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グェン・ホン・セン
CANH DONG HOANG

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鑑賞本数 1 合計点 4 平均点 4.00
書籍
2008
1980 無人の野 監督

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無人の野 1980

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グェン・クァン・サン(脚)
グェン・トゥイ・アン
ラム・トイ
グェン・ホン・トゥアン
ダオ・タイン・トゥイ
ホン・キー
ロバート・ハイ
★★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 ヴェトナム戦争末期。米軍は北ヴェトナムの進行を抑えるために緩衝地帯を設置。その間にある村を全員避難させ、重点的な爆撃を繰り返していた。だが無人となったはずの村に、一つの家族が残っていた。川に隠れ、爆撃に恐れつつもたくましく生きる一つの家族を描く。
 泥沼となったヴェトナム戦争を描いた作品。これまで観られたヴェトナム戦争映画は
『ディアハンター』『プラトーン』のように基本的にアメリカで作られたものばかり、当然視点もアメリカから見たヴェトナムが中心だが、本作はそのヴェトナムで作られた作品と言うのが最大の特徴。
 ヴェトナムにももちろん映画はあるが、これまで多くの国がそうだったように、映画は国民に対するプロパガンダとして用いられることが多かった。最も映画が作られたのはまさにヴェトナム戦争の時代で、この時は北と南に国が分断された状態で、それぞれが相手を攻撃するような映画を作っていたのだが、その作り方は大きく異なっていたと言う。北ヴェトナムの映画は国営製作会社によるもので、まさしく社会主義の啓蒙映画という感じ。一方南ヴェトナムはアメリカ資本の入った民間会社によって映画製作がなされていたため基本は娯楽作品が作られていた
(ちなみに今はフィルムの多くは廃棄されてしまったそうだ)
 やがてヴェトナム戦争が停戦となり、アメリカ軍が撤退すると、全土で映画製作は国策となっていくが、南の製作会社自体は残されたため、細々と民間で映画も作られ続けていく。
 本作はその残された南の民間製作会社によって作られた作品で、国の検閲を通っているためにイデオロギー色は強いが、その中でもドラマを描こうと最大限努力しているのが見て取れる。
 ここでは戦争によって蹂躙され尽くされた村が舞台となっている。戦争の被害者に視点を合わせて描かれるヴェトナム戦争は非常に新鮮な思いをもって観ることが出来るが、何よりここで面白いのは、どんな場所でも、その場所に応じて生活が成り立っていると言う事実だろう。雨期にあって増水した水の中、舞台の大半は水の上で展開し、時としてアメリカ軍の攻撃を避けたり、哨戒から逃れるために水の中でも話が展開していく。悲惨ではあるが、そんなギリギリな中でも、ちゃんと生活は成り立っていて、生活もできているし、一方的に被害者にはなっていない家庭が描かれている。ちゃんとその意味ではドラマも成り立っていて、映画単体としても優れた内容になっているので、もし機会があれば観てほしい作品でもある。
 私にとってもヴェトナム映画を目にするのは現時点では本作が唯一で、非常に良い経験をさせてもらった。

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