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チャーリーとチョコレート工場


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2005年
ティム・バートン(監)
 とある町にウォンカ(デップ)が作り上げた世界一のチョコレートをつくり続けている巨大なチョコレート工場があった。15年の間、誰一人出入りしたことがなかったが、ある日突然ウォンカが世界中から5組の少年を工場に招待するというお誘いが。その資格はウォンカ印のチョコレートにゴールデン・チケットが入っていると言うこと。たまたまこの町の片隅に住む、貧しいながら明るくお人好しに生きるチャーリー(ハイモア)は5枚目のチケットを引き当ててしまった。そして世界中から集まった子供達の前に工場が門を開ける…
 ロアルド=ダールによる童話をモティーフにバートン&デップという最強コンビで作り上げた作品。既に1971年にスチュアート監督により
『夢のチョコレート工場』が製作されている。私は現時点では原作も最初の映画化作も観ていないが、本作には大変期待していた。何せバートン&デップは私にとっても最強コンビであり、この二人が組んではずれだったことはない。ものすごい期待を胸に劇場へ。
 まず凄いのはデップ。この人は性格俳優になる素質充分なのに、あらゆる作品で見事にはまってしまうという、その器用さには驚くばかり。本作では他の誰でもなく、見事なまでにウィリーになりきっていた。常ににこにこしていながら、表情がまるでとってつけたような仮面のようで、その笑みは極めて邪悪に見えたし
(なんでも娘に「気持ち悪い」と言われたそうだが、その「気持ち悪さ」こそがウィリーの味だ)、チャーリーの何気ない一言によって、仮面が瞬間的に壊れた時の表情が又素晴らしい。同じ微笑みであっても、ラストシーンでの笑みがストーリー中の笑みとはまるで別物に演じ分けているのも流石という出来。それに対応するチャーリー少年は毒気が全然無いのだが、それがウィリーの持つ毒気と相乗効果をもって、上手く中和してくれていたし、他の細々したキャラも含め、配役は見事。老いてますます盛んという御大クリストファー=リーがここでも良い味を出していたし、このキャラをわざわざ持ってきたのもバートンらしくて良し(ちなみに監督はリーの大ファン)。
 演出も良い。オープニングシーンは、最近ではすっかりなりを潜めた接写を駆使したもので
(かつてバートンが『ビートルジュース』(1988)『バットマン』(1989)『シザーハンズ』(1990)と連発してオープニングで使った技法だ)、バートンファンとしてはそこだけでも嬉しい。更にバートンは生の特撮にこだわりのあるところが特撮好きとしてはたまらないのだが、ここでもチョコレートのねっとりした質感はCGではなく、本物の川を作ったという、そういう生へのこだわりが感じられたのも嬉しい(リスも何匹かは本物を使っていたとか)。ウンパ・ルンパのミュージカルも耳にこびりつきそうな面白さだったし、子供にここまでするか?というお仕置きの数々もそれぞれに個性あって良し。命に関わるようなシャレにならない罠をしかけて、それを大げさに喜んでるデップの表情も面白い。突然「ツァラトゥストラかく語りき」が流れて、場面が突如『2001年宇宙の旅』(1968)になった時は心の中で喝采を上げていた。流石よくわかってらっしゃる(ところであそこで『2001年宇宙の旅』のオープニングっぽいシーンが流されたけど、むしろこれは失敗に終わったバートン版『PLANET OF APES 猿の惑星』(2001)の意趣返しか?とも思える訳だが…)
 更に本作は描写的に毒気は多いが、決してそれだけで終わっていない点も重要。結局最後は家族の素晴らしさと言う所にしっかり着地している。これはバートン監督の昨年の作品『ビッグ・フィッシュ』(2003)を経ての、新しい境地の開拓と見ることもできる。そういう意味で大変バランスに優れた作品に仕上げてくれた。その辺のバランス感覚は大変見事で、後味も良い。ウィリー自身の中にあるトラウマと戦っていくという過程も、ベタながら嬉しい作りだ。
 で、一個の作品として見る限り、本作は大変良い作品と言える。
理屈で考える限り、本作に文句を入れるべき所は少ない
 …ないのだが、
何故かちょっと不満を覚えてしまう。敢えて言えば、それは私がバートンに求めているのは、こんなに整理された万人向けの居心地の良い作品だったのだろうか?と言う点。もっとぐっちゃぐっちゃで中途半端で、解釈を観る側に丸投げにするような作品こそがバートンの真骨頂ではなかっただろうか?子供にちょっとしたオイタをするだけじゃなく、中に入った大人の方が叫びだして逃げようとするくらいの悪意があっても良かったのでは?その結果として話がまとまらなくても良い。例えば工場が暴走してしまい、工場の周囲に集まった大人達までが恐ろしい思いをさせておいて、チャーリーとウォンカはその結果ボロボロになってしまい、最後に帰るべき所として家族を提示してやったのなら…そこまでやって欲しかった。
 本作はバートンの作品としてはまとまりすぎている。本作には、
バートン流の悪意があまりにも希薄なのだ。悪意ではなく、職人技と優しさをその替わりに置いてしまったような…ファンの感じる贅沢すぎる感想なのかも知れない。むしろファンとしては監督が制作する側として成長したことを喜ぶのが本筋なのだろうが、それは私自身がまだそういう境地に至ってないからなんだろう。普通に「良い監督」にしたくないって気持ちが強いんだろうな。理性ではこれは佳作だと言ってるのだが、感情がそれを否定する。
 本作をバートン以外の監督が作ったのならば、文句なく点数が上がるのだが、
どうやらバートンは私には特別な存在らしい。敢えて★3。

 

ウィリー
【うぃりー】
 ウォンカチョコレートを一代で世界最大のチョコレート工場にしたアイディアマン。スパイの横行に怒り、一度工場を閉めていたが、現在ウンパ・ルンパの助けを借りて工場再開中。5人の子供を自分の工場に招く。役はジョニー=デップ。 甘崎
ウンパ・ルンパ
【うんぱ-るんぱ】
 秘境に住む民族。カカオを信仰の対象としている。香料を取りに来たウィリーと出会い、報酬にカカオを与えるからと言う条件でウォンカチョコレート工場で働いている。男も女も全員同じ顔をしているのが特徴。全員ディープ=ロイが演じているが、顔が濃すぎる(笑) 甘崎
オーガスタス
【おーがすたす-ぐるーぷ】
 ドイツに住む少年。大のチョコレート好きで、毎日甘いものばかり食べ続け、無惨に太っている。ゴールデン・チケットを手に入れ工場にはいるが、一番最初にチョコレートの池にはまりこみ、チョコレートまみれとなる。まだまし。 甘崎
ゴールデン・チケット
【ごーるでん-ちけっと】
 ウォンカチョコレートに5枚だけ入れられた金色のカード。これに当たった子供はウォンカチョコレート工場に招待される。 甘崎
チャーリー
【ちゃーりー】
 チャーリー=バケット。ウォンカのチョコレート工場のある町はずれに住む少年。3世代7人家族の一人息子で、家はその日の食事にも事欠く有様だが、明るさと素直さを忘れない子供。ゴールデン・チケットを手に入れ、工場に入る。最後はウォンカの共同経営者となる。役はフレディ=ハイモア。 甘崎
バイオレット
【ばいおれっと】
 バイオレット=ボーレガード。ありとあらゆる賞を取ることに執念を燃やす少女。現在ノンストップでガムを噛み続ける世界記録に挑戦中。試作中のディナーガムを噛んでしまったため、体が青色に変わり、風船のように膨らんでしまう。結局体は元に戻ったが、副作用で体が柔軟になり、色は青のまま。結構悲惨。 甘崎
ベルーカ
【べるーか】
 ナッツ工場を経営する父親を持つ大金持ちの子。甘やかされ放題に育ち、欲しいものは何でも手に入れることを信条としている。工場で働くリスを持ち帰ろうとして父親共々ダストシュートに放り込まれる…まだまし。 甘崎
マイク
【まいく】
 マイク=ティービー。ゲーム好きの天才少年で大人を馬鹿にした発言を繰り返す。チョコレートは嫌いだが、自らの実力を証明するためにゴールデン・チケットを手に入れる。工場にある転送装置に入ってしまい、体が縮まってしまう。最後はローラーで強制的に引き延ばされ、大人以上の慎重を手に入れるものの、体が薄っぺらくなってしまう。多分一番悲惨な目に遭ってる。 甘崎
ルンパランド
【るんぱ-らんど】
 ウンパ・ルンパ族が住むジャングルに覆われた土地。 甘崎