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ファースケープ(1st)

ファースケープ事典

 1999'3'19〜2000'1'28

 イギリスで作られたSFシリーズ。地球人が突然異星人の船に入ってしまい、悪戦苦闘すると言うのが内容。ジム・ヘンソン工房が本作のクリーチャーデザインを行っており、エイリアン達の造形など非常に力が入っていることが分かる。ただ本作の魅力とは、むしろ異種族間のコミュニケーションに主眼が置かれている点にある。それだけに会話が大変重要な作品で、他のSF作品と較べ、一風変わった作風が特徴。しかしそれが見事にはまった話も多い。SFテレビシリーズの傑作と言っても良い。

主な登場人物
ジョン (役)ベン・ブラウダー。スターゲイトSG−1にサブキャラとしてレギュラー出演。
 ジョン・クライトン。地球の宇宙飛行士。ファースケープ号の飛行実験中ワームホールに飲まれ、5千光年彼方に吹き飛ばされてしまう。
エアリン (役)クラウディア・ブラック。
 エアリン・サン。ピースキーパー軍の兵士。モヤを強奪したクルー達によって捕らえられてしまい、しかもピースキーパーからは裏切り者扱いされてしまったため、なし崩しにモヤのクルーとなる。冷たい印象を与えるが、かなりの熱血。
ザーン (役)ヴァージニア・ヘイ。映画女優でテレビシリーズでは本作のみ。
 パウ・ゾーター・ザーン。デルビア出身の祭司の女性で、常に冷静沈着。人の苦痛を分け合う能力を持つ。見かけによらず怪力で手先も器用。モヤのクルーの中では最も頼りにされている。
ダーゴ (役)アンソニー・シムコー。本作が代表作。
 カー・ダーゴ。ルクサ人戦士。ぶっきらぼうだが情に厚く、仲間と認めた人間を非常に大切にする。モヤの肉体担当。
ライジェル16世  ハイネリア人の小さな宇宙人。実はハイネリアの元王族で、囚人にされてしまったことをいつもぼやいてる。性格は狡猾で大食漢。モヤに迷惑をかけることが多いのだが、彼のお陰で救われることも多々。
チアナ (役)
 ネバリ人女性。法を犯した事で矯正装置を付けられている。彼女の監視に当たっているサリスによれば「凶悪犯」だが、本人によれば「格闘と盗みなら得意」だそうで、どうやら軽犯罪者らしい。結局モヤクルーの一員になる。
話数 タイトル コメント DVD
第1話 未知なる宇宙
“PREMIER”

  監督:アンドリュー・プロウス
  脚本:ロックネ・S・オバノン
 宇宙船ファースケープ号の飛行実験中ワームホールに飲まれてしまったジョン・クライトン。そこで遭遇した巨大宇宙船は、実はピースキーパー軍に追われる脱獄囚達の乗った船だった。ファースケープ号も航行不能となり、仕方なく彼らの元に身を寄せることになったジョンだが…
 シリーズの第一話。スペースシャトルに似た宇宙船で飛び立った主人公が突然異星人の中に放り込まれるという内容で、何が何だか分からない内に犯罪人にされてしまい、しかも脱獄囚達と逃げ回る羽目になると言う、極めて理不尽な目に遭わされる主人公が描かれる。
 おかげで状況が全然分からない状態で主人公を取り残して物語が展開しっぱなし。観てる側も置いてけぼり。話ももったりしているし、エイリアンもちょっと着ぐるみが安っぽい感じ。
 だからといって面白くないという訳じゃない。本作の面白さはむしろ会話を通じてのコミュニケーションの難しさと、生き残りを賭けての仲間意識の醸成にこそある。
 今回は巻き込まれっぱなしだったジョンが最後に実力のほどを見せている。この大気圏をバウンドする航行というのはSF小説では何度か読んだことがあったけど、映像化されていたのも嬉しいね。マニア好みの設定だよ。
 他にも出てくる宇宙船やエイリアンが多彩なのも結構楽しい。エイリアンっぽいのがいたり、『SW』のタスケンらしいのもいたり。細かい所が楽しめる。主要人物でもカー・ターゴはクリンゴン人みたいだし、パウ・ゾーター・ザーンはボーグっぽい…主要人種が人類と同じってのは仕方ない所かな?
 いずれにせよこれからが重要って訳だ。
<ピースキーパーの持つ銃は地空のものと同じっぽいが、全く同じという訳では無さそうだ。撃ったらとんでもない所に弾が飛んでいく。>

VOL.1
第2話 E.T.
“I, E.T.”

  監督:アンドリュー・プロウス
  脚本:ロックネ・S・オバノン
 モヤ船内中に不快音が鳴り響いた。それがピースキーパー軍へ送信されている追尾装置パダックであることが分かり、ピースキーパーからの追撃を防ぐために近くの惑星テネアへと降下することとなった。その装置を取り外すためのリバイアサン用麻酔薬クロリウムを探し求めるクルーだったが…
 今回の惑星はテネア。そもそもはピースキーパーの追跡装置を無効化するために着地したが、そこにはちょっとだけ顔つきが違うが地球人に似た生物がいて、使われている機会も地球の道具に酷似している。
 今回もやはりコミュニケーションの難しさが描かれる話で、形は違えどファースト・コンタクトものになってる。まあ、目的物質があんまり簡単に見つかってしまうとか、たまたま接触したのが宇宙マニアの女性とかいうのは都合良すぎるけどね。
 それぞれの宇宙人の魅力も出ている。いつも怒ってばかりのダーゴも結構良い奴になってるし、文句ばっかりのライジェルも一生懸命みんなのために働いてたりする。
 舞台が地球に似ているため、あんまり金が遣われてないようだ。
<テネア人はジョンを宇宙人と見ているので、宇宙とは接触がないようだが、共通語を理解してる。
 ダーゴを捕らえたテネア人を後ろから襲うジャック。これってこの家族にとっては大問題なんじゃなかろうか?>
第3話 宇宙創生期
“EXODUS FROM GENESIS”

  監督:ブライアン・ヘンソン
  脚本:ロ・ヒューム
 ピースキーパーの追跡を逃れるために小惑星帯にモヤを紛れ込ませるクルー。だが小惑星帯に棲息する宇宙昆虫ドラクにモヤが寄生されてしまう。やがて排気口に詰まったドラクによってモヤの体温は急激に上昇してしまう…
 前回に続きモヤの体内異常が話の中心となる。そこで出てくるのが
宇宙昆虫ドラク。細い足を伸ばして直立歩行(?)も可能。結構愛嬌があるが、流石に虫嫌いな奴が見たら気色悪いだろう。クルーの遺伝子情報を読み込み擬態することも出来る。クライマックスでモヤの体内で増殖する様はほとんど『エイリアン2』(1986)
 本作の特徴として、コミュニケーションの難しさってのがあるけど、今回は自分自身の擬態との対話という問題があり。しかし、異生物との戦いが、結局コミュニケーションによって解決するってのは面白い描写だよ。しかも最後はピースキーパーとの戦いまであり。最後まで気の抜けない、上手くできた作品だよ。映画一本分くらいの内容がある。
 今回に限ってのことではないが、相変わらず苦労しっぱなしのジョン。常識がまるで違うので、船のことは何も分からず、それで特にエアリンには馬鹿にされっぱなし。それで落ち込むことが無いのはえらい。
これが日本人だったら引きこもりになってしまうよ。で、こういう人物が得てして最後の鍵を握ってるものだ。
 ザーンには絵描きの才能があるらしい。一瞬にしてライジェルの自画像を手直ししてしまった。コマ落としみたいな描写が映える。
 これ又ザーンの言葉だが、「尊敬は自分で勝ち取るもの」確かにその通りだ。
 ダーゴはキースキーパーを憎んでいるが、エアリンに対してはとても優しい一面を見せる。多分仲間を大切にする性格なんだろう。
 一方、相変わらず文句たらたらのライジェルはやっぱり悲惨な目に遭わされっぱなし。ドラクがうようよいる通気口の中にぽんっとばかり放り込まれてしまったり…遊ばれやすいのだな。だけど、やっぱり最後は頼りになる。
<宇宙でも虫歯があるらしい。それで歯磨きの代わりにデンティックという寄生虫を口の中に入れる…かなり気色悪い歯磨きだ。
 自分と闘わなきゃならないってのはきつい描写なんだが、ジョンは平気で自分のコピーの首を落としてるよ。
 何故かライジェルは船の代表としてドラクと交渉してた。ドラク曰く、「彼こそ王」だとか。
 ピースキーパーによれば、ジョンは「クリーチャー」だそうだ。皮肉が効いてるね。>

VOL.2
第4話 さらわれの王
“THRONE FOR A LOSS”

  監督:ピノ・アメンタ
  脚本:リチャード・マニング
 商談のため武装集団タブレックをモヤに招くこととなった。交渉の中心となったライジェルだが、タブレックは突然攻撃を開始し、ライジェルを奪い去ってしまう。実はかつてハイネリアの王であったライジェルを人質に身代金をせしめようと言う魂胆なのだ。ライジェルを救うべくタブレックのアジトに乗り込むジョンとエアリンだが…
 
タブレック登場。武装集団で、ブレスレット状のパワー・バングルの中にある興奮剤を服用し、常にハイ状態を保つ種族で、相手に苦痛を与えることを何よりの喜びとしている。
 ライジェル救出作戦が展開。元王族というが、ほとんど口ばかりのキャラで憎まれ口ばかり叩いてる…結果的に一番悲惨な目に遭うという存在意義をよく示してる。又、本作を象徴するように、交渉の重要性がやはり展開していく。単に闘うのでないというのが面白い所。やっぱりイギリス製SFはひと味違うね。惑星でのジャックとタブレックの交渉もそうだが、モヤの中でのザーンとの交渉もなかなか見応えあり。
 仲間思いと思われたダーゴが突然凶暴化してしまう。タブレックの興奮剤を打ってしまったためだが、怪力の持ち主だからこうなるともう手が付けられなくなってしまう。一方、非常に好戦的なエアリンの性格や、どんな時にも冷静沈着なザーンと、性格は実に良く現れてる。
 無事救出作戦は終了したが、折角ザーンが心を尽くし、禁断症状に打ち勝ったタブレックの若者が、結局は又興奮剤を服用するという、なんともやりきれない終わり方。これも又味がある。
<エアリンの好戦的態度に怒り、「交渉の余地がある」というジョン。次の瞬間には気絶してプロウラーの中に…エアリンの性格がよく分かる。
 タブレックの一人がザーンに対し性的に脅しをかけるが、全く動じないザーン。良いキャラクタだな。でもこんな描写が出来るってのが本作の面白さだ。
 ピースキーパーの銃の使い方が分からず、自爆させてしまうジョン。やっぱりこいつは使えない奴だ。でも、結局は彼の交渉術が最後にものを言う。
 ジョンの弱腰を馬鹿にして、彼の種族を思いきり馬鹿にするエアリンとダーゴ。良いねえ。この諧謔趣味ってさ。
 モヤのクリスタルを飲み込んでしまったライジェル。で、それを戻す際、「きれいに洗ったよ…多分な」…一言多いキャラなんだよな。>
第5話 未来への逆行
“BACK AND BACK AND BACK TO THE FUTURE”

  監督:ローワン・ウッズ
  脚本:バブス・グレイホスキー
 炎上分解の危機に瀕した宇宙船を見つけたモヤは救出作戦を敢行。乗務員のイラニ人を救出する。その救出作戦の際、彼らの積み荷に手を触れてしまったジョンには不思議な能力が…
 
イラニ人登場。男は巨大な角が、女は大きな突起があるのが特徴。ルクサ人とは近類で、長く同盟関係を保ってきたらしい。ここではマタラという女性とベレルという老人が登場している。
 イラニ人の荷物に触れてしまったジョンに未来予見の能力が付いてしまう話。確実に起こるものではないとは言え、見る未来は悲惨なものばかりで、お陰で全般的に重苦しい作品に仕上がっている。BGMも重めのものが使用されている。しかし、未来が次々に分岐するため、どこまでが幻視でどこまでが本当なのか分からなくなってしまう、まるで悪夢のような演出は私好み。面白い。
 イラニ人が作っていたのは特殊兵器。それはなんとマイクロブラックホールだった。ジョンが未来視出来るようになったのはこの容器に触れてしまったためらしいが、どういう兵器なんだろう?
 イラニ人はダーゴのルクサ人とは近類と言うことで、ダーゴは危険を冒しても彼らの救出作戦を主張した上、何くれと無く彼らの便宜を図る。仲間を大切にするダーゴの性格がよく分かるエピソードだ。他にも妙に女同士仲良くなったエアリンとザーンなどの姿とか、王族という割に無茶苦茶食べ物に卑しいライジェルがいるが、これはいつも通りか?ライジェルは今回は本当に何の役にも立たなかったね。最初から最後まで食べてただけ。
 何故かジョンのことを「複雑」というザーン。なんで?一番単純そうに思えるけどね。
 CGとは言え、宇宙船爆発が簡単に観られるのも技術の進歩だね。なかなかのスペクタクル。
<大人向き作品だけに性的描写も結構あったり。ツッコミじゃないけど、本作の醍醐味でもあるな。
 エアリンとマタラの格闘技訓練が描かれているが、その際は手を組んだり、一礼したりと、まるで空手だ。
 マタラが使う神経ストロークという技は、相手を完全に動けなくしてしまう…バルカン・ピンチ?
 モヤのコントロール装置って、どう見ても市販品のトラックボールなんだけど、これはやっぱり経費節減か?>

VOL.3
第6話 魅惑の惑星
“THANK GOD IT'S FRIDAY, AGAIN”

  監督:ローワン・ウッズ
  脚本:デヴィッド・ウィルクス
 農場惑星サイカーへ行ったダーゴがモヤに戻ってこない。心配して迎えに行ったクルー達だったが、そこで見つかったダーゴは何故か興奮状態にあり、農場でずっと働きたいと言い出す。他に農場で働いている人々の姿もおかしいと調査を開始するジョンだったが…
 惑星サイカーが今回の舞台。ここは農業惑星で、底に働く人の姿ってやる気に溢れているが、実はタノットの根を食べることで中毒症状を起こし、離れられなくなってしまう。
 おかしくなってしまったダーゴの行動が描かれる話。麻薬に冒されており、コミュニケーション取れない状況。何故かザーンまでが労働の喜びに目覚めてしまう。
 惑星サイカーの農業風景って東南アジアっぽい。笠もかぶってるし、家は木造。馬鹿にしてるとは思わないけど、なんか大国によって単一作農業国にされてしまった地球の国に似ているような…働いている人の描写は、どこかヒッピーを思わされる。70年代的描写を狙ってのことかな?古くて新しい物語に仕上げられてた。
 麻薬に酔ったふりをしてるジョンは結構はまってる。演技は出来ないとか言われつつ、それなりに芸達者のようだ。
 いつもお騒がせのライジェルは、今回サイカーの食物を食べ過ぎて、汗が揮発性爆弾みたいなものになってしまった。それでパイロットによって凍らせられてしまった。いつもながら可哀想な。一方暑すぎるサイカーに降りられないエアリンは何故かパイロットに好かれてるみたい。前回に続き、精神的な弱さを見せるダーゴもなかなか興味深い。子供の頃のダーゴの夢は一流の戦士になるのと共に、農業をやりたかった。という事実も明らかに。
 それで最終的に役に立つのはライジェルってのはいつも通りか?しかしその最終武器ってのが小水ってのは人喰ってるね。
<今回もザーンのセクシーショットあり。ジョンと同じベッドで眠り、ジョンの股間に手を伸ばすシーンあり。一方、ジョンも眠ってる内にザーンの腰に手を回してた。
 考え過ぎかも知れないけど、ジョンの体に埋め込まれた寄生虫ってどうやって取り出したんだろう?エアリンのはめてた手袋が妙に気になるんだけど。
 ツッコミじゃないけど、タイトルの“FRIDAY”というのは、ユダヤ教における安息日の前日のこと。サイカーはユダヤ教だと見てるのか?>
第7話 宇宙平和維持軍
“PK TECK GIRL”

  監督:トニー・ティルス
  脚本:ナン・ハガン
 破壊されたピースキーパーの船を発見し、内部探査を行ったジョン達だったが、かつて無敵と言われたその船“ゼルビニオン”はシェウア人によって破壊されており、中にはジリーナというピースキーパーの女性を発見する。
 舞台は宇宙でシェイア人が登場する。蛙に似た宇宙で盗賊を主に行う種族。主には廃棄された宇宙船でおこぼれに与るだけらしい。武装を持たないモヤに対し、高圧的に出る。口から火を吐くことが出来る。
 物語は捕虜の尋問が主。コミュニケーションが主題であるだけに、これは格好の設定だろう。捕虜となったジリーナは綺麗な女性で、つい彼女をかばってしまうジョン。なんか雰囲気が良いのだが、それで妙に怒りっぽくなってるエアリンとかの姿も見られる。なんかこの二人の関係はどんどん微妙になっていく。
 一方ではシェイア人の攻撃に曝されるモヤの姿もあり。逃げられない状態だけに、シェイア人とダーゴの交渉も見所の一つになってる。直情のダーゴにはかなり荷が重かったようだ。シェイア人自体が仲間内で争っているため、そこも交渉の武器となっている。
 ピースキーパーとモヤクルーとの確執も描かれている。舞台となったピースキーパー船“ゼルビニオン”はモヤのクルーにもお馴染みらしく、ライジェルに至っては「この船で拷問を受けた」と言っていた。もの凄いトラウマらしく、幻影に悩まされ続ける。
 物語自体は緊張感はあるものの、あくまで王道。てっきりジリーナはブービートラップかと思ってたのだが、意外にも本当に被害者だった。こんな単純で良いの?と思ってしまうほど。本作自体が全体的にひねくれすぎてるからなあ。
<それにしても宇宙の中でよくこんなニアミスが起こるもの…と言っては話が展開しないか。
 仕方ないんだけど、ゼルビニオンの内部ってどう見ても地球の工場だな。エイリアン(1979)のノストロモ号みたい。
 通じないながらも何かと映画を引用するジョンだが、今回タイタニック(1997)および
『要塞警察』
 シェイア人と交渉する際、怒り狂うダーゴの顔を相手のモニターに映す。それだけで攻撃止めてしまう。ルクサ人がよっぽど怖いのか?>

VOL.4
第8話 黒魔術
“THAT OLD BLACK MAGIC”

  監督:ブレンダン・マーハー
  脚本:リチャード・マニング
 風邪を引いたライジェルの薬を求めてとある惑星に降下したモヤクルー。そこでジョンは魔術師ハロスと出会う。彼はかつてジョンの宇宙船“ファースケープ”とニアミスして死んだクライス大佐の弟について弁明の機会を設けると持ちかけるが…
 交易惑星でのトラブルが描かれる。ここに登場するのは
ハロスという魔術師で、ジョンとクライスを同時に呼び寄せ、ジョンに対してはクライスに弁明の機会を与えると言い、クライスに対しては復讐を行わせようとする。これらは夢の中で行われたことが現実にも起こるというもの。精神的な戦いが主軸となる。だからこそ、本作の主題である交渉の重要性が表れている。
 久々に
クライスが登場。時に彼の登場は物語を引き締めてくれる。肉体的には離れたままだが、ハロスの魔術で精神体がジョンと邂逅する。
 一方、珍しく感情を露わにするザーンの姿もあり。僧侶であるザーンは生物を傷つける事が出来ないが、ハロスを倒すためにはそれを超える必要があった。そのためこの話はザーンの精神の戦いでもあった訳だ。その分、ダーゴやエアリンの見せ場はほとんど無かった。
 結局この話はSF的要素ではなく、人間を描くことが主眼であることを改めて感じさせる話だった。最終的にマルディスは倒されたが、
<今回もザーンのお色気シーンあり。性的興奮を高める薬を嗅いで、ちょっとした誘いのような駆け引きを行ってる。
 今回の映画引用は作品ではなく、ローレンス・オリヴィエについて言及。悪魔のようなハロスを、邪悪な貴族役をよくやっていたオリヴィエにたとえているのだろう。
 地球人を「幼稚で原始的だ」と叫ぶジョン。この辺りの韜晦がイギリス流でとても良い。
 ジョンの看病を任せられたライジェルはさっさとジョンを埋葬しようとしてる。しかもその前に全ての財産を自分のものにすると宣言して。こいつは外さないキャラだな。>
第9話 DNA
“DNA MAD SCIENTIST”

  監督:アンドリュー・プロウス
  脚本:トム・ブロムキスト
 自分たちの故郷の在処を確かめるためモヤのクルーはナムタールという博士を訪ねる。彼は宇宙人類のDNAを研究しており、DNAからさまざまな宇宙人の故郷となる惑星を割り出すことが出来た。ただ、全員の故郷の場所を教える代わり、彼の出してきた条件とは、なんとモヤのパイロットの腕だった…
 
ナムターが登場。本当の天才で、DNA情報からあらゆる情報を引き出すことが出来る。その目的は自分自身にあらゆるDNAを取り込んで完全な生物になることだった。
 これまでふらふらとどこを飛んでいるか分からなかったが、実はモヤのクルー全員が迷子のようなものだったとは。意外な事実。
 それで故郷の星が分かった時、どの星に最初に行くかで揉めるクルーたち。仲間意識を失わせるほどに故郷を求めているためだが、どうもいつものみんなとは様子が違う。エゴ丸出しにして暴力振るったり、変な駆け引きやったり。特にザーンの変化が激しすぎた。ライジェルは相変わらずだけど、他のキャラの変貌ぶりが激しくて、彼の姿がまともに見えてしまう。
 自分の星を見つけるためにはパイロットの腕が必要があり。ジョンとエアリンを除く全員がよってたかって本当に腕を切り落としてしまう描写あり。とんでもない話…と思ったら再生能力があったのね。
 今回は珍しくジョンが荒れていて、その分あんまり存在感がなかった。何故かナムターも地球の場所は分からなかったらしい。声もしわがれてるし、風邪かなにかだったのかな?
 一方、エアリンにはナムターによってパイロットの遺伝子を移植されてしまった。徐々にパイロット化していくエアリン。まさにホラー風味だ。
 全体的な話としては悪くはないけど、ちょっと暗すぎるかな?
<目玉に針を突き刺すシーンあり。凄く気味悪いけど、ホラーとは違い、演出があっさりしているため、あんまり怖くはない。ただ、見ていてやっぱり痛い。
 エアリンが徐々にパイロット化していくのも『ザ・フライ』(1986)っぽく、かなりホラー風味が強い。
 今回もザーンのお色気シーンあり。ライジェルから隠した星図のありかを聞き出すため彼を誘惑する。
 今回はジョンの映画のウンチクはなかったけど、アウシュヴィッツの医師ヨーゼフ・メンゲレの言及あり。>

VOL.5
第10話 明かされる秘密
“THEY'VE GOT A SECRET”

  監督:イアン・ワトソン
  脚本:サリー・ラピダス
 ピースキーパーが残した操作パネルを除去するため、クルーはモヤ船内を探し回る。その途中ダーゴはトラブルで宇宙空間に放り出されてしまう。無事帰還出来たが、過去のことばかり口走るようになってしまう。更にモヤの推進装置にも異常が…
 今回は新しいエイリアンは出てこないが、これまで何度か口に上っていたダーゴの過去の事が描かれることになる。過去にロラーンというセバシア人女性と夫婦であったことが発覚。
 本作はコミュニケーションの不全を主題とする事が多い。今回はダーゴがコミュニケーション不能になってしまった所に話の焦点があるがこの話はちょっと普通すぎたかな?緊迫感も足りず。
 しかし、コミュニケーションと言えば、最後の最後、なんとモヤとのコミュニケーションを持ってきたのはなかなか皮肉っぽくて良いぞ。
 ダーゴが中心になったため、他のキャラは今ひとつ。特にライジェルに至ってはダーゴに抱きしめられるだけで終わった。ダーゴに勘違いされていたとは言え、ザーンとのキスシーンもあり。
<前回切り取られてしまったパイロットの左手はここではちゃんと戻ってる。
 宇宙空間に放り出されたダーゴはしっかり生き残っているが、ルクサ人は相当に頑丈らしいな。
 エアリンが冗談を言うようになった。DRDの接着剤に絡め取られ、剥離剤を使ってもなかなかはがれない状態を「明日には二本は動くかも」とか。あんまり面白くない。
 今回のジョンのウンチクは映画では『鳥』。他にもアニメの『バックス・バニー』もあり。どちらもDRDの群れが通路に固まっているのを見た時に言っている。描写はなんかエイリアン(1979)っぽくもあり。
 ラストでモヤは妊娠していたことが分かる。モヤって雌だったの?父親は何者なんだろう?>
第11話 流れる血脈
“TIL THE BROOD RUNS CLEAR”

  監督:トニー・ティルス
  脚本:ダグ・ヘイヤースJr.
 モヤの部品を使って修理したファースケープ号に乗り、惑星のフレアを観察に出かけたジョンとエアリン。しかし、調査の途中で船が故障したことからある惑星に不時着する。だが、そこは賞金稼ぎたちが囚人狩りをしている無法地帯だった…
 不時着した惑星での賞金稼ぎとのやりとりが主軸の話。ジョンがどんどん環境に慣れて、バウンティ・ハンター達と対等にやりとりしてる。騙すためとは言え、ダーゴを「肉団子」と呼んだりぶん殴ったりと、なかなか苦労してるみたい。
 オープニングから早くも思い出話?と思わせる展開だが、事実はワームホールそれを再現しようとしている努力だったらしい。これでどれだけジョンが地球に戻りたがっているのかが分かる。
 それで今回はスター・ウォーズ(1977)の惑星タトゥーインに似た惑星が舞台…本当によく似てるな。金は随分使っているようけど。
 それぞれのメンバーの個性が良く出ている話もあり。ジョンの成長のみならず、やっぱりピースキーパーの裏切り者とされてしまっているエアリンが忸怩たるものを感じている姿や、口は悪いがなんだかんだ言って仲間を大切にするダーゴの姿などもあり…で、ジョンにいたぶられてては立場がない。まあ、喧嘩して仲良くなるってパターンに見事に適合してるんだが。
 前回モヤに赤ん坊が出来たのが分かったが、パイロットは最優先でその安全を図るようになってきた。
<常に色っぽさ担当のザーンは、今回フレアのヒカリを浴びて恍惚状態に。結局今回日光浴浴びてただけだったな。今回は何故かエアリンも妙に色っぽさがあり…ややフェティっぽいけど、私はビザールファッションが好き(笑)
 今回のジョンの映画引用は自分とエアリンをブッチとサンダースと呼んでる。勿論明日に向かって撃て(1969)から。>

VOL.6
第12話 ラプソディ・イン・ブルー
“RHAPSODY IN BLUE”

  監督:アンドリュー・プロウス
  脚本:デヴィッド・ケンパー
      ロ・ヒューム
 モヤらはデルビア人タリーンによりデルビア人の僧院へと導かれる。タリーンは正気を失っていく仲間を救うために “統一の儀式”で能力を分け与えてほしいとザーンに懇願するのだが…
 
タリーン登場。ザーン同様デルビア人の僧侶。
 ザーン同様にデルビア人の女性が中心となり、モヤクルーそれぞれがだんだんおかしくなっていく話。ザーンは能力の暴走を起こすし、ジョンたちは過去に捕らわれてしまう。エアリンは何故か武器の使い方を忘れてしまう。精神的な話のため、やや話がややこしく、描写も暗いが、これはこれで大変興味深い。
 ザーンの過去が明らかにされるのだが、その心の闇は凄まじく深い。それを引き戻すために、結局ジョンの良心が解決の糸口になったというのは単純すぎる話ではあるが。
 この危機を通り越えることによって、ジョンとザーンの相互理解は深まり、ザーンは僧侶のレベルが10に上がったらしい。ちょっと分かりづらいけど。
 やはりそれぞれのキャラの描写が映える。ジョンは昔の事を思い出しているが、地球には恋人がいたらしい。ザーンも又、かつて恋人がいたが、その恋人が取り返しの付かない事をしでかしたため、自らの手で殺してしまったと言うことが明らかにされる。これがザーンがピースキーパーに捕らえられた理由らしい。そう言えばもう過去が明らかになったダーゴは普通に昔のことを喋るようになっていた。
<ジョンには地球に恋人がいたらしいが、これまで全く言及されてなかった。
 神殿に入る際エアリンの持つピースキーパーの銃が壊れた描写があったが、随分安っぽいプラスチック製に見える。
 頭の中を見たい。というザーンに対し、「男の頭なんて単純だ」と即答するジョン。うん。そうだと思うぞ。
 そう言えば今回はジョンの映画引用はなかった。>
第13話 透明な罠
“THE FLAX”

  監督:ピーター・アンドリキディス
  脚本:ジャスティン・モンジョ
 ポッドの操縦訓練をしていたエアリンとジョンは、“フラックス”という透明な網にかかってしまう。彼らを捕らえたのはゼネタン・パイレーツというバウンティ・ハンターだったのだが、モヤにはそのゼネタンと名乗るイエネン人のスターンズがやってくる…
 
イエネン人スターンズ登場。元ゼネタン・パイレーツの一員で、元の仲間達に追われている。ジョンとエアリンの乗ったポッドの事を知って、モヤにやってきて特にダーゴに対して交渉を持ちかけていた。
 今回の舞台は宇宙で、捕らえられたジョンとエアリンの救出作戦が描かれる話だが、実際にはスターンズとの交渉がメインとなる。
 フラックスという罠に閉じこめられたジョンとエアリンは様々な生き残る方法を探る。それで二人の関係が急接近?と思われたのだが、ちょっとだけ親しくなったのに止まった。ま、パターンではあっても、その方がらしいけどね。
 今回は珍しくザーンがライジェルに対し怒りを露わにしている。僧侶のレベルが10に上がったと言うが、感情の抑えは逆に効かなくなってるのか?
 一方ダーゴはスターンズとの交渉で故郷の居場所の糸口を掴みそうになるのだが、それもジョン達を救うために無駄にしてしまう。「息子には目を瞑れば会える」とは名台詞(イギリスのテレビ番組のくせに、「瞼の母」をそのままやってしまうとは)。
 今回は何故かライジェルが大活躍。と言っても本人は遊んでるだけなのだが、たまたまそのゲームはゼネタン人も大好きだから。というのが理由。ライジェルは根っからのギャンブラーらしく、最終的に最も損害が少なくなるようにゲームを持っていったことが最後に分かる。今回は妙に格好良いぞ。
<髪をアップにしたエアリンの姿が見られるが、髪を上げると、なんかオバサンっぽくなるな。失礼だけど。
 スターンズが妙にダーゴに馴れ馴れしかったのは、実は…というオチは強烈。ダーゴもえらい災難だ。なるほどだから妙な言葉遣いだったのね。
 そう言えば今回もジョンの映画ウンチクはなかった。ちょっと残念。>

VOL.7
第14話 惑星への到達
“JEREMIAH CRICHTON”

  監督:イワン・ワトソン
  脚本:ダグ・ヘイヤーJr.
 地球から遠く離れ、しかも無能扱いされ続けるジョンはついに我慢出来ずモヤを飛び出すが、スターバーストを開始したモヤに取り残されてしまう。緑なす惑星アクアラに不時着に不時着し、そこで新生活を始めるジョンだったが…
 アクアラという惑星が舞台の話。この惑星は全ての動力のエネルギーが消えてしまうため、原初的な生活を行っている。
 ジョンの家出が描かれる話で、ここまで引っ張らずにもっと早くやっても良かった感じ。話そのものは「キャストアウェイ」に近いかな?ジョンも妙に村に馴染んでしまい、落ち着いてしまってる。この話って6話でダーゴが陥った状態と似てるかも。
 中盤から家出したジョンを置き去りにして物語が展開してしまい、怪我の功名で予言が本当になってしまうと言うオチが見えてしまうのはちょっといただけないけど、テレビシリーズならではの挑戦的作品として捉えられるだろう。
 かなり長い間家出しているのはジョンの髭で分かるけど、モヤクルーはその間ずっと探し回っていたらしい。
 口は悪くて粗暴だが、仲間を思う気持ちがとても強いダーゴはジョンがいなくなったのを本当に心配している様子が見られる。このキャラはやっぱり良い。一方ザーンはどんどん性格が悪くなっていくな。ここではっきり「僧侶を止めた」と言ってるけど、これが素なのかな?
 それで何故か存在自体が意味無いはずのライジェルが存在感を見せてる。なんとアクアラの神様にされてしまった。結構まんざらでも無さそうだけど。
<ツッコミ所ではないと思うけど、アクアラの村って随分いろんな種族がいるな。地球人と全然変わらないし。>
第15話 ダーカ復活
“DURKA RETURNS”

  監督:トニー・ティルス
  脚本:グラント・マックアーロン
 子供を孕んだことで不安定となったモヤは小型宇宙船と接触事故を起こしてしまう。だが救出された乗組員の中にはかつてライジェルを拷問したダーカ大佐がいたのだ。死んだはずのダーカだったが、彼の残忍性は“心の洗浄”によって取り除かれたという。それを信じないライジェルだが…
 
ダーカ登場。かつて7話でも登場した人物で、その時はミイラ化して死んでしまっていたはずだが、サリスという人物に救われた。
 かつてライジェルを拷問した残忍なダーカが本当に改心したのかどうかと言う事が話の中心。オチとしては、本当に善人になっていたのだが、ライジェルが放った爆弾によって元の自分を取り戻してしまった。
 今回はライジェルが中心で、かつて自分が受けた拷問に怯え、ダーカを殺そうと考える。復讐のためには船が傷つこうがクルーが死のうが関係ない。と言うくらいに憎んでいるらしい。ジョンが殺されそうになった。ただ、ライジェルの考えが決して間違ってなかった。口八丁でダーカを撃退するなど、後半はかなり格好良い存在になってる。
 モヤは相変わらず不安定で、勝手にスターバーストを行ったり、危険信号を受信しなかったり。
 囚人のチアナとジョンがちょっと良い感じになってるけど、今回に関してはダーゴとザーンはほとんど存在感がない。特にザーンはただ慌ててるだけ。僧侶でなくなったら個性が無くなってしまったな。
 ラストでダーカは死なないままだから、まだ出てくるかもしれないな。ちなみに結局サリスを殺したのが誰だか分からないというのも面白い構造。
<宇宙で接触事故なんてそうそう起こりそうもないけど、それが起こるのが本作の特徴か。>

VOL.8
第16話 遥かなる地球
“A HUMAN REACTION”

  監督:ローワン・ウッズ
  脚本:ジャスティン・モンジョ
 モヤの前に突然ワームホールが出現した。それを見て我慢出来なくなったジョンは地球をめざして飛び立つ。そして首尾良くワームホールを抜け、地球に帰還するのだが、突然現れた兵士に捕らえられてしまう。そんなジョンを訪ねてきたのは彼の父親だった…
 舞台はなんと地球。ワームホールを抜けてついにジョンが帰還するのだが、そこでの反応は変。何故か捕らえられてしまう。実はモヤにいたことによって脳に翻訳虫が寄生してたり、ファースケープ号が改造されてたりして、本物かどうか疑心暗鬼になっている。一方ジョンが心配でやってきたモヤクルーの面々の面々が受難。
 異種族間のコミュニケーションが本作の主題だったと思うけど、なにもそれは異種族に限らない。地球人同士でさえコミュニケーションは取れない。ましてや帰ってくるはずのない人物だから、当然疑心暗鬼に陥る訳だ。異星人とのコミュニケーション不全に悩んだ後でこれじゃ、こたえるよ。異星人より人間の方がもっと凶悪になってしまった。
 当初この地球はパラレルワールドじゃないのか?と思ったくらいに違和感ありまくりなのだが、実際はジョンの脳内で作り上げた地球の姿が出てきているので、どっちかと言えば夢オチっぽい。ジョンの考える地球のイメージって随分と殺伐としていることが分かってしまったのだが、一方でそれが地球を救うというもの凄い皮肉な物語で、終わり方とかかなり唖然とさせられる。とにかくこのストーリー運びは見事だった。
 ジョンがいなくなってから地球では7ヶ月が経過。もっと過ぎてるのかと思ったよ。
 前回なし崩しにモヤに残ったチアナが今回もまだモヤにいる事が発覚。何故かザーンとは仲が悪いっぽい。ちなみにモヤのクルーは全員妙にこざっぱりしてる。時間かけて随分と体も汚れてきた感じだった分、ここでリフォームって感じかな?
 ジョンが帰還すると言ったところでモヤクルーの面々の反応も面白い。全員なんだかんだ言ってもジョンとは別れたく無さそうだが、きちんと別れを言っている。一方、途中で地球に来てしまったエアリンはジョンと良い感じ。ってか、とうとう肉体関係を結んでしまった。
<なんとライジェルの解剖シーンあり。内臓まで出してしまうのは描写上問題じゃないのか?
 ところでジョンのお父さんの名前が出てこなかったような気がするんだけど。>
第17話 異次元発生の危機!
“THROUGH THE LOOKING GLASS”
 妊娠中のモヤの不安定さを協議するクルー。だがスターバースト中にモヤ内部では閃光が走り、クルーが次々に消失してしまう。ジョンは侵入者を発見すべく調査を開始する。だがそこでジョンはモヤが同時に4つの次元に存在しているという事実に気づくこととなる。
 後半になってモヤの妊娠が発覚し、その不安定さが物語の主軸を担うようになってきた。今回はパラレル・リアリティで次元航行中のモヤが三次元に戻れなくなってしまい、四つに分裂してしまう話。今回初めてモヤがちゃんと意志をもっている事が明らかになったのだが、この事故を引き起こしたのも、モヤがクルーに自分の役立つ所を見せようとしてのこと。設定は面白いけど、ジョンばかりが目立っていて、特殊性はないな。
 今回は色彩がとてもどぎつく、結構目に悪い。全体的に赤いシーン、青いシーン、黄色いシーンに分かれているのだが、それぞれの船に固有の特徴があって観ているのがきつい。赤いシーンは平衡感覚がおかしくなり、青いシーンは不快音、黄色いシーンは妙に陽気になるという。
 チアナは今回も健在。本人曰く、「キスとケンカは得意だけど、怖がりなんだ」とのこと。モヤの不安定さに不安を覚えて逃げようとする。後、彼女は平衡感覚がいくら狂っても平気だが、音に対しては極めて敏感だと言うことがはっきりした。
 ライジェルはどんな状況でもとりあえず満腹したら満足らしい。分かりやすいキャラだ。一方ザーンは今回は本当に何にもしてない。チアナと喧嘩してるだけの完全なお荷物キャラ。最後にジョンが彼女に頼んだのは「祈ってくれ」だった。話が進むに従って使えなくなっていくな。
<ジョンの吐瀉シーンあり(しかも3回も)。これもアメリカでは出来ないことだが、はっきり言って見たくないぞ。
 四つのモヤにはそれぞれクルーが一人ずつ存在するが、ジョンとチアナだけは移動してた。何で二人だけ?
 300秒という時間をダーゴに教えるジョンは「1ミシピッピ、2ミシピッピと数えろ」と言うのだが、ダーゴは「1ミピピピ」…とか数えてた。>

VOL.9
第18話 ウィルス蔓延
“A BUGS LIFE”
 故障したピースキーパーのマローダーがモヤに着艦した。彼らはあるウイルスの保菌者を入れた箱を基地に届けるという急務を帯びていたが、それを知らずに箱を開けたチアナが感染してしまう…
 感染すると凶暴化する寄生虫のようなウィルス感染の話。話自体がちょっとホラーっぽく、音楽も重め。次々人間が感染していき、凶暴になると言う設定だけ見ると、「遊星からの物体X」そのまんま。後半誰が感染者か分からず銃を突きつけ合ったり、ウィルスの試験をするのも、ウィルスを感染させるために人間のコロニーに行こうとするのも同じだ。
 今回はチアナが前半では大活躍。このキャラは元々悪人だったそうだから、盗みもお得意らしい。他のキャラはみんな捕らわれという設定だが、特にダーゴはそれに納得してないようだ。無理もないが。で、今回もザーンは全く役に立ってない。後半になってからのザーンの扱いの悪さは際だってるな。後半になるとジョンが妙に格好良いのだが、こういうのは珍しい。
 この話は伏線となって次回に続く。
<ピースキーパーが近づいてくるというので、今回ダーゴは偽装のため囚われのふり。その姿が妙にはまっているのがなんとも。
 ちょっと星図の話が出ていたけど、ピースキーパーのマローダーには星図が搭載されてないんだろうか?積んでたらジョン以外は物語の目的は達してしまうんだけど。>
第19話 頭脳ゲーム
”NERVE”
 瀕死の重傷を負ったエアリンを救うため、ジョンはチアナと共にピースキーパーのガマック基地に潜入する。だがそこで捕らえられてしまい、ワームホールの秘密を突き止めるために記憶を抽出されてしまう…
 前回刺されてしまったエアリンは無事に見えたが、話は続いており、瀕死の重傷を負っていたという事実が発覚。それを治すため、特効薬を求めて危険なピースキーパー基地に潜入する話。
 主にジョンとチアナの冒険が描かれる話だが、7話に登場したジリーナが登場してる。なんたる偶然。又宿敵となるスコーピアスが登場。涼しい顔をして拷問する姿は素敵すぎる(?)。8話以来のクライスが再登場もしてる。ジョンに関しては出会いと別れが大変多い話だった。
 そのために物語は一難去ってまた一難。物語は結構緊張と山場が多く、見応えもあり。
 16話でジョンは深層意識にワームホールの秘密を刻み込まれたという事実が発覚。これでジョン自身にもピースキーパーに狙われる理由が出来てしまったようだ。そしてジョンを助けようとするチアナはセバシア人に扮装するのだが、髪の毛を黒くするだけだった。あんまりセバシア人には見えない…まあ、スコーピアスも似たようなものだが。
 一方瀕死のエアリンを介抱する残りのモヤクルー達。流石に重苦しい雰囲気に包まれている。その中では仲間思いのダーゴの思いやりが分かる。
 結局話は終わらず、次回に続く。二話続けるとなんと2時間になる。映画一本分だよ。
<今回も嘔吐シーンあり。今回はエアリンだが、流石に女性だけに描写は抑えめ。でも私はこういうの嫌い。
 それにしてもここでジリーナと再会とは、偶然も行きすぎてるな。
 ジョンが受けている拷問器具はほとんど「トータルリコール」。そう言えば「未来世紀ブラジル」にも似たのが出てたけど、拷問器具ってどこか似てるものになるんだな…そうか。これって歯医者の椅子なんだ。
 どうでも良いけどここに出てくるピースキーパーの兵士って「宇宙空母ギャラクティカ」のサイロン人そっくりだな。しゃべり方も含め。>

VOL.10
第20話 消された記憶
“THE HIDDENMEMORY”
 神経節の入手により命が助かったエアリンだが、今度はジョンがガマック基地に捕らわれてしまった。怪我をおしてジョン救出に向かうエアリン、ダーゴ、ザーンの三人。一方モヤは出産の時を迎えようとしていた。
 前回の続きで拷問を受けるジョンとその救出。そしてジリーナの死が描かれる。
 前回もちょっと語られていたが、ジリーナはジョンに惚れているらしい。パターン的にこういうキャラが長生きするのは稀。しかし自分を犠牲にしてまでジョンを助けようとするのは、過剰な献身的行為に見える。それで振られたと思いこんでの死とは、あまりに寂しすぎる。
 そして同時にモヤの出産風景があるが、なんと生まれた子どもは武器だらけ。なんという生物だ。
 前回から登場したクライスだが、結局罠にはめられるためだけに登場してきたという可哀想な役どころだった。一方スコーピアスの存在感は無茶苦茶あり。涼しい顔してとんでもないこと平気で言うキャラだが、その容貌やねっとりしたしゃべり方と相まって、実に素晴らしいキ●ガイキャラに仕上がってる。凄い好みのキャラだよ。
 初めて武器を持って攻撃するザーンの姿が見える。このキャラはこういう事やらせちゃ行けなかったんじゃないかな?今回ほとんど存在感のないライジェルとチアナだが、妙に艶めかしいシーンに。ちなみに緊張するとライジェルはヘリウムガスを出すことが分かった。いきなりチアナとライジェルの声が変わってしまった。
<救出に来たエアリンを見たジョンの同室のスタークがひと言。「ここに何人知り合いがいるんだ?」確かにその通り。このシリーズは偶然の要素が強すぎる。>
第21話 エイリアン
“BONE TO BE WILD”
 ピースキーパーの追跡から逃れるために小惑星群に逃げ込んだモヤ。だが、ピースキーパーの包囲により身動きが取れなくなってしまい、船内温度はどんどん低下していく。そんな時救助信号をキャッチする。一方クライスとスコーピアスは小惑星群からモヤを追い出すためにまずモヤの子供をいぶり出そうとしていた。
 話そのものは独立しているが、これも前回からの続き。救難船救出の話だが、救出を求めたのが実は本当はモンスターだったという話。相当とも理があるので、どちらを信用するか?と言うのが本作の肝となる。前2話が続き物だったので一本普通の話を持ってきた感じだが、最終回に向けての伏線もちゃんとあり。原題は完全にパロディだな。
 これまでジョンやエアリンばかりにスポットが当たっていたが、今回はザーンやダーゴも個性見せてる。ダーゴは撃たれて瀕死の状態になっただけだが、ザーンはデルビア人が植物から進化した姿であることを明かし、緑のある所では姿も隠せることが分かった。それとエアリンがモヤの子供に母性本能のようなものを持ち始めたが、それはモヤとその子を最優先に考えるようになってきたということ。。ザーンが光を好きなのはそのためだとか。一方ライジェルとチアナは全然良い所なし。
 モヤを追うピースキーパーはクライスに加え、スコーピアスまでもが参加している。しかしこの二人は相当に馬が合わないらしく、トラブルばかり。スコーピアスは普段は慇懃無礼といった感じだが、実は無茶苦茶強い。
 モヤの子供は実はピースキーパーによって遺伝子操作された戦艦と宇宙船のハイブリッドであることが発覚。モヤと心を通わすためにエアリンが乗り込むが、既に内部は完成した戦艦と言った風情。ピースキーパーの技術力は相当なものだ。
<ブルニーの機械は植物を縮小させることが出来るので、ザーンも縮小させた。だけど服まで小さくなるか?
 結局エムリーはピースキーパー用のブービートラップとして残される。酷い扱いではあるな。シャレが効いてる。>

VOL.11
第22話 鋼鉄の絆
“FAMILY TIES”
 ピースキーパーの包囲網から逃れられないと判断したライジェルはモヤの位置を教えることを条件にクライスに投降する。一方ジョンとダーゴはモヤを小惑星群から脱出させるために敵の目を引きつけようと、自らを犠牲にした作戦を決行するのだが…
 いよいよ第1シーズン最終回。クライスおよびスコーピアスの連合軍との一応の決着が付く。海外SF作品にありがちで、あくまで一応だが。最後の戦いに向け、それぞれのキャラの覚悟と行動とが描かれる。
 話も二転三転で、最後まで気の抜けない話に仕上げられている。最後にモヤを救うためにジョンとダーゴは特攻に近い突撃を敢行。
 最初の反応は、ライジェルは我が身可愛さに逃げ、ジョンとダーゴが自分たちを犠牲にしてモヤの血路を開こうとする。残された女性陣は、エアリンがあくまで戦士たろうとして、ザーンは居残り。チアナは既にこの船の一員として最後まで残ろうとする。
 ここに来てしばらく活躍の場の無かったライジェルが今回は個性を見せている。ジョンはエアリンとなんか良い雰囲気になってタカト思ったら、直後にチアナとも。急にモテ始めたね。一方ダーゴはやっぱかっこええわ。
 一方ピースキーパーの方もごたごたが続き、実権を握られてしまったクライスはスコーピアスをなんとかしようと、なんとモヤの方に助けを求めている。最後はモヤの子供を強奪し、強引にスターバーストで逃げてしまう。
 そして最後、全員が離ればなれになってしまったところで「完」…って、こりゃないよ。シーズン2は観られるだろうか?
<こういう危機的状況の中で笑えないジョークで笑うのはアメリカだけかと思ったけど、イギリスでも同じようだ。それとも真似たのかな?
 モヤの子供を命名したのはエアリンだったが、その名前は「テラン」。ひょっとしてジョンに敬意を表して地球という名前を付けた?と考えられるけど、一方1話で逃げてきた囚人惑星の名前が「テラン・ラー」。不吉な名前を付けた気もする。
 いくらモヤを救うためとは言え、結果的に惑星一個を破壊するという描写はいかがなものか?>