うる星やつら総評
16〜20話

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第16話 ハチャメチャ恐竜時代
第8回Bパート 山本優:脚本
1981年12月9日放送
あらすじ  あたるは学校の飛行倶楽部で借りた小型ヘリで空を飛んでいた。飛ぶのがのろいとテンを挑発してからかう。そこへプテラノドン型のハンググライダーに乗って現れた金太郎の協力であたるのヘリに追いつき、火炎放射を喰らわせるテン。ヘリは爆発し、そこに運悪く金太郎のグライダーが突っ込む。気が付くと一行はなぜか恐竜時代へタイムスリップしてしまっていた。ラムは行方不明の金太郎とテンを探しに行く。ラムはテンのパンツと同じ模様のたまごを抱きしめ、たまたま孵ってしまった恐竜に親だと思いこまれる(だっぴゃ星人が現れ「孵化して最初に見た物を親と思う。これを生態学的に言うとインプリンティングといいます。高橋さんほんまだっぴゃ?」と言う)。そのころテンはその親に卵と間違われ、温められてしまう。親恐竜はラムが現れて子供を差し出しても、それを子供だと認識しない。複雑な親子関係に困惑しているラム達の元に、雌の恐竜に求愛され逃げてきたあたるが合流し大パニック。そのショックで一行は現代へ戻ることができた。
カラス  原作では金太郎のグライダーも追いかけられる。それ以前に金太郎ではなく終太郎なのだが。が、それ以外ほぼ原作のまま。
甘崎  原作とはややオチが異なるが(原作では現代に戻らない)、基本的に同じ。テンを自分の卵と勘違いした恐竜は、その卵に対し、力一杯抱きしめるわ、尻尾でどつくわ、本当の親とは思えない行動を取る。それはあたるに求愛する雌の恐竜も同じで、製作者の勝手な思いこみで面白くしようとした結果だろうが、これは失敗と言えるのでは?
第17話 眠れる美女クラマ姫
第9回Aパート 中原朗:脚本
1981年12月16日放送
あらすじ  星空を見上げるあたる、しのぶ、四人組の眼前に流れ星が接近し、近くへ墜ちる。落下地点へ急ぐ一行は途中で同じく隕石に驚いて落下してきたラムと出会う。そのラムの下敷きになって気絶していたのは、なんと小さなカラス天狗。天狗は手持ちの酒を飲んで意識を取り戻すが、朦朧としてあたるが色男に見えてしまう。そして天狗は突風を呼び、あたるをさらう。彼らの星には人間型の男がいないため、姫の相手を探していたのだった。天狗の姫と聞いて最初は拒むあたるだが、姫が美女だと知って俄然やる気になり、天狗達の静止を押し切り無理矢理眠っている姫に目覚めの口づけをする。目覚めた姫はあたるが色男ではないと言って怒るが、ラムが乱入しあたるを連れ去ると、「他人の物となると手に入れたくなる。性よの」と呟く。神社の境内でメガネ達に体験を語るあたる。天狗の姫と聞いてメガネ達は馬鹿にするが、そこへ当のクラマ姫が現れ、あたるに婿になるための修行を強いる。滝に打たれ、燃える炭の上を裸足で歩く修行を、あたるは恐るべき雑念の力でこなしていく。あまりのその煩悩の凄まじさにクラマ姫はあたるの精神分析を行うが、ディスプレイに映し出されるのは女の顔ばかり。ラムとしのぶはあたるが自分のことを一番想っていると知って喜ぶが、メカはあまりの雑念の量に爆発してしまう。あきれたクラマはあたるの中に女的要素を加え、女嫌いにさせようと、あたるにアニマ光線を照射する。だがラムの電撃を喰らってしまい、誤ってありったけのアニマエネルギーを照射してしまう。そのおかげであたるの精神は完全に女になってしまうのだが、それでもあたるは「お姉さま」と、クラマ姫に迫るのだった。
カラス  原作では林間学校のキャンプへ来てのエピソード。酔った天狗があたるを色男に誤認するシーンで、顔が郷ひろみ風なのが時代を感じさせる。また、原作ではラムとしのぶが一番好きとは思っていない。
甘崎  原作ではあたるがビールを持ち込んでいる。が、アニメではこの表現は不可であり、よってカラス天狗が最初から酒を持っていたことにしている。クラマは準主役キャラであるが、珍しくラムとは幼なじみではない。よって彼女を画面に出す必然性を作るのに、後々苦労することになった(OYなどはその典型)。完全に余談になるが、この後少し経ってからツクダオリジナルで製作されたうる星やつらキャラのプラモデルでは、群を抜いてこのクラマの出来が良かった。まだガレージキットがマイナーだった頃の話で、筆者にとっては良い思い出。
第18話 アスレチック女地獄!
第9回Bパート 中原朗:脚本
1981年12月16日放送
あらすじ  下校途中何故か畑の中の給水塔へと向かうあたるを尾行するラムと錯乱坊。そこは実はクラマ姫の秘密基地で、あたるはそこでクラマにより個人授業を受けていたのだった。クラマの説明によると、彼女の星では目覚めの口づけを交わした相手と契らねばならなかったのだ。そこで子孫の破滅、種の没落を危惧したクラマは何とかしてあたるをまともな男にしようと努力していたのである。その夜、自宅へ戻ったあたるをカラス天狗の長老が訪ね、一通の手紙を渡す。ラムに手紙を読んでもらったところ(あたるはその文字が読めないから)、ラムは敢えて本文をぼかし、明日の授業は休みとだけ伝えるのだった。次の日ラムとしのぶの監視を受けながら町をぶらついていたあたるの元に一陣の突風が吹き、あたるはクラマの用意したドアの中に吸い込まれてしまった。その中は精神アスレチックランドで、戻ってきたときにはすっかり女嫌いになっているだろうとクラマは言う。走り去るバニーガールを追って虚空を落下するあたる。あたるはアスレチックランドの中でお雪、サクラ、しのぶ、ラムに徹底的に酷い目に遭わせられる。しかしドアから出てきたあたるは最初女に怯えるが、実際のラムとしのぶの姿に「現実の女はいいな〜、最高」と逆に感激し、全く改善していないと言う結果に終わる。
カラス  原作ではアスレチックランドに弁天様が登場するが、TV版では未登場のため当然出ては来ない。完全に蛇足ながら原作中表紙はクラマの顔アップで、ぽってりした唇とコケティッシュな雰囲気で、実に美しい。
甘崎  契るとは要するに生殖行為。表現的にはギリギリだが、今から考えると可愛いものかもしれない。あたるの女好きは周知の事実であり、オチも分かっていた話。ほぼ原作通りであり、それ以上のものではない。記憶に薄い話。
第19話 ときめきの聖夜(前編)
第10回Aパート 押井守:絵コンテ・演出 山本優:脚本
1981年12月23日放送
あらすじ  デパートの屋上で何かを編んでいるラムの横でヨーヨーの妙技をテンに披露するあたる。あたるはラムと歓談する女生徒の後ろへこっそりと忍びより、ヨーヨーの技でスカートをまくり上げた。「みたか、秘技スカート返し」しかし何故か今日のラムは怒らない。逆にあほなことばかりするあたるを心配する。先に帰れと言うあたるの言葉にも何故か素直に従い、風邪を引かないかとあたるの身体を心配する。そのやりとりを見ていた四人組はあたるを非難するが、逆にあたるに言い返されて制裁を決意する(この間怒りのあまり、牛丼、焼きソバ、たこ焼き、立ち食い蕎麦を喰らいまくる四人組)。喫茶店に陣取った彼らは、「組野おと子」名義のあたる宛偽ラブレターをでっち上げる。そのラブレターを受け取り、感激するあたる。勿論彼女に会いに行くと宣言するが、後ろで聞いていたラムに電撃制裁を受ける。しかも、やるならやれとあたるは居直り関係はさらに悪化。怒ったラムはいつにもまして強力な電撃を放ち、あたる達を黒こげにしてUFOへ帰っていった。まきぞいを喰って黒こげになりながらやった、と喜ぶ四人組。UFOの上で思い悩むラム。翌朝、作戦の第一段階成功を祝うメガネ達は第二段階では実在しない「組野おと子」をでっち上げ、破局をもくろむ。
カラス  原作の4巻8話と3巻9話をミックスしている変則的な回。さらには初めてのABパート通してのドラマであり、非常に厚みがある。余談ながらTV版ではまだ面堂終太郎が登場していないため、デートの朝の髪型を決める場面で、オールバックにするギャグが意味不明になっている。
甘崎  これでTVシリーズは10回目の放映となる。スタッフもずいぶん慣れてきたらしい。かなりのびのびと話を作っている。前半の見所は四人組の食いまくり(しかも立ち食いばかり)や、ラブレター作成シーンなど。特にラブレターにキスマークを付けるため、ルージュを唇に塗ったくり、にやりと笑うメガネのアップは怖く、最大の見所とも言える。又、急に(笑)複雑になったラムの女心の描写も良い。
第20話 ときめきの聖夜(後編)
第10回Bパート 押井守:絵コンテ・演出 山本優:脚本
1981年12月23日放送
あらすじ  メガネは仏滅女学院のナンバー3女子生徒と一時間\5,000で「組野おと子」を演じてくれるよう交渉していた。襲いかかるあたるに肘鉄をかまし、公衆の面前で完膚無き前に恥をかかせるよう依頼する。「もし相手が私好みだったら」と問う彼女に、「その心配はない」とキッパリ。喜んで引き受ける女生徒。彼女と入れ替わるようにしてカクガリが、先勝高校プロレス研究会代表350パウンド1/2ミスターヒポポタマスを連れてくる。ラムの大ファンでもあるという彼には、あたるが女生徒に襲いかかったとき、徹底的に痛めつけるように依頼する。次にパーマが連れてきたのは同じくラムの大ファン赤口高校で新聞部部長をやっているという怪しげな男。彼には今回のスキャンダルをきっかけに、あたる撲滅キャンペーンを展開するように依頼する。そこへラム親衛隊最高幹部会議長(メガネ)宛に突撃隊長(チビ)から電話が入り、ラムが行方不明になったことが知らされる。しかしジャリテンが協力し、4時までに見つけてくると言う。作戦は動き出した。クリスマスムード一杯の街をあてど無くさまよい歩くラムだったが、偶然から四人組の陰謀を知る。更に公園で「組野おと子」とキスできるかどうかお互いの全財産を賭けるというメガネとあたるの姿をラムは時計の上で見る。それに対しラムは「たまには痛い目にあった方が良い」と呟く。4時。時計の上でまだ思い悩んでいたラムはついに結論を出した。「ダーリンを馬鹿にするとウチが許さないっちゃ」その頃、支度に手間取り時間に遅れた自称「組野おと子」が、現場へと急いでいた。その前に現れるラム。そして電撃。「組野おと子」登場を待つ喫茶ピグモンの一同。そこへ現れた「組野おと子」、実は髪型を変えたラム。抱きついたあたるはその事に気付くが「罠にはまって恥をかきたくなかったら、芝居を続けるっちゃ」と言われ、しぶしぶ調子を合わせる。ラムはあたるにキスし、二人は喫茶店を立ち去る。後に残されたのは、ショックのあまり白髪になったメガネ達。事情を聞いたあたるは怒るが、ラムに諫められる。ふと、あたるは髪型を変えたラムの美しさに気付く。マフラーをプレゼントし、先に帰るというラムをあたるは思わず引き留め、しばらく一緒に歩こうと誘う。
カラス  原作では「組野おと子」を演じるのは、白井コースケの恋人として後に紹介されるセントストマックと思われる女生徒。前半、喫茶店での密談のシーンが面白い。人気投票などでは常に上位に来るエピソードだが、見ればそれは納得できる。初の前後編ドラマであることによる厚み、立ち食い、密談、策謀という要素と、どちらかというと原作寄りなメロドラマ要素がうまく両立している。これで戦車でも出てくれば完璧だが。(笑) 余談ながら原作ではラムは髪型ばかりでなく髪の色まで黒ベタになっており、読者もすぐにはラムだとは気づけない(なんとなくわかるが)。これで気付いたあたるはさすがなのだが、アニメ版では髪の色がそのままなので誰でも分かる。
甘崎  ABパート合わせて、うる星やつらTVシリーズ中でも最高の出来の内の一本。これによって、うる星やつらが単なるスラップスティックではないことを世に知らしめた。更におそらく、好きなようにやっても面白い作品が出来ると言う確信をスタッフにもたらしたのではないかと思われる。原作を大幅に変えつつ、原作以上の良い雰囲気を醸すことに成功した、当時ではかなり珍しい作品。見所は兎に角多い一本である。押井氏にラブロマンスを求めるのは無理だという声もあるが、実際にこういう良質作品も作っている。ラムの格好も多彩。蛇足ながら、ピグモンとはウルトラマンに登場する怪獣の名前で、ファンも多い。