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特撮事典

エド=ウッド

怪物の花嫁


エド・ウッド・コレクション
1955年
エドワード・D・ウッドJr(監)
 沼地で謎の失踪事件が頻発する。無力な警察に憤慨した新聞記者のジャネット(キング)は独自に調査を開始するが、折からの暴風で車が立ち往生し、謎の人物に襲われてしまう。次に目覚めたとき、彼女は沼地の傍らに建つ奇妙な館の主人、エリック=ヴォルノフ博士(ルゴシ)の実験室に寝かされていた。実はヴォルノフ博士は放射能により人間の肉体機能を極限まで高める実験を行っており、失踪者たちは彼の実験の犠牲になっていたのだった…
 レンタル店に
「エド・ウッドコレクション」の3作が置いてあり、これまで『プラン9・フロム・アウタースペース』(1959)および『グレンとグレンダ』(1953)を観てきた(後これはコレクションとは違うけど『死霊の盆踊り』(1965)も)。それで前の2作を観ていて、決してこれを最低!と言えない自分の事を少々真剣に考えてしまったのだが、本作を観てほっとした。
 いやあ、もうこれは爆笑もの。
間違いなく最低のなかの最低作品!自信を持ってお勧めできる。
 キャラは台詞棒読みは当然で大袈裟な身振りは動きが固い。設定は無茶苦茶、カメラ・ワークのひどさ、動かないぬいぐるみを相手に格闘する。タコやワニと言った他の映画のバンクフィルムを徹底的に使い回し…
完璧な最低作品だ。その最低ぶりに大いに笑わせてもらった。
 主演の素でマッドが入ってるようなルゴシの演技がとても小気味よい。『エド・ウッド』(1994)でマーティン=ランドーがやっていたあの怪しげな手の動きが見られただけでも大満足。更に老体に鞭打ち、水の中で動かないタコのぬいぐるみ
(これも『エド・ウッド』でやっていたけど、他の映画のものを盗んできたもの。元々ギミックは組み込んであったらしいが、映画本編では不稼働。襲われる人間がタコの脚を持ち上げていかにも動いているように見せていた)。博士の助手のロボ(引退したプロレスラー)はジャネットのかぶっていたアンゴラを愛おしそうになで回しているフェティぶり。ジャネットは資料室で新聞記事を漁り、そこに事務員がいるというのに翌日になってもそのまま放っておかれるとかの稚拙な演出もあり。
 後凄いのはカメラ・ワーク。画面中央に余計なものを置いたり、森のシーンでは人の顔に枝がかかっていても平気で撮っていると言うのが凄い。
 更に唐突な落雷によって全てがお終い(キノコ雲が上がる程の巨大爆発だが、そこに居合わせた人間は全員無事)。

 なんでも本作は製作資金を3日で使い果たしてしまい、完成に至るまで一年かけたそうだけど、それでこの出来。もう素晴らしすぎる。日本では『ブルー・クリスマス』(1978)
「特撮を使わないSF」で有名だけど、本作は「特撮を使わない特撮作品」という特異なジャンルにはいるだろう。

 

ヴォーノフ
【う゛ぉーのふ】
 沼地の館に住むマッド・サイエンティストで、放射能による人間の肉体改善に努めていた。作り上げた唯一の成功例のロボに裏切られてしまう。更に自分が改造人間になったのは良いが、作ったタコの化け物と格闘し、最後は核爆発で死んでしまう。役はベラ=ルゴシ。 甘崎
ジャネット
【じゃねっと】
 ジャネット=ロートン。女性新聞記者で、警察による失踪事件捜査がまるで進んでいないことに業を煮やし、自ら事件解明に乗り出すが、沼地の館の主ヴォーノフ博士に捕まってしまう。役はロレッタ=キング。 甘崎
ディック
【でぃっく】
 ディック=クレイグ。田舎町の警部補。無能な部下にばかり恵まれており、自ら怪物屋敷の事件解明に乗り出す。役はトニー=マッコイ 甘崎
ロボ
【ろぼ】
 ヴォーノフ博士によって作られた改造人間で、怪力を持つ。基本的に博士に忠実で、沼地に足を踏み入れた人間を次々とさらっては博士の実験室に連れて行く。帽子に対するフェティあり。役はトー=ジョンソン。 甘崎

 

プラン9・フロム・アウタースペース

 


エド・ウッド・コレクション
1959年
エドワード・D・ウッドJr.(監)
 これまでに8度地球侵略のため様々な試みをし、そのことごとくに失敗した宇宙人が9番目のプランとして死者を蘇らせる作戦を敢行する。“たまたま”宇宙船を最初に発見したパイロットのジェフ=トレントとその妻ポーラは“たまたま”宇宙船が着陸した墓場のそばに住んでおり、そこから現れた死体達に襲われるのだが…
 
最高の馬鹿映画に贈られる「ゴールデン・ターキー賞」を受け、“史上最低の映画”と称される作品。かつて『エド・ウッド』(1994)を観て、機会あらば絶対に観てやる!と心に決めていた作品だが、やっとレンタルで発見(後『グレンとグレンダ』(1953)『怪物の花嫁』(1955)、それに『死霊の盆踊り』(1965)も発見。全部拝見)。もう期待度最高で観た。
 …あれ?
 そんなに変な作品かな?
 そりゃ、確かにへたれな作品だって事は認めるし、アラだらけなのも認める。役者は素人同然で唯一の有名人ベラ=ルゴシも登場は一瞬
『エド・ウッド』を観れば分かるけど、あれは別な目的のために撮った作品を強引に挿入したもの)。蘇ったはずのルゴシ役には「頭の形が似てる」という理由だけで起用した素人の外科医。宇宙船には吊り線が見えるし、最初から合成を放棄してるのでバンクフィルムと撮影のギャップも凄い。宇宙人の言動も意味不明…
 ここまで挙げてもどれだけこれが酷い出来だか分かろうというもの。だけど、この程度のへたれな作品って50年代SFには実は結構ある。出来自体は実は「最低!」と言えるほどのものじゃない
(これを「最低」と言えない私の考えも変だと思う…)
 結局この作品を最低たらしめているのはまさにエド=ウッドという人物そのものなんだろう。彼の存在こそがハリウッドの伝説なんだ。
 これも『エド・ウッド』からの受け売りだけど、この映画を作るために監督はバプテスト教会に改宗までし、宇宙人役は監督の友人が性転換の手術代欲しさに出演したとか…
伝説になるには充分すぎる

 

エロス
【えろす】
 地球にやってきた宇宙船の船長で地球征服(本人曰く「平和にする」)のため、これまで八つの計画を立て、九つ目の計画「プラン9」を発動する。 甘崎
ジェフ
【じぇふ】
 ジェフ=トレント。空軍パイロットで、たまたま宇宙船を最初に発見した人物で、たまたま自宅の近くに宇宙船が着陸。たまたま妻が好奇心旺盛だったため、宇宙人に襲われてしまう。役はグレゴリー=ウォルコット。 甘崎
プラン9
【ぷらん-ないん】
 地球を平和にしようとやってきたお節介な宇宙人が発案した九つ目の計画で、死体を動かすというもの。それがどう「平和」に結びつくのか、最後まで説明はされなかった。 甘崎
ポーラ
【ぽーら】
 ポーラ=トレント。ジェフの妻で、宇宙船の着陸を目撃し、それを見物に言った所を宇宙人に襲われてしまう。役はモナ=マッキノン。 甘崎
ロバーツ
【ろばーつ】
 空軍将軍。超タカ派で、宇宙からの侵略にいち早く反応し、 甘崎