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紅茶の話3

紅茶の話 その13  ここで中国の茶全般についてもちょっと述べておきたい。
 中国の茶と言うのは大きく分けて6種類ある。全てに色の名前が付けられており
、白、黒、青、黄、紅、緑となる。勿論全て同じ茶の葉から作られている。
 折角だから一つ一つについて述べさせてもらおう。
 
白茶(はくちゃ):緑茶をほんの少し発酵させたもの。白毫と呼ばれる白い毛を多量に含むのが特徴。これは全て新芽だけで作られるお茶だけに高価となるそうで、私も飲んだことはない。
 
黒茶(こくちゃ):これは日本でも比較的手に入りやすい。一番有名なものだとぷーあーる茶がそれ)。この特徴は一旦緑茶として作ったものを寝かしておき、徐々に発酵させたもの。プーアール茶が黴臭く感じるのはそこだ。本当に黴びてるんだから(笑)。しかし、これが実は黒茶の最大特徴で、この黴の成分がえも言えぬ風味を増す。新茶が好まれるように、お茶は新しいものが好まれるのだが、唯一これだけは例外。年数を重ねるほどに高価になる。30年ものなんかもあるそうで、これになると本当にグラムで数万するとか。
 
青茶(せいちゃ):いわゆる烏龍茶がその代表。紅茶と緑茶の製法を半々に取り入れたもの(この言い方は少々乱暴。ちゃんと独自の製法がある)、半発酵茶と言わる。割合苦みが少なくスッキリした味わいがある。
 
黄茶(こうちゃ):緑茶をほんの少しだけ発酵させたもの。青茶と似た工法が用いられるらしいが、むしろ青茶の方がメジャーになってしまい、白茶同様現在では殆ど飲まれていないらしい。
 
紅茶(こうちゃ):言わずと知れた紅茶のこと。このエッセイの主題でもある。昔はあまり作られていなかったそうだが、イギリスへの輸出用に多量に作られるようになり、現在に至っている。
 
緑茶(りょくちゃ):これ又日本に住む人なら馴染みの味である。特に最近はペットボトル入りの緑茶が烏龍茶を抜いて良く売られている。前に述べたが、中国の緑茶と日本の緑茶はやや異なるが、基本的には同じものである。

白茶

黒茶(プーアール茶)

青茶(ウーロン茶)

黄茶

中国紅茶

中国緑茶
紅茶の話 その14  紅茶が好きなら中国紅茶にははまるな。と言う言葉を聞いたことがある。
 気がつくと紅茶ではなく中国茶そのものにはまっている自分に気付くからだそうだ。
 今のところ、私が飲んでいるのはキーマン、ラプサンスーション、そしてアールグレイ程度だが、確かに普通飲んでる紅茶は全部中国産。その傾向は確かにあるようだ。
 確かに茶そのものは中国から始まり、その歴史たるや二千年に及ぶ。日本でお茶が入ってきたのは唐の時代だから、千二百年ほど前。ヨーロッパで茶が飲まれるようになったのは高々四百年ほど前に過ぎないのだから、茶の歴史の源流であり、そして世界で最も豊富に、茶樹が作られているのも中国。
 それだけにそのヴァリエーションは実に豊富。そう言うのをテイスティングして、味が分かってきたら、確かに嬉しいだろう。確かに憧れもする。
 それで何故中国茶にはまるな。と言われるかは単純。
 値段である。
 何せ中国は華僑に代表されるように、商売上手。クズのような茶葉を最高級と偽って売るなど日常茶飯事で、高い金出して、これは美味い。と思っていたら、何のことはない。
「高さ」で美味さを感じているだけ。と言う笑えないオチがついたりする。
 結局
確実な買い物をするためには本物の高級茶を何度も何度もテイスティングして自らの舌を磨くしか方法が無い。本物の高級茶等というと、値段も馬鹿高い。紅茶が百グラムせいぜい三千円程度、高くても万を超えるものはそう多くないのに対して、グラムで万単位と言うとんでもないのまであるのが中国茶なのだから。
 桑原桑原。
ラプサンスーション

アールグレイ
紅茶の話 その15 紅茶の飲み方は千差万別。今までここで話してもきたが、茶の本場中国では基本的にストレート。それに対し紅茶の本場イギリスではミルクティーが普通である。他にも南アジアで主流のチャイもあるし、ジャムを入れるロシアン・ティと言うのもある。一つ一つで充分コラムが書ける魅力的な素材ばかり。
 それで十年ほど前から日本に入ってきた新しい紅茶の飲み方がある。
 
「ロイヤル・ミルクティ」それがその紅茶の名称。
 スリランカ茶をベースとして、水を用いずに熱した牛乳をお湯代わりに用いる方法である。牛乳と茶葉を一緒に煮出すチャイと違い、茶葉はあくまで「蒸らす」のが特徴。
 変わった飲み方なので、紹介記事を見つけたときに早速作ってみて、何度も失敗したものだ。
(後になってその理由ははっきりするが、それは又筆を改めて)
 冒頭に
「ロイヤル」と付くことから、王室との関わりを思わされ、高級感が感じられる。イマジネーションがたくましい人だったら、こうやって王室では飲んでいたのだろうと、未だ見ぬイギリス王室を紅茶の湯気に思い浮かべているかもしれない。
 
だが、ちょっと待って欲しい。
 イギリスの高級な紅茶の飲み方と言うのは、茶の質もさることながら、その器を愛でるのも一つのステータスとなる
(この辺、日本の茶道にも当てはまるが)。白い陶磁の中にたゆたう水色の液体に白いミルクジャーから軽くミルクを流し込む手順。そしてそこから漂う芳醇な香り。これが紅茶の楽しみ方だ。
 そして、このいわゆる「ロイヤル・ミルクティ」は淹れてみると分かるのだが、沸騰させた牛乳をベースにするため、透明感は全くなく、しかもベタベタする。更に飲んだ後脂肪分が固まって器に付着するため器を愛でることも出来ない。これに高級感を感じることが出来るだろうか?
 
感じられると言う人は結構。だが、私はどうしてもそれが疑問だった。
 先日ようやくその謎が解けた。
 ぶっちゃけた話。これは勝手に日本人が付けた名前だったのである。実は共通言語としての「ロイヤル・ミルクティ」なる名称は存在しないのである。
 どこかのメーカーがミルクティーを売り出すときにたまたまその名称を作ったところ、それが一般的に普及してしまったそうだ。

 これからは「ロイヤル・ミルクティ」はその名称の上に
「いわゆる」を付けて用いた方が良いかも知れない。
ロイヤルミルクティ
紅茶の話 その16  前に書いたが、紅茶と言うのはいくつかの定まった産地がある。最もよく飲まれるのがスリランカ産。その後でインド産、中国産、ケニア産と続くのだが、これだけお茶が作られているのに、日本産のが無いと思われるかも知れない。
 簡単に言ってしまうと、日本産の紅茶と言うのは、ほとんど無く、流通に流れることは少ない。前に私が大学卒業して就職説明を受けた茶の研究所
(落ちたけど)では静岡の普通の緑茶用の茶葉を研究室内で紅茶にしていると説明を受けた。結局研究室用でしかないのかな?とか思っていたら、ちょっと前、面白いニュースをNHKでやっていた。
 日本でもちゃんと商業用の紅茶が作られているというのだ。
 しかも、その産地は鹿児島。私が今住んでいるところに他ならない。確かに鹿児島も田舎に行くと茶樹をよく見かけるが、こいつは盲点だったな。
 紅茶のネット通販をしているところを覗いてみたら、少量ながらそこで売っている事がわかる。
 それで注文しようかどうか迷っていたら、売り切れてしまった(笑)
 私は紅茶の嗜好がはっきりしているので、好みでなければほとんど飲まないし、今持っているティーポットは中国茶専用だ
(一回他の紅茶をそれで淹れてしまうと匂いが付いてしまい、その後何杯かはどうしても味そのものに違和感を覚えるのだから、あまりやりたくない)。そう言うことで、結局鹿児島に住んでいながら飲む機会は無いかな?とか思っていた。

 つい先日、職場の同僚がニコニコして私に声をかけてきた。実は給湯室の整理をしていたら、古い紅茶のパックが出てきたと言うのだ。ちょっと冒険だけど、飲んでみません?と言われ、その紅茶の袋を貸してもらった。
 紅茶、とラベルには書いてあるが、どう見ても普通の緑茶のパック。おや?と思って製造元を見てみたら、
「鹿児島産」と書かれていた…
 何でこんな所に?ちょっと目が点になってしまった。
 
「勿論頂きます。どうせだからみんなで飲みましょう」。そう言って職場に備え付けてあるティーポットを使って淹れてみた。

 やっぱり古かったから風味は少し落ちていたが、ちゃんと香りもするし、味もちゃんとしていた。
 味も香りもほとんどスリランカ産と変わらない。だけど、微妙に独特な緑茶の風味もした。なるほど、これが日本産の紅茶の形なんだ。何となくそれで理解できた。
 これで一つ、又良い経験をした。
鹿児島産紅茶
紅茶の話 その17  何度か書いているが、私が好きな紅茶はキーマン(キームン、キーモン)である。
 これは世界三大紅茶(スリランカ、ダージリン、キーマン)と言われるほどメジャーな紅茶の割に、日本では結構手に入りにくい。コツが分かれば結構簡単に手に入る場合もあるが、デパートの地下の輸入専門店でさえ置いてないところがあるのだから、ちょっと困る。
(鹿児島には紅茶専門店があり、そこには二種類のキーマンが置いてあって重宝してる)
 実は紅茶の本場イギリスでもキーマンは特別な時に飲まれる紅茶として位置づけされているらしい。現在の女王エリザベス2世はこの紅茶を好んでいるらしく、毎年の誕生日には特別製のキーマンを王室に振る舞うのだとか。そう言うのを飲んでみたい。
(言うだけは無料)
 ただ日本では今ひとつマイナーな紅茶だ。それは、生産地が極めて限定されることと
(中国の祁門県のみで生産される)、無農薬で、全ての工程が手作業で行われる事などが挙げられる。それで生産量があまり多くなく(年間数百s程度)、その大半はイギリスで飲まれてしまうと言う問題がある。
 時間があるとついつい淹れて、場合によっては100グラムを2週間で飲んでしまう私だが、これもある意味資源の無駄遣いと言えなくもない。
祁門紅茶
紅茶の話 その18  私は自分で淹れる分にはあまり飲むことがないのだが、大切な紅茶の飲み方にミルク・ティがある。外で紅茶を飲む場合、もっぱら私はこれにしている(不味い紅茶を飲むくらいなら不味いコーヒーを飲む方がましなので、普通ならコーヒーにするけど)。
 喫茶店などでミルクティを注文すると、色々な出され方をする。最初からミルクが入っている場合もあるし、紅茶とミルクが分かれていて、ちゃんとミルクピッチャーに入った牛乳が出される場合もある。
 最初からミルクが入って出てくるとか、プラスチックのコーヒーミルクが付いているのは論外として、ちょっとコツなどを。
 ミルクピッチャーと共に出てきた場合、ちょっとそのピッチャーをさわってみると良い。良い店だとちゃんと暖まっているはずだ。冷たい牛乳を熱い紅茶に入れるのは避けるべき。せっかくの紅茶の熱さが損なわれるし、何より牛乳の脂肪分が紅茶の表面に固まって、見た目も味も落ちるようになる。
 牛乳及びピッチャーをちゃんと暖めて出すのが良心的、と言うより、金を払ってるんだから、その位して欲しい。
 あとこのミルクを紅茶に入れるとき、ピッチャーを持って少し揺り動かしてみて欲しい。ミルクは熱すると脂肪分が固まって表面に皮膜を作る。これは避けられないことなのだが、同じ温度でも皮膜が多い牛乳と少ない牛乳とがある。それを見て欲しいのだ。
 日本で市販されている牛乳の大部分は
高温殺菌牛乳(100℃以上で数秒殺菌したもの)だが、これは実は皮膜が非常に出やすい。ピッチャーを揺すると皮膜が厚いことが分かる。これはミルクティには向かない。向いているのは低温殺菌牛乳の方(50℃〜60℃程度で1分以上加熱殺菌したもの)。これを使っていると皮膜はあまり多く出ることなく、しかもミルクティには実に合う
 ピッチャーを揺すって、その中身の牛乳が低温殺菌のものだと分かれば、その喫茶店は紅茶のことを本当によく分かった喫茶店だと言うことになる。そしたらピッチャーを揺すって皮膜をピッチャーにくっつけてから、温かいミルクを紅茶に注いで飲んで欲しい。ミルクの分量はお好みで。砂糖をたくさん入れる人はミルクもたくさん入れる方が良いし、あまり甘いのが好きではないと言う方だったら、ほんの少し、色が付く程度に流し込むのが良い。
 もう一つコツを言うなら、紅茶の色をちょっと見てみると良い。ストレートと較べ、ほんの少し濃くしてあるなら、それはよく分かっている証拠。ミルクの味に負けないよう、濃いめに淹れるのがコツ。
 それでミルクを入れる時は、そのままミルクを注ぎ込むのではなく、一度スプーンを用いて攪拌してから、紅茶が回転している内に少しずつ注いでいく方が良い。その方がミルクの混ざり方が均等になるし、ミルクの被膜防止にもなる。
ミルクピッチャー(高級)