鬼戦車T−34
Zhavoronok |
|
|
ミハイル・ドウジン
セルゲイ・オルロフ(脚)
ヴヤチェスラフ・グレンコフ
ゲンナジー・ユフチン |
|
★★★★ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
3 |
4 |
4 |
4 |
4 |
|
ドイツ東部にあるソ連軍収容所にいたイワン(グレンコフ)ら三人は、兵器実験の標的のためT−34型戦車に乗せられる。だが、天才的な操車技術を持つイワンのお陰でまんまと脱走に成功する。ドイツ国内を走り回るT−34だったが…
1942年の実話を元に映画化した戦争映画にしてソ連製国策映画。実話を元に、かなりリアリティのある作品に仕上がっている。まあ、実際の話テンポはあんまり良くないけど、全編が妙にユーモラスだし、カメラ・ワークもなかなか見事。特に女性捕虜との交流とか、お花畑の中を疾走するT−34の雄志など、映像的に見るべき部分は多い。悪意を持って見る限り、ラストは出来すぎな印象も受けるが、こういった虚しさの強調はとても好み。
標的用だと言う設定だから実包は積んでないが、町の中を闊歩する戦車の雄志は感動的なものがある。
それに、戦車描写だけでなく、戦車と自然との対比もなかなか優れた描写を見せている。戦車が戦乱を示すなら、自然は平和を表す。自然を踏みにじるのではなく、その広大な自然の中にぽつんと戦車が存在する。なかなか皮肉の効いた描写だと思うよ。
以降くだらん蘊蓄を少々。
第2次世界大戦、殊にヨーロッパ戦線においては機動力の主体、戦車が非常に有効な兵器として用いられたが、その中でも名機と呼ばれる戦車がいくつかある。最も有名なのはドイツ製のティーガー(呼び方は様々。ティーゲルだったり、タイガーだったり)。これは大戦中の最強戦車の誉れが高い高性能の重戦車。それに対し、もう一つ挙げろと言ったら、やはりこのT−34と言うことになるだろう。ティーガーが単体としての性能を追求したのに対し、T−34は全くベクトルが違い、とにかく比較的安価で量産のしやすさ(ソ連のT−34生産ラインは1941年につぶれてしまうのだが、設計図を元に急造ラインから更に多くの車両が生産された)と簡易な操作能力、スピード(T−34の基本設計の元になったのは高速戦車であるBT戦車。その速度をそこそこ保ちながらも装甲を増し、重砲が積めるようにと言うのが基本コンセプト)、多用途への転用(事実T−34は膨大な数の派生型があり、主力戦車でありながら、偵察車両や工兵車両、果ては兵員輸送車両に至るまで様々に用いられた)に重点が置かれた。それに見合うだけの性能を持っていたT−34(T−34/76)はものすごい数が生産されるに至る。この戦車が対ドイツ戦線の勝敗を決したとまで言われる。旧ソ連はアサルトライフルの名銃AK-47(カラシニコフ)であれ、T−34であれ、安価で性能の高い兵器を作るのに秀でていた。事実T−34/76の改良型であるT−34/85は現在でも中国などでは現役で使われている。
|
|