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1926年 (監)フリッツ・ラング |
科学が発展した近未来。地下では労働者たちが巨大工場で過酷な労働条件で酷使されている一方、資本家たちは地上でぬくぬくと享楽的生活を送っていた。地上で何の不自由もなく暮らしてきた社長の息子フレーダーゼン(フレーリヒ)はある日労働者の娘マリア(ヘルム)を見かけ、初めて地下に降り、そこで非人間的な労働条件を目の当たりにする。そこで聖母のように労働者達を労るマリアの姿…だがそれを知った社長(アーベル)はマリアを監禁し、ロートワング博士によって作られた彼女そっくりの人造人間を作って事態収拾させようとする。だが人造人間は狂い始め、造反を起こし工場の打ち壊しを煽動してしまう… ドイツのウーファー社が総力を挙げて製作した映画史上初の本格的SF大作と言われる金字塔。 前々から“是非観たい作品”の上位に位置していた作品だが、ようやくレンタルビデオ店で発見してようやく拝見することが出来た。 ストーリーはかなり無茶な上に尻つぼみな感じ。サイレントだけあってオーバーアクションの連続で決して役者も上手いとは言えない作品ではあるのだが、しかしそれを補って余りあるのが監督のイメージだった。 先ず未来都市の造形だが、これが基本になったのではないか?と思えるくらいに見事に子供の頃に見せられた“未来都市”に似ていた(複葉機が飛んでるのはご愛敬だが)。なんでもラング監督自身、若き時分に建築を学んだそうで、それが充分に活かされてると言うべきかも(歓楽街の名前が「ヨシワラ」ってのは驚かされる。この日本趣味は『ブレードランナー』(1982)に受け継がれたのだろう)。 工場に呑み込まれていく人の波、機械の方に動かされる人間達。まるでそれはピラミッドを模した邪神の神殿を思わせる迫力(事実主人公の目にはそう見えていたから、確信犯的な描写だったのだろう)。清楚なマリアと、歯をむき出して邪悪な笑いを浮かべる人造人間マリアの対比。人造人間マリアが権力者達を集めて行うパーティはサバトのようだし、彼女が焼かれるシーンも宗教裁判によっての火刑を模したものだろう。聖書の引用や、7つの大罪(『セブン』(1995)の主題ね)のクローズアップなど、宗教性を徹底的に前面に出して作られている事が分かる。 そこに基本的人権をストレートに絡めたので、単なる人間主義ではなく、もっと深いところ。人の奥にある宗教性をも感じる事ができる。このケレン味がもう大好き! 尤も、これだけの衝撃的な作品だったのにも拘わらず、興行的にはぱっとせず、莫大な撮影費用を負った製作会社UFAは新聞社に身売りをさせる結果となったとか。…早すぎた傑作だった訳だ。 映画は魔法だ。言い換えれば良質の映画とは、観客を異空間に連れて行けるかどうかにかかっている。その意味で宗教性を映画の中に導入させたというのはある意味卓見ではなかったか?それにこれがサイレントであると言うのもポイントが高い。時折字幕は出てくるとは言え、基本は観ている側で考えなければならないので、色々と推測ができる。 ちなみに本作の撮影は大変難航した上、没になったネガも多く、公開版と比較すると、149倍ものネガが使用された。一般に無駄遣い作品のそしりも受けかねない。 後年日本でアニメ版『メトロポリス』(2001)が作られたが、それが失敗してしまったのは、ここにあった宗教性を完全に無くしてしまったからじゃないかな?アイドル(偶像)として存在すべき存在のティマにカリスマ性さえも持たせられなくちゃ同じ題を使っただけに、本作を愚弄するようなもんだぞ。 |
アンドロイド・マリア | → | |||
【あんどろいど-まりあ】 | ||||
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心は頭脳と手の仲立ちを | → | |||
【こころ-は-ずのう-と-て-の-なかだち-を】 | ||||
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フレーダー | → | |||
【ふれーだー】 | ||||
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マリア | → | |||
【まりあ】 | ||||
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ロートワング博士 | → | |||
【ろーとわんぐ-はかせ】 | ||||
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