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ULTRASEVEN X

ULTRASEVEN X事典

2007'10'5〜12'21 

 思い出したように作られ続ける「ウルトラセブン」シリーズの最新作。
 舞台は我々の知っている世界とは異なる世界。ここはコンピュータによって完全管理されている地球で、その中で突然ウルトラセブンとして覚醒した男ジンが、この世界の歪みと戦っていく話となっている。

主な登場人物
ジン
ウルトラセブン
(役)与座重理久。本作がデビュー作。
 憶を失った男性。DEUSの一員である事と、謎の女性エレアからウルトラアイをもらったことだけが手がかりだった。何故か懐にあったウルトラアイを用いることでウルトラセブンに変身できる。
エス (役) 伴杏里。
 エージェントS。潜入捜査専門のエージェントだが、かなり過激なエージェントとして知られる。実は女性で、既にジンやケイとも接触済みだった。ただその割に人を信じやすすぎるという欠点もあり。
ケイ (役)脇崎智史
 エージェントK。DEUSの一員。最初にジンと接触した人物。性格は結構軽いが凄腕のエージェントではある。
エレア (役)
 本名冴木エレア。時折ジンの前に現れる謎の女性。セブンの正体やジンの記憶についても知っている。記憶を失う前のジンの恋人であり、共にこの世界の秘密を共有した仲。
話数 タイトル コメント DVD
第1話 DREAM

  監督:八木 毅
  脚本:小林雄次
 現代とはどこか異質な都市型世界。この街で一人の男が目覚めた。記憶を失い、ジンとだけ呼ばれるその男は謎の女エレアから赤い眼鏡型のアイテムを手渡され、この世界を救うよう懇願される。自分が何者か戸惑いつつ、エイリアンと戦う事となったジン。そしてジンが絶体絶命の危機に陥った時…
 敵は時空生命体ガルキメス。両腕に翼を持った、どことなくプレデターのように見える巨大宇宙人。手から出る光球で街を破壊する。
 妙に小顔でマッチョな「ウルトラセブン」最新作。
 陰鬱な雰囲気で始まる話。この作品の世界観はどことなく「MIB」に似ているが、雰囲気そのものはOV版「ウルトラセブン」からの直接的な系譜のような感じ。
 主人公であるジンの棒読み台詞はともかく、最初から何が何だかという感じ。主人公自体がよく分からないし、説明不足と説明過多が微妙に入り交じってる。
 エイリアンの存在は分かるけど、その目的をわざとはっきりさせない感じ。
 一方ではアクション部分やCGの使い方は結構こなれてる。
 全般的に観てこれはあまり良い感じではない。失敗を前提にしてないか?まあ、ツッコミ所が多ければ、それはそれで楽しいんだが。
<最初に謎の女から「逃げて」と言われて素直に高層ビルの窓からダイブするジン。素直すぎるというか、自殺願望でもあるんじゃないのか?
 よもや今時「マトリックス」をやるとは思いもよらなかったよ。
 お、ここでのアイスラッガーはちゃんと回転してるぞ。
 存在感たっぷりに現れた割に、あっけなく倒されてしまう宇宙人のエージェントの姿もなんだ。
 ラスト。「俺はこの力でこの世界を守る事を誓った」…自分の得体も知れないのに良いの?>
VOL.1
<A> <楽>
第2話 CODE NAME "R"

  監督:八木 毅
  脚本:大田 愛
 未確認飛行物体により人々が誘拐(アブダクション)されるという事件が続発。DEUSの指令を受け調査を開始するジンとケイだが、ジンは三日前バーで会った謎の男の言葉が気になり、彼を追い始めるのだった。
 敵は怪獣としては存在しないが、人々をアブダクションするためにサウンドノイズに音波を流すエージェント・Rという宇宙人が存在する。本来はDEUSの一員だったが、妻の自殺で自分を見失ってしまい、船に人を誘う。そして人々をアブダクションする“船”と言われる未確認飛行物体。その正体は最後まで明かされなかった。
 情報を遮断する事が出来ない社会。それは本来人間にサービスしてるはずなのに、まるでオーウェルの「1984年」のような社会に思えてしまう。四六時中流されるニュースを聴かないためには雑音を鳴らし続けるしかない…本当にこれって現代の象徴だな。
 結果的にこの話はいわゆる“燃え尽き症候群”の話になってるけど、本当に現代とコミットしてるみたい。ついでに言えば、「自分は誰?」というテーマをジンに問いかける所にあった。自分探しって難しい。
 セブンのワイドショットが炸裂。成層圏から飛び出した宇宙船を撃破するほどの命中精度を誇るが、目的近くで光がばらけて四方から敵を切り裂くのが特徴か。
 今回脚本はウルトラマンシリーズではお馴染みの大田愛。この人の作る話は叙情的なものが多くて良いのだが、こんな話でもしっかり個性を出してる感じ。ただやっぱりジンの台詞が棒読みなのは思い切り興味を削ぐな。
<いきなり主体的に事件を捜査し始めるジン。自分のことはさておいて?この状態だとケイよりも立場は上のように見えてしまう。ところでジンは記憶を失ってるはずだが、どこからDEUSの給料って振り込まれてくるんだろう?>
第3話 HOPELESS

  監督:鈴木健二
  脚本:福田卓郎
 ある日公園で仕事を斡旋すると言い寄ってくるタマルという男と知り合うジン。だが次の日DEUSからの連絡でホープレスと呼ばれる死体の調査に向かった先は、その公園だった…
 敵は宇宙商人マーキンド星人。宇宙商人で地球侵略の意図はなく、地上で商売用の兵器を作っている。人間に寄生することが出来て、寄生された人間は脳が萎縮してしまう。
 希望を失った人間の末路が描かれる話。このような人はホームレスではなく“ホープレス”と呼ばれるのが特徴。希望もなく、ただ金を得ることだけを望む人間が大量に出ている時代だという。未来が全く見えず、ただ今だけ楽しく暮らせればいい。本当に現代そのものを描こうとしているのかも知れない。
 自分が働いているのは宇宙人の侵略兵器だと言われても全く無関心な人間達。金さえ得られれば後はどうなっても良いという。薄ら寒くなる話だが、これが現代の縮図とも言える。
 マーキンド星人に従い侵略兵器を作り出す人間達。彼らもやはり侵略者の一員なのか。それとも純粋な被害者なのか。そもそも「ウルトラセブン」が持っていた一つの問いでもある。
<ジン達はDEUSからの連絡を受けるまでは基本待機。何にもすることがないらしい。これはこれで嫌な生活だな。>
VOL.2
<A> <楽>
第4話 DIAMOND "S"

  監督:鈴木健二
  脚本:大田 愛
 人が突如ミイラ化して変死するという事件が相次いでいた。ジンとケイは潜入捜査専門のエージェントSと組み、調査を開始する。被害者は脳の潜在能力を増すというシャイナー05を服用していたという。
 敵はパラサイト宇宙生物ペジネラ。極小の宇宙人で人間に寄生し、自己増殖する宇宙生物。無数の小型ペジネラが合体して巨大化する。
 潜入捜査専門というエージェントSの活動が描かれる。潜入捜査というだけに、あらゆる所に潜り込んでいて、実はジンやケイの行きつけのバーのバーテンだったりする。ただその割に人を信じやすすぎるという欠点もあり。ケイは完全にSの掌の上で、完全に馬鹿にされっぱなし。
 話そのものはオリジナルの「ウルトラセブン」を思わせる一話完結のなかなか渋い物語。女性が中心になる辺りはやっぱり大田愛脚本らしくもあり。
 ケイは意外にも甘党。デラックスプリンを前に幸せそうな顔をしていた。
 ラストシーン、ペジネラが体から出て行かなかったと言うことで落ち込むS。ところがそれがジンがすり替えていたと分かって…真面目な顔をしながらちゃんとコミカルなエピソードも入れるのは流石。現時点ではこの作品で面白いのは大田愛脚本のものだけだな。
<エージェントSが過激だという噂で怯えるケイに対しジンは「Mよりましじゃないのか?」と返す。アダルティだ。
 ナノメディック社社長の田崎が秘書にお茶を出させるという一事で宇宙人は昔から地球にいたと断言するS。それで良いんだろうけどさあ、短絡的すぎない?>
第5話 PEACE MAKER

  監督:鈴木健二
  脚本:金子二郎
 5年前に全ての戦争が終結し、その記念日を祝うその日。未確認飛行物体が地球に飛来した。ジンとケイは調査の末、宇宙人を確保する。実は彼らの仲間は何人かが地球に来ており、生活も溶け込んでいるという。だがそこに新たに野獣のようなエイリアンが現れ…
 敵はボーダ星人。ハンマーヘッドのような顔をしていて、縦に顔が割れると口が現れる。アルファケンタウリ星系人と長く戦争を続け、地球にやってきた彼らを殺しにやってきた。
 既に地球には有効な宇宙人が何人も来ており、そこで普通に生活しているという事が分かった。『MIB』の設定をそのまま使っているのかな?ここに出てきた友好な宇宙人は全員同じ顔をしているのが特徴。
 彼らは攻撃手段としてのオリファムというアイテムを捜していたのだという。それを得ることで、ようやく彼らは故郷の星に帰ることが出来たのだが、しかしそれは結果として彼らの星系の戦争を拡大し、星そのものを滅ぼしてしまう結果となる。
 地球は確かに平和。だけど、その平和の影でどんなことが起こっているのか。結構重いテーマを扱ってる。
<最後にアルファケンタウリ星系の二つの星が破壊されたニュースが入る。何光年も離れた場所に対し、一体どういう方法で観測してるんだろう?>
VOL.3
<A> <楽>
第6話 TRAVELER

  監督:梶 研吾
  脚本:小林雄次
 IT企業で働くタカオは日々の仕事に疲れ切っており、会社帰りに寄るバーで宇宙への夢を語ることで憂さ晴らしをしていた。実はタカオはジンは記憶を失う前の事を唯一覚えている男だったのだ。そんなタカオは宇宙からやってきた光の玉に遭遇する…
 具体的な敵は登場しないが、浮遊する光の玉が現れ、人間をさらっていく。それは純粋な魂の形であり、その年齢は実に2万歳なのだとか。
 どことなく「ウルトラセブン」44話に似た構造で、ここではストレス社会が描かれていく。SFとしてだけでなく、むしろ現実の社会との地続きとして考えてみるべきなのかも。結果として光の玉を受け入れたテツオが宇宙に旅立つところで話は終了。現代版ジュブナイルっぽい。
 今回セブンの変身は、宇宙に旅立つタカオを送るためだけ。変身した意味がないが、これはこれでありだろう。
<記憶を失っているジンよりもはるかにドジなエス。このコンビ関係はよく分からないね。>
第7話 YOUR SONG

  監督:梶 研吾
  脚本:林壮太郎
 エイリアンであるヴァイロ星人を追うケイはミッション途中で不審な男と出会う。それはかつてDEUSのエージェントで、殉職したはずのエージェント・ディーだった。一方ジンは公園でギターを爪弾いているナタルという女性と出会う。ヴァイロ星人に襲われるナタルの正体とは…
 敵はヴァイロ星人と、生物機械兵器バドリュード。ヴァイロ星人はまるで軍服のような格好をして、お面を付けている。その叫び声は衝撃波となる。裏切り者を抹殺するために地球に大挙してやってきている。バドリュードはヴァイロ星人が宇宙船から降下させたロボット型兵器。ヴァイロ星人同様衝撃波を武器とする。
 常に“癒し”を描く本作。今回は歌による癒しが描かれることとなる。異星の少女が癒しの歌を手に入れ、それによって地球人との間に恋が芽生えるという話。惚れた相手がエージェントであり、それによってちょっとややこしい人間関係が展開。
 結果として地球人と異星人の共存は可能かも?という希望で物語は終わる。もう一押しあるかと思ったんだが。
<DEUSには識別用暗号コードがあるそうだ。だけど半年以上も同じコードを使っているらしい。>
VOL.4
<A> <楽>
第8話 BLOOD MESSAGE

  監督:小中和哉
  脚本:長谷川圭一
 雷雨に限り、麻薬の売人の殺人事件が起こる。ドラッグシンジケートを見張ることになったジンらは、赤いコートの女を目撃する。
 敵は殺戮宇宙人ヒュプノス。アサミという記憶喪失の女性の姿を取るが、雷雨の時に限り本来の姿に戻り殺人を犯す。地雷のように東京中に何体もばらまかれているらしい。
 隣人が突如化け物化して襲ってくる。殺人犯は自分も記憶がないという。昨今の連続殺人事件にコミットした物語なのだろう。それをかなりホラー風味で演出している。
 物語としては結構意外性のある作品で、かなりサイコっぽい感じでもあり。というか本当にオチはヒッチコックの『サイコ』だった。短い間に色々詰めてみました。という感じだ。
 一方癒しを薬に求める人間。それは現在どんどん増えているのだとか。その辺も描きたいのかな?
<ヒュプノスが擬態したアサミは四つん這いになって走ってくるのだが、人間がそう言う格好すると凄く違和感あるよね。>
第9話 RED MOON

  監督:八木 毅
  脚本:大田 愛
 百年ぶりとなる最大級の皆既月食を明日に控えている街の中、白いドレスの女が獣人に襲われるという事件が相次いでいた。民俗学研究室の尾形は、百年前の皆既月食の年、やはり同じ獣人事件が起きていたことを伝える。その情報を頼りに捜査を始めるジンとエス。
 敵は獣人。皆既月食が起きる前に次々と白いドレスを着た女性を襲う謎の生物。人間の姿をしているが、水をかけられると獣人の姿になってしまう。
 100年前の恋人を追い求める異形の生物。結構リリカルな話。太田愛脚本らしい話だ。話も現在と100年前の光景が交互に展開。
 100年前に失踪した兄弟の名前は望(月)と朔(月)。そして今回は月蝕の話と、ラストシーンでは100年前に月に立つ望と朔の姿まで有り、月づくめの話になった。だからそれに対する女性の名前は「まひる」なんだな。
 ラスト、自分が知りたくなかった真実を知ってしまい、絶望した獣人をセブンは倒さねばならなかった。寂しい話でもあり。
 カメラワークが独特で、上下運動を多用している。ただそれが効果的に使われているとは言い難い。カメラワークがちょっとうるさい。
<舞台はかなりの未来世界のはずだが、使っている携帯は旧型。よく見るとメール送信しているのに何故か圏外のがあったりする。
 人が持っていた双眼鏡を100年前のものだと指摘する尾形。ちら見でそんなのが分かるか?>
VOL.5
<A> <楽>
第10話 MEMORIES

  監督:小中和哉
  脚本:小林雄次
 ジンはニュースで能朱湖に隕石が落下したというニュースを観る。その瞬間記憶の断片を垣間見たジンは、ここに記憶の手がかりがあるものと現地に向かうが、そこで逃走中のハイバラという男と出会い、メモリーチップを手渡される。
 ここに来てジンの記憶のことがようやく話題に上る。どうやらそれには政府が関わっているという事は分かったが、果たしてその理由は?政府は何を考えているのか?そして時折ジンの前に現れていたエレアの真意は?話はかなりミステリー調だが、ここではその謎は解き明かされず。
 政府公報に使われている浮遊モニタは監視カメラも兼用しているらしい。常に現れていたのは、全ての人間を監視するためだったらしい。
 手持ちのカメラ主観で話が展開する部分あり。結構面白い描写。
<たまたまにしてはジンの目の前でいきなり人一人撃ち殺されるってのは、話に無理があり。>
第11話 AQUA PROJECT

  監督:八木 毅
  脚本:小林雄次
 政府施設への侵入とエレアの逃亡幇助で罪に問われるジン。エスとケイと共に、一体何が起こっているのかを調査したところ、AQUAPROJECTの全貌が明らかとなる。だがこのプロジェクト自体は3ヶ月前に凍結されていると言う…
 ジンは変身せず、物語自体もエレアの告白だけで終始してしまう話。決してバランスが良いとは言えないし、謎解きも楽しいとは言えないのが残念。
 ジンの過去に何があったのか、エレアとは誰だったのかが明らかになる。記憶を失う前のジンとエレアは恋人同士であり、共同してAQUAPROJECTを探っていたらしいが、深入りしすぎたためにジンは殺されてしまったのだという。
 それで何故ジンがウルトラセブンになれたのか。エレアによれば、それは彼女が願ったからだとか。分かったような分からなかったような?
 しかし、その直後エレアはそれら全てを否定してしまう。ジンの前に出てきたエレアは実は宇宙人が擬態したものだとも。更にそれさえも嘘…何が何だか。
 最終的に、この世界自体が何者かによって支配されているのだとエレアによって告げられる。
VOL.6
<A> <楽>
第12話 NEW WORLD

  監督:八木 毅
  脚本:小林雄次
 エレアにより何者かにより地球は支配されていると告げられたジン、ケイ、エスの三人は能朱にあるという異世界人の拠点を叩くべく活動を開始する。
 敵はグラキエス。情報網を支配することでこの世界を操る支配者。その本体は蜘蛛のような集団だがジンのイメージでは三人の男女として認知される。そして巨大機械生命体メカ・グラキエス。グラキエスを守るべく作られた三体の蜘蛛型モンスター。
 最終回。地球は異世界人によって支配され、その支配のくびきを破壊するために戦う四人と、ジンが何者であるのか最後の謎が明かされる。
 異世界との接触により、更なる支配を異世界にも及ぼそうとしていたこの世界の支配者に対し、異世界から扉を防ぐべくやって来たのがセブンだった。
 三ヶ月前、ジンとエレアは能朱湖を調査中、射殺されてしまった。その時にセブンによって命が助けられたのだという。いつものパターンだが、それで記憶が消えてしまうと言うのはここだけの話っぽい。
 更に、真の覚醒を迎えるとジンの精神は全てセブンに取り込まれてしまう。その事実を知っていたために、エレアはジンの命を救うために情報を小出しにしていたらしい。
 ラストシーンだが、元の世界に帰ったセブンが取った人間体の姿は諸星ダンであり、彼を待っていたのはアンヌだった。特別出演か。つまりこれは実際にウルトラセブンのいる世界のパラレルワールドだったと言う事になる。
<ここで使われる銃はビーム兵器らしいが、体をすり抜けたり、遠近法が無茶苦茶だったり。かなりの安普請。
 ラストシーンでジンは「人々は平和を謳歌している」と述懐してるが、情報網が破壊され、都市部のあちこちからは煙がくすぶってる。このどこが「平和」だ?>