特撮館Top
特撮事典

鉄男

 事典は投稿によって成り立ってます。是非掲示板の方にお書き込み下さり、事典の補完をお願いします。

鉄男 THE BULLET MAN


<amazon>
<楽天>
塚本晋也(監)
 東京の企業に勤めるアンソニー(ボシック)は、妻ゆり子(桃生亜希子)と息子トムとともに幸せな生活を送っていた。だがある日、トムが謎の男によって轢き殺されてしまう。そして怒りに我を忘れたアンソニーの肉体は、鋼鉄へと変化していくのだった。息子が殺された理由を追って、父ライドが関わっていた“鐵男プロジェクト”へと辿り着く…
 丁度20年前に第一作目が登場した『鉄男』は、低予算ながら、そのハイセンスな映像によって塚本晋也の名前を全世界へと轟かすこととなった。その後、ある程度の予算が付き、その拡大版である『鉄男II』を経て、今新たな形で三度『鉄男』が眼前に現れた。ファンとしてはとても嬉しい作品であり、楽しみにしていた作品だった。
 そしてその出来はと言うと…
 まず一言。
「うるせー!」
 事前に本作は“爆音ムービー”と言う事を聞かされてはいたし、真偽の程はともかく、映画館のスピーカーがぶっ壊れるほどだとも聞いていた。しかし、実際に観てみると、聞きしに勝る轟音。と言うより、騒音。あまりの音の大きさに、途中からヘッドフォン取り出して耳栓代わりにしていたほど。それでも充分音がでかい。そのまま聴いていたら、終わった辺りで耳鳴りしてたんじゃないか?
 何考えてんだ。
こんな売りはいらん!
 …と、まあ最初からネガティヴな事を書いてしまったが、作品そのものは、紛うことなく『鉄男』だった。主人公がそれまで2作で主演した田口トモロヲに代わって外国人になったけど、それ以外は物語も演出も『鉄男』そのもの。ヤツも一貫して監督が演じているのも同じ。
 物語は簡潔。一人の男がある日を境に突然金属になってしまう。本当にそれだけだが、この三作品は細部が随分違っている。特にヤツの立ち位置は三作品全部異なっている。
 一作目『鉄男』に登場したヤツは、主人公を変質させたのみならず、自ら進んで機械と融合し、やがて主人公と合体してモンスターとなる存在。2作目『鉄男II』では、主人公とは敵対する存在として、自らの肉体を鍛えまくり、敵として登場。
 そして三作目となる本作では、ヤツの存在は前2作と同様、主人公に変化を促す役割を持ち、そのシナリオ通り主人公はヤツの求める破壊に向かって動いているが、そこでの反応が少し異なっている。破壊を求めているのはヤツだけであり、これまでの二作と異なり、主人公はその怒りの解放を最後の最後に押さえ込んでしまう。前2作ではヤツの思い通りになっていった主人公が、この作品に関しては、最後の最後にヤツに逆らう。それによって物語も平和に戻ってめでたしめでたしで終わってしまう。
 しかしながら、なんでこんな終わり方になったのかが今ひとつ理解出来ない。大体根本的に何にも解決してないとしか。あれだけ迷惑な事をやって、人死にもばんばんでて、どこかの組織から目を付けられて、いつ又暴走するか分からない存在が、元に戻れるものなのか?そもそもあのラストシーンは必要だったか?と、色々考えてしまう。
 強いて言えば、これが20年という時間の重みなのかもしれない。塚本監督の初期作品は大抵が主人公があっちの世界に行ってしまってもう帰ってこないのが多かったけど、近年のものは、それがどんなきつい現実でも帰ってくることが多くなった。塚本晋也という人物の思考の変化がこんな所にも現れてるのかな?

 

アンソニー
【あんそにー】
 東京の外資系会社に勤めるハーフ。息子を何者かによって殺されたことにより怒りの衝動がわき起こり、金属へと変質する。 甘崎
鐵男プロジェクト
【てつお-ぷろじぇくと】
 ライドが主導していた人間と金属の融合実験。その結果として美津江を生き返らせる事が出来た。 甘崎
トム
【とむ】
 アンソニーの息子。ヤツによって車で轢かれて死亡。 甘崎
美津江
【みつえ】
 アンソニーの母。アンソニーに絶対に怒らぬよう教え、その際子守唄を伝えている。 甘崎
ヤツ
【やつ】
 名前不詳。全作に渡って登場する、主人公を鉄男化させてしまう鍵となる人物。東京全体と心中しようとしている。 甘崎
ゆり子
【ゆり-こ】
 アンソニーの妻。トムの死に際し、アンソニーに復讐を誓わせようとする。 甘崎
ライド
【らいど】
 アンソニーの父。鐵男プロジェクトの主導者。現在は東京の片隅で小さな治療院を営んでいる。 甘崎

 

事典目次