セラフィム

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第1話 審問官(マギ)
 退役審問官(マギ)エラズマス教授(バルタザル)が博物館を巡るシーン。ダーウィンの像、系統樹、生物の進化の跡を眺め続けるエラズマス教授の下にWHOからの使者がやってくる。既に審問官を引退したと言うエラズマスに対し、WHOの職員は“防疫線”の内部へ行って欲しいと申し出る。
 彼らが連れてきた子、セラと出会えたことを喜ぶエラズマスに、WHOは「今から貴方はバルタザルと呼ばれる」と言い、セラともう二人の審問官、メルキオルとガスパルを紹介する。その内のガスパルはなんとバセット・ハウンドだった。


 この作品には多くの隠喩が含まれる。博物館の中に関しても、進化論提唱者ダーウィンと系統樹、そして系統樹に巣を作る鳥のイメージが描かれている。「天使病」とはなにか。その暗喩ともなっていると思われる。
 その博物館の中でエラズマスが考えているのは聖書の言。どれ程小さく見えても、一粒の種はやがて成長し、巨大になっていく。それを鳥のイメージとひっかけている。

 これはWHO職員が付けているマーク。
蛇と杖。これはギリシア神話における医術の神アスクレピオスを示す。彼の正座は「蛇遣い座」とも呼ばれ、蛇こそが彼を示す言葉でもある(古代の多神教においては蛇は神聖な動物であり、医術と関連している場合が少なくない。これは脱皮を繰り返す姿が回春を示すと思われるからだろう(同様の意味で「月」を示すことも多い)。
 杖の台座のようなものはオリーブの葉。国連を示す平和のイメージである。

 WHO職員にバルタザルが問うた「ヘロデの所行を改める」というのは、聖書に書かれるヘロデ大王の嬰児殺しについて。天使病と見るや、誰彼なく殺していくWHOの所行を皮肉を込めてこう呼んでいるのだろう。

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