冬の間氷で出来た家に住んでいたキツネが春になって家が溶けてしまうと、今度はウサギが住んでいた家を占拠してしまう。家を追い出されたウサギは森の動物に声をかけ、キツネを追い出してもらおうとするのだが、キツネは強く、みんなたたき出されてしまった。そして最後にウサギが見つけた動物とは…
我々が普通アニメーションと一口で括られるものの大部分は実はセルアニメーションと言われる狭い範囲の作品(現代ではディジタルで行われることが多いので、セルは使用しない場合もあるが)。しかし、そもそもアニメーションというのはラテン語で「霊魂」を意味するanimaから来ており、命のないものに命を吹き込む。と言う意味を持っている。だから、本来無機物が、あたかも生きているように動いているものを映像化すれば、それはすべからくアニメーションと言って良い訳だ。
そう言う意味ではセルアニメーション以外にも数多くのアニメーションは作られてきた。代表的なのは『ピングー』や『ウォレスとグルミット』などで用いられているストップウォッチ・アニメーション(クレイ・アニメーションとも)。他にも人が背後で動かしているというパペット・アニメーションもあり、絵を動かすにせよ、セルではなく、本当に絵を何枚も何枚も描いて、ぱらぱらアニメのようにしたペーパー・アニメーション(『木を植えた男』が有名)。面白いのだと、フィルムそのものに絵を描くとか、あるいは傷を付けることで動かすペインティング・アニメーションという特殊なアニメーションもある(これを用いてエジソンはなんと19世紀にカラー映画を作り上げた実績を持つ)。最近では直接CGで描くCGアニメーションも徐々に主流化してきた。
そう言う意味で、一口にアニメと言っても色々あるのだが、その可能性を追いかけていく作家として一番有名で、且つ支持されているのが本作の制作者ユーリー=ノルシュテインで、特に本作はストップウォッチ・アニメーションとペーパー・アニメーションを組み合わせた、ユニークな作品に仕上がっている。僅か12分という短さの中に込められた技術と手間はとんでもないもので、一コマ一コマ、切り貼りの絵を組み合わせて、ガラスに封じて撮影という、その技術を見るだけでも堪能できる。
物語は他愛のないもので、おそらくは民話から取られているのだと思うのだが、絵であるにせよ、そこに動き回る動物たちの活き活きとした表情と言い仕草と言い、観てるだけで幸せな気分にさせてくれる。子供なら素直に、技術を知ってる大人ならその驚くべき技術に酔いしれることが出来る。貴重な作品である。
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