うる星やつら総評
6〜11話

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第6話 くたばれイロ男!
第3回Bパート 押井守:絵コンテ・演出
1981年10月28日放送
あらすじ  帰宅途中のあたる一行は牛丼屋の新装開店を見つける。人混みを掻き分け店内に入ると、そこで牛丼をかっ喰らっている巨大牛姿のレイを見つけてずっこける。レイはラムを忘れられず、又しても地球に来ていたのだ。人形に頬ずりし涙するレイ。そこへたまたまラムが通りがかる。「まともなプロポーズが出来たら一緒に帰ってやる」というラムの言葉に、虎の巻を取り出し「俺のために一生メシを作ってくれないか」とたどたどしく語るレイ。しかししごくあっさりあたるにもラムにもあしらわれる。逆上したレイから逃げまどうあたる達。追跡の途中、レイはカップルの女にプロポーズしまくる。最後にはレイがプロポーズした女性達が諸星家へ押し寄せる。
カラス  ほぼ原作通り。ただし原作では麺子・汁夫となっているカップルの女性が「たみこ」に変わっている。「たみこ」はTalkingHeadの演出助手やパトレイバーの進士の妻など、押井作品に良く登場する名前。
甘崎  原作でも前回分の続きになっていた作品。恋の冷めた女というのは残酷なもので、ラムの意外な悪女ぶりが発揮される。この回はアニメシリーズにとって最重要アイテムの一つ、牛丼が初登場する回でもある。
第7話 秋の空から金太郎!
第4回Aパート 山本優:脚本
1981年11月04日放送
あらすじ  諸星家に翻る季節外れな鯉のぼりと戯れるラムとテン。二人は鯉のぼりの中で熊に乗って飛んでいる金太郎と出会う。迷子になったと言う金太郎に対し、ラムは「あんたの親戚知ってるっちゃ」。一行はあたるとデート途中のしのぶの前に現れる(ついでに一緒にいたあたるを踏みつぶして)。ラムは金太郎はしのぶの弟に違いないと主張するが、実は金太郎は宇宙の幼稚園の修学旅行からはぐれた宇宙人と判明する。街で鯉のぼり型宇宙船について聞き込みする一行。途中、宇宙研究所を破壊、やけになって金太郎が屋台で酒をあおろうとしたその時、電光と共に空に巨大な鯉のぼりが現れ、中から美人の保母さんが現れる。例によって美人にまとわりつくあたるは、保母さんを手伝うと言って、宇宙船へ乗り込む。しかしそこの園児達は巨大な恐竜型宇宙人や巨大な爬虫類型宇宙人ばかりであった。
カラス  途中に出てくる太陽へロケットを飛ばしていた研究所を除き、ほぼ原作通り。
甘崎  言葉の応酬など、見事に原作通り。原作付きのアニメは当時このような感じで作られていたのを思い出す。季節はずれの鯉のぼりに関する説得力も無し。金太郎はテンの友達として後にも登場する。これはレギュラー化を目したものと思われる。ちなみにここに登場する保母さんは名前がない。BDでもあたるに「金太郎の保母さ〜ん」と呼ばれていた。
第8話 たくましく生きるんやっ!
第4回Bパート 山本優:脚本
1981年11月04日放送
あらすじ  前回に続き、修学旅行で友引町をまわる幼稚園一行。電信柱やゴミバケツを見学させられ怒る金太郎。「せめてアニメスタジオぐらい連れてったれや(金)」。一行はあたるの提案で地球の幼稚園へ向かう。地球の保母さんやあたるにいじられむくれる金太郎。「俺が人生の手本見せたるわい(金)」。試行錯誤の末、故事に習い一旗揚げるために鬼退治を試みる金太郎。が、ラムに簡単にあしらわれてしまう。自らの弱さを克服するため武者修行に出た金太郎は各地で強盗を働いている、というニュースが流れる。
カラス  ほぼ原作通り。
甘崎  当時ガンダムのお陰でアニメの認知度は少しずつ上がっていた時分で、熱烈なマニアは実際にアニメスタジオまで足を運んだ。それを目して敢えて金太郎にこのような台詞を言わせたのだろうが、見ていて引いた。7話と合わせ、印象の薄い話である。
第9話 謎の色気美女サクラ
第5回Aパート 押井守:絵コンテ・演出 山本優:脚本
1981年11月18日放送
あらすじ  ラムとの新婚生活(?)に疲れ果て、逃亡生活を送るあたる。マスクにサングラスという格好でラーメンを啜っていると、家出人捜索番組で変装した姿の自分の写真が公開される。ラーメン屋から逃亡したあたるはそこで謎の美女に衝突。発作に苦しむ彼女をかかえ、さらに逃亡。意識が戻った美女サクラから不運は呪いのせいだと言われ、巫女であるサクラからお祓いを受けることになる。だが、サクラの家であたる達を迎えたサクラの母親の顔は何と錯乱坊そっくりで、その不吉な符号に逃げ出そうとするあたる。しかし無理矢理御祓いをうけさせられる。ところがさくらの不調のため彼女の病魔がすべてあたるに取り憑き、逆にさくらは健康体に。元気になったサクラは半死のあたるを尻目に伯父さんの錯乱坊とにっこり笑い合う。
カラス  ラムとあたるが回想シーンとはいえキスしていることに驚く。BDのラスト付近での当たるの態度から、ふたりは今までキスをしていないという風に記憶が修正されたのだろう。名セリフ「はらたまきよたま」初登場。しばらく押井演出が無かっただけに、違いがはっきり分かる回。
甘崎  冒頭のシーンでマスクかけたままどうやってラーメン啜るのかと思ったら、何とマスクにチャックが付いていた。この辺の妙な描写は実に押井演出らしい。さくらはアニメシリーズ中屈指の存在感を持つキャラクター。ただ初登場であるこの話では、声優の鷲尾真知子の声がキンキンと耳に付き、魅力は半減しているのが残念。「はらたまきよたま」とは、「祓い給え。清め給え」→「はらいったまっ、きよめったまっ」→「はらったま、きよったま」と変化する。実に良くはまった台詞であり、以降さくらの代名詞になる(BDでも「牛丼屋はらたま」と言うのが登場する)。この鷲尾真智子の登場により、以降の押井組と呼ばれる声優陣はほぼ「うる星やつら」に出揃う。描写と言い、設定と言い、シリーズ最初期中突出した作品と言えよう。
第10話 悩めるウィルス
第5回Bパート 山本優:脚本
1981年11月18日放送
あらすじ  学校に遅刻しそうになるあたると空から弁当を届けるラム。二人が学校へ到着すると、玄関前に長い行列が出来ていた。聞けば美人の保健室の先生が赴任してくるらしい。そこへあらわれたのはさくら。一気に盛り上がる男子生徒達。前回の悪夢を思い出し恐怖におののくあたる。一人教室で不調に耐えているあたるを後目に、嬉々として様々な病気になる友引高校の面々。その病状の不均一性に疑問を持ち、ラムにより巨大化された病原菌の話を聞く。あたるの中に諸悪の根元がいることが分かり、さくらはあたるを御祓いする。体内から病魔が引きずり出され、病原菌は本来の悪性インフルエンザへと無事戻ることが出来た。よって、友引高校全員がインフルエンザに。元気になったのはあたるただ一人。元気にサクラに襲いかかる。
カラス  まったくもって原作通り。
甘崎  Aパートである9話の出来がなまじ良かっただけに、この話の印象は薄い。さくらが友引高校の保険医だという設定のためにこの話は必要だったはずなのだが、魅せ方が弱すぎ。ラストも下らない。ラムが学校に来る必然性を出そうと苦心している制作の側が見え隠れする。