古代デンマークは勇者王フロースガール(ホプキンス)によって治められていたが、呪われし巨人グレンデルが現れ、人々を恐怖に陥れる。その噂を聞いてスウェーデンからやってきた勇者ベオウルフ(ウィンストン)。彼は手勢のみで呪われた館に陣取り、グレンデルを迎え撃つのだった。だがグレンデルを倒しただえでは平和は訪れない。ベオウルフはその怪物の巣へと単身乗り込んでいく…
北欧神話の中でも最古のものと言われる「ベオウルフ」(ベーオウルフとも)の神話をベースにゼメキス監督が豪華キャストで描き出す英雄譚。
『300 スリーハンドレッド』(2007)と『ロード・オブ・ザ・リング』(2001)の融合!とかいう煽り文句に釣られた訳でもないが(こういう他の映画を引き合いに出す作品にろくなものが無いのも事実だし)、とりあえずどんなものが出来るか?という思いで拝見。
…なんとも微妙な作品だな。北欧の寒さと生身を誇示して剥き身(下品?)で戦う物語なのに、寒さも肉体性も感じさせないというのは作り自体に問題があるんじゃないのか?大体戦いのシーンなんてCG丸わかりの上に動きがカクカクしていて、全然リアリティもない。既にハリウッド作品ではクリアしたはずの描写がなんで?あるいはクレイアニメーション世代のゼメキス監督の狙いだったのかも知れないのだけど、少なくとも上手くは機能してない。これだったら最近のゲームの方が動きがリアルなくらい。これ観てたら、一時期「映画のようなゲーム」という言葉がもてはやされていたけど、今やゲームの方が上を行ってるんじゃないか?と思えてきてしまった。動きはどれほどぎこちなくとも、生の迫力で見せて欲しかったものだ。はっきり言って演出はさほどとは思えず。はっきり言ってどうしようもなく悪い。
一方、キャラに関しては文句付けられず。主人公のウィンストンなんてこれまで全く意識した事はなかったのだが、これだけワイルドさ溢れるキャラがまだいたんだ。と思えて嬉しいし、それ以上に脇を固めるヴェテラン勢が良い演技を見せてくれてる。特にホプキンスはこんな下品なキャラまでもしっかりと演じられる。この人歳食ってからますます芸幅広がったね。嫌味なキャラとしてのマルコヴィッチもはまり役。この人こういった役上手いんだけど、こんな脇役に登場なんてとても豪華だ。個人的なファンのグリーソンも良い役やってる。この人が格好良いと、なんか嬉しい。ジョリーは言うまでもないか。ひょっとして一番体当たりの演技していたのはこの人だったかも知れないしね。
あと、実は結構評価出来るのは、これも引き合いに出して悪いのだが、少なくとも私には『300 スリーハンドレッド』のようにアメリカナイズされた物語には思えなかった点。ベオウルフもフロースガールも強さも弱さも全部さらけ出し、果断な性格とウジウジした性格を共存させていて、決して見た目通りのヒーローや悪役にはならなかった。「正義のために戦う」なんてひと言も言わず、ただ自分の欲望に忠実なだけ。変な建前が無いので、むしろそれがとても好感持てる。物語が退屈という評も見かけるけど、決してそんな事は無いと思う。主人公達が次に何やるのかが分からないというのは結構好きだぞ。
少なくともこんな物語を今のハリウッドで作れる監督はそうはおらんだろう。そこがゼメキスらしくないような、逆にゼメキスだから出来るような。
本作は演出で観るのではなく、北欧神話っぽさをしっかり受け継いだ作品として観るべき作品だろう。
ところで、ちょっと悔しかった点。実は原作となった物語は20年ほど前に読んでいたのだが、全然覚えてなかったというところ。映画と本の記憶力は人並みにあると思ってたのに、そうでもなかったのか?と思うとちょっと悔しい。 |