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紅茶の話4

紅茶の話 その19  ミルクティについてもう少し。
 ミルクティはイギリスでは普通紅茶と言ったらミルクティを飲む。勿論ストレートで飲む人もいるらしいが、スタンダードは甘くしてミルクをたくさん入れて飲む。
 この飲み方がスタンダードになったのはいくつかの理由がある。
 先ずイギリスでの水が硬水であること。前にも書いたが、硬水と言うのは茶のタンニンと結びつき、沈殿を起こしやすい(茶渋)。そうすると味が落ちるし、見た目も悪い。だからミルクを入れてそれを見えなくするのと同時に、味に丸みを持たせる。茶の純粋性は薄れるが、会食用には丁度良いだろう。少しさましてから沈殿した茶渋を飲まないよう注意し、残った茶渋で紅茶占いもできる
(寡聞にして私はそのやり方は知らないが、残った茶渋の形で占うんじゃなかったか?)
 そしてもう一つの理由。これは歴史に関わる。
 これも前に少し書いたが、茶がイギリスに渡ってきたのは産業革命時代。上流階級に行き渡った紅茶は労働者階級にも入り込んでいった。
彼らが飲んでいたのはアイルランドやスコットランドで「抜き荷」した紅茶で、言ってしまえば「低級品」のレッテルを貼られているもの(実際に質が悪いわけではないんだけど)。とにかく安く、多量に仕入れたものを仕事の合間に飲んでいた。
 重労働の後で飲むものだから、疲れを取るためにも甘く、そして栄養があるものが良い。そう言う意味でミルクティというのはうってつけの飲み物だったわけだ。
 中国のお茶がストレートで飲まれているのに、イギリスではミルクや砂糖を入れる理由はこんな所にもある。
 そして勿論、ミルクや砂糖を入れる場合、茶が生っぽいとあまり合わないので、緑茶や青茶(烏龍茶みたいなの)ではなく、完全発酵茶である紅茶が好まれるわけだ。
紅茶の話 その20  私たちが普段飲んでいる緑茶が中国から来たと言うことはご存じの方も多いだろう。それでその原産国の中国には面白い伝説がある。
 全ての茶樹は
たった一本の茶樹から枝分かれしたというものである。どこだったか忘れたが、その木は観光地になってるとか…もし本当なら樹齢1000年以上になるんじゃないのか?まあ、眉唾な話には違いないが(DNA鑑定すると、日本の緑茶と中国茶は種類こそ同じだが、ほんの僅か系統が違っていたと言う記事を丁度つい先日読んだ)
 しかし伝説通りだとすると、日本で飲まれているのも、スリランカやケニアで作られているのも、当然ながら中国で作られているのも、全く同じお茶の種類と言うことになる。それでこれだけ個性的になるんだから、お茶というのも面白い。世界中のほとんどの紅茶や緑茶が一系統と言うのは、結構ロマンティック。

 ただ、実は茶樹の種類が違う紅茶が一種類だけある。
 インドの
アッサム紅茶。この紅茶の茶樹だけは完全に系統が違う。
 実はこれ、インドの高地に自生していた茶樹をイギリス人が見つけ、それを栽培してみたのが最初だという。
 味そのものは野性味溢れているため、ミルクティによく合う紅茶だ。
ダージリン
紅茶の話 その21 何度も書いているが、私が好きなのは中国産の紅茶。だが、私の紅茶好きは知れ渡っているので、何かの折、よくプレゼントに紅茶を頂く。ただ、さすがに中国産の紅茶を持ってきてくれる人は少なく、大概はティーバッグとかが普通。そうでなくてもスリランカ辺りの紅茶が多い。そう言う紅茶は大概頂いた後で職場に持ってきて給湯室においておくのだが、先日家の台所を整理してたら、結構な量のリーフティが出てきた。それでちょっと考えて、これは飲むことにした。
 実は面白い紅茶の飲み方があって、久しぶりにそう言う淹れ方をしてみたら、美味しく淹れることができたから。
 実はチャイにして飲んでみた。
 チャイというのは茶葉を牛乳で煮立てる方法
(煮立て紅茶と違うのは、スパイスを入れる点)。やや手間はかかるが、ティーポットがいらないので、折角の中国茶専用にしたお気に入りのティーポットを使わなくて済む。
 一応チャイの淹れ方についても書いておこう。
 先ず小さめな鍋を用意し、カップ一杯程度の水を火にかけて沸騰させる。そこにスプーン山盛り一杯程度の茶葉を入れて大体5分くらい煮出す(ティーバッグでも可)。そこに水と同量の牛乳を(先に書いたが、ここでは低温殺菌のものを使う方が良い)入れてかき混ぜながら沸騰させる。
 牛乳が沸騰し、盛り上がりかけたところを見計らい、火を止めてスパイスを入れてから、それを大きめのティーカップに漉して入れる。(スパイスによっては一緒に煮た方が良い場合もある。タイミングは種々様々)
 チャイを淹れるコツはとにかく目を離さないこと。茶葉が鍋の底にくっついて焦げたりしないように、そして牛乳を入れた後で牛乳の脂肪分が固まらないように注意をする必要がある。だから牛乳を入れた時にはとろ火にしてかき混ぜ続ける。

 後はどんなスパイスを入れるか。これも結構選択肢がある。私が現在使っているのはシナモンスパイスだけだが、これも色々な種類があるらしい。残念ながらあまりたくさんは私も知らない。
 後一応。チャイはインドで飲まれている飲み物なので、本当なら茶葉はダージリンの屑茶を用いる。だが、これは何でも良い。逆にスリランカ茶は味そのものが素直に出来ているので、様々なスパイスに合いそうだ。
(チャイを作る場合、良い紅茶はあまりお勧めできない。むしろ安っぽい紅茶の方が絶対に美味しい)
 あと、これは出来るだけ甘くした方が美味い。砂糖をがんがんに入れて飲むべき。あるいはバターを溶かして飲むのも手。インドの高地民族のカロリー補給はこうして行うそうだ。
 まだチャイに関しては私は素人同然だから、これから時間があるときでも飲み較べてみようと思っている。

<付記>

 チャイ好きな人って、結構いるみたいで、ネット上の知り合いでチャイの淹れ方について教えてくださった人がいた。特に風邪の時など、生姜をスライスして茶葉と共に煮るのが良いのだとか。確かに、生姜は良いスパイスにもなるね。
この場合、合うのはやっぱりアッサムかな?チャイも色々奥が深そうだ。情報感謝!
カルダモン・チャイ

ジンジャー・チャイ

マサラ・チャイ
紅茶の話 その22  先日チャイというホット・ティの飲み方を書いたので、今度はアイスティについて少し書いてみたい。
 夏の暑いときには冷たい飲み物が欲しくなる。紅茶は熱いだけでなく、冷たくしてもおいしく飲めるため、夏はアイスティの需要が多くなる。
 ただ、私個人としてはあまりアイスティを作ることはない。夏でも暑いのをちびちびと飲むのが私は好きなだけだけど
(喉の奥に熱い紅茶がぶつかる感触が好き)。でも、一時期本などを漁って、色々アイス・ティの作り方は試した時期があった。
 アイスティは作り方がかなり微妙なものがあって、家庭ではなかなか上手く淹れられない事が多い。失敗例で一番多いのは、紅茶が白っぽくなってしまうこと。
これをクリームダウンと言う
 紅茶を白っぽくしないと言うコツはある。
 アイスティにする紅茶は何でも構わない。フレーバー系のアール・グレイが日本では好まれるようだが、別段スリランカ茶でもダージリンでも、中国茶でも良し。自分の好きな紅茶で試してみると良し。
 淹れ方は、先ず普通の紅茶と同じように熱湯を湧かし、ティーポットを熱して紅茶を淹れる。ここでいつもより茶葉を多めに、お湯は少なくするのがコツ。お湯は大体通常の半分程度に抑えておく。
 それでいつもより長めに蒸らす。そして蒸らしている間に大き目のコップを用意し、そこに多量の氷をぶち込んでおく。
 そして蒸らし終わった紅茶を一気にそのコップに注ぎ込む
(氷で冷えたところを熱湯を注ぐわけだから、耐熱グラスを使うのが良いけど、今まで普通のグラスを使っても割れることはなかった)。この時の音が小気味良い。ぱちぱちと氷がはじけ、あっという間に溶けていく。わざと紅茶を濃い目に作っておくのは、ここで氷が溶けることで、味が均されるから
 実はアイスティで
クリームダウンが起こるのは、この時のお湯の温度変化によるもの。それも面白いことに、中途半端な温度だと起こりやすい。
 だから、それを避けるためにも、
ちゃんと熱湯とちゃんと冷えたグラスを使うこと。極端な温度変化の方が茶が変質を起こしにくい。
 グラスに入れる氷はクラッシュアイスでも良いけど、キューブアイスをお勧めしたい。
クラッシュアイスの方が冷え方は良いのだが、あっという間に溶けてしまうから、何となく見た目にあんまり面白くないと言うだけだけど。
 注意して欲しいのは、
グラスに入れる前に紅茶を冷やさないことと、紅茶の後に氷を入れてはならないと言うこと。こんなことをしたら、見た目に悪いものしか入れることが出来ない。必要なのは、極端な温度変化なのだから。ティーポットから茶漉しを通し、直接グラスに熱い紅茶を注ぐこと。これは鉄則。手間を惜しまないなら、冷えたところで一旦解けかかった氷を全部取り出し、新しい氷を入れる。それが面倒なら、単純に氷を足しても良い。
 それで飲むときはあまり時間をかけないように。あまりのんびり飲んでいると、氷が溶けすぎて味が薄くなるし、何故か放置しておくとクリームダウンが起きる。
このクリームダウンが何故起こるのか、調べてみたがよく分からない。どうやら紅茶の中のタンニンとカフェインとが結合して起こるようなのだが…
 だから多少でもゆっくり飲みたい場合は、ミルクを入れることをお勧めする。それと、淹れたものはきっちりと飲みきって欲しい。後で飲もうと残さないように。

 他にも水出しでゆっくりと時間をかけて淹れる方法もあるが、これは味は良くても、香りが全くしないものが出来てしまうため、あまりお勧めしたくない。正直、紅茶を飲んでる気分ではない。紅茶風味の何か違うものを飲んでいる気分。

 いずれにせよ、家庭用でアイスティを美味しく入れるのはなかなか難しいと言う事は覚えて欲しい。それで苦労して淹れた奴を一気に飲んでしまうのだから、
妙に虚しい気分になれるのは請け合う(笑)
アイス・ティ用リーフティ

水出し紅茶用器

水出し紅茶
紅茶の話 その23  先日ネットで紅茶について見ていたら(通販で何か買おうかと思って)、あるサイトでユンナン(雲南)茶と言うのが紹介されていた。
 知らない名前だった。しかも中国紅茶か。是非飲んでみたい。
 そこからは一度キーマンを買ったことがあり、サイトとしては信用できるので、ちょっと高かったけど、通販の申込みをした。
 それから数日。待っていた紅茶が到着!早速開封。
 茶葉の形はフルリーフだが、えらく色が薄い。ゴールデン・ティップという高級茶にはこう言うのがあると聞いたことはあるけど。
 まず風味。
 中国茶らしいちょっと癖のある、それでも私好みの香りがした。
 それで湯を立て、淹れてみて改めて香りを嗅ぐと、やはり中国茶っぽい感じ。ちょっと口に含んでみる。
 ん?
 今度はもう少し多めを口に含んで飲み込む。
 やっぱり。
 これは又、変わった紅茶だ。風味こそ、中国茶っぽいのに、味そのものはスリランカ茶にそっくり。ある意味非常に素直な、ある意味面白みのない味だった。
 前に書いたが、
スリランカ茶と中国茶は茶樹の系統が同じ。当然作り方によってはスリランカ茶のような中国茶が出来るわけだが、まさにこれはそのまま。

 もしこの紅茶を購入することがあったら、是非ミルクティで召し上がって欲しい。ミルクと砂糖の量を抑えて淹れるなら、とても風味の良い、美味しいミルクティが出来上がるはずだ。


 現在、この紅茶の消費のため毎日のようにこれを飲んでいるが、
微妙な条件が重なると、かなり美味しく淹れることが出来ることが分かった。
 いやはや、紅茶というのも奥が深い。
雲南紅茶
紅茶の話 その24  今回はちょっと紅茶にまつわる歴史の話。
 中国産のお茶がイギリスに渡り、そこでブレイクしたのは前に何度か書いたが、そのお茶はどうやって中国から輸出されたのか。
 勿論それは
港からに決まってる
 では、それはどこの港か。と言うと、これが香港である。と言うより、当時はほぼこの一港で全ての貿易は賄われていたらしい。だから随分色々な商品がそこにはひしめき合っていたわけだが、その商売の一つとして茶があった。
 香港には行ったことがないが、写真やテレビなどで見る限り、かなりごちゃごちゃしたところで、港と言っても、そんなに広いところでもなさそうだ。
 こんなところで様々な商売人が集まり、にぎやかな街を作っていたのだろうし、英国船が大挙して押し寄せ、われ先に茶を買い求める姿を想像すると、結構楽しくなる。きっと様々な国の言葉が飛び交い、時として怒号が発せられる。さぞかし活気のある風景だったに違いない。特に茶の輸出が始まってからは中国(当時は清)は輸出のお陰で右肩上がりの経済状況にあったので、もの凄い活気があったはずだ。
 茶を買い付けに来るイギリス人は競争のため、急いで本国に帰る必要があったので、船員の大部分は中国本土を知らず、無国籍状態の香港しか知らなかったことだろう。彼らにとっては清=香港のイメージを持っていただろうし、仲買人として香港に駐留する者達も多くいるから、彼らが常に香港に新しい風を入れていたに違いない。こう言うところを思い浮かべると、歴史のロマンを感じてしまう。
 それで終わっていれば、香港はにぎやかな港町で終わっていたはずだった。
 だが、茶の超過輸入のため、国内の銀が中国に流出し続けたイギリス本国にとっては、これは由々しき事態だった。
産業革命が進み、世界に冠たる大英帝国を築こうとしたイギリスの財政の実体は火の車だった
 何とかして輸入一方ではなく、輸出する事で外貨を稼ぎたいと願って輸出品を探し、ついにインドで阿片を見つける。この阿片を中国に持ち込むことになるが、そこで使われた港も、やはり香港だった。今まで船に銀を積み込み、それを茶に変えて本国に運んでいたティー・クリッパー船が今度は、阿片を積んできて、帰りには茶と銀を積み込んで帰るようになるのに、あまり時間がかからなかった。今まで活気づいていた港も、麻薬が絡むと妙にイメージ的に陰鬱になってしまう(実際にやってた事は別段変わらないのだろうけど)。
 そして起きたアヘン戦争。これは香港が舞台となるイギリスにとって中国=香港だったのだし、この戦いは、結局イギリスにとっては香港という港を抑えることに意味があったんじゃないだろうか?
 その結果はお分かりの通り。
1899年に結ばれた条約によって、香港は100年もの間、中国の中にあるイギリスの領土となっていた
 茶によって豊かになり、そのために他国領となった香港。これも歴史の一コマだ。
香港映画は紅茶のお陰で作られた。と言っても良いかな?(笑)
(ちなみにこれ、資料無しで私の中にある雑学でのみ書いているので、間違えていたら、教えていただけるとありがたい)