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ゾンビ作品

アイアムアヒーロー


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2015年
佐藤信介(監)
 かつて漫画家として連載も持ち、漫画賞ももらった経験もある鈴木英雄(大泉洋)だが、今はしがないアシスタント暮らしを続け、希望も無いまま35歳になってしまっていた。そんなある日、部屋に帰ったところ、異形の姿に変容した恋人に襲われてしまう。なんとか逃げ出したものの、東京中はZQNと呼ばれる感染者の群れであふれかえってしまっていた。標高の高いところは安全という情報を得た英雄は、途中合流した女子高校生早狩比呂美(有村架純)と共に富士山へと向かう。だが実は比呂美は感染者であることが分かってしまう。
 花沢健吾の同名漫画の映画化作品。アンデッド化した人間達を前に、普通の人間である主人公が生き残りをかけて活躍するという話で、日本では珍しい本格的リビングデッド作品となっている。現在も連載は続いており、物語として決着はついていないのだが、この映画は連載中の漫画の「一段落」というところまでを描いたものになっている。そのため、あくまで一段落で、ZQNとは何であるのか、それを根絶する方法とか、あるいは本当に世界はどうなってしまうのか等、まるで描かれず、とても中途半端なものになってしまった。
 ところで本作で何を語れば良いのか。
 実はそんなに多くは無い。
 理由は単純だが、この作品で描かれている大部分は既に描かれ尽くしているから。

 ジョージ・A・ロメロ監督による『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(1968)から始まったリビングデッドものは数多くの派生作品を生み、現在も尚作られ続けている。年代によってその描写は段階的に変化しているが、基本となる部分は多くが共通している(RKOやユニヴァーサルの諸作品はメジャー化されなかったのでここでは述べない)。
 いくつか挙げてみよう。

 リビングデッドは死んだ人間、もしくはそれに準じた存在であり、理性は無くなっていること。
 生きている人間を襲い、仲間を増やすことが出来ること。
 死んでいるため、死を恐れることは無く、直線的に人間を襲うこと。
 仲間同士で食い合う事は無く、生きている人間だけが標的である事。
 時に人間を越える怪力を持つ個体が存在する事。

 …この辺だろうか。他にもいくつか共通項はあるものの、年代によっていくつもの差異がある。
 この前提に則って作られるのだが、そうなると、大体物語は似たものになってしまう。そこで個性をどう作るのか、そこが作り手側の腕の見せ所となる。
 で、本作は、まさしくそのフォーマット通りでほぼ全くひねりが無い。そのため、これまで量産されたリビングデッド作品となんら変わりが無い基本的な作品となってしまっている。
 前述したが、物語性にこれと言って特徴があるわけではないし、アクションシーンは確かに見栄えはするものの、そんなのはまず出来て当たり前。

 それだけで言うならば、単なる駄作になってしまう。

 だが、実は
ここには大変な個性がある

 他でもない。本作が純国産の作品だという一点である。

 これまで私が述べてきたリビングデッドものの特徴は、ほとんどがハリウッドもしくはイギリスという英語圏で作られたものであり、それ以外の言語圏のリビングデッドものは、ほとんど話題にならない
(イギリスは近年になって『28日後...』(2002)『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004)の2作品が作られたことで一気にリビングデッドもののメジャーにのし上がっている)
 日本でも一応は定期的に作られてはいた。近年になってからも、例えば『VERSUS ヴァーサス』(2000)とか、『鎧 サムライゾンビ』(2008)とか『山形スクリーム』(2009)とか『デッド寿司』(2012)とか…
 で、これらのタイトルを挙げた瞬間、「ああこれ知ってる」と言う人は一般的にはほぼおらんだろう。日本国内においては、リビングデッド作品は低予算の無茶苦茶マイナーな作品でしかなかったのだ。
 基本的に低予算で、出てくる俳優もあんまり知られてない人が大半。個性を出すために殊更作り物じみたスプラッター星を強調したり、人間とリビングデッドのバトルに特化させたりと、とにかく変化球で出来るだけ目を引くよう頑張って作ってはいる。だが、どうしてもマイナーから脱却しにくい。
 そんな中、きちんとした予算を組んで、まっとうで直球勝負でリビングデッド作品を作り上げた。これはとても画期的な出来事なのだ。予算については流石にハリウッドに敵うべくもなかろうが、それでも見所に関しては全く引けをとってないし、役者も実績ある人が多く、人間ドラマとしても、ちゃんと見られる。
 これ以上のものを求める必要はなかろう。
 まず本作がメルクマールとなり、ここからきちんとした作品が日本でも次々に作られていくことを期待したいものだ。

 

伊浦
【いうら】
 アウトレットモールに立てこもる非感染者の実質的リーダー。常にボウガンを持ち、冷笑的な性格をしている。英雄の持つライフルに目を付け、それを奪った上でZQN地域に放り出そうとするが、彼に反感を持つ仲間達の反逆にあってしまう。 甘崎
小田つぐみ
【おだ-つぐみ】
 藪の本名。 甘崎
黒川徹子
【くろかわ-てつこ】
 英雄の恋人。英雄は彼女のアパートで同棲している。 甘崎
鈴木英雄
【すずき-ひでお】
 35歳の漫画家アシスタント。偶然ZQNの襲撃から逃れ、安全な場所を求めて富士山頂を目指す。猟銃所有免許および本物の銃を持つ。 甘崎
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ZQN
【ぞきゅん】
 日本中を席巻する謎のウィルス。これに感染すると知性を失い、生きている人間を襲うようになってしまう。 甘崎
中田コロリ
【なかた-ころり】
 漫画家。かつて英雄のライバルだったが、今やその立場は完全に開いてしまった。原作では固有の物語があったが、ここでは最初に英雄と会話するだけ。役は片桐仁。 甘崎
早狩比呂美
【はやかり-ひろみ】
 英雄と行動を共にする女子高生。ZQNとなった赤ん坊に噛まれたことでZQN化するが、他のZQNとは異なり、人を襲うことは無く、命令されたことには従うような存在となる。役は有村架純。 甘崎
松尾
【まつお】
 英雄がアシスタントをしている漫画家。ZQNに感染し、アシスタントの三谷に撲殺される。 甘崎
三谷
【みたに】
 漫画家松尾の下で働くチーフアシスタント。松尾にコンプレックスを持ち、ZQN化した松尾を嬉々として撲殺していたが、自身も噛まれてZQNとなってしまう。 甘崎
【やぶ】
 アウトレットモールに避難していた女性で、元看護婦と言う事もあって、怪我をした人たちの面倒を看ている。本名は小田つぐみだが、ZQN化した病院から逃げ出した自分を許せず、自らそう名乗っている。役は長澤まさみ。 甘崎
名称
【】
  甘崎

 

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