はアニメ全体を通し、都合三回登場する。本話と89 話「はっぴぃバースデイマイダーリン」劇場版「オンリー・ユー」(以下OY)がそれである(実はちらっとビューティフル・ドリーマーにも登場はする)。彼は筆者の好みの(?)キャラなのだが、今ひとつ知名度が高くないのは残念(笑)。メガネの長冗舌はこの話が最初となるが、既に千葉繁氏流のメガネが出来ているのが興味深い。四人組(この話ではサド山を合わせて五人組だが)の中でも既に突出したキャラになっている。結局最後は暴力に落ち着くのだが、四人組による様々な「説得」の方法も面白い。
第3話 宇宙ゆうびんテンちゃん到着!
第2回Aパート 金子修介:脚本
1981年10月21日放送
あらすじ  轟音と共に屋根を突き破り、諸星家へ落ちてきたのは巨大な桃。早速食べようと包丁を入れる母であったが、中から出てきたのはラムの従弟にして空飛ぶ小鬼のテンであった。一目見てライバルと認めたテンは、あたるに対して宣戦を布告。幼児の魅力により周囲の人間を次々と籠絡していく。頼みの綱であるしのぶにまで愛想を尽かされたあたるはついに激情。夕食後、ついに決定的対立を迎える。テンの強力な火炎攻撃のさなか訪れるプロパン屋。あたるの家を中心にキノコ雲が起こる。
カラス 特に特筆すべき事のない回だが、プロパン屋を千葉繁が怪演している。
甘崎 原作でのテンの登場は随分後になってから。ここで敢えて登場させたのはマスコットキャラ(及び突っ込み役)を欲した制作側の深慮(浅慮?)であったと推測される。桃の中でテンが行った真剣白刃取りは、以降(特に面堂登場後)多用されることになる。後、TVシリーズでは何話か「桃太郎」の話が出てくるのだが(21・22話「あたる源氏平安京にゆく」90話「地獄のキャンプに桃源郷を見た!」他にもあったはず)、これに意味があるのかどうかは不明。脚本の名前もチェックされたし。
補足  金子修介 職業:映画監督 1955年、東京生まれ。大学時代、映研での押井監督の後輩で、平成ガメラシリーズの監督として知られる。2000年には宮部みゆき原作の「クロスファイア」を監督。当時は日活の助監督で、チーフディレクターであり先輩でもある押井守とは何の関係もなく、押井守の知らないうちに脚本家として現れ、そして去っていったらしい。彼曰く「助監督として修行して監督になった、最後の男」だそうである。ガメラIII公開中の1999年3月10日「笑っていいとも」のテレホンショッキングに前田愛からの紹介で登場した際、脚本の伊藤和典からの「責任取ってね(はあと)」という電報がタモリによって読み上げられ、「脚本を渡されて作品が出来上がったら、後は監督の責任ですから・・・」としどろもどろに説明していた。(笑) もちろん「責任取ってね(はあと)」はBDのチビラムのセリフ。しかしBDの脚本は押井監督本人であり、伊藤和典ではない。
 補足の補足(笑) 周知の通り伊藤和典は押井氏作品の多くの脚本を手がけている脚本家で後のヘッドギアの一員でもある。BDにおいてはスタッフロールに名前が見られないのだが、実はしっかり参加していたらしい。
第4話 つばめさんとペンギン
第2回Bパート 金子修介:脚本
1981年10月21日放送
あらすじ  友引高校へあたるに会うため向かうラムとテン。しかしテンは途中見かけたツバメに興味を覚え、ラムに菓子を貰ってそこに留まる。テンはツバメが雛に虫をやっているのを見て「なんちゅう貧しい食生活や」と菓子を与える。そのころ2−4教室ではあたるの側を離れないラムにしのぶが泣き叫び、大騒ぎになっていた。そこへ一羽のペンギンがあらわれ、みんなの弁当をむさぼり食い始めた。さらには校内を逃走し家庭科室に乱入。おっとり刀で駆けつけたテンの説明により、あのペンギンはツバメのなれの果てと言うことが分かる。校内はペンギンツバメを捕まえようと大騒ぎに、しかもそこへ本物のペンギンを満載した動物園のトラックが。ペンギンで溢れかえる街。当のペンギンツバメは雛に餌をやるため木に登ろうとしていたが、その巨体故不可能な身体になっていた。それを発見したあたる達は一計を案じ、雛にも菓子を与えることでペンギンツバメ親子の感動の対面を成功させる。ただし、菓子の量を間違えたため、親子共々巨大化。ついには東京タワーに巣を作り、収集つかず。
カラス  ほぼ原作通り。
甘崎  宇宙のお菓子ネタは原作者も好みらしく、何話か描かれた。それに伴い、アニメ版でも何話か作られたが、この話が一番まともだと思う。最後に巨大化して東京タワーに巣を作る描写はやや暴走気味。しかし、友引町ってどこにあるのだろう?AパートとBパートを関連づけるのは常識とも言えるが、放映二回目でやるものとはとても思えない内容でもあった。
第5話 変身美男レイが来た!
第3回Aパート
 1981年10月28日放送
あらすじ  雨の夜、「物の怪があたるの元を訪れる」と錯乱坊が告げる。そこへ落雷、停電。今日は早く寝ようと諸星家の面々は自室へ引き上げる。だが、ラムは部屋の中でそわそわするあたるにしのぶの影を見る。予感は的中し、しのぶがやって来た。ただし、彼女はここに来る途中偶然遭遇したラムの元の婚約者であるレイに連れられてきたのだ。これでラムと縁が切れると喜んだあたるはラムに復縁を勧める。「ラム、おまえやっぱり星に帰れよ(あ)」「いやっ(ラ)」「わからないわ。こんなハンサムな婚約者なのに(し)」。しかしレイは逆上すると巨大牛に変身してしまう体質の持ち主であり、更に極めつけの意地汚さのため、ラムから絶交されていたと言う過去を持っていた。帰りたくないとあたるに抱きつくラムに、さっそく本性をあらわしそうになるレイ。「うちのおなかにはダーリンの子供がいるっちゃ〜!」。ラムの問題発言に巨大化し天井を突き破り暴れ出すレイ。自衛隊戦闘機が出撃し攻撃する。暴れ続けるレイに、テンが決闘での決着を勧める。決闘は電撃耐久力を比べるもの。レイは耐えきれず変身してしまい、あたるは辛い勝利を得る。
カラス  ほぼ原作通りだが、原作では決闘はイモの大食い競争である。
甘崎  三角関係のもつれに元婚約者が来るという、今時漫画でもようやらん(漫画です)ネタを正面切ってやってくれた作品。勿論結果はギャグに終わる。原作のイモ食い競争が電撃耐久競争に変わったのは、原作では後にレイの大食いぶりが人知を超えたものと言う設定が付け加えられたため、まともに大食いの競争は出来ないと製作者側が判断したためだろう。尚、あたるが電撃に耐性を持つことはBDでも言及されている。レイの声を当てているのは玄田哲章氏。声が渋すぎるが、「らむ」と叫ぶギャップがそれだけ大きいと言うことでもあり、配役としては間違ってなかったと思う。