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ウルトラセブン(OV)

ウルトラセブン事典
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1994'3'21、10'10(第1部)

1998'6〜8(第2部)

1999'7〜12(第3部)

 ウルトラマンシリーズの中でもハードな物語展開で知られ、多数のファンが存在する『ウルトラセブン』。そのリメイクの要望を受けた形で、1994年に完全オリジナルの後日譚としてTVで放映された。その後、続編の要望に応え、現時点まで都合三期に渡ってオリジナルビデオシリーズとして製作されている。
 後日譚だけに、モロボシ・ダン役の森次晃嗣、フルハシ・シゲル役の毒蝮三太夫が三つのシリーズで登場しているが、4回目はキャラクタも世代交代している。
 尚、本作は「ウルトラマンレオ」のシリーズは無かったものとして描かれているので、その点は注意。

主な登場人物
モロボシ・ダン (役)森次晃嗣。かつてのシリーズでのモロボシ・ダン役で、ここでカムバック。マッチョな中年ぶりを見せてくれる。
 ウルトラセブンに変身するキャラクタ。2話〜11話までの登場で、初登場時は記憶喪失で自らがウルトラセブンであることも忘れていた。
フルハシ・シゲル (役)毒蝮三太夫。これもオリジナルからの続投。
 かつての戦いから10数年後、ウルトラ警備隊の隊長となって再登場。行動不能に陥ったウルトラセブンに太陽エネルギーを照射するように命令する。第二シリーズでは参謀となり、直接事件からは手を引くが、陰に日向にウルトラ警備隊を見守る。
カザモリ・マサキ (役)山崎勝之。代表作は本作。
 第2〜4期シリーズに登場するウルトラ警備隊員。現代青年を代表するかのように優柔不断でキレ易い性格をしている。行方不明者が続発する町を調査に向かったところを突然現れたダンにより気絶させられ、カプセルの中に閉じこめられた上にウルトラセブンがその姿を借りることになる。「栄光と伝説」ではヴァルキューレ星人に乗り移られている。地球人外生物に操られやすい体質なのか?第4期では自らがウルトラセブンに変身している。
話数 タイトル コメント DVD
第1話 太陽エネルギー作戦

  脚本:右田昌万
  監督:神澤信一
  特技監督:神澤信一
 宇宙空間におけるピット星人との死闘の後、エネルギーを使い果たして地球に落下したウルトラセブンはウルトラ警備隊の手により、意識のないまま保護されていた。地球侵略を諦めていなかったピット星人は高温と二酸化炭素散布による地球温暖化作戦を今しも遂行しようとしていた。今やウルトラ警備隊隊長となったフルハシは最後の手段として太陽エネルギーの照射を命令する。
 本編同様敵は変身怪人ピット星人と彼女たちが操る宇宙怪獣エレキング。円盤からエレキングに指令するピット星人の姿もやはり二人の女性で、オールドファンを楽しませてくれる。
 「ウルトラセブン」の後日譚として製作された作品で、「ウルトラマンレオ」の設定を完全に無視してるのはちょっといただけないものの、フルハシやアンヌ(既に一児の母で、息子の名前をダンと名付けている)が登場したりして、設定的には大変楽しませてくれる。
 一方、セブンは出てくるものの、肝心のダンは未登場で、明らかにスタジオで撮影されたセブンとエレキングの戦いもかなりしょぼい感じ。
 地上に巨体を横たえ続けるのはウルトラ兄弟の内セブンだけに与えられた特権のようなもの。だからダンがいなくても、「ああ、これはセブンだ」と思わせるのに成功してる。
VOL.1
<A> <楽>
第2話 地球星人の大地

  脚本:右田昌万
  監督:神澤信一
  特技監督:神澤信一
 地球は数々の環境問題に悩まされていた。メトロン星人はゴミの山と太陽エネルギーを利用し地底にエコポリスを築き上げる完全無欠なリサイクルシステムを見せつけ、科学者トネザキ教授を懐柔するのだった。
 敵は幻覚宇宙人メトロン星人。これが三回目の地球侵略になるはずだが(「セブン」の後で「A」でJrとして登場してる)、今回は地球人カップルに変装し、究極のエコシステムを見せつけて人間を懐柔し、ゆくゆくは地球を植民惑星にしようと狙う。それと名前のない恐竜が登場。メトロン星人により採取されたDNAから作り出されて操られる、ジュラ紀の恐竜。
 前回登場しなかったモロボシ・ダンがようやくここで登場。風来坊スタイルで出てくるが、今回のメトロン星人との戦いのため、生死不明となってしまう。
 この時点で続編は考えられてなかったはずだが、実質的にこの話が後の平成版シリーズへとつながっていくことになる。
 それにしても森次晃嗣って、さすがに老けたなあ。毒蝮三太夫が全然変わってないのと対照的。そう言えばトネザキ教授役でこれまで東映に身売りしてた(?)円谷浩が登場してるのも見所。
VOL.2
<A> <楽>
第3話 失われた記憶

  脚本:神澤信一
  監督:神澤信一
  特技監督:神澤信一
 地球には平和が続いていたが、都内で突然異常な数の記憶喪失者が出るようになった。ウルトラ警備隊はこれが謎の植物が原因と判断し、その植物を栽培している謎の女を追う。そんなところに先の戦いで記憶を失ってしまったモロボシ・ダンが現れる。何者かの呼びかける声が頭に響き、悩まされるダンだったが…
 敵は洗脳宇宙人ヴァリエル星人。植物怪獣で、地球を植物の星に変えようとして、その際に邪魔な地球人を排除しようとする。
 ここで新シリーズの開始。このシリーズは地球の行きすぎた科学と公害問題に対する警鐘となっており、自然に生きることの大切さを主軸としてるのが特徴となってる。
 ダンは記憶喪失になってしまっており、その記憶を取り戻すのが本作の肝。歳は食ってもアクションこなすし、渋みが一気に増したので、逆に存在感は増してる感じだ。
<新シリーズの始まりで、今度は新怪獣を出そうとしているのは分かるんだけど、ヴァリエル星人って、なんかチープなんだよなあ。人間関係に主軸を置いたのは正解かな?>
VOL.1
<A> <楽>
第4話 地球より永遠に

  脚本:武上純希
  監督:神澤信一
  特技監督:神澤信一
 通常人間には呼吸できないとされる火山地帯で生きている人間が発見された。なんとそれは硫黄を呼吸して生きていることが発覚する。一方、行方不明者が続発する町に降り立ったダンは、その町の調査を開始するが、まるで彼を拒絶するかのような町に締め出されてしまう。ウルトラ警備隊のカザモリ隊員の姿を借りて再度町に潜入するダンだったが…
 敵は分身宇宙人ガッツ星人。地球のマントルプリウムを促進する一方、選ばれた人間をマントルプリウムの起こった後も生き残れるように改造し、それを強迫のネタに防衛軍を強迫する。巨大化するわけでなく、宇宙船の中であっけなく死を迎えることになる。そして硫黄怪獣サルファスが登場する。これはかつて地球上に棲息していた恐竜が元らしいがピット星人により改造を受けており、硫黄ガスを吐いたり、身体の各部から触手が生えていたり、手がバルタン星人のようなハサミになっていたりと、到底恐竜とは思えないデザイン。直接ウルトラセブンと戦うが、数回に分けてウルトラセブンのドロップキックおよびパンチを受け、更にワイドショットまで受けるが無傷。最後は太陽エネルギーを受けてパワーアップしたワイドショットで倒される。
 1話目がオリジナルの怪獣を持ってきたのに対し、ここでは“無敵の”ガッツ星人が登場。
<ウルトラ警備隊長のシラガネは「地球は人類の手で守らなければならない」と言いつつ、その直後「戦ってくれ。セブン」と発言…セブンは地球人じゃないだろうに。>
VOL.2
<A> <楽>
第5話 太陽の背信

  脚本:右田昌万
  監督:高野敏幸
  特技監督:神澤信一
 ある地方の畑から多量の金塊が出土した。だが、一攫千金を夢見て村に押し寄せた人間たちがみんな無力化してしまった。惚けたような顔をしてぼんやり座り込む人達を前にウルトラ警備隊は…
 敵は太陽獣バンデラス。バンデラス太陽系の太陽の化身で、再び自ら燃えて宇宙でバンデラス太陽系を生き残させるために地球人のマイナスエネルギーを吸収しようと地球にゴールド・ラッシュを作り出し、金を撮りに来た人間を分身を使って無力化する。多数の目を持つオリジナル怪獣だが、デザインセンスは決してこなれてはいない。太陽の化身と言うだけあって強いのか…というとさほどでもない(レインボー・ダッシュ7でもない)。光を武器とする。
 セブンは又してもカザモリ隊員に変身してるが、今回は結構モロボシ・ダンとしても活躍してるし、冷却光線や水流を使ったりと、結構新技も披露してくれている。
 人間の欲望を主軸にした話だが、TVシリーズと較べると、OVだとその辺かなりどぎつい描写が出来るのが強み。しかも重要なのは“負の感情”なので、喧嘩したいとか、食い物を食いたいとか、あらゆる欲望が捕食対象となるのが面白いところ。このシリーズの特徴として、科学の行き過ぎと、自然に生きることの素晴らしさを主張しているところの一貫性も良し。
 最後の最後、これまですれ違いを続けてきたフルハシとダンがようやく再会を果たした回でもある。「人間に生まれてきたかったと思ったこともあります」なんて良い台詞を残してる。
VOL.3
<A> <楽>
第6話 栄光と伝説

  脚本:神澤信一
      武上純希
  監督:神澤信一
  特技監督:神澤信一
 ウルトラセブンの活躍により地球に平和が戻って数年。フルハシ参謀は最後の任務として“フレンドシップ計画”に駆り出され、月面基地へと向かう。だがその直後、月面基地が壊滅してしまう。地球防衛軍はこの事件を“フレンドシップ計画”に反対するフルハシ参謀のクーデターと判断し、フルハシ参謀を敬愛するウルトラ警備隊に活動停止の命令を下すのだった。やがて巻き起こってくるウルトラ警備隊不要論だが…
 敵は寄生生命体ヴァルキューレ星人。毒々しいヴァイオレット色と、体中にコブを持つ、何とも言い難いデザインをした宇宙人(ダン自身に「醜い姿」と言われてる)。“フレンドシップ計画”により自分の惑星が探知されたことで危機感を募らせ、地球を攻撃する。その実体は影であり、人間の精神を操ることが出来る。ダンに正体を見破られた後、巨大化してウルトラセブンと戦うが、実質的にそんなに強くないようだ。
 フルハシ参謀の死というショッキングな始まりを見せる平成ウルトラセブンの新シリーズ。これまでの二つのシリーズと較べても力の入り方が違い、特撮もかなり凝ってる
 時代は変わり、地球防衛軍も代替わりしてる。その事を如実に示す回で、むしろ地球防衛軍の内紛が描かれている。そもそもオリジナルシリーズでも、「侵略者は一体誰?」と言うのが大きな命題だったが、それを一作目で前面に押し出した作品となった。セブンは一体何を守るべきなのか?これは大変重い命題だが、今回ではそれは解決されず。むしろアッカの方向でこの話は幕を下ろす。大変後味の悪い話だった。名台詞「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」がここでも聴ける。
 最後にウルトラセブンは死んだカザモリ隊員の姿を借りることになる。
<本作は古き良き手作りの特撮で、大変力は入っているのだが、画面エフェクトまでは手が回ってないのは仕方ないことなんだろう。>
VOL.1
<A> <楽>
第7話 空飛ぶ大鉄魂

  脚本:武上純希
      お〜いとしのぶ
  監督:神澤信一
  特技監督:満留浩昌
 フレンドシップ計画に則り牡牛座のTMR2Cにミサイルが撃ち込まれ、そこに住む生物もろとも消し去られた。その事に心を痛めるサトミ隊員は出版社の社長だった亡き父が残した空想小説「空飛ぶ大鉄塊」を手に取るのだが、そこに登場するロボットが実際に現れる。
 敵は鋼鉄ロボット大鉄塊。サトミ隊員の父が出版した辺見芳哉の書いた小説に登場するロボットが現実化したもので、あらゆる攻撃をエネルギーとして取り込むことが出来、ウルトラセブンをも圧倒する力を持つがキュルウ星人が乗り込むことで、セブンに自分ごと大鉄塊を倒させる。それと辺見という地球人に化けた帰化宇宙人キュルウ星人。彼は文明の進んだ星から地球にやってきたのだが、宇宙船が壊れてしまい、自分の宇宙船を修復するため、自分の描いた小説に反応する地球人科学者を捜していた。本体はシルエットだけの登場となる。同じく身を隠して地球で活動する異星人としてセブンとの対話をしている。それとキュルウ星人のテクノロジーを利用しようとした宇宙昆虫ガロ星人。これは巨大な虫のような姿をした宇宙人で、地球人の頭に取り憑くことでその身体を自在に操る。辺見芳哉の小説「空飛ぶ大鉄塊」の意味をいち早く察知し、小説に書かれたとおり大鉄塊を作り出す。
 フレンドシップ計画が発動し、地球人は宇宙の被害者から加害者へと転換する。これが本シリーズの醍醐味って奴だろう。それでこれまで影の薄かったサトミ隊員が主役となるのだが、やっぱりちょっと影が薄いかな?中性的な存在だからな。
<本作の肝はなんと言っても大鉄塊のデザインセンス!これは卓越してる。平成の時代になってなんだこのレトロなデザインは?その割に強いのが泣かせる。
 50年前に出版されたという小説「空飛ぶ大鉄塊」の中に現在地球防衛軍が開発している超テクノロジーのイラストがあるそうだが、イラストじゃ分からんだろうに。いくらセブンが変身してるとはいえ、カザモリ隊員、鋭すぎ…というか、論理飛躍しすぎ。>
VOL.2
<A> <楽>
第8話 果実が熟す日

  脚本:右田昌万
  監督:高野敏幸
  特技監督:高野敏幸
 生体兵器の実験場にすべく地球に向かうレモジョ星系人の宇宙船の中で実験体が反乱を起こし、宇宙船はペルー山中に墜落する。エイリアンの内、4体の死体は確認されたが、 残りの3体は地球人に姿を変えて東京に向かっていることが判明する。エイリアンの捜査を開始したウルトラ警備隊だったが、 その捜索の中で、 ミズノ隊員が思いを寄せる美人歯科医サエコがレモジョ星系人を目撃したと証言する。 カザモリ隊員は 証言したサエコこそがレモジョ星系人ではないかと疑いを持つのだが…
 敵は犯罪宇宙人レモジョ星系人(のテロリスト)。妖怪人間ベムのような姿をしているが、人間に化けることも出来る。そしてその生体兵器である植物獣ボラジョ。レモジョ星系人が地球に持ってきた卵(あるいは球根)状の生物で、これが育ちきって孵化した時、地球は滅ぼされると言う。その内の一体のみが成長。食虫植物と動物を混ぜ合わせたような姿をしている。レモジョ星系人に言わせると「最強の生物」だが、割合あっさりとセブンのワイドショットによって倒されている。
 6話使えるため、一人一人の隊員にスポットを当ててるのがこのシリーズの特徴で、今回はミズノ隊員が中心となってる。これまで科学者として警備隊に詰めていた印象が強いキャラクタだったが、やはり結構オタクっぽい性格をしてるようだ(笑)…その割りにしっかり罠も仕掛けてるけど。
 ここでウィンダムが登場するのだが、カザモリが出したカプセルケースには4つのカプセルが…なるほどよく分かってらっしゃる(『ウルトラセブン』10話参照)
<ミズノ隊員、ウルトラ警備隊の制服のまま歯医者に行ってるけど、職務中に行ってるの?>
VOL.3
<A> <楽>
第9話 約束の果て

  脚本:太田 愛
  監督:神澤信一
  特技監督:神澤信一
 竜ヶ崎という漁村でパトロール中のシマ隊員とカザモリ隊員は不思議な老人と出会った。「一つ前の夏ここではないどこかにいた」という老人の言葉を聞いたカザモリは、不思議な感触を受ける。一方残されたシマは過去の風景が現われる怪現象と遭遇するのだった。さらにシマの前に母の面影を持つ女性が現れ…
 敵は時空怪獣大龍海。浦島太郎に手渡された貝から生まれた怪獣で、名前通り龍の姿をした怪獣。浦島太郎の不実を責めるために誕生する。割とほっそりした怪獣だが、アイスラッガーをそのまま手で受け止めたりと、なかなかタフ。乙姫の精神攻撃のサポートもあり、セブンを追いつめるが、浦島太郎の説得によって、太郎を吸収して消えてしまう。
 順番にウルトラ警備隊員のエピソードを描いているが、今回はシマ隊員。警備隊としてもヴェテランだが、母の面影を追い求めていたという事実が分かる。話そのものは浦島太郎伝説(乙姫が双子だったり、玉手箱の代わりに貝だったりと、いくつかアレンジが施されている)と怪獣を絡めた、『タロウ』『レオ』に見られた昔話シリーズを彷彿とさせるが、話自体は結構地味…というか、テーマがはっきりしない。中心は浦島太郎という老人なのか、シマなのか、ウルトラセブンなのか…トータルで言えば、シマは狂言回しと言うことになるか?
VOL.4
<A> <楽>
第10話 模造された男

  脚本:右田昌万
  監督:高野敏幸
  特技監督:満留浩昌
 防衛軍で新型ロボットのキングジョーIIを却下された新甲南重工の社長カネミツは、キングジョーIIを平和の為のレスキューロボットにすると突然発表する。だが、その背後にはカネミツの娘の拾った不思議な石ラハカムストーンがあった…
 敵は宇宙ロボットキングジョーII。かつてペダン星人に操られていたロボットだが、作動不能になったのを新甲南重工により再生させられる。平和利用に使われるはずだったが、これを殺戮機械だと思いこんだカジ参謀の妄想によって本当に殺戮機械となってしまう。セブンのアイスラッガーを3度にわたって弾き返し、アイスラッガーを欠けさせてしまう。
 人間のあり方とは?と言う哲学的命題がここで登場する。人に望まれるような人間が存在できるのか?良いことの裏側にはちゃんと理由が存在する…これは猿の手の話だが、物語の基本でもある。ストレートな話に宇宙人や進化論など色々な命題をぶち込み、面白い話に仕上がってる。
 この話に主人公はいないが、強いて言うならカジ参謀がそれか?フレンドシップ計画がどのように展開していくのか、ラストストーリーに向かっての疾走および伏線が描かれているのだろう。カジ参謀の妄想こそが実は宇宙人を呼び寄せているという、ショッキングな内容が展開してる。
 あるいはセブン最強の敵とも言えるキングジョーが復活。と言うだけでもオールド・ファンには感涙もの。ウルトラセブン14話に登場したキングジョーとセブンとの戦いは海に映った鏡像が特徴的だったが、本作はよくその辺を分かっているらしく、やっぱり湖に映った戦いのシーンが描かれているのが、細かいけど嬉しい。
 望む人間の総意が平和なら、キングジョーは平和のために働く機械に。しかしこれを殺戮機械と見なすなら、その思いの通りに殺戮機械へ…地球をどうするかは人間の心次第と言うこと。多分これが本作の命題だ。
VOL.5
<A> <楽>
第11話 わたしは地球人

  脚本:武上純希
  監督:高野敏幸
  特技監督:満留浩昌
 中国でオーパーツが発見された。防衛軍はそれを重要機密であるオメガファイルと認定し、秘密施設に隠蔽することにしたのだが、輸送現場に立ち会ったカザモリの前に現れた謎の女性から、その中に“地球人の真実”があると告げられるのだった。その女性に誘われ、真実を解明するべくオーパーツの元に向かうカザモリだったが、そこに現れたカジ参謀はカザモリを排除しようとするのだった。
 敵は守護神獣ザバンギ。アーストロンのような怪獣で、地球先住民族である地球原人ノンマルトの女性に仕えている。二体のカプセル怪獣を圧倒し、更に迷いを捨てきれないセブンに対しても優位に立つのだが、アイスラッガーにより倒される。それ以外にカプセル怪獣ウィンダムミクラスが登場する。奮闘虚しくザバンギにやられてしまう姿が痛々しい。
 1999年版最終話。このシリーズはこの話のためにあったのだと言うことがよく分かる。地球を守ろうとするセブンの前に、地球は地球人のものではなかったという真実が明かされる。かつてのウルトラセブン42話「ノンマルトの使者」の続編となる話で、宇宙に移住したノンマルトの一族が地球に帰ってこようとしたら、既に人類が地球の主になっていて、それを返してもらおうとする話になってる。そして隠蔽し続けたノンマルトの存在が明らかにされた時…オリジナルシリーズの中でも最も重い話を更に重くした話に仕上がっている。何せそこにセブンが命を賭けて守ろうとしている地球人自身が侵略者だったら?と言うテーゼにより、セブンの存在意義までが問われることになるから。もし地球人を守ろうとするなら、宇宙の平和を乱す存在としてM78星雲からも追放を受けてしまいかねないという…
 そもそもカジ参謀の提出したフレンドシップ計画とは、侵略者として居座った地球人が地球に住み続けるため、先住民族であるノンマルトを撃退することだった。今回悪役となってしまったカジはカジなりに地球を守ることを必死に考えていた…これってかつてのキリヤマと同じか?
 異星人だということが発覚し、ウルトラ警備隊の面々からもそっぽを向かれたカザモリが再び仲間として受け入れられるまで、そして地球人は侵略者であることを全宇宙に向かって発信する課程。これは本当に大切なことだった。そしてノンマルトが地球とノンマルトをつなぐ架け橋として選んだ人物とは…なるほどなるほど。こういう話に持って行くか。そしてセブンが選んだ選択とは…フィナーレを飾るにはピッタリの作品といえる…後に新シリーズが始まるわけだが(笑)
VOL.6
<A> <楽>
第12話 ダーク・サイド

  脚本:神戸一彦
  監督:高野敏幸
 セブンが地球から去って5年。恒天観測員の任務を放棄したのみならず、地球の侵略者である人類を助けたことでセブンは辺境惑星で幽閉され、地球ではウルトラ警備隊を辞職したカザモリが喪失感と共に生きていた。セブンが去った後の地球は宇宙連合と不可侵協定を結び、表向き侵略者は誰もやってこなくなってきており、防衛軍の戦力も縮小傾向にあった。そんな時ウルトラ警備隊に新隊員キサラギ・ユキ隊員が配属。ルミ隊員と共に重力異常の調査に出かけるが、目の前に現れた謎の星人にルミがさらわれてしまう…
 敵は放浪宇宙人ペガッサ星人。かつて地球により破壊されたペガッサ星から逃げ出したものたちで、穏健派と侵略派の二派に分かれている。穏健派は地球でサトミ隊員とルミ隊員をダークゾーンに閉じこめ、そこで二人に地球の危機を告げるが、一方急進派はペガッサ星を破壊した報復に地球を自分のものにしようとする。それぞれ地球人に姿を変えて地上で生活しているが、二派ともカザモリをウルトラセブンと勘違いしたりしてる。侵略派の攻撃が始まった際、穏健派リーダーの特攻によりダークゾーンは閉じられ、地球から駆逐されてしまう。
 新シリーズ「EVOLUTION」の第1話(と言っても第4話が先にリリースされていたが)。ウルトラ警備隊もサトミは予備役に、カザモリは失踪。そんな中、なんか訳ありっぽい新隊員のキサラギ・ユキ隊員が初登場する。
 見た目の平和の裏で着々と地球進行が始まっていたという話で、タイトルとは異なりウルトラセブンは寝てるだけ。
 途中孤児院らしい学校が登場するが、そこの先生はなんと桜井浩子。随分変わったなあ。実は彼女がペガッサ星人の穏健派リーダー。ユキ隊員の母親代わりだった。
 かつてウルトラセブンだったカザモリだが、実は自分自身がセブンの分身であったことに気づいていない。と言うところが本作の特徴。結果的にカザモリ自身がウルトラセブンに変身できることに気づいて終わる。
 前回(?)に続き、一瞬だけナースが登場してる。
<ユキ隊員を演じるのは勝村美香。東映の「タイムレンジャー」で既に一年シリーズを演じているはずなのだが、演技は素人っぽい。どうしたんだ?>
VOL.1
<A> <楽>
第13話 パーフェクト・ワールド

  脚本:吉田 伸
  監督:小原直樹
 ペガッサ星人の侵略から一月。突然ウルトラ警備隊の解散命令が地球防衛軍から出された。地球防衛軍内部に異星人の手が伸びていることを感知したシラガネ隊長は、警備隊の面々を招集し、防衛軍本部を攻撃する。その頃、カザモリは内なる声に悩まされていた。いったい自分に何が起ころうとしているのか。そしてウルトラ警備隊の行く末は?
 敵は反重力宇宙人ゴドラ星人。実は既に防衛軍を乗っ取っており、地球防衛軍を襲撃に来たウルトラ警備隊を待ち伏せ、爆弾を設置したところで精神攻撃をかける。一体のみの登場で、シラガネとの一騎打ちの後、オメガファイルを残して消滅する。
 突然ウルトラ警備隊が地球防衛軍を攻撃すると言うショッキングな冒頭から始まる話で、初めてシラガネ隊長にスポットが当てられた話となった。独身者揃いの警備隊にあって彼だけが既婚者。だが、その妻は既に死んでいるという設定が明らかにされた。
 ゴドラ星人によって精神世界をさまようウルトラ警備隊の面々。それぞれの思いが現実化するわけだが、シマ隊員の場合、それがカツ丼というのが、なんともはや。シラガネ隊長の場合、それは死んだ妻との再会という形を取る。さすがにシラガネ役の南条弘二はヴェテランだけに、長回しにも耐えられたのが重要なところ。他の若い役者たちとは又違った落ち着いた演技を見せている。
 カザモリは未だセブンとして覚醒していないままで、又してもちらっとナースが登場。
<シラガネ隊長の奥さん、死んでしまうというシラガネの言葉に応え、「私は覚悟が出来てる」と、大変素晴らしいことを言うのだが、「ウルトラ警備隊の妻になったときから」などと言ってるのが気になるな。そうは聞こえなかったけど、警備隊員と言ったのか?>
VOL.2
<A> <楽>
第14話 ネバーランド

  脚本:武上純希
  監督:小原直樹
 平和に見えた現在の地球には、実は新人類と呼ばれる新たなる人種が介入して人々にマインドコントロールをほどこしていたのだ。ウルトラ警備隊の面々は電波を発信する電波塔の破壊を計画する。一方、人間以上の力を持つようになってしまったカザモリはその力がウルトラセブンの力なのか模索し続ける。
 この時点では敵かどうかは分からぬがメタル宇宙人ガルト星人が登場。謎めいた言葉を語るばかりで何を言ってるのか良く理解できない。それと双頭合成獣ネオパンドン。名前で分かるとおりオリジナルシリーズに登場したパンドンを進化させたものとされるが、実はこれはオリジナルシリーズのパンドンの没稿で、デザイン的には今ひとつと言うところか?出てきたところで終わるしなあ。ほとんどアクションシーンが出てこない(短い分特撮には力はいってるけど)。
 既に地球は新人類によって支配されていると言う状態だと言うことがようやくここで分かる。ただし、この場合の支配は支配されている本人が分からないという状態。これは事実として「今」という時代をそのまま示そうとしているかのようだ。正気を保ったウルトラ警備隊は黙殺され、警備隊の服を着てうろうろしていても、誰もそれに注意を払わなくなってしまってるというのも、結構怖い描写かも。
 仏像を眺めるカザモリは白豪を見て、悟りを得ようとする。一方、自分のトラウマに悩まされるユキとか、戦いの意味を模索するサトミとか、ほとんどこの話はヒューマンドラマに特化した作品になっている。これはこれで面白いのだが、ウルトラセブンというブランドで見ると、どうなんだろう?
 大体物語が突き放しすぎではないか?ちょっと訳が分からないぞ。突然新人類を名乗る子供が出てきたり、死んだサトミ隊員の身体が粒子状になったとか、セブンが突然現れるのも説明不足。
 物語的にみてもどうもしっくり来ない作品だった。
<死んだサトミ隊員は突然で膝を抱えた姿で宇宙を浮遊してる。お前はスターチャイルドか。
 ガルト星人は自らを恒点観測員と呼んでいたが、これはかつてセブンの役割で、その代わりとして来たらしい。ナースもそうらしいが、これに関してはほとんど説明されず。>
VOL.3
<A> <楽>
第15話 イノセント

  脚本:武上純希
  監督:高野敏幸
 ウルトラセブンとネオパンドンの戦いが始まった。だがパンドンに対し過去のトラウマを持つセブンは攻撃に精彩を欠き、ことごとく受けきられてしまう。セブンにとどめを刺すことなく消えたパンドンから何故か植物の種子がばらまかれていた。これが地球侵略によるものなのかどうか判断ができないウルトラ警備隊は薬剤散布でそれらの植物を根絶やしにするのだが、何故か湖の付近だけ枯れたはずの植物が再生を始めていた。丁度その時、湖付近にやってきたカザモリはそこで不思議な少女と出会う。植物を蘇らせることができるその子の名はミツコと言い、実は植物生命体だった。
 敵はネオパンドン。過去セブンを追いつめたパンドンを再生させた怪獣で、口だけでなく頭を二つ持っている。顔はなんか「ウルトラマン」に登場したヒドラっぽい。コントロール装置によって任意に動かすことが可能。その圧倒的な力をもってセブンを圧倒するが、コントロール装置がシマ隊員に奪われ、更に植物生命体のミツコが撃たれてしまうことで動きが止まった…
 新OVシリーズ第一弾…なのに、何故かこれが第4話になる。実は本作を最初に観たお陰で私自身も混乱。物語を一旦バラバラにして再構成したらしいが、なんでこんな訳の分からんことを。以降この説明は1〜3巻で明かされることになる。こういうのを許すのがOVの魅力であり、又ウルトラセブンということなのかもしれない。
 ストーリーの途中だけあって、謎の人物が何人も出てくるし、カザモリ自身がどうやらウルトラ警備隊員でなくなっているし、今度はダンではなく彼自身がウルトラセブンになっているらしいことは分かる。なんとも不親切な作品だ。
 植物生命体を巡り、それを敵と考えるのか、それとも地球を癒すものなのか…その狭間で悩むウルトラ警備隊の面々と、人間ではなく地球のために戦おうとするセブンの姿が見られる。
<植物生命体のミツコを撃ってしまったシマ隊員が、ミツコの脳波が死ぬときまで穏やかだったと聞いて、「嘘だ!傷つけられ、殺されてもそんなはずあるか」と激高してるが、自分で言うなよ。
 最後にセブンがパンドンを倒した十字架型のビームはなんて名前なんだろう?>
VOL.4
<A> <楽>
第16話 アカシックレコード

  脚本:武上純希
  監督:高野敏幸
 新たに誕生した植物生命体を守りつつ、アカシックレコードを探し求めるカザモリ。一方、ユキは町でイナガキ参謀を見かけて、星人と手を組んだことを問いつめるのだが、突如現れたガルト星人によりイナガキは殺されてしまう。それを聞いたユキは、自分の記憶が封印されていることを知るのだった。まるで導かれるようにアカシックレコードの封印された宇呂須神社へと向かうユキとカザモリ…
 敵はガルト星人。恒点観測員と名乗っていたが、実は植物生命体が地球を統治することになることを知り、それに乗じて地球侵略を考えていたらしい。アカシックレコードを書き換え、人類に未来がないと思わせている。今回では巨大化し、ガイモスと共にウルトラセブンを攻める。それと妖邪剛獣ガイモス。ストレートな怪獣で、ガルト星人との共闘で倒れたセブンの息の根を止めようとしたところ、息を吹き返したセブンのアイスラッガーでまっぷたつにされる。
 EVOLUTIONシリーズ最終作。副題の通り、このシリーズは人類の進化について描かれていたことが本作でようやく分かる。人類はネオニューロンと共生することで進化を続け、更に植物生命体とも共存するという、人類そのものの未来がここで提示された。しかし、物語が複雑すぎてカタルシスは全くなし。大体カザモリの存在意義がまるでないし、このために存在したユキ隊員が感情移入できないと言う致命的な問題がある。キャラに魅力が出なかったのが一番の問題か。
 今回でウルトラセブンは地球に残ることになり、人類のためにこれからも活動していく事が暗示されるが、そうなると、セブンは最終的に放浪者になってしまう。次のシリーズを考えてたんだろうか?
 それにしてもすっきりしない作品だったな。
<アカシックレコードなるものが突然登場。そのコピーが記録されているのだが、それは実に簡単な系統樹。安っぽいアカシックレコードだ。
 結局全話にわたって登場したナースは何のためにいたのか、全く分からないまま。ガルト星人も死んだサトミ隊員を吸収して、セブンを呼ばせたりはしてるんだが…
 ラスト、簡単に神の名を出すのもご都合主義。>
VOL.5
<A> <楽>