セラフィム

back

第7話
 塞の中の楼を葉選英に案内してもらうメルキオル。天使病の発症率が80%を超えた楼は放棄され、放棄された楼に住んでいた人間達は皆死んでしまうことを聞かされる。
 その言葉に恐怖を覚えたメルキオルは一人、廃棄された牢の中にはいる。そこにはおびただしい烏の群だけが、存在した。
 この国には人権という言葉すら残されていないのか。となじるメルキオルに対し、葉選英は「ユーラシア大捕囚」によって我々をこの大陸に封じ込めた者にその言葉を口にする資格があるのかね?」と逆に嫌味を言われる。防衛戦の内側にあっては生存権と発展犬こそが唯一の、そして最も基本的な人権である。
 葉選英に楼で死んだ者達の墓に連れられていくメルキオル。地平を埋め尽くすタイルの墓標を見て、呆然とするメルキオルに対し、葉選英は「我々は滅びない。世界がどう変わろうと、たとえ空が鳥に埋め尽くされる日が来ようとも、必ず生き残ってその未来を開く!」と断言する。
 そして海に出る審査官達を葉選英は送り、一旦姿を消す。

 ユーラシア大捕囚とは、天使病が始まった初期にユーラシア大陸を封鎖し、病気の蔓延を抑えようとした人間の努力。それがいかに非人道的であるかは言うまでもない。それも人間が生き延びるために必要なのか。歴史は常にこの反論で充ち満ちている。

第8話へ