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筒井康隆

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17'08'05 アホの壁
 人は何故いつも阿呆なことをしてしまうのか。そこには何らかの心理的なものが働いているのでは無いかという観点から、阿呆な行為のメカニズムを追う。

 これは養老孟司の「バカの壁」が大当たりを取ったための便乗の題だが、少なくとも著者にはそれを認めて良いと思うし、そう思う人が多いからこの企画も通ったんだろう。
 著者は哲学および心理学に造詣が深いが、それを踏まえて悪意たっぷりに書いているため、内容はかなりの荒唐無稽で、分析の体裁で日頃不満に思ってることをここでぶちまけてる感じ。実に著者のエッセイらしくてよろしい。
<A> <楽>
05'04'18 恐怖
 姥坂市で文化人ばかりを狙った連続殺人事件が起こる。次々に起こる殺人に、姥坂に住む文化人達は疑心暗鬼へとなっていくが、特に最初の事件の目撃者であり、同じく文化人を自認する作家の村田勘市は、次は自分の番かも知れないと言う強迫観念につきまとわれ、やがて半狂乱へとなっていく…

 本作は断筆からの復帰後の作品らしいが、著者らしさは相変わらず高いレベルを誇っている。しかもそれのみならず、題にあるように、本作は本質的な恐怖というやつを、「どうだ!」とばかりに見せつけられたような気持ちにさせられる。人に本当の恐怖というのは、超自然的なものでは全くなく、身の回りの他者、そして何より自分の内面へと転換していく。やがて自分が狂気に冒されているのではないか?と言う思いがどんどん高まっていくと言うところにこそある。その課程の描写が本当に見事。
<A> <楽>
12'08'09 脱走と追跡のサンバ
 恋人の正子と一緒にボートに乗りに行った“俺”。だが正子に言われるままボートから降りた“俺”の人生は一変してしまった。違和感のある今の世界は、実は自分の本来の生活ではないと悟った“俺”はこの世界からの脱出を図る。だがそんな“俺”を追いかける追跡者の存在と、更にその背後にいる正子の存在が明らかになっていく…

 これも随分昔から積ん読の中にあったもので、たまたま手にとって読んでみたが、これは間違いなく面白い。著者にとっては初期の作品であるが、虚々実々に世界のあり方から心理学、哲学まで網羅した上で徹底的にパロディにするという著者の魅力が詰まったような話になっている。もっと早く読んでおいた方が良かったというのが正直な感想。勿体ないことをしてしまった。
<A> <楽>
15'12'06 断筆宣言への軌跡
 1993年に断筆宣言をした著者(現在は復帰しているが)が、断筆宣言をするに至るまで、比較的規制の緩やかな「噂の真相」誌上で書いてきたエッセイをまとめたもの。

 約15年にわたり、“差別”について書いたものを集めた作品。日本の文壇が“自粛”によって、自由な表現を規制してきたことを間近で体験してきた著者が、その怒りを高めてきたタイムラインが見えてきてなかなかに興味深い。直接的には著者の「無人警察」が日本てんかん協会から抗議を受けたことがきっかけだが、それに至るまでも確かに歴史があったことが分かる。
 表現は自由であるとは言われるが、一方で様々な立場の人たちに配慮する必要もあるため、乱暴に一括りにするわけにはいかないが、そのせめぎ合いは大切な事なんだろう。
<A> <楽>
17'02'25 ビアンカ・オーバー・スタディ
 自分が美しい天才少女である事を充分に自覚している“わたし”ビアンカ北町は、いつもスリリングさを求め続けていた。今は生物研究部員として、生殖の研究を進めているのだが、ある日不意に動物では無く人間の生殖を実験室で行う事をひらめいた。いてもたってもいられなくなった“わたし”は自分の崇拝者である後輩の塩崎哲也から精子を手に入れる。これをどう使うか思案していく内…
 著者初のライトノベルという触れ込みで書かれた作品。考えてみると、日本のSF初期に、いわゆるジュブナイルを“発明”したのが著者とするなら、オリジンが子孫を真似てるという不思議な逆転現象になってる。
 それで著者が描いたラノベというのは、70年代全盛期の著者が「涼宮ハルヒ」を描いたらこうなるだろう。というものそのもので、想像豊かな人だったら吐き気を催すレベル。よくもこんなのを「ラノベです」と言って出せたもんだ。グロすぎるわ。
<A> <楽>
15'11'14 文学部唯野教授の女性問答
 著者の創造した文学部唯野教授が雑誌連載の形で、様々な女性の質問に対し、哲学者の言葉や生き様を通してアドバイスをする。
 連載時がかなり昔なので、哲学の素材もかなり古いものとなってるものだが、これはこれでかなり楽しい。哲学をかなりかみ砕いて提供するため、読んでいて実に楽しい。
 それに著者のキレは断筆前のこの時代が最も輝いているんだよな。やっぱりこの時代の著者作品はとても面白い。
<A> <楽>
16'06'03 モナドの領域
 ある地方都市の公園で女性の右腕が発見された。その時からこの地には少しずつ奇妙な出来事が起こり始める。やがてGODを名乗る人物が現れ、軌跡の力を見せ始める。そんな彼を慕い、次々に人が集まり、ついには裁判沙汰にまでなってしまうのだが…
 著者の集大成という帯に惹かれて読んでみたが、なるほどこれは本当に集大成である。SF作家として知られる著者だが、デビュー当時からナンセンスなメタギャグや哲学領域、心理学にまで踏み込んで、ジャンル分け不可能な作品を次々書き込み、しかも年代によってその作風もコロコロ変わる。実は本作は、70年代から現在までの著者の書いてきた作風全てを包括する。著者の作品を読み込んでいくほどに、本作のまとまりには脅威を覚えるはず。
 本作は哲学領域の作品として読むことも出来るし、実際それで充分成立はしている。ただし、完璧な理論武装を展開しておいて、「そんなのどーだっていいじゃん」でまとめているところが実に著者らしい。その意味でも確かに「集大成」である。
<A> <楽>