紀元前1万年の世界。“巫母”と呼ばれる女性の元、リーダーに統率されるヤガルという狩猟民族がいた。若いハンターであるデレー(ストレイト)はたった一人でウパーマナクを狩り、ついにヤガル族のリーダーと認められた。だが、彼には負い目があった。それは父がかつてこの部族を捨て去ってしまったと言うこと。そしてマナクを倒したのは彼自身の実力ではなく、偶然だったと言うこと。その気兼ねから、かねてから両思いだった青い目の少女エバレット(ベル)をも拒絶してしまう。その夜、ヤガル族の村が正体不明の一味による急襲に遭い、エバレットを含め多くの村人がさらわれてしまう。デレーは彼女たちを救うため、仲間と共に一味の跡を追うこととなる…
今やハリウッドのSF映画の第一人者となったエメリッヒ監督が送る古代ロマン大作。
エメリッヒ監督はこれまでにも、怪獣、宇宙人襲来、ディザスターなど、どこかで観たSFの定番の作品を次々に送り出してきたが、かねてから古典SFの『紀元前百万年』や『恐竜100万年』と言った古代ものを作ってみたかったとのことで、本当にこの手の作品が大好きなんだな。と言うことが分かる。
予告編を劇場で観て、こいつは地雷だろうと思っていたものだが、実際観てみると、さほど悪い作品じゃない。歴史とか何とか完全に頭から払拭して、異世界の活劇だと割り切ってみれば、高水準の演出を持った冒険活劇作品と観ることが出来るだろう。逆に言えばその割り切りが出来ないと、あまりにも設定が酷すぎて頭を抱えることになる。
…ちなみに私は頭を抱えた方。ツッコミ体質の人間は、特にこういったSF作品を純粋な意味では素直に楽しめないらしい。画面にツッコミつつ「馬鹿だなあ」とケタケタ笑う楽しみって、やっぱり不健全だよな。
で、色々ツッコミどころは考えられるのだが、最大は、舞台が一体どこだか分からないというのが根本的な問題だろう。デレーがいるヤガル族の住んでいるところは吹雪によって地面が真っ白になるほどだから、ある程度の寒冷地か、よほどの高地であろう。それが地上に出ると、今度は温帯になり、もうちょっと移動すると熱帯になり、更に砂漠へと変わる。一体どれだけ移動したもんだかと思うのだが、“四本脚の悪魔”はたったあれだけの騎馬でどこまで移動するんだ?目的自体が奴隷狩りなんだから、近くにいくらでも人間はいそうなものだし、移動中の損害を考えたら、無茶苦茶効率悪そうなんだが。
調べてみたら、約1万年前までマンモスは存在したという説があるそうだが、果たして寒冷地仕様のあの毛の長いマンモスが砂漠まであんな格好なんだろうか?砂漠だったら現在のアフリカ象に近い姿なんじゃないか?などとも考えてしまう。
最終の舞台はピラミッドがあることや、神官の姿からするとどうやらエジプトらしい。しかしピラミッド自体が最古のもので確かBC30C頃のもの。BC100Cという本作の舞台からすると7000年ほどのタイムラグがあり。あれだけの布織りの技術があるのも変と言えば変。
あと、ロケがニュージーランドであることがモロ分かりの描写も萎えてしまう。今の地上であれほどの雄大な自然を撮る場合ニュージーランドが格好の場所であることは分かるんだが、モロ『ロード・オブ・ザ・リング』と同じ風景を出されてしまうと、ちょっと萎えるぞ。
…野暮なツッコミであることは自分でも重々承知してるのだが、やっぱりついやっちゃうんだよな。 |