セラフィム

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第9話
 上海に上陸した審査官達。彼らを怯えを含んだ目で見つめる住民を、周佐湧は、「この町でそのカドゥケウスの杖は恐怖のシンボルなんです」と説明する。上海はWHOと同じくカドゥケウスの杖をシンボルとする異端審問所の支配下にあるため、その紋章をマントに縫い込んでいる彼らは恐れられている。
 どう異端審問所にいるセラを助けるのかと言うメルキオルの問いに対し、周は審問所内に仲間が数人入り込んでいると告げる。「まったく…スパイだらけだな」と皮肉を込めて答えるメルキオルに苦笑を持って答える周。
 彼らの駆る車の前に子供を抱きかかえた女性が飛び出てきて、轢いてしまう。すぐさまその女性に群がる防疫隊。
 一方、セラのゲノムチェックを行う異端審問官達。その結果、セラは紛れもなく天使病のキャリアであることを示していた。しかも彼女の身体の中には…

 防疫隊はゲノムチェックで天使病と判断された者を有無を言わさずに異端審問所に連れて行く役目。
 バルタザルはかつて異端審問官をしていたこともあり、それがまだこの上海では廃止になっていなかったこと、しかもゲノムチェックまでしていたことに怖れを覚える。
 異端審問はキリスト教の初期から行われていたが、実際にそれが派手になり、異端審問所まで設置されたのは12世紀に入ってから。15世紀にはいると魔女狩りまで行われるようになった。有名なのにはスペインのイザベラ女王が設置し、トルケマーダ(1420-98)が所長となった審問所。これは何と2000人以上もの異端者(魔女)を火刑にしたという。

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