銀河は帝国によって統治されている遙かな未来。辺境にある惑星アラキスは砂だらけの惑星だったが、ここは不老長寿を約束し、宇宙航行に不可欠な薬品“メランジ”を唯一算出する星で、それ故帝国の命綱を握っていた。そのアラキスを新しく統治することになったアトレイデス侯爵家だったが、これは実は皇帝とアトレイデスの仇敵ハルコネン男爵による陰謀だった。着任草々何者かの襲撃を受け、殺されてしまうアトレイデス家の当主レト(ブロホノフ)。辛くも王宮を逃げ出した侯妃のジェシカ(アニス)とその息子のポール(マクラクラン)は、アラキスの現住民族フレーメンの元に逃げ込む…
フランク・ハーバートによる壮大なSF帝国史“DUNE”の初映像化作品。これは製作のラファエラ・デ・ラウレンティスによる夢の企画だったそうだが、それを何を考えたのか、リンチ監督に監督を依頼してしまった。
ところでこのデューンという作品にはちょっとした思い出がある。この作品、私の中学生時代のSF好きな友人から最初の「砂の惑星」を全巻借りて読んだのだが(確かイラストは石ノ森章太郎だったはず)、高校になったばかりの時にこれはちょっと難しかった。その友人とも色々と話し、かなり話自体は理解した(あの当時彼は珍しいネットワークを持っていたらしく、えらく詳しかった)。その友人が「今度これ映画になるんだ」と目を輝かして教えてくれたものだが、残念ながら私の田舎には来ることなく、結局私が本作を観たのは大学に入り、レンタルビデオでだった。それで帰郷した時その友人と再会した時に真っ先に「これ観たよ」と言った時の、彼の複雑な表情…私はすごく面白いと思ったんだけど、この作品は実は“駄目作品”の烙印を押された失敗作だったと言うことを知ったのはその後の話だった。
いや、でも本当に面白いと思ったんだよ。
何よりあの妙な映像世界と、ストーリーよりもドラマを偏重した挙げ句、物語部分をばっさり切り、人間の感情まで全く描かずに作ったのは、逆にこれだけ壮大な作品を映画化するには絶対に必要な措置だと思ったし、逆に本作のお陰で原作の分からなかった部分だって分かったところもある。むしろ物語は分かりやすかったとさえ思うのだが…
だが当時世間(と言うかDUNEマニアは)そうは思ってくれなかったようだ。だからリンチにまっとうな物語を期待する方がおかしいんだって。なんでマニアはそれに気付かない?
でも、今観てもこの作品の映像のぐっちゃんぐっちゃんぶりは凄いぞ。スペースオペラの服を着た極めてフェティッシュな作品として、もう少しマニア受けする作品なんだが。
ちなみにリンチは『スター・ウォーズ』の新作と本作のどちらを作るか、という申し出を受けていたらしい。いや、少なくともこの人が本作作ってくれたお陰で『ジェダイの復讐』はまっとうな物語になったんだから、それだけでも本作は評価されて然りじゃないの? |