セラフィム

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第0話
肉体の一部を変容させ、激烈な幻覚と共に死に導く奇病「天使病」。
21世紀初頭ユーラシア大陸の最深部に発した「天使病」は大陸全域を覆い尽くす。
汚染を逃れて流出する膨大な数の難民に対して先進国家群は一斉にその国境を閉ざした。
各地で頻発する武装難民との衝突。浄化の名の下に横行する虐殺…
それはやがて戦争へと拡大し、世界は長大な防疫線を挟んで再び対峙する時代へとなだれていった。
「ユーラシア大捕囚」と呼ばれる暗黒時代。
封鎖された世界の内部では斬新的な絶望が、その外部では文明の穏やかな退潮が始まった。

 太平洋上に浮かぶ空母。そこには一人の少女と一匹の犬が空を飛ぶ変異型軍艦鳥(ドレッド・ノート)を眺めていた。
 彼女セラと老人バルタザル、それを冷ややかに見つめる男メルキオル。そして檻に入れられたバセット・ハウンドのガスパルは戦闘機に乗り込み、ユーラシア大陸へと上陸する。
 ドレッド・ノートの群れの中を飛ぶ戦闘機。そのなかのバルタザルは鳥たちは飛びながら夢を見ているのだ。と言う。「地球(ガイア)の夢を」

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