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スタートレック 宇宙大作戦

スタートレック事典
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1966'9〜1969'6

 世界を代表するSFドラマシリーズ。その第1シリーズ。3期に渡って放映されたが、ここではその全てを収録する。
 この作品には製作、アメリカでの放映、日本での当時の放映、更にデジタルリマスターの順番と、数多くのバージョンがあるが、ここでは製作順で書き下ろしてある。本来三期を分割したかったが、日本で放映されたものがバラバラのため、全部を入れさせていただいた。

主な登場人物
カーク (役)本作とその派生するシリーズには大抵出演している人物で、人生をカーク船長と共に歩んできた人物。何作か監督作もある。
 ジェイムズ・ティベリウス・カーク。愛称“ジム”。エンタープライズ号船長。艦と乗組員に対する責任感は高く、最大限人的被害を減らすように冷静な判断を下すが、時として自ら戦地に赴くこともある。天才的直感と高い戦闘力を持ち、時として独断専行に見えることもあるが、結果として全ての作戦で生還している。
スポック (役)レナード・ニモイ。代表作は本作だが、監督としても質の高い作品を作っている。
 エンタープライズ号副長兼科学主任。バルカン人と人間のハーフで、バルカン人である事に誇りを持ち、常に冷静な判断を下すことを旨としている。ちなみにスポックとは地球人の呼び方で、バルカン名は地球人には発音出来ないらしい。
マッコイ (役)デフォレスト・ケリー。
 レナード・H・マッコイ。エンタープライズ号の医療班隊長。古なじみのカークとは良いコンビで、行動を共にすることが多い。一方、スポックとは嫌煙の仲だが、実は誰よりもスポックのことを案じていることを匂わすこともあり。
チャーリー (役)ジェームズ・ドゥーアン。
 チャーリー・スコット。オリジナル版ではモンゴメリー・スコット。エンタープライズ号のエンジン技師。26話では惑星ジェナスの原子炉をつなぐパイプを自作した。
ウラ (役)ニシェル・ニコルズ。歌手としてデビュー後、本作でブレイク。以降アフリカ系のための活動に名を連ねるなど社会運動も盛んに行うようになった。
 オリジナルではウフーラ。アフリカ出身の女性。通信士でブリッジに常駐している。
カトー (役)ジョージ・タケイ。日系アメリカ人で本作の成功により多くの映画とテレビドラマで活躍。「HEROES」ではヒロの父親役を演じた。
 オリジナル版ではヒカル・スールー。日系人。エンタープライズ号の主任ナビゲーター。拳法の達人でもある。
チェコフ (役)ウォルター・ケーニッグ。
 エンタープライズ号乗組員。通信を担当しているメインキャラの一人。結構女好き。
話数 タイトル コメント DVD
第1話 歪んだ楽園
“The Cage”

  監督:ロバート・バトラー
  脚本:ジーン・ロッデンベリー
 宇宙探査中のエンタープライズ号は救難信号を受信した。クリストファー・パイク船長はこれが罠である可能性を顧慮した上で、惑星タロスへと向かう。そこにいたのはかつての宇宙探索中に不時着した乗組員たちと、彼らの間に生まれたヴィーナという妙齢の女性だった。ヴィーナによっておかしな場所へと誘い込まれてしまうパイクだが…

 シリーズのパイロット版として作られた作品で、本来は1話目とはならないはずだが、本作を再編集した16,17話が好評だったため、
 エンタープライズ号の乗組員はスポック以外は全員違って、艦長もクリストファー・パイクとなっている。カークと較べるとやや保守的な言動が目立つし、感情も強い。スポックもまだ冷静なキャラではなく、人情的で、激情した光景も見られるのでなかなか貴重だ。
 ここで強力な催眠術を使うタロス星人と出会う事で精神的な冒険が始まる。アクションは抑え気味でむしろ精神的な戦いというのが本作っぽさがある。クリストファーの記憶の中にある様々な惑星の出来事を見せるのだが、変わらず存在する女性を手がかりとして自力で脱出することになった。
 精神の発達によって知性の低い人間を意のままに操ることが出来るようになった結果、引きこもって画面を観るばかりになってしまうと言うのは、人間の精神の表れだろう。
 タロス星人の本当の目的は自分たちの手元にいるヴィーナという女性とクリストファーを自分たちの後継者として育てようとしたらしい。それによって自らの種族を生きながらえようとしたらしいが、クリストファー・パイクがエンタープライズ号に戻ってしまったため、緩やかな死を受け入れた。ほろ苦い終わり方だったが、その決着編として16話と17話が作られたのだろう。
 ちなみにここで副長であるナンバー・ワンを演じているメイジェル・バレットは、ジーン・ロッテンベリーの妻。
<タロス星人の立てこもる岩山を攻撃するのに地上に巨大な光線銃を設置して攻撃しているが、エンタープライズ号から攻撃すれば一発な気がする。>
第2話 光るめだま
“Where No Man Has Gone Before”

  監督:ジェームズ・ゴールドストーン
  脚本:サミュエル・A・ピープルズ
 宇宙探索を開始したエンタープライズ号は200年以上も昔に行方不明となった、宇宙船の遭難信号をキャッチする。その通信は、200年前に行方不明となったバリアント号の中で何が起こったのかが語られていたが、その真相を確かめるためにエンタープライズ号は銀河の外へと航路を向けるが、そこで突然の衝撃がエンタープライズ号を襲い、クルーで超感覚能力を持つ人間が次々と倒れていった…
 2作作られたパイロット版の2作目。本作が正式採用され、以降のシリーズへと受け継がれていく(1作目は17話と18話で丸ごと使われている)
 物語としては超感覚能力が主題で、それを持った人間は200年以来重要な宇宙船クルーとなっているのだが、その感覚を持つ事が重要な危機を引き起こしてしまう。超感覚とは結果的に極端なエリート主義に陥り、能力持つものだけが生き残ればいいと考えてしまう。ということ。ミュータント的な存在として考えられる。そして素晴らしい能力でも、それが成長し続けるとすれば…という60年代のSF設定だね。
 人間の能力はどこまで伸びるのか。ほとんど全知全能に近くなってしまった人間が何を考えるのか。色々考えさせられる内容である。又、優れたSF作品は現代に対する皮肉に溢れているものだが、人知を超えた能力を持ってしまった人間を二人配置する事で、あるいは冷戦構造を皮肉っているのかも知れない。
 パイロット版というだけあって、エンタープライズ号の目的や艦内の人間の性格、人間関係など事細かく描かれているのが特徴。特にスポックは、果断な判断を必要とする時は、人の命を奪う事を平気で進言するような人間になってる。最後にちょっと変わった。というところを見せているので、それがスポックの魅力を増しているのかも知れないけど。
<スポックの顔はまだ確定してないため、眉毛が無茶苦茶太い。>
第3話 謎の球体
“The Corbomite Maneuver”

  監督:ジョセフ・サージェント
  脚本:ジェリー・ソール
 エンタープライズ号の前に光る謎の物体が、まるで進路妨害するかのように立ちふさがった。進んでも引いてもエンタープライズ号にくっついてくる物体の常識を越えた出来事にカークは手をこまねいていたが、突如物体は放射能をまき散らし始めた。フェイザー砲でなんとか破壊出来たものの、今度は機械で出来た巨大な球体が現れ、エンタープライズ号に攻撃をかけるとメッセージを送る…
 第一連合のベイロック登場。
 地球人以外の知的生命体とのファースト・コンタクトの話で、地球よりも遙かに進んだ文明との接触が描かれる。ただ、ここでの相手は極めて好戦的で、エンタープライズ号に脅しを駆けてくる。具体的な話としては、脅迫を受けたエンタープライズ号の中でのやりとりが描かれる。「チェスではなくポーカーだ」というカークの言葉が端的に本作を表しているだろう。結局敵は自分たちの中にこそあるのだ。と言う事を語っているのだろう。カークの駆け引きと決断力を見事に表した話となった。そして完膚無きまでに相手をたたきのめした後、手をさしのべるのもアメリカっぽさかな?
 それで最後のオチはかなり強烈。このどんでん返し趣向がSF作品の醍醐味。
 前2作がパイロット版だったため、本作が実質的な最初の話となるが、端的に本作の方向性を示した話だろう。
 ベイリーという若者と、カークの過去が描かれる話。カークも若い頃はかなりの跳ねっ返りだった事が分かる。
 最初期のエピソードだけにスポックの冷静さが際だつ話だった。一方マッコイとカークとの関係も興味深い所。
<カークはエンタープライズ号を女性としてみているため、秘書官のジャニスに対しても邪険な態度を取ってる。後期になると女性に礼儀正しく、時にデレデレするのだが、ここでは珍しい。
 巨大な球体を見たスポックはひと言「素晴らしい」と嘆息。どう見たらこれが素晴らしく見えるのだろう?
 加藤に対し「君は時間に対して、人一倍異常な趣味をもってる」と語るカーク。異常はないだろ。でも素直に加藤は頷いてたけど。オタクかこいつは。>
第4話 恐怖のビーナス
“Mudd's Women”

  監督:ハーヴェイ・ハート
  脚本:ジーン・ロッデンベリー
 正体不明の宇宙船をキャッチしたエンタープライズ号はその宇宙船を追跡し、小惑星群の中で立ち往生しているその宇宙船を保護した。収容されたのはレオという船長と三人の女性だった。女性は三人とも目の覚めるような美人ばかりだったが、彼女を見た男性乗組員が皆見とれてしまう…
 エンタープライズ号に収容した人物によって船が荒らされるという、これもフォーマット作品。これが最初の話になるわけだな。
 それで本作の場合女の武器が使われるが、この時代だから作れた作品なのは違いないのだが、話が後半になっていくと、なかなか不思議な恋愛劇へと転換。割と人を食っていて面白い物語になってる。特に後半の会話はなかなか小じゃれてるぞ。珍しくスポックまで冗談言ってるし。
 カークとスポックが何ともないのに対し、クルーの中ではあくまで一般人であるマッコイが美女の魅力に負け、鼻の下を伸ばしてる姿が見られる。だがそのマッコイこそが美女達の正体を見抜いた一番最初の人物になる。助平も時には役に立つ。
 レオ船長の本名はマッドというのだが、ちなみにマッドという名前は虎鮫島脱獄(1936)で示されるように、アメリカでは嫌われる名字。
<レオの船の乗組員三人はとても美人だが、それを示すためにわざとカメラは腰の辺りを執拗に映してる。なかなか分かったカメラワーク…というか、現代でこれやったら確実にセクハラ問題。>
第5話 二人のカーク
“The Enemy Within”

  監督:レオ・ペン
  脚本:リチャード・マシソン
 惑星α177で地質調査を行っていたエンタープライズ号クルー。だがその惑星の鉱石の粉末を浴びて転送されたカークはエンタープライズ号の中で二人に分離してしまう。性格の全く異なったカークの出現に混乱するエンタープライズ号。以降の転送作業もできないまま時間が経過していく。
 SF作家リチャード・マシソンによる脚本。本作が唯一の作品となる。
 いきなりカークが二つに分裂。片方はそのままだが、もう一方は野獣のような性格をしている。凶暴化した演技はなかなかのもので、ギラギラとした目つきのお陰でまるで異なってしまう。なんとジャニスに襲いかかるシーンまであり。一方の元のカークは、どんどん自信をなくしていく。単に凶暴な分身ができたのではなく、補い合うはずの性格が分裂してしまったと言うことだろう。
 ドッペンゲルガーが現れるとはSFドラマの一種の基本。その一番最初の話となったのが本作と言うことになる。特に転送装置のような魅力的なアイテムがある本作ではそれがやりやすかったことは想像に難くない。
 善悪の両面を持ってこそ人間は正常の行動ができる。特にリーダーたる存在は否定的部分が意志の力を与えている。ということで、心理学的な意味でもきちんとした構造を取っていることが分かる。
 こういう状態にあっても人間の精神を分析しようとするスポックの存在感も良し。こういう時はほんとに憎々しげになってしまうのだが、同時に彼は半分地球人で半分ヴァルカン人である自分自身のコンプレックスの裏返しであることをぽろっと漏らしてもいる。
 物語のオチは決断によるもので、全てよしと言うより苦みが感じられるもの。これがSF的というべきなんだろうね。
<氷点下の地表にあってカトーはそれでもジョークを言ってる。ここでジョークが出るのはやっぱりアメリカ製だ。言ってるのが日本人のカトーだけど。>
第6話 惑星M113の吸血獣
“The Man Trap”

  監督:マーク・ダニエルズ
  脚本:ジョージ・クレイトン・ジョンソン
 健康調査のためM113の古代文明調査を行っているロバートとナンシー夫妻に会いに来たカークとマッコイ。実はナンシーはかつてマッコイの恋人であり、マッコイも出会えることを楽しみにしていた。そして全く変わりのないナンシーに驚くマッコイ。だがカークと、一緒に来たダーネルは全く違った姿をナンシーに見ていた。健康診断を受けたロバートも何か歯切れが悪い。

 モンスターとの戦いが描かれる話で、謎から謎が起こり、徐々に緊張が高まっていくというフォーマット的な構成。惑星で出会ったモンスターがエンタープライズ号に入り込んでしまうと言うのもパターンだが、フォーマットとなるだけに完成度はかなりのもの。なんでもアメリカでの本放送ではこれが第1回放送だったそうだ。なるほど最もフォーマットな作品を投入したんだね。珍しく着ぐるみのモンスターが登場する。塩を求めて徘徊するが、人間から塩分を吸い取ってしまう能力を持つ。
 カークとマッコイが降下しているため、珍しくスポックとウラの会話が見られるのだが、仕事のことしか口にしないスポックにウラはかなりうんざりしているのが分かる。宇宙船の和という事を考えさせられるね。
 今回は妙にカークがぴりぴりしてるのも特徴か?マッコイをからかってたかと思ったら、次に怒鳴りつけたりする。一方のマッコイは相手が昔の恋人だけに焦りまくってるのが特徴。三者三様のキャラ性を上手く見せてる。
 キャラと言えば、カトーが食事を持ってきたジャニスに向かって軽口を叩いてるのも特徴か。カトーはいじられやすいキャラだな。
<カトーは植物を大切にしてるらしいが、そこで動く花が登場。ただ、これはどう見ても手そのもの。
 塩というのは基本的に最も基本的な原子組成のため、不足することはほぼ無いはずだが、これも変な惑星ということだろうか?>
第7話 魔の宇宙病
“The Naked Time”

  監督:マーク・ダニエルズ
  脚本:ジョン・D・F・ブラック
 惑星サイ2000から観測班を収容すべく向かったエンタープライズ号。ジョーとスポックが地上に降りるが、観測班の全員が死亡している事が発覚した。そしてエンタープライズ号に戻ったジョーの体には異変が起こる。急に怒りっぽくなり、誰彼無しに噛みついた後、自殺を図る。これがウィルスによるものだと分かった時には、既にエンタープライズ号の中には病原菌がばらまかれた後だった。しかもエンタープライズ号は崩壊しようとしているサイ2000の地表に引き寄せられていた。

 SF作品だと謎の病原菌に冒される話は一度くらいは出てくるもの。そのオリジナル作が本作と言える。この話だと感染した人間が陽気になったり悲観的になったりと、感情の起伏が異常になってしまう。酒に酔ったような状態だそうだ。今回の病原菌は汗によって感染するというもの。感染者の素肌に触れたら感染してしまう。
 今回はカトーのキレっぷりがなかなか凄く、いきなり上半身裸になってフェンシングをしてたりもする。かなり筋肉質であることが分かるが、まるでそれを誇示してるみたい。で、剣の切っ先に触って「痛っ」とか言ってるお茶目なところもあり。一方スポックはクリスに告白されてしまい、バルカン人と地球人の感情の間で苦しむことになる。ウィルスに冒されているとは言え、最もバルカン人らしく振る舞うスポックも確かに地球人の血が入っていることを窺わせられるエピソードでもある。カークはなんとエンタープライズ号に恋をしてることを告白。何かと笑える物語でもある。
 実は本作が初めてのタイムスリップ話でもある。エンタープライズ号の制御爆発の余剰エネルギーで72時間前にタイムスリップしてしまう。これだけの事をやっておいて「今度は楽しくやりたいものだ」とジョークで答えるカーク。これがアメリカだ。
<危険な可能性のある惑星に降下させてる。確かに防護服は着ているのだが、やっぱりこれは考え無しではないか?>
第8話 セイサス星から来た少年
“Charlie X”

  監督:ローレンス・ドブキン
  脚本:ジーン・ロッデンベリー
 ある惑星にたった一人生き残った少年を収容したエンタープライズ号。ピーターは乗組員に好かれようと、多くの人に好かれようと乗組員に話しかけるピーター。だがほとんど食料らしい食料のない星で何故生き残ったのか、スポックは疑問に思う。
 ピーター登場。全滅した宇宙船が不時着した惑星でたった一人生き残っていた少年。エンタープライズ号に収容されると、見るもの聞くものが全て新鮮で、何にでも興味を持つ。ジェニーに惚れ込んでしまい、彼女のストーカーとなってしまう。セイサス星人によって育てられ、物質変換能力を持つに至った。
 これも宇宙人との接触が描かれる話で、ここでエンタープライズ号に乗り込んできた少年は人間のように見えるが、その中身は…という内容。物質を変形させる超能力を持ち、あらゆる事ができると思い込んでいる。どうにもやっかいな存在。人間の姿をしたモンスターのようなものだ。
 思春期の青年とのつきあい方を描いたような作品。自意識過剰の年代とのつきあいにくさが描かれる。ある意味思春期の青年というのは本当に宇宙人みたいなものという皮肉なのかな?
 少年は人間との接触をずっと断たれていたため、卑屈さと尊大さが同居しており、人間とどうつきあって良いのかが分からないまま。そんな少年に人間のつきあい方を教えるカークの姿が描かれることになる。だが、あまりにも強い力を持つ少年だけに、色々教えるのは骨が折れるようだ。
 スポックがヴァルカン・リュートをかき鳴らし、それに合わせてウラが歌うシーンあり。スポックが積極的に乗組員と交流を持とうとするのは珍しい描写。
 宇宙での生活は体がなまるためか、運動施設の描写がある。カークが柔道をやってる描写あり。
<少年の名前は本来はチャールズらしいが、乗組員にチャールズがいるため、ここではピーターという名前にされている。
 エンタープライズ号で行われている柔道は道着を着用しているが、その色は真っ赤。
 ピーターを閉じ込めようと電磁スクリーンを使用するカーク。しかしそんなことをするよりも催眠ガスとか使った方が効果的では?現にあっという間に抜け出てしまった。最終的にはその方法がとられることになった。>
第9話 宇宙基地SOS
“Balance of Terror”

  監督:ヴィンセント・マッケヴィティ
  脚本:ポール・シュナイダー
 エンタープライズ号でカーク指揮により乗組員同士の結婚式が行われようとしていた。そんな時地球の前哨基地から、正体不明の宇宙船に攻撃を受けたと連絡が入るのだった。人類と敵対関係にあるルミナス星人がその犯人だと色めき立つエンタープライズ号だったが、カークは基地の救出に全力を尽くすことを命じる。
 一種のファースト・コンタクト作品で、好戦的と言われるロミュラス星人との折衝が描かれる。話の展開としては相手のことが分からないために疑心暗鬼による誤解が誤解を呼び、疑心暗鬼に駆られる二つの宇宙船の内部が描かれる話となっている。話はかなり硬質で、個人的に戦いは嫌っているもの同士でも、国の威信を賭けねばならない立場にあれば、時として好戦的態度を取らねばならない事がある。まるで冷戦構造そのものを皮肉ったような内容になっている。そもそもSFのなした働きには、こういった現実世界に対するアンチテーゼがあり、それを素直に描いた作品とも言える。
 ロミュラス星人の宇宙船にはバルカン人もいるため、スポックが敵のスパイではないか?とも思われてしまうのだが、冷静のはずのスポックが妙に焦り顔を見せたり、好戦的な発言をしたりミスをしたりと、いつもとはちょっと違った姿を見せてもいる。一方カーク船長も緊張感に耐えられず弱気な発言もしている。
 ロミュラス星人の宇宙船はステルス機能を持っている。光の屈折を利用するものだとのこと。この当時のSF作品としては卓越した設定ではあろう。
第10話 コンピューター人間
“What Are Little Girls Made of?”

  監督:ジェームズ・ゴールドストーン
  脚本:ロバート・ブロック
 エンタープライズ号乗組員のクリスティンのフィアンセであるロジャーが行方不明となった惑星EX03へとやってきたエンタープライズ号。ロジャーは必ず生きていることを信じているクリスティンだが、その時彼らは生きていることを知らせる通信が入ってきた。その安否を確かめるために降下したカークとクリスティンだが…
 惑星の危機に訪れたカーク船長が危機に陥る。という中期のパターンの典型的例。結局一番困ってしまったのは人間そのものだというオチもパターン。本作はSF小説家にして本作のノヴェライズも手がけているロバート・ブロックが初めて書いた脚本。宇宙の神秘について描かれていく。ちなみに原題はマザー・グースの歌から。
 ここでは人間そっくりなロボットであるアンドロイドを作る方法が描かれる。なんとそれでカークのコピー体まで作られてしまう。惑星EX03の先史文明の遺産で、完全な人間のコピー体を作ってしまう。そのアンドロイドを使い、人間を不老不死にしようとする狂気の科学者が描かれるが、果たして思考するコンピュータは人間に替えられるのか?という哲学的な話に展開していく。
 結局それに対抗できるのは人間の力と言うよりは、カーク自身の知恵と精神力。そして微妙なサインを決して見落とさないスポックのお陰。まさにこれこそ「スタートレック」。ただ今回マッコイが登場してないけど。
 今回登場したアンドロイドの大男ラックはすごい存在感。これで女性の声を出すのはすごくシュールだ。
 今回は光の使い方とカメラアングルが凝っていて、目の部分だけ光を当てることで、緊張感を演出している。あと細かいところだが、ここで登場するロジャーもフェイザーを使っているが、型が違っているのも特徴。旧型なのかな?
<あくまで冷静に判断しようとしているスポックに対し、「あなたは婚約者を持ったことがないでしょう」と返すクリスティン。何も言わないスポックだが、その理由は後になって判明する。
 アンドロイドを作るにはコピー元が必要なのだが、アンドレアはどうやって作ったのだろうか?>
第11話 悪魔島から来た男
“Dagger of the Mind”

  監督:ヴィンセント・マッケヴィティ
  脚本:シモン・ウィンセルバーグ
 “悪魔島”と呼ばれる囚人惑星に荷物の転送を行ったエンタープライズ号。だがその荷物に紛れ込んで一人の凶悪犯がエンタープライズ号に入り込んでしまった。その男サイモンは何かに怯え、エンタープライズ号に置いてくれるように頼む。その様子にただならぬものを感じたカークは悪魔島を調査することになる。そこにいたアダム博士は、大喜びでカークを迎えるが…
 エンタープライズ号に異分子が入り込むというパターン。これも非常に多い話だが、それと、惑星調査を組み合わせた話となるが、基本的に全て部屋の中で話が展開してる。
 SF作品の中で何より楽しいのはやっぱりマッドサイエンティストもの。この話はまさしくその魅力が存分に発揮。
 ここではカークの過去がちょっとだけ語られる。調査員でやってきたヘレンという女性とは4年前にちょっとあったらしい。カークはそのことをあんまり良く思っていないらしくヘレンの言うことに一々突っかかってる。ヘレンって結構良いキャラだが、登場はこの話だけか?ちともったいない。
 完全な合理主義の筈のヴァルカン人は心霊術を使えるらしい。結構矛盾してるのだが、逆に科学が進むと、科学ではどうしようもないことが見えてしまう。ということなのかも。そう考えると意外に深い。「科学的とは何か」という命題がこの話にはあるのかもしれない。ことある毎に「科学」という言葉が出てくる。
 あくまで感情的にならないはずのスポックがカークのために声を荒げるシーンもあり。
 ちなみにこの話は元は「悪魔島から来た狂人」という邦題だったが、やはりそれではまずいというのか、「男」に替えられている。本来的に「狂人」とは一体誰のことか?というテーマ性を考えていたのかもしれない。
<カークとヘレンはまっすぐアダム博士の所に行ったが、手続きとか職員とかはいないのか?
 アダム博士が開発した精神中和装置だが、これを使われると精神が落ち着くどころかますますおかしくなってしまう。傍目からそれが分かっているのにカークはそれを放置してる。
 精神中和装置でヘレンが恋人だと思い込んだカークは泣きそうな顔で「ヘレン行かないでくれ」と懇願してる。多分本作で唯一のシーンだろう。>
第12話 400才の少女
“Miri”

  監督:ヴィンセント・マッケヴィーティ
  脚本:ジーン・ロッデンベリー
 銀河の果てから地球型の救難信号を受け取ったエンタープライズ号はその惑星に急行するが、そこにはなんと地球そっくりの惑星があった。カーク、スポック、マッコイ、ジェニーと保安部の二人が転送するのだが、なんとそれは1960年代の地球そっくりの光景が広がっていた。ゴーストタウンと化した町から発せられた救難信号発信場所を探すクルーだったが…
 SFテイストの強い物語で、行きすぎた科学が人間にもたらす危険に警鐘を鳴らすような物語に仕上がっている。この星の科学では命を長くすることが出来たが、その副作用で大人を冒す病魔が蔓延ることになる。
 物語としても、無邪気な子供が無知故に大人を苦しめるというパターンはここで確立されている。子供に対してどのような説得をするか。かなり精神に来る描写でもある。ここに登場するミリーはもう400歳を超えているが精神は子供のまま。
 科学的考察が元になるが、それも発想から始まる。偶然スポックが人間の思春期のことを口にしたことによって謎の糸口が掴めるようになる。この発想こそがSFの醍醐味だろう。時間に限りがあって、それだけの時間で全てを解決しなければならないという時間との戦いも良し。ウィルスに冒され、徐々に気持ちがささくれ立つクルーの姿も見物。
<今回は地球型の惑星が舞台だが、せめて惑星の名前を付けて欲しい。あるいはそれに慣れきってしまったかな?
 こんな星でも言葉が通じるという矛盾はこの作品では言ってはいけないこと。
 あっけなく風土病であるウィルスに冒されてしまうカークとマッコイ。こういう場所になんのした調べもなしに降りるのは本作の特徴か?>
第13話 殺人鬼コドス
“The Conscience of the King”

  監督:ゲルド・オズワルド
  脚本:バリー・トリヴァーズ
 カークの友人レイトン博士から、画期的な食料合成技術を発明したという連絡を受けてエンタープライズ号を駆り、彼の元へとやってくる。だが実はそれは虚偽の報告であり、レイトンは自分自身に傷を付けた処刑執行人コドスの確認させるためだった。コドスは劇団の俳優となり、宇宙を巡っている。とのレイトンの訴えに耳を貸さなかったカークだったが、独自にコドスとその俳優アントンの素性を調べてみる事にする。
 コドスはかつて惑星の危機に際し、選ばれた人間だけを生き残すという強引な手段に訴えた。これが果たして本当に犯罪なのか否かは難しいところだが、その処分を待たずに逃げたのはやっぱり問題か。それを知った娘が父をかばうために次々と証人を殺していく。と言った展開。家族愛の話になるんだろうか?
 大犯罪を犯した犯罪者をどう処遇するか。永遠の謎について描かれていく話。他に類を見ないユニークな話に仕上がってる。
 最初に劇団が演じていた演目は「マクベス」だったが、まさにこれが今回の話の主題になってるのが特徴。
 カークはあたかもレイナの魅力に参ってしまったかのように見せているのが特徴。独自の調査を同時に行っているので、本当に職務放棄してるようには見えないのが問題か。
 カークの強引さに眉をひそめるスポックの表情も見所。珍しくマッコイに相談してる姿がある。今回は妙にマッコイが格好良いぞ。
 ウラの歌声も聴くことが出来る。珍しい描写だ。
<カリディアン劇団がエンタープライズ号に転送されることが決まった時、苦言を呈したスポックにカークが応えた言葉は「私は船長だ」だった。これは要するに船長は私用に船を使っても良いということか?
 コドスが最後に確認されたのは20年前だそうだが、その目撃者であるケヴィンは結構若い。なんでも殺されたのは両親だそうだが、彼が判別できるんだろうか?
 レノアは最後に完全に壊れてしまい、ケタケタと笑い続けてた。こんな描写良いんだろうか?>
第14話 ゴリラの惑星
“The Galileo Seven”

  監督:ロバート・ジスト
  脚本:オリバー・クロフォード
     シモン・ウィンセルベルグ
 マーカス第三惑星に医薬品を届ける航海を続けるエンタープライズ号だが、クェーサー現象に遭遇する。スポックは優先事項の高いクェーサー現象の調査に向かうが、操縦不能に陥ってしまう。

 タイトルに「ゴリラ」とあり、そのような異星人も登場するが、内容は乗組員同士の不和が中心。行方不明になって生存しているスポックとマッコイ中心の調査隊ではスポックの理論的思考にみんながついていけず、スポックと他の乗組員との間で軋轢が起こる。スポックは冷静だが、冷静すぎて人の命も簡単に優先順位を決めてしまう。優先順位の中には勿論自分自身も入っている。そこが反発を受けてしまう。しかし命がけで行方不明者を捜すようなこともしている。なかなかスポックの内面も複雑のようだ。
 それにしても今回のスポックの頑固さは異常なレベルだ。
 一方ではエンタープライズ号では一日も早くマーカス第三惑星に行きたいフェリス高等弁務官が調査隊を見捨てるように忠告を何度もして、それに苛つきながらも冷静に全員が助かる道を探るカークの姿もある。この判断はとても微妙で、フェリスもカークもどちらが正しいのかは難しい。
 最後は時間ギリギリでスポックを見捨てて行かねばならなかったのだが、最後に宇宙に上がった探査船ガリレオが燃料全てを使って信号を送って発見してもらった。一か八かの賭けなのだが、スポックがそれを選択したところが面白い。本人曰く、「感情的に行動するのが最も理論的に正しいから」だそうだ。最後はそれもジョークにされてしまったが。
<巨大な異星人の姿も見られるが、基本的に後ろ姿だけ。
 異星人からの槍が飛んできて岩に当たったら、表面が削れて白い発泡スチロールが…>
第15話 宇宙軍法会議
“Court Martial”

  監督:マーク・ダニエルズ
  脚本:ドン・マンキーヴィッツ
 イオン嵐に巻き込まれたエンタープライズ号は非常態勢に入り、その際記録担当士官のベンジャミン少佐を失う。その報告のために宇宙基地にやってきたが、何故かエンタープライズ号のコンピュータには非常態勢に入る前に観測室を切り離したことになっていた。人殺しの汚名を着せられ、裁判にかかることになったカーク。一方その間にスポックはエンタープライズ号のコンピュータとチェスばかりしていた…
 裁判王国と言われるアメリカはどういうドラマであっても裁判の話は大概出てくる。本作においては本格的な裁判ものはこれが初めての話になる。
 しかし、本作の肝は裁判そのものよりもコンピュータと人間の対決の方にあった。コンピュータは絶対に裏切らない。が、人の手が加わることによって、容易に嘘を作ることが出来る。実にSFっぽい作品だ。
 本作の特徴として、ベンジャミンの死が過失なのか必然なのか。その事件が全く描かれない状態で、カークの証言とエンタープライズ号のコンピュータ記録のみが証拠となること。会話中心になるが、非常に緊張感ある話になっている。まあ一方では視聴者の方は絶対的にカークの無実を知っているのだが…
 今回は特にスポックが映えてる。今回の話では変人ばかりがたくさん出てくるが、チェスばかりやってるスポックが一番変に見える。バルカン人でありながら、カークを必死にかばう姿も見所。証拠をつかんだ時は珍しく大声も上げてる。
 証人として出廷したマッコイ。これでようやく階級が少佐だと言うことが分かった。それとずらずら〜っと肩書きが出てくる。実はかなり有名な人だったんだな。
 新キャラとして又してもカークの昔の恋人が登場。一体こいつ何人恋人がいたんだ?しかも大概はカークのことを今も好き。見事なプレイボーイぶりだ。そして変人弁護士のサミュエルが登場。全然役に立たないように見えて、鋭い指摘でカークの無実を証明して見せた。まるでコロンボだ。
<弁護士のサミュエルはコンピュータを一切使わないという変人だが、今の時代で考えてさえ、とんでもない変人に思える。見事な描写だ。
 検事に被告人と特別な関係にある人物を選ぶのは絶対に避けられるはずなのだが、元恋人のアリールが検事になってる。
 金がなかったのかとも思うけど、軍事法廷はものすごい狭い部屋で人も少ない。ちょっと安普請な法廷だな。
 ベンジャミンはカークを陥れるために罠を張って死を偽装するのだが、エンタープライズ号から出なかった。出られなかったのかもしれないけど、これって意味なくないか?>
第16話 タロス星の幻怪人 (前編)
“The Menagerie, Part 1”

  監督:マーク・ダニエルズ
      ロバート・バトラー
  脚本:ジーン・ロッデンベリー
 かつてのエンタープライズ号の艦長でカークとスポックの上司であったパイク艦隊大佐からの緊急連絡を受け宇宙司令部に着陸したカーク達。だが、パイクはデルタ線で大やけどをしており、意識さえもおぼつかない状態で通信など送れる状態ではなかった。更にレコードテープには全くその事実は残されていないという。不審に思うカークだが、何故かスポックの行動が不審なものになっていた。なんとエンタープライズ号を乗っ取り、トップシークレットであるはずのタロス4番惑星へとエンタープライズ号の進路を向けるスポック。スポックの目的は?そしてタロス4番惑星に何があるのか?
 全シリーズを通して唯一の前後編作品。パイクの話はパイロット版「歪んだ楽園」(実はシリーズ1本目となる)をそのまま流用しているのだとか。
 上司に絶対忠誠を尽くすはずのバルカン人であるスポックが反逆を加えるという意外な話で、実はこの年のヒューゴー賞の受賞した傑作。スポックの反乱などあり得ないことに、カークやマッコイが混乱を起こしているのが分かる。
 今回の話は完全にスポックが主人公で、彼の謎の行動は一体何故か?と言う観点で全編が覆われている。論理的な思考と自分の思いが錯綜して混乱しているスポックの姿も拝める。自分のことを逮捕しろ。などとまで言っていた。13年前パイクが船長だった頃のエンタープライズ号に何が起こったのか。前編の本作では何事かは未だ不明。なかなか緊張感のある引きとなっている。
 吹き替えだとタロス星人は
<13年前のスポックは多少若く見せているようだが、改めて言われないと気づかない程度。バルカン人は老化が遅いの?
 13年前にパイクが何をしていたかは克明に記録されている。だけど、艦長室のプライベートまで記録に残してる。ここまでする必要があったのだろうか?>
第17話 タロス星の幻怪人 (後編)
“The Menagerie, Part 2”

  監督:マーク・ダニエルズ
      ロバート・バトラー
  脚本:ジーン・ロッデンベリー
 スポックの突然の反乱に混乱するカーク。スポックはなんの釈明もせず、ただタロス4番惑星から送られてくる映像を最後まで観て欲しいと言うだけだった。そしてその映像では、タロス星人の罠にかかり囚われの身となったかつてのエンタープライズ号船長パイクの姿が…
 タロス星人登場。巨大な頭を持ち、テレパシーで会話している。かつて地上に住んでいたが、戦争のために地下に潜り、テレパシーを発達させてきた。
 前後編の後編。タロス星人の脅威と、それに翻弄されるかつてのエンタープライズ号船長パイクの姿が描かれる。幻影に翻弄されるパイクはかつて自分の記憶の光景を次々に見せられ、そこに住んでいるヴィーナという女性とつがいにさせられそうになった。
 夢の中で理想世界にいられればそれでも良い。と考えるのは一つの大きな魅力だが、本作の主人公パイクはそれをあくまで否定する人間の姿として描かれており、人間意志の讃歌となっている。まあ、これは現代だったらそのまま快楽に陥ってしまう人間の姿が見られるようになりそうだが。結果的にパイクの選んだものは…というオチも待ってはいるんだが。
 実際はタロス星人は自らの滅びが近づいている事を認識していて、地球人を希望として連れてきたとのこと。
 一方現在の話ではスポックが危機に陥るのだが、エンタープライズ号を乗っ取ったのは事実なので、カークもスポックの事を有罪と認めている。これが船長の役割か。なんとスポックの死刑を求刑していた。
 本作は「歪んだ楽園」をただ繰り返しているだけの話のようにも見えるのだが、最後の最後。本当のオチは、大怪我を負ってしまった元艦長のパイクを再びタロス星に戻すことで、ヴィーナ同様にそこで元気な体で過ごせるようにと言う思いやりからだった。実はこれまでの経緯は全てタロス星人とスポックが仕組んだもので、元帥や軍法会議は全部幻。スポックの思いやりというのがよく分かる話だ。あまりに驚かされたので、単独でも充分な作品だ。いやほんと驚いた。
<タロス星人の特徴は巨大な頭。喋る時に口を動かさないが、頭の血管がピクピクと動く。気持ち悪いぞ。
 スポックはむきになって否定してるけど、実際今回は感情的行動が目立ってるね。>
第18話 おかしなおかしな遊園惑星
“Shore Leave”

  監督:ロバート・スパー
  脚本:セオドア・スタージョン
 激務が続き疲労困憊のエンタープライズ号クルー。そんな中で調査のためオミクロン・デルタ地帯の惑星を調査中のマッコイとカトーだが、二人はその惑星で不思議なものを目にする。明らかに「不思議の国のアリス」の登場人物ばかり。それでもこの惑星は休息には適していると判断したマッコイは乗務員の降下を許可するのだが…
 人間が考えたものを実体化するという不思議な惑星が舞台の話で、これは後に30話でも用いられてる(『禁断の惑星』タイプの作品。あるいは『ウエスト・ワールド』か?)。話の前半はコメディ調で、BGMもかなり軽いものが用いられている。
 そして徐々にこの惑星の真実が分かってくると、話がホラー風味に。そしてラストはなかなか人を食ったオチと。なかなかバランスの取れたSF作品と言えるが、それも脚本のスタージョンのお陰だろう。この人も脚本書いてたんだね。本作では珍しいコメディ編だが、こういうのが時々入るからこそ、本作の魅力は上がるのだろう。
 途中でマッコイの死?という衝撃があったが、それさえもやっぱり幻想。ちょっと驚いたけどね。
 カークには15年前に別れたルースという恋人がいたのだとか。この辺の話はカークの過去の恋話がやたらと出てくるね。それで恋人ルースと再会したカークは、ついその美しさに参ってしまう。こういう描写は結構珍しい。
 バルカン人は休養を必要としないと強調するスポック。何でもバルカン人にとって休養とは死を意味するとのこと。ちなみに今回はカークに強引に休暇を取らせるためちょっと騙し手まで使ってる。スポックのジョークは実は結構多い。
 カトーは拳銃のコレクターであることが発覚。しかもかなりレトロなものが趣味らしい。この人いろんな趣味を持ってるな。
<トニアの着替え姿を目の当たりにしたマッコイは「私は医者だよ」と発言。この人が言うとなんか胡散臭いなあ。本当にちらちらトニアの方見てるし。
 マッコイを殺した騎士の顔はマネキンそのもの。スポックに言わせれば、本物と変わりない人工皮膚なのだそうだ。とてもそうは見えない。
 ここに登場したアンジェラは9話で婚約者を殺された女性だが、ロドリゲスと結構雰囲気よさそう。
 不思議の国のアリスにレシプロ戦闘機。ヨーロッパ中世の騎士。なんと落ち武者姿の武士まで登場。ここまでくるとほとんどコスプレの世界だな。>
第19話 ゴトス星の怪人
“The Squire of Gothos”

  監督:ドン・マクドゥーガル
  脚本:ポール・シュナイダー
 ベータ・シックスの植民惑星に急いでいたエンタープライズ号の前に、突如時空の歪みが生じ惑星が現れ、カークとカトーが消えてしまう。指揮権を引き継いだスポックは、二人がこの惑星に転送されたことを推測し、上陸班を編制する。マッコイをはじめとする上陸班がそこで見たのは、蝋人形のようになってしまった二人と、トリレーンという名の謎の人物だった。
 何を言っているのか分からない危険人物を前に、どのような対応をするか。という物語展開で、パターン的にはフォーマットで、ものすごい力を持つキャラが登場。
 話自体、人間の知識から幻想を作り出すという話になり、前話「おかしなおかしな遊園惑星」の話とも似ているのだが、話はかなり重めで、その暗黒バージョンだとも言える。実はこれは子供のいたずらだったと発覚する下りは、ブラックジョークのよう。8話の「セイサス星から来た少年」っぽくもあるな。
 最終的に状況を打破するのは知恵だというのは、このシリーズを通しての中心的命題。後は交渉術かな?考えてみると、知恵と勇気はスポックとマッコイに任せ、カークは口の担当になるようだ。
 今回の話では屋敷にある大鏡が何かと画面に出てくるのだが、実はそれが重要な意味を持つ。
 今回は照明が特徴的に使われてる。中世的な雰囲気を演出してるため、陰影をくっきりさせていたのだろうか?
 子供のいたずらをスポックに説明しようとして途中であきらめるカークの姿もあり。この二人の会話がシリーズを特徴付けているのも確かだ。
<ウラに音楽の才能があるのはこれまでにも何度か描写されているが、チェンバロを上手に弾きこなしてる。トリレーンは目で見られるものと音は再現できるらしいが、味覚は無理。なんだかよく分からない能力だ。>
第20話 怪獣ゴーンとの対決
“Arena”

  監督:ジョセフ・ペヴニー
  脚本:フレデリック・ブラウン
 ダフネ3番星基地からの要請でその宙域へと進路を向けるエンタープライズ号。カークとスポックを始めとした乗組員が降下するが、基地は既に跡形もなく、何者かのフェイザー攻撃を受ける。一方、待ち受けていた敵によってエンタープライズ号も攻撃を受けてしまう。辛くも惑星を脱出したカークは生存者であるハロルドから、恐るべきゴーン星人の野望を聞く。そのためには敵の宇宙船を破壊しようとするカークだったが…
 ゴーン星人登場。人類に対して敵対行動を取る宇宙人で、爬虫類型の姿を持つ。知能は高く、人類と同程度の宇宙船を含める戦力を持つ。ダフネ3番星を攻撃して基地を滅ぼす。そしてそのゴーン星人を使っているのがメトロン星人。人類が自分たちの宙域に入ってきた事に危機感を覚え、ゴーン星人と戦わせた。その姿はまるで人類の青年のよう。
 かなりストレートな侵略ものとして作られた作品。特撮面もかなりの力が入っている。
 ダフネ3番星の攻撃が地球の危機だと判断したカークは直ぐさま宇宙船の破壊を命令。この辺は流石当時のアメリカドラマだ…と思ってたら、これは結構皮肉な物語になってるのに気付く。一体侵略者は誰だ?という、かなりケレン味の強い作品に仕上がってる。人類に敵対するのはひょっとして人類の方が彼らを侵略したからかも知れない。と思わせる事で、現実世界に対する警鐘を鳴らしているとも思える。そう言う意味ではメトロン星人の存在は「神の目」なんだろうな。ちょっと都合良すぎって気もするけど。
 ダフネ3番星地上で、何もない空間に向かってジグザグ行動を取るカークの行動は『ギャラクシークエスト』(1999)で皮肉にパクられてたな。
 ちなみにこの話は異様にファンが多いという逸話があり、ロケ地(ロサンジェルスの郊外らしい)はファンによって詣でられてる他、いくつもの映画で使用されている。
<物語は凄く良いんだが…なにせあのゴーン星人の造形が何ともかんとも。二足歩行するトカゲで初期の仮面ライダーを彷彿とさせるデザインだが、センスが微塵も感じられない。瞬きをするのは芸が細かいけど。
 それもそうだけど、そのゴーン星人を使ってる宇宙人の名前がメトロン星人って…同一種族?
 とある惑星でゴーン星人と戦うカーク。最初は武器もないので石を投げつけて攻撃するのだが…やっぱり発泡スチロールだよな。
 メトロン星人に連れ去られたカークはどこにいるのか推測出来ないか?と言うマッコイの問いに、「宇宙のどこかです」と答えるスポック。ジョークを言ってるのか、素なのか判断が付きかねる。
 惑星で巨大ダイヤがごろごろしてるのを見つけるカーク。ダイヤは尖っている。と通信を送るカークだが、どう見ても平べったいだけ。
 硫黄と硝酸カリを見つけるカーク。で、その硫黄というのがその辺に黄色い粉をまき散らしただけ。硫黄がそのまま?
 あんなでっかいダイヤの弾丸で撃たれたゴーン星人がほとんど無傷で倒れてるってのは無理がない?これって一種の大砲だよ。>
第21話 二つの宇宙
“The Alternative Factor”

  監督:ガード・オズワルド
  脚本:ドン・インガルス
 エンタープライズ号がある惑星を調査中、突然銀河規模の時空の振動が起こり、これまでいなかった人間がその惑星には存在することが分かった。エンタープライズ号その人物を収容するが、その人物ラザラスは人間の形をした悪魔を追いかけてこの惑星にやって来たのだと語る…
 二つの宇宙に挟まれたエンタープライズ号と謎の人物との折衝が描かれる話で、舞台の半分はエンタープライズ号内部。もう半分は名もない惑星上で展開。
 並行宇宙も小説では使われやすい題材。結構都合良い話が展開していくが、このラザラスという人物が変で、あたかも狂人のように振る舞っているが…という物語。同じ人物が喧嘩したり、物質と反物質の関係とか今ひとつ説明が分からず、最後まで謎が続くため、話の展開が分かりづらいのが難点。物語としてもややまとまりを欠く。
 今回スポックはことごとくラザラスの行動を否定してる。理性で捕らえることが出来ないので
<ラザラスは時空を旅してきたと言うが、その格好はモロにヒッピーっぽい。なんか時代を感じるね。
 この舞台の星は前話「怪獣ゴーンとの対決」で使われてた砂漠地帯だね。同時撮影されたのかな?
 ラザラスのことを危険人物だと何度も言いながら、エンタープライズ号を勝手に歩き回ってなんにも言わないカーク。責任感はどうなる?>
第22話 宇宙暦元年7・21
“Tomorrow Is Yesterday”

  監督:マイケル・オハリー
  脚本:ジーン・ロッデンベリー
 ブラックスターの影響から逃れるため全動力を逆回転させた結果、なんと時を超えて1969年の地球へとやってきてしまったエンタープライズ号。400年ものタイムスリップをしてしまったのだ。そこで迎撃のため訪れた戦闘機を破壊し、その乗組員クリストファーを保護する。
 過去に吹っ飛ばされ、現在(当時)の世界に着いてしまったエンタープライズ号が描かれる話(劇場版の『スタートレック4』でも使われた)。SF作品としては結構この手の話は出てくるが、実はこの話が全ての始まりとなる。記念すべき一話。
 エンタープライズ号がどうこうではなく、そこに収容された地球人の問題が描かれる。確かに未来を帰られてしまう可能性を持つわけだから、かなりややこしくなる。何か行動を起こす度にエンタープライズ号に乗り込む地球人が増えていくため、笑えない冗談を延々見せているかのよう。金をかけないようにしているのかもしれないけど、そこそこかかってるね。
 オチは結構強引だがSF的。時間をコントロールすることでこれまでのことを「無かったこと」にしてしまう。良いのかこれで?
 当時のアメリカの技術というのがよく分かる話で、既にテープは開発されていたため、基地には巨大な磁気テープのケースがごろごろしている。
 エンタープライズ号のコンピュータがおかしくなってしまった。何故か女性言葉を語るようになり、語尾に「あなた」が付けられるようになった。妙な話だ。
 相変わらずカーク不在中のスポックとマッコイは漫才は健在。「理論だけで割り切れると思うか?」と感情的になるマッコイに対し無表情で「思うな」と素で返すスポック。良いコンビだ。
<ここに登場したクリストファーの息子は後に土星探検に成功したのだとか。生まれは1970年代だとすれば、そろそろ土星探検が出来ているはずだが。>
ベータ・スリーの独裁者
“The Return of the Archons”

  監督:ジョセフ・ペヴニー
  脚本:ジーン・ロッデンベリー
 100年前に行方不明となったパトロール船アーコン号の謎を解くべくベータ・スリーに加藤とオニールを送るエンタープライズ号。だが帰還したのは加藤一人で、しかも放心状態になっていた。この星で何が起こったのかを調査するため、カーク達は自ら降下するのだが、そこは放心したとても親切な人ばかり。だが時計が6時を指した途端、住民は暴徒と化してしまうのだった。
 不思議な惑星の物語。ほとんどが地上で終わるのはさほど多くないので、結構貴重な話。特に冒頭に加藤がカウボーイ姿で現れたり、カークがモーニング姿だったりと、凝った服装が楽しめる。
 冒頭も少し変わっていて、いつものカークの通信ではなく、地上で加藤とオニールが戸惑っている姿から話が展開。ぐっと掴まれる出だしだった。
 物語はコンピュータによる完全な平和を実現した惑星を舞台にコンピュータとカークの舌戦となるのだが、結局これに勝利するのは論理的でないカークの方だった。
<惑星の住民になりすますために正装で登場するエンタープライズ乗組員達。スポックだけは巡礼者の格好してるが、やっぱりこれは耳のせい?
 この住民には意志がなく、コンピュータによって整然と運営されていると語るスポック。スポック自身がそう言う社会を望んでいたような気がするんだが?
 口の減らないカークに舌戦を挑むコンピュータ。これで勝ってしまうカークは、結局口がうまい人間だって事だな。それにしても古くさいコンピュータだな。>
第23話 コンピューター戦争
“A Taste of Armageddon”

  監督:ジョセフ・ペヴニー
  脚本:ロバート・ハムナー
 高度な文明を持つというエムニア7へと航路を向けるエンタープライズ号。連邦宇宙の中継地にするという意向だったが、そこでの評議会は降下してきたカークに対し、申し出を拒否する。戦争状態にあるというのが彼らの言い分だったが…
 変わった惑星を舞台に、そこでの折衝が描かれる話で、中期では多くなった話の一つ。ここでは戦争状態と言っているが、外からは全く攻撃は見えない。これはコンピュータによるシミュレーションなのだが、そこで殺された人間は死なねばならないという命がけのゲームをしている。文明を破壊せずに戦争を行うという意味では文明的だが、現実にはあり得ない話。まさしくSFだな。
 文明の接触を頑なに避けていたのは、この星がそのような異常な状態にあったかららしいが、文明の接触によってその調和は崩されてしまう。ファースト・コンタクトはこういう形になることが多いようだ。
 一方では、勝手な大使の命令に従わねばならない中間管理職としてのカークやチャーリーの苦労がうかがえる話でもある。分かる分かる。そして今回はあくまでカークの言葉に従うというチャーリーが無茶苦茶格好良く見える。実際そのために命拾いしたようなものだが。
 一方監禁された状態で折を見て攻撃を仕掛けるカークは度胸が良いのか、単なる無謀なのか分からないように描かれている。
 スポックはヴァルカン星人として精神コントロールを行うことが出来るが壁を隔ててもそれは可能。更に「エンタープライズ号特殊外交」と称し、破壊行為を平気で行ってたりもする。なかなか今回活動的だぞ。
 コンピュータによるシミュレーション戦争だからこそ、戦争の悲惨さが分からず、だからこそ延々と戦争が続いてきたのだという。確かに戦争が平和をもたらすのは、実際に死を目の当たりにするから。現実に顔と顔をつきあわせて和平を求めることの重要さが最後に語られていく。冷戦構造を思い切り皮肉ってるんだな。
<スポックの精神攻撃は壁とかをすり抜けて可能らしいが、それだったら楽に切り抜けられたピンチはいくらでもあったような?
 エムニア7ではカーク達のことを「地球人」と言っているけど、活動の中心はスポックのはず。よくこれで地球人だと分かったな。>
第24話 宇宙の帝王
“Space Seed”

  監督:マーク・ダニエルズ
  脚本:キャリー・ウィルバー

 エンタープライズ号は宇宙の果てで地球のモールス信号をキャッチ。古い地球の船が浮かんでいるのを発見した。カーク、マッコイ、チャーリー、そして歴史家のマクガイヴァーが救出に向かうと、その宇宙船ボタニー・ベイ号の中には冷凍睡眠で眠り続ける一人の男を発見した。脅威の回復力を見せるその男カンは、仲間たちと共にエンタープライズ号を乗っ取ろうとする。
 カン登場。本名カン・ノエニン・シン。1990年代にアジアから中東までの地球の1/4を支配したという独裁者。宇宙に出たフロンティア船ボタニー・ベイ号の船長。品質改良を受けた天才ではあるが凶悪な過去の地球人。同じく品質改良を受けた部下たちとエンタープライズ号を乗っ取ろうとする。ちなみに男性的魅力も大変高い。劇場『スター・トレック2 カーンの逆襲』(1982)ではカーンという名になっている。
 後に『スター・トレック2 カーンの逆襲』に再登場することになるカンだが、その前史的エピソード。完全に今回はカンの存在感で見せる話で、過去から復活した男にして、地球上の1/4を支配したという独裁者によるエンタープライズ号の危機が描かれるが、その存在感だけでも充分な作品だった。
 一方でそのカンとの会話でのカークの能力の高さも際だってる。カンをわざと激昂させて本音を引き出したり、危機的状況の中で冷静な判断を下したりと、まさに今回はカーク対カンの様相を呈している。
 今回スポックが妙に人間くさくなっているのも特徴。ミスを犯したり、間違っていても自分の主張を曲げなかったり、それを指摘されると不快な顔を見せたり。スポックらしくないというか、逆にスポックらしいというか。
 本作の設定によれば1990年代には既に地球人は宇宙に出て行ったらしい。ただしその年代に優生戦争と呼ばれる戦争が起こっていたことも示唆されている。カン自身は独裁者側で戦った改良人間のリーダーだった。カンの考えは完全に独裁者のそれで、独自の哲学が展開。まさに悪の魅力と言ったところ。
 ラストにミルトンの「失楽園」の一節があり。カンとカークの言葉のキャッチボールだが、ちゃんと受け止められるのがカークの有能さ。
<機関室の中には簡単に取り外せるレバーがあった。それでカークはカンとの戦いに勝つのだが、そんなのがあってはいけないのでは?>

第25話 死の楽園
“This Side of Paradise”

  監督:ラルフ・セネンスキー
  脚本:D・C・フォンタナ
 バーソルド光線を受けて全滅したと見られたオミクロン・ケティ第三番惑星に向かうエンタープライズ号。しかしそこに降下したカーク達を待っていたのは、元気で活動中の植民が彼らを迎えてくれた。調査を開始するが、不思議なことだらけだった。しかもスポックの旧知の女性までが現れて…
 この話も不思議な惑星に降下し、そこで命の危機に陥る中期によくある話。不思議な花の花粉の力で、肉体的にはもの凄く健康になるのだが、この花粉を吸い込むとオミクロン・ケティ第三番惑星から出たくなくなるらしい。カーク以外の全員がみんな花粉を吸っておかしくなってしまった。
 一方カークはこの状態を「死の楽園」と称する。人間の欲望を全て無くしてしまった世界は、ゆるやかな滅びを迎えるしかないと言うことだろう。
 今回はスポックまでがおかしくなって、旧知の女性ライラと、奇妙な恋物語が描かれる。この人の恋話とは極めて珍しい。おかしな花の花粉を浴びて、感情を得てしまったスポックはライラに対し「愛してる」とか言って、自らキスをねだる…凄い違和感だ。一応吹き替えだと妙におちゃらけた声色まで使ってる。
 …ちなみにこのライラ役はジル・アイアランド。当時ブロンソン夫人。嫉妬深いブロンソンはわざわざ撮影所にまで足を運んだのだと言う。スポック役のニモイにとっても結構怖い役だったらしい。
<カークも花粉を浴びてるはずなのだが、この人だけは何ともならなかった。何でだろ?続けざまに浴びたら徐々におかしくなっていったが。
 スポックを怒らせようとしたカークは化け物だの怪物だの悪魔だの、言いたい放題。
 元に戻ったスポックはいきなり顔色が悪くなり、ついでに顔つきまで暗くなっている。怖いよ。>
第26話 地底怪獣ホルタ
“The Devil in the Dark”

  監督:ジョセフ・ペヴニー
  脚本:ジーン・L・クール
 惑星ジェナスでの救難信号をキャッチしたエンタープライズ号は早速現地へと向かうが、そこでは機材を腐蝕させ人間を焼き尽くす怪物が出たという。徐々に居住地域へと迫ってくる謎の生物。これが岩石生物である事を推測したスポックは、精神接触を試みるが…
 岩石生物ホルタ登場。惑星ジェナスに棲息するシリコンで組成される生物。人間の採掘によって卵を壊されてしまったことに怒り、地表近くに出て作業員を殺していく。
 岩石生物と人類との接触を描いたファースト・コンタクト作品。人間にとっての怪物には、人間の方がモンスターであったという皮肉な作品だが、実際死人の数で言っても遥かに相手の方が上。これで和解するんだから、たいしたものだ(皮肉じゃなく)。それが可能ってのはSFだから。
 スポックの精神交流能力が明らかにされる。相手が生物である限り、どんなものに対しても出来るらしい。
 スポックがカークに口答えするシーンもあり。冷静で頭脳的であるはずのスポックが時折真っ先に危険に飛び出すこともあり、今回はそのスポックの性格がよく出た話だろう。今回は自分の耳が褒められたとジョークも飛ばしている。このあたりの物語だと、スポックはあらゆる生物に対し最新の注意を払う人物として描かれる。スポック役のニモイもこの話は大変気に入ったと言っている。
 撮影中シャトナーの父が他界。撮影中に葬儀に向かったため、登場は最低限&後ろ向きが多い。後ろ向きの時は手を下し、浮になると前フェイザーを構えているのもそのせい。
<デジタルリマスター版で観ると、カークの声が微妙に変わっている所がある。吹き替え直したところもあるんだろうか?
 ホルタはシリコンで出来ているというが、その姿は…年代がよく分かる特撮である。それを言ったらこの話なんかはトンネルからして全部セット丸見えなんだが。
 ところでホルタは岩のような皮膚がはがれると白い果肉のような体が出てくる…イメージからしてライチにそっくり。
 ホルタは体全体から腐食物質を出すそうだが、スポックは平気で手で触れていた。
 なんの理由も言わずにマッコイを呼び寄せ、いきなりホルタの治療を命令するカーク。無茶するなあ。それでマッコイの言った言葉は、「私は医者だ。石屋ではない」。日本語のみのジョークだな。
 カークに「人間に似てきた」と言われたスポックは「公の場で侮辱するのは止めてください」と返す。彼にとってはそうなんだろうね。>
第27話 クリンゴン帝国の侵略
“Errand of Mercy”

  監督:ジョン・ニューランド
  脚本:ジーン・L・クール
 クリンゴン帝国と連邦との交渉決裂が確定的となり、エンタープライズ号は帝国に基地として使用されないようオルガニアへと進路を取る。クリンゴンの宇宙船の奇襲を受けつつもオルガニアに到着したエンタープライズ号。
 シリーズを通して敵対するクリンゴン帝国と連邦の戦いを背景に、やはり惑星状での出来事が描かれていく。中期の作品はこのパターンが多い。ここでは原始的な星を舞台として、代理戦争のような話が展開。
 今回クリンゴン人が初登場。ひたすら版図を拡大し、立ちふさがるものはことごとく倒してきた帝国で、カークは大変嫌っていることが分かる。
 何とかしてオルガニアの協力を得ようとするカークは、科学や学問を与えようと提案するが、その提案をことごとく蹴られてしまう。クリンゴン帝国が攻めてきても態度は全く変わらない。たとえ住民が殺されても顔色一つ変えないという不思議な惑星だが、何故か侵入できないところに平気に入り込んだりもする。武器と呼べるものを全て凍結する能力を持つらしいが、結局カークとクリンゴン人だけがわいわいやっていて、馬鹿みたいになってしまった。
 オチは見事な平和主義者の強さ。当時の世相をよく表している感じ。人類など超越者から観ればアメーバー程度の知性しか持たないのだとか。
 ヴァルカン人はその気になれば完全に意識をシャットアウトできるらしい。嘘発見器にかけられても全く意味がなかった。今回は珍しくもスポックが盛んに動いている。随分感情的にも見えるけど。
 ところでここに登場したクリンゴン人のコールだが、後に度々登場してくることになる。クリンゴン人でありながらクリンゴン人らしくないキャラというのが面白いところだが、ここでは全くそれが分からない。
<クリンゴン人が目の前にいるというのにスポックはカークを「船長」と呼び、カークは「任務」を連発する。偽装の意味がないんじゃ?>
第28話 危険な過去への旅
“The City on the Edge of Forever”

  監督:ジョセフ・ペヴニー
  脚本:ハーラン・エリスン
 時間障害が発生している惑星を調査中のエンタープライズ号。だが、そこでマッコイが生命賦活剤であるコルドラジンを多量服用してしまい、その惑星に転送してしまう。マッコイを追い、惑星に降り立ったカーク達だったが、そこで「永遠の管理者」を名乗る未知の物体によって1930年代のアメリカに送り込まれてしまう。
 タイムパラドックス作品。錯乱状態のマッコイが過去の地球に行ってしまったために時間の流れが狂い、それを補正するためにカークとスポックが時間旅行をするという話。このシリーズには結構こういうのが多いような気がする。話の中心を屋内に限定する事で上手く仕上げていた。
 一方、ここで自分の時代に戻るために悪戦苦闘する姿が見られる。過去から見たら常識はずれの服装をしてるため、恥ずかしがってなかなか人前に出られないカークとスポックがなかなか楽しい。全般的にコミカルな作品に仕上げられてる。ただ最後が悲劇だったし、偶然が多くて後半は駆け足だったが、時間倍にしても作れたんじゃないかな?
<銀河の果ての惑星が何故地球を特定して送り込むのかは不明。そこに入る人間の記憶を再現してるんだろうか?
 時の流れを変えたために消えてしまうエンタープライズ号。だがカーク以下ここにいる面々は誰も消えてないんだが、これってこの場所が特異点だから?
 この時代の服装に合わせるために盗みをはたらくカーク。こういうのもひょっとしたら過去を変えてしまうかも知れないが。
 カークやスポックを雇ったキーラーという女性が1930年代に「原子力」という言葉は無かったはずだけどね。それを素直に受け取るカークやスポックが凄いな。>
第29話 デネバ星の怪奇生物
“Operation - Annihilate!”

  監督:ハーシェル・ドーティ
  脚本:スティーヴン・W・カラバトソス
 文明を持つ惑星に集団精神異常が伝播していった。次はデネバ星であるとの判断により、調査のためにデネバ星に向かうエンタープライズ号。だが到着前にそこも精神異常が起こっていることを知ってしまう。実はカークの兄がそこに住んでいたのだ。不安を押し殺しつつデネバに向かったカークらだが…
 名前のないアメーバー状の生物が登場。人間に細胞を注入し、人間を錯乱状態に落とした上で、宇宙銃に広がるようにコントロールする。太陽光線が弱点で、自然光をあてると死んでしまう。
 この話も奇妙な惑星を部隊とした話。精神異常を起こし、言葉と行動が一致しない人々を前に戸惑うカーク達の姿が描かれていくが、後半はそこから病原菌を持ち帰ってしまったためにエンタープライズ号自体が混乱に巻き込まれる。スポックがその菌に冒され、苦しむ様が描かれる。それで最終的に事態を打開するのはカークの洞察力だというのもいつも通り。
 ヴァルカン人であるスポックは精神錯乱には比較的耐性を持つが、それでも錯乱してしまう。珍しい…という程のこともないか。こういう役が結構多い。
 ここではカークの兄と義姉が登場。しかし手当の甲斐無く二人とも死亡。残ったのはカークの甥に当たるピーター一人。
 カークの兄サムの死を前に、お悔やみを述べるスポック。珍しく本当に悲しそうな顔をしている。
<強烈な光を当てて体内の寄生生物を殺そうとした際、ゴーグルを手渡そうとしたマッコイに対しスポックは「地上の人々はゴーグルを持ちません」と言って拒否する。それで納得してはいけないと思うんだ。実際その直後に目を痛めないで済む方法も見つかったわけだし。
 失明を前にして、回復直後のスポックは「非常にショックを受けた」と言っていた。その理由は目を開けた時に見えたのがマッコイの顔だったからだったとか…ジョークを言ってるんだろうか?なんだかんだ言って今回はスポックが随分柔らかく見える。
 よく考えたら、デネバも自然光は来ていて、それで大丈夫だった生物なんだが、エンタープライズ号はどうやって惑星全体に光を当てることが出来たんだ?>
第30話 惑星パイラスセブンの怪
“Catspaw”

  監督:ジョセフ・ペヴニー
  脚本:ロバート・ブロック
 惑星パイラスセブン探索に向かった隊員から連絡が途絶え、一人転送装置で戻ってきたジャクソンもその場で死亡してしまった。残りの隊員達を救うべく、パイラスセブンに降り立つカークらだったが、そこで彼らが見たのは、おどろおどろしい格好をした異星人だった。彼らはカークに帰れと命令するのだが…
 コロブシルビア登場。パイラスセブンの住民で、トランスミューターの杖を用いて精神世界を現実とする能力を手に入れている。
 お化け屋敷を思わせる話で、SFと言うよりはホラー作品。生物の意志の力で物理的影響を及ぼすというのは、『禁断の惑星』(1956)っぽい。パイラスセブンの住民は降下した人間の潜在意識を探り、人間が最も怖がるものを作り出したらしい。そのため幽霊や中世の洋館、拷問部屋などが登場する。
 それで様々な誘惑を受ける事になるが、チャーリー、加藤、マッコイはその術中にはまってしまう。ここでカークの心の強さが示されることになるわけだ。それを理性的にサポートするスポック。この二人はやっぱり名コンビ。
 シルビアからカークが色仕掛けの誘惑を受けるシーンもあり。手に乗ったふりをしてちゃっかり情報収集する辺り、カークの意志の強さを…というよりこれまでどれだけ女遊びしていたか。と言う邪推もしてしまうのがなんだな。まるでボンドみたい。
 考えたものが実体化するという話は18話の「おかしなおかしな遊園惑星」で登場するが、こちらはもっとホラー風味。
<パイラスセブン探索のために降下したのはカーク、スポック、マッコイの三人。エンタープライズ号の上級士官ばかりだが、それはまずいのでは?
 スポックに対しハロウィンを説明しようとするカーク。しかしそう言う非論理的なものを説明するのも阿呆臭いのか、すぐに止めてる。スポックもそれ位知っておくべきだろう。
 中世の洋館に拷問部屋。これを恐怖心を煽るものとするなら、それはチャーリーか加藤の潜在意識だろう。しかし、カークはそれをお化け屋敷程度にしか認識してない。人間の恐怖心ってのは様々だ。
 カークに帰れと命令してみたり、色仕掛けをしてみたりと、シルビアの行動に一貫性がないのが物語上の最大の難点。
 最後に出てくるコロブとシルビアの正体は…ほとんど冗談のノリ。もうちょっと凝ったものにして欲しかったね。>
第31話 華麗なる変身
“Metamorphosis”

  監督:ラルフ・セネンスキー
  脚本:ジーン・L・クーン
 病気となった連邦のコミッショナーヘッドホッドをエンタープライズ号に運ぶ任務を負ったカークは、シャトルで急ぎエンタープライズ号に向かうが、突如イオン雲に巻き込まれてしまい、ある惑星に強制着陸されてしまう。その惑星で150年前に死んだはずの宇宙科学者ゼフラムと出会う。
 コンパニオン登場。150年前にゼフラムを、そして今回エンタープライズ号乗組員とヘッドホッドを惑星に呼び寄せたガス状生物。ゼフラムに恋をしているらしい。
 中期の物語を象徴するような話で、名も知れぬ惑星に着陸。そこで不思議な体験をするという話。パターンとして人間を遙かに超える超人的な存在が登場するのだが、この話では不定形のガス状生物という形で登場。ある意味この生物は万能の存在ではあるが、愛を知りたがっていた。結果として本作は異種生物同士の恋愛物語とも言えるだろう。オチにはちょっと疑問符を持つけど、ほんの一瞬愛を知るために全てを捨てるというのはなかなか綺麗にまとまった話でもある。
 今回の話では150年前にこの惑星にやってきて、そのまま生き続けてきた科学者が登場。この惑星にいる限り、決して歳を取らず、身体も健康に保たれるのだとか。
 カーク達は今回ある女性をエンタープライズ号に運ぶ任務を負っているが、この女性ヘッドホッドというのがリブの典型みたいな性格で、とにかく傍若無人。で、ちょっと危機に陥るとあっという間にパニックに陥ってしまう。作り手の悪意が見えるような人物になってる。
 一方エンタープライズ号ではチャーリーが一人で不安の中指揮を執ってる。貧乏くじを引かされることが多い人だ。
 この状態でやっぱり科学的知識の方を優先するスポック。相変わらず外さない人だ。
 ちなみにゼフラムは映画『ファースト・コンタクト』でも登場している。映画の最後でゼフラムはカークに「黙っているように」と言っていたが、どうやらカークはその約束を守ったようだ。
<エンタープライズ号に一人を運ぶのに、カーク、スポック、マッコイの三人が行っている。まともに考えれば凄くおかしい訳だが。
 エンタープライズ号で治療可能のヘッドホッドの病気を、人間を不老不死に出来るコンパニオンが治療できないってのはちょっと無理があるんじゃないか?
 カークに言わせれば宇宙でも男性と女性の関係は変わらないのだとか。確かシリーズには無性のキャラもいたんじゃないか?
 コンパニオンによって愛されていることを知ったゼフラムはいきなり怒り始めた。その理屈がよく分からない。本人は「古い人間だから」と言ってるけど、なんで古いとそう言う結論になるんだ?そんでヘッドホッドと合体したコンパニオンには抱きついてる…やっぱ問題は見た目?
 カークの任務はヘッドホッドをエンタープライズ号に連れて行くこと。だったらここでは任務失敗してる訳だよね?>
第32話 宿敵クリンゴンの出現
“Friday's Child”

  監督:ジョセフ・ペヴニー
  脚本:D・C・フォンタナ
 貴重な鉱物資源を得るためカペラ4号に降り立ったカーク達。だがそこには既に宿敵クリンゴン人が来ており、カペラ人と共にカークらに罠を仕掛けていた。
 カペラ人登場。カペラ4号の住民。身長は2メートルを超える戦闘民族。
 日本語タイトルはクリンゴンが挙げられているが、実際にはカペラ人との折衝の方がメイン。クリンゴンと地球人の申し出のどちらを受け取るべきか。と言う事でクリンゴンとの知恵比べが展開する。戦闘民族であるカペラ人はどちらかというとクリンゴン人の方にシンパシーを持っているというマイナス要因をどのようにはねのけていくか。それが物語の前半。そしてクーデターが起こり、自分勝手なマーブという男が皇帝になった所で、交渉が振り出しに戻ってしまい、星からの脱出の要素が入ってくる。ちょっとバランスが良くない感じ。もっと交渉の方に本腰入れて欲しかったかな?
 今回マッコイがとても個性を表してる。カペラ4号の事を誰よりもよく知っているし、皇帝の愛人であるエリンの面倒を甲斐甲斐しく見ている内に心の交流がなされていく。最終的にエリンが皇帝の摂政となり、息子の名前をレオナード・ジェイムス・アカアーと名付けることになる。
 一方、カーク達を地上に残したまま、地球の船の救難信号を受けたエンタープライズ号の行動も描かれるが、チャーリーが艦長代理となって存在感を見せている。ただ、今回声まで違っているので、渋すぎになってる感じもあり。
<カペラ4号での戦いも描かれるのだが、セット丸分かりでしかも殴る蹴るが基本。それなりに金は使われるようなんだが、SF=チャチと言われても仕方ないなあ。
 甲斐甲斐しくエリンの体を気遣うマッコイを横目で見ながら眉をひそめるスポック。彼の性格をよく示しているね。ちゃんと邪魔はしなかったし。
 生まれた子どもは夫のもの。という観念にとらわれているエリンに「子どもは私のものと言いなさい」と言うマッコイ。しかし、それで「子どもはマッコイのもの」と言ってしまう。会話がなかなか楽しい。>
第33話 神との対決
“Who Mourns for Adonais?”

  監督:マーク・ダニエルズ
  脚本:ギルバート・ラルストン
 フォルクス4号星付近でエンタープライズ号は突如現れた巨大な手に掴まれ、強制着陸させられてしまう。彼らの前に現れたのは自ら神と名乗るアポロという人物だった。アポロはエンタープライズ号乗組員にここで住むようにと言うのだが…
 ギリシア神話の神アポロが実は宇宙人だったという内容の物語で、ギリシア神話の神々はみんな宇宙人だったらしい。当初これは騙りかと思ったのだが、本物だったらしい。それで神の祝福を与えようというのだが、それは強制的に星に住まわせることが前提だった。人間の自由意志を阻むものはたとえ神であろうとも反抗するという物語は、いかにも70年代のアメリカらしい物語。でもこれで反発来なかったかな?
 物語の展開としては「セイサス星から来た少年」とほぼ同じ。さほど個性が感じられないのはちょっと残念。
 ここに描かれるアポロは一見単なる女好き。降下したキャロラインを見初め、自分の妻にしようとしている。それと、言っていることが全部「私に従え」で、それ以外何にも言ってないため、一体何の目的なのかが分からないのも難点。
 人の崇拝を受けなければ存在価値がないというのは、神話と宗教の差を示すことだろう。それでアポロに対抗するには、あざ笑うことだった。更に曲がりなりにも神に対してフェイザーをぶちかます。どうにも困ったもんだな。
 結局アポロをコケにして終わってしまった。なんか後味の悪い作品だった。
<それにしてもアポロはマッチョだ。これが神の理想型なんだろうか?
 アポロのトイに対し、カークはモロに「私は神など信じない」と言ってのける。これはかなり問題発言では?
 キャロラインとアポロが「特別な関係か?」と尋ねるカーク。子供も観てるのに。>
第34話 バルカン星人の秘密
“Amok Time”

  監督:ジョセフ・ペヴニー
  脚本:セオドア・スタージョン

 マッコイからスポックの様子がおかしいと告げられるカーク。事実スポックは神経質になり、食欲も失ってる。そのスポックは突然休暇を取ってバルカンに戻りたいとカークに言う。休暇を認めバルカン星へと向かうが、宇宙艦隊司令部からすぐにアルター6号に行くようにと命令される。仕方なくアルター6号へと向かおうとするカークだったが、何故かスポックはどうしてもバルカンに戻ろうとする…
 脚本にSF作家のスタージョンを招いてこれまでになかったバルカン星の描写が特徴的な話。「バルカン」とはそもそも宇宙語で「暑い」の意味。バルカン星はかなり暑いらしい。そしてバルカンの結婚の儀式が描かれるのだが、ここでの結婚とは文字通りの意味の他にも「決闘」の意味があり、妻となる女性は夫となる人間と誰かを戦わせることとなる。かなり無茶な設定だが、宇宙では様々な事が起こることを匂わせる。異星人の性交を直接描こうと言うスタージョンの試みであり、脚本はロッテンベリにより何度も書き直されたという。
 バルカン人にとって子孫を残すための性交は7年ごとにやってくる発情期によるものだが、それは凄まじいストレスを生じさせるらしい。お陰でスポックはノイローゼ状態になってしまう。ル・グウィンの「闇の左手」のような話だ。設定的に大変面白い話になっている。そしてスポックには実は妻がいたという事実が発覚。7歳の時に既に結婚式は行っているが、まだ本当に夫婦にはなっていないとのこと。
 この儀式はバルカン人にとっては忌むべきものだが、これをやらないと死んでしまうと言うもの凄い設定。ちなみにこれは『スタートレック3』でもしっかり設定を引き継いでいる。
 それで儀式に巻き込まれてしまったカークはスポックと命がけで戦うことに。ここではマッコイの機転のお陰で二人とも生き残ることになったが。
 艦隊司令の命令に逆らいスポックの命を優先させるカーク。この人の性格がよく分かる話。
 最後、生きていたカークを思わず抱きしめ、「ジム」と大声を上げるスポック…いやあ、これは凄い描写だよ。 なんでもこのシーンはコンベンションの定番だそうで、よく使われる。
 トゥパウ役のセリアはピーター・ローレ夫人。
<チャペルに対して怒鳴ったり、発情したりするスポックの姿が見られる。声を荒げることは滅多にないだけに面白い描写だ。
 バルカン人の儀式用武器は戦斧。しかし、本当にこれが金属だったらとんでもない重さ。これをカークに使わせる事自体設定的に無理。
 ラストシーンで分かるが、バルカン人でもやっぱり女性は怖い。結局スポックは独身に戻ってしまった。>

第35話 宇宙の巨大怪獣
“The Doomsday Machine”

  監督:マーク・ダニエルズ
  脚本:ノーマン・スピンラッド
 宇宙船コンステレーション号の救難信号を受けたエンタープライズ号はその太陽系に向けて航行するが、エンタープライズ号が到達する前にその太陽系は完全に破壊されてしまっていた。コンステレーション号で生き残った艦長のデッカーによれば、巨大な生物が太陽系を飲み込んだというのだが、そのデッカーをエンタープライズ号に転送させたところで宇宙怪物に襲われ、カークはコンステレーション号に取り残されてしまう…
 “殺し屋”と名付けられた宇宙怪獣登場。過去にどこかで作られた破壊兵器らしい。超巨大な宇宙船だが、意志を持ち、あらゆるものを飲み込もうとする。エンタープライズ号のフェイザー砲程度では全く傷も付けられない。
 宇宙怪物との戦いが描かれる話。ここまで宇宙での戦闘ばかりを描いた話は結構珍しい。話も中だるみ無しに最後まで見させてくれる。
 カーク不在の中で、勝手に指揮官を名乗るデッカーとスポックとの折衝が物語の見所となる。本来破損船の船長だったデッカーだが、准将という位の上ではエンタープライズ号に命令出来る権限を持つ。ただし一度宇宙怪物にボロ負けしているため、自棄になってのその復讐戦としか見えない。無謀な作戦に対し、スポックが選んだのは、「軍紀に従い服従」。実にスポックらしい選択だが、非常時にはカークと准将の命令のどちらを取るかで明確にカークの方を選んでるのが面白い所。不確定な要素がある時はこうなる訳か。完全にガチガチの原則主義者ではない事がよく分かる。カークの転送がギリギリになったので、珍しく焦った姿が見られる。
 本作は割と現実に対する皮肉が語られることが多いが、ここでは宇宙怪獣の存在が抑止力としての強力兵器として語られている。冷戦下の核競争そのもの。
<カークはコンステレーション号に飲みかけのコーヒーがない事を指摘。これってマリー・セレスト号の故事に倣った?
 この話も新しく吹き替えしている部分があって、声がいきなり老けてしまってる。こればかりは仕方ないが。
 デッカーは宇宙怪物のことを「1キロ以上」と言っていたが、大きさで考えれば、そんなレベルではない。とてつもない大きさだ。
 だけど、いくら大きいと言っても、この程度の宇宙怪物が太陽系を全て破壊出来るとは思えないのだが。>
第36話 惑星アルギリスの殺人鬼
“Wolf in the Fold”

  監督:ジョセフ・ペヴニー
  脚本:ロバート・ブロック
 惑星アルギリスで休暇を楽しむエンタープライズ号クルー。チャーリーはそこで出会った踊り子カーラを気に入り、その家に向かう。実はこれは女性欠乏症にかかったチャーリーに対する治療だったのだが、その直後カーラは刺殺され、傍らには怯えたチャーリーの姿が…
 殺人容疑がかけられたチャーリーが中心となった話で、何故そうなってしまったのか、その謎解きが描かれていく。かなりサスペンスっぽい作品に仕上げられている。どことなく黒澤明の『羅生門』に似てる。推理小説家でもあるブロックの脚本作品らしい。
 チャーリーが犯人かもしれない。となってムキになっていくカークの姿が見られる。どんどんチャーリーに向かって不利になっていくのだが、わざわざSFでやるような作品ではないような気がしたが、話がどんどん滑っていく。最後は切り裂きジャックの仕業になってしまった。なんだかなあ。SFの殻をかぶった怪奇ものといった感じで、全般的に話としては今ひとつといった感じ。
 その真相究明のために行われているのが感情転移という方法。まるで降霊儀式のようなもので、胡散臭いことこの上なし。今回の話は全体的に胡散臭さで覆われてた。
 話はいつの間にかジャック・ザ・リパーの仕業になってしまったが、わざわざ舞台を霧の多い惑星にしたのはそのためか?
<殺されてしまったシーボの言葉を逐一覚えているマッコイ。固有名詞まで全部覚えている記憶力は凄いけど、あの状態で可能なのか?
 やはりこの当時だけにあって、コンピュータは女性の声で口頭で返事してる。この当時の科学考察が分かる。
 結局話は市長であるヘンギストが犯人って事になったが、取り憑かれただけなのに殺された上に宇宙に放り投げられ、しかもみんなに笑われっぱなしってのは可哀想すぎる気もする。>
第37話 超小型宇宙船ノーマッドの謎
“The Changeling”

  監督:マーク・ダニエルズ
  脚本:ジョン・メレディス・ルーカス
 救援信号を送ってきた惑星アルリアへと向かうエンタープライズ号。だがアルリアにいたはずの40億の人類は跡形もなく消えてしまい、更に謎の小型宇宙船から攻撃を受けてしまう。何とかその宇宙船とコンタクトを取ったカークは、それが「ノーマッド」と名乗る。
 今回は宇宙が舞台で、謎の物体との交戦が描かれる。こういった物語は初期には多かったが、中期になると結構少なくなっている。この話は見事なファースト・コンタクトものになっている。
 ここに登場するノーマッドは一種の鉱物生命体で、そのパワーはエンタープライズ号を遙かにしのいでいる。元は21世紀に地球から打ち上げられた同名の宇宙船で、元は宇宙の生物を発見するためにあったが、故障してしまい、不完全な生物を抹殺するために活動している。ただし、感情を理解できないため、知的生命体からその知識を奪い取ってしまう。
 ノーマッドのお陰でチャーリーは一回死んでしまうし、ウラは知性を失ってしまうと言う、かなり迷惑な存在。
 この完璧生命体に対してカークがとった方法はいつも通り。答えのでない質問を山ほど出して相手を混乱させ、その間に放り出すという方法。コンピュータと戦う場合は大概この方法になる。
 今回のスポックはノーマッドの知性にコンタクト。コンピュータの思考まで読み取るとは、ヴァルカン人の能力は凄いものがある。
 蛇足ながらこの話はあさりよしとおの「宇宙家族カールビンソン」30話でモロパクリされていたりする。更に蛇足ながら、そのマンガで「かんかんのう」と踊るのは落語の「らくだ」から。
<カークは最後にノーマッドのことを「息子」と呼んでいる。そう言えばテレビ本編ではカークの家族はほとんど言及されてないな。>
第38話 死のパラダイス
“The Apple”

  監督:ジョセフ・ペヴニー
  脚本:マックス・エリッヒ
 調査のため惑星ガンマー6号に着陸するエンタープライズ号乗組員。そこはあたかもエデンの園のような楽園だったが、ある植物に触れた乗組員が突然死んでしまう。更にこの星の住民に監視されるカーク達…
 この時代に結構多く使われるお話で、それなりにバランスを取っている文明に勝手に介入して文明を破壊してしまう話。結構よくあるアメリカ万歳。文明万歳な話。ちょっとだけスポックがそれに異を唱えているところがあるが、この辺りはニモイのアドリブじゃないかな?
 ここの住民はバールの奴隷ではあるが、その恩恵を被り、ほぼ不老不死状態。だけど、奴隷はいけないよ。という事なのだろうか?カーク達はエデンの園に迷い込んできた蛇みたいなもんだね。
 バールは機械だと分かったが、最後まで結局何者によって作られたかは分からずじまい。なんかいい加減な。
 今回は毒の花のトゲにやられたり、稲妻に撃たれたり、爆発する岩石と接触したりして乗組員が次々と死んでしまう。そのことごとくに平気なスポック…どういう体の構造をしてるんだ?今回は生殖行為の説明をしなければならなくなって、しどろもどろになる姿が描かれたり、「悪魔」に似てることを皮肉られ、憮然としてる姿が描かれてる。これは結構珍しい
<最初に死んでしまう乗組員はロシア出身らしい。彼によればエデンの園はロシアにあったと言うが、これは古いアメリカン・ジョークからだと思われる。「着る服もないのにそこが楽園と信じ込んでる人間が住んでる国」なのだとか。
 エンタープライズ号のエンジンには反物質が用いられているらしい。チャーリーによれば、それが漏れ出しているという…かなりやばくないか?
 投げつけると爆発する岩石が登場。しかし割っても何も起こらない。
 惑星の原住民は褐色の肌に腰布を付けた人間…凄い描写だ。
 どう見ても張りぼての神像を「素晴らしい」と感嘆するスポック。まあ、スポックが感心したのはここから出るエネルギーらしいが、凄く馬鹿に見えるぞ。
 電波障害で星の上では通信が使えないのだが、エンタープライズ号とはちゃんと通信できてる。いい加減な。
 チャーリーを解任すると命じておいて、その直後にチャーリーにフェイザーを撃つように命令。カークの命令には矛盾が多い。
 住民に自由を与えたカーク。ただ言ってることは、「後は私たちは放って置くから勝手にしてくれ」だった。恐るべき無責任ぶりだ。>
第39話 イオン嵐の恐怖
“Mirror, Mirror”

  監督:マーク・ダニエルズ
  脚本:ジェローム・ビクビー
 カーク、スコット、マッコイ、ウラの四人は惑星ハルカンからエンタープライズ号に転送されるのだが、エンタープライズ号の様子が全く違っていた。そこには髭面で残酷な性格をしているスポックを始めとして、弱肉強食の世界に変わっていた。実は磁気嵐のため、鏡像世界に入り込んでしまったのだ。
 トラブルによってもう一つのエンタープライズ号に入り込んでしまったカーク達が、元の世界に帰ろうとする話。限られた状況と資源の中で元の世界に帰ろうとするのは本作ではよく使われるパターン。以降SFドラマではよく用いられることになる鏡像世界も、実は本作が始まりとなる。脚本も結構しっかり練られているので、なかなか見応えある良作。
 並行世界と言う事で、もう一人のスポックやカークが登場するが、スポックが髭面で野蛮な言葉遣いしてるのが特徴。これはこれでかなり怖くてはまってる。一方、元の世界は元の世界で暴れ回ってるカークの姿も見られる。こちらでは冷静そのもののスポックがきちんと処理していた。結局冷静さと決断力こそが全てを収める手がかりというのは、あらゆる作品を通してのテーマとなる。最後にカークが言っていた「全ての戦いでは賢いものがきっと勝つ」は作品そのもののテーマだ。
 今回意外に存在感見せているのが加藤で、頬に大きな傷を持ち、尊大な態度でウラに迫ってくる。この人はいじられやすいみたいだね。
<こういう世界に来ると、そこは軍事世界で、ドイツ式の敬礼になってるのはパターンと言えばパターン。女性がビキニ姿なのも特徴かな?
 髭面のスポックの顔が拝めるが、髪の毛はそのまま。きっちりセットした髪の毛と無精髭の取り合わせは違和感ありまくり。
 鏡像世界のカークもやはり惑星ハルカンに降下していたらしい。全く異なる世界なのに、同じ行動を取っていたというのは説明なかったね。
 鏡像世界のスポックはバルカン人の能力をフルに用いているが、何故かバルカンピンチを使わず、怪力を武器にしていた。これは違いなのかどうか分からないけど。
 途中から日本語の声が変わっているのはデジタルリマスターでの変更点かな?なんせ30年が経過してるから、吹き替えるとやっぱり違和感あるね。>
第40話 死の宇宙病
“The Deadly Years”

  監督:ジョセフ・ペヴニー
  脚本:デヴィッド・P・ハーモン
 定期連絡のため惑星ハイドラ4号に降り立ったエンタープライズ号乗組員。そこで彼らは老人の夫婦と出会うのだが、なんと彼らは20代。実はここに来ていた科学調査団は急激な老化を始めてしまったのだ。だが、謎の奇病は既にエンタープライズ号乗組員も侵し始めていた。
 エンタープライズ号の乗組員が全員老化してしまうと言うショッキングな話。乗組員それぞれに様々な老化現象が起きるが、全員どんどん老けメイクになっていく。どんどんよぼよぼになっていく面々の変化が見所。もちろんカークもそうだが、実際に歳食った姿とは似てない。
 どこかの惑星に降りて、そこで変なものを拾ってしまったためにエンタープライズ号が危機に陥る。初期の頃に多かった話。
 ここでもカークの昔の恋人ジャネットが登場。この人の恋人って何人いるんだ?
 今回はロミュランによる攻撃もあり、危機に陥るのだが、きちんとその辺伏線を巧く使って撃退しているのも良い。具体的には解読されている暗号電波を敢えて使うというものだが。
 相変わらず喧嘩してるスポックとマッコイ。マッコイは「私は単なる老いぼれた医者だ」という言葉を受け、スポックは「それは分かってます」とさらっと流している。彼なりの冗談だろうか?
<タイトルのネタ不足か、邦題は7話の「魔の宇宙病」と似通ってる。
 今回ハイドラ4号に降り立ったのはカーク、スポック、マッコイのいつもの人間にチャーリーまで。主要メンバー全員じゃないか。それじゃまずいだろ。
 一日30歳というレベルで老化していると言うが、残りの寿命は一週間とも…270歳になるけど?
 ジャネットに言い寄られたカークは「君にはもう年が離れすぎてる」と言って拒絶する。今回の話に限って有効だ。>
第41話 不思議の宇宙のアリス
“I, Mudd”

  監督:マーク・ダニエルズ
  脚本:スティーヴン・カンデル
 エンタープライズ号に新しく入った乗組員はなんとアンドロイドだった。彼によって航路を変えられたエンタープライズ号がたどり着いた惑星には、「宇宙の帝王」を名乗るハリー・マッドという男が待っていた…
 自称“宇宙の帝王”との戦いが描かれる話。“帝王”というだけあってハリー・マッドは王座に足を組んで座って、お姉ちゃんを脇に侍らしてる。いかにもって悪役ぶりだ。しゃべり方とかも見事に安っぽい悪者で、ここまで典型的だといっそ清々しく、言葉の端々に小物ぶりを発揮してる。アンドロイドで同じ顔の女性を作り、400名もの女性を侍らしてる。ただ、実際はそこに住むアンドロイドの研究用動物として生かされていたらしい。
 それでアンドロイドの惑星に送られたエンタープライズ号の面々だが、徐々にその惑星に興味持ち始めていき徐々に堕落していくのが面白い。
 アンドロイドの目的は人間に最大の奉仕を行う事によって彼らなしにはいられ無くさせてしまい、結果的に人間を支配するという事。これは大変な文明批判になっていて、面白いエピソードになってる。そしてアンドロイドは合理主義の塊だから、理不尽な命令を連発されるとショートしてしまう。分かりやすい弱点だな。その辺ジョークが効いていて、実に楽しい。後半になるとエンタープライズ号クルーの行動が無茶苦茶で大笑い。特にノーマンの頭から煙が出てくるあたりは見事。
 オチも良いし、実質的に名作の一本と言えるだろう。
 デジタルリマスターだけに、宇宙航行中のエンタープライズ号の描写はかなり良くなってる。
 エンタープライズ号は銀河の中でも最もスピードがあるのだとか。観測用であれば、そう言う性能も必要だろう。
<エンタープライズ号に乗り込んだアンドロイド、ノーマンは自分がアンドロイドである事を示すために腹を開けたら機械が出てきた。分かりやすい描写だが、金属である必要無いんじゃないか?
 内助の功とはよく言うが、ハリーを宇宙に駆り立てたのは、妻のステラから逃げ回るためだったとか。涙ぐましいな。
 女性アンドロイドは「女として機能するようにプログラムされてます」とか言ってた。かなり微妙な表現だな。>
第42話 新種クアドトリティケール
“The Trouble with Tribbles”

  監督:ジョセフ・ペヴニー
  脚本:デヴィッド・ジェロルド
 地球連邦とクリンゴン帝国との紛争の耐えない地域にある宇宙基地K7から第一級の救難信号を受けたエンタープライズ号はK7に急行する。だがそこは平和そのもの。そこの責任者のパリスからシャーマン惑星だけで採れる穀物クアドトリティケールを護衛するように依頼される。たかが穀物のために呼び出された事を憤慨したカークは、ステーションで休暇を命じる。バーに行ったウラはそこで貿易商シラノからトリブルという小動物をもらうのだが…
 人類の宿敵であるクリンゴン人との接触が描かれる。文化圏が違うため、文化的には相容れず敵対行動を取る。そして小動物のトリブルが登場。生きるためのエネルギーの大半を繁殖に使うという生物で、つがいがいれば、あっという間に大繁殖してしまう。
 物語自体はクアドリティケールという新しい穀物をめぐる話で、その麦が危機に陥り、それを守るという、どちらかというとコメディタッチの作品。ただ、ここに出てくるトリブルという生物がシャレにならない。ネズミ以上に厄介な存在。ただ、その存在が後の地球のためにたったとも言える。コメディと言うよりはブラック・ジョークに近いか?とにかく珍しい。
 珍しくスポックが冗談を言ってたりもする。マッコイに対する嫌味みたいなものだが。
<毛玉のような生物トリブルだが、本当に毛玉がもぞもぞ動いてるようにしか見えない。どこが可愛いんだか。数が増えると動く事もなく、本当に毛玉。
 そのトリブルは人間の精神に安らぎを与える鳴き声を上げる事を指摘するスポック。バルカン人の自分には関係ない。と言いつつ、優しく撫でている辺り、やっぱりハーフと言うべきか。
 休暇でクルーの抑え役としてチャーリーが派遣されるのだが、結局一番最初に手を出すのはチャーリー。で、クリンゴン人が言った事を全部カークに説明する。これは言うべきじゃないだろ。で、カークは喧嘩の原因が自分ではなくエンタープライズ号を馬鹿にされた事で起こった事を複雑な顔で眺めていた。
 転送装置にトリブルと一緒に入ったカークだが、ちゃんと別々に転送されていた。失敗して蠅男ならぬトリブル男になったら面白かったんだが。>
第43話 もう一つの地球
“Bread and Circuses”

  監督:ラルフ・セネンスキー
  脚本:ジーン・ロッデンベリー
     ジーン・L・クーン
 ある宙域で6年前に行方不明となったビーグル号を発見するエンタープライズ号。その宙域には過去の地球とよく似た惑星4号があった。電波を既に使えるようになっているその惑星では奴隷に殺し合いをさせるような野蛮な風習が残っていた。その電波によってビーグル号の乗組員がいる事を知ったカークは、救出のため惑星に降り立つ。
 現在の地球によく似た星に迷い込んでしまったエンタープライズ号の話で、実に皮肉に溢れた話に仕上がっている。かつてやってきた連邦の人間が勝手に国を作ってしまったというのは結構よく使われる設定。ここでは総督と呼ばれる人物によって使役されるだけの人間だが。
 古代ローマは結構このシリーズではお気に入りらしく、ローマ式の決闘もよく行われてる。
 今回マッコイがよく「論理」という言葉を使い、それを不快に思ったスポックがたしなめる場面がある。この二人の関係がよく分かる。
 スポックの言葉で地球には第三次大戦があったと説明されている。この第三次大戦が地球の統合に役立ったという設定があり。
<惑星4号では言葉も英語だそうだ。翻訳機があるから別段言葉が違っても良いけど、英語ってのは普通あり得ないだろ?
 惑星の人間に干渉することは連邦の人間には許されていないそうな。これまで散々干渉してるカークの言う台詞じゃないな。
 エンタープライズ号に残されたチャーリーはカークらの危機を知って独り言を言ってるが、カメラ目線で、あたかも画面に向かって喋っているような?
 逃げるためには女性をも利用する。カークのやり方もかなりマッチョだ。>
第44話 惑星オリオンの侵略
“Journey to Babel”

  監督:ジョセフ・ペヴニー
  脚本:D・C・フォンタナ
 惑星間会議の出席者を乗せるためバルカン星へとやってきたエンタープライズ号。そして大使として乗り込んだのは、なんとスポックの両親だった。だがそんなエンタープライズ号に近づく宇宙船があり、船内でも不穏な空気が流れていた。
 サレック夫妻登場。スポックの両親で、バルカン人大使。サレックはスポックを自分の後継者にしようとしていたらしく、スポックがエンタープライズ号に乗っている事にはあまり良い顔をしてない。
 スポックの両親の話。スポックとサレックの二人は進むべき道が違っているため、18年間も没交渉だった。あくまで論理的に物事を語る二人だけに、親子の交流というのとはちょっと異なる。それでもこれはこれでちゃんと親子の会話なんだろう。笑えない笑いが展開。心臓発作を起こしたサレックに対し、自分の血液を提供しようと言うスポックの姿が見られる。最終的に理性と感情を天秤にかけて、スポックの決断は…というスポックが中心となった話。侵略ものでもあり、非常に見所が多い。最後はジョークで締めるのは本作の特徴か。良い作品に仕上がってる。
 スポックが中心となった分カークはほとんど活躍してないが、重傷を負いながら、痛みをこらえてサレックを救うために指揮を執り続ける姿が映える。
 スポックが幼少の頃、オモチャの熊を可愛がっていたという事実が発覚。人間的な感情を持っていたようだが、それをマッコイに指摘されると嫌な顔をしてる。当然だな。
 死にかけている父親に対し、自らの血を使おうというスポック。理性と感情がせめぎ合ってるその時の表情は非常に複雑。ニモイの巧さがよく出た物語になっている。
<エンタープライズ号にはTネガティブの血液がほとんど積んでないそうだ。スポックが怪我をした時はどうしてるんだろう?
 原題は“Journey to Babel”(混乱への旅)だが、邦題は「惑星オリオンの侵略」になってる。これって思い切りネタバレでは?それよりそのオリオン人が説明だけで終わってるのも、伏線が全然無し。>
第45話 カヌーソ・ノナの魔力
“A Private Little War”

  監督:マーク・ダニエルズ
  脚本:ドン・インガルス
 13年前カークが訪れた平和な文明初期の民族が住む惑星に転送されるカーク達。しかしそこは13年前とは随分異なっていた。既に住民は銃を手にし、戦闘状態にあったのだ。その小競り合いに巻き込まれてしまったスポックは銃弾を受けてしまう。更に惑星軌道上にクリンゴン星の宇宙船が現れた。
 文明の進歩というものを見せた作品で、どのようにして人類は文明を築いてきたか。そして文明の発展とは武器の発達であるということを示している。そしてそこには悪女と、武器商人の存在が…歴史そのものだな。これは当時のヴェトナム戦争に対する強烈な皮肉となっているのも確か。文明の均衡のためには二つの文明に同程度の武器を与えるしかない。その解決方法は提示されず、そのために終わり方もかなり暗くなってしまった。連邦の人間が惑星に不時着して、そこで国を作るというのは43話「もうひとつの地球」とかでも使われているネタ。
 スポックが銃で撃たれ、カークが猿に噛まれる。主要の二人が戦線から後退するという問題があり。それがつけ込まれる隙になってしまう。ラストシーンではマッコイまで怪我してるので、主要キャラがみんな怪我してるのが分かる。
 名前のない好み階の惑星では女性の方が明らかに少なく、女性上位の世界らしい。特にカヌーソという呪術師を妻にすると、その言いなりになってしまう。
 医療班としてムベンガという人物が登場。明らかにアフリカ系の名前だが、進んだ医療技術を持つ人物で、この時代でこの描写があったと言うだけでも本作は凄いと思うぞ。
<バルカン式意識回復法なるものが登場。治療に集中している意識を取り戻すためにぶん殴るというもの。なんか凄い描写だな。
 呪術を賭けられたお陰で女性にめろめろになってしまうカークの姿があり。これはに珍しい描写だが、そう言えば何話かこう言うのもあるね。マッチョなのが悪とされるのは本作の特徴でもある。
 ここに登場するノナという女性はフェロモン全開でもの凄い胸。まさしくマッチョなのは駄目ってことなのかもしれない。>
第46話 宇宙指令! 首輪じめ
“The Gamesters of Triskelion”

  監督:ジーン・ネルソン
  脚本:マーガレット・アーメン
 惑星ガンマ2へ向かうべく転送装置に入ったカーク、ウラ、チェコフ。だが何故か転送された先は全く違う場所。そんな彼らに宇宙各地の生物が襲いかかってくるのだった。実はここは銀河中の生物を集め、戦わせる事を目的とする惑星トリスケリオンだった。カークの戦闘力に目を付けたトリスケリオンの住民によってさらわれてしまったのだ。
 全編惑星上で話は展開。いきなりコロッセウムに放り込まれてしまったカーク達の活躍が描かれる。
 絶望的な状況にある場合、カークの口の巧さで何とかするものだが、本作はそれを端的に示したような話になっている。近くにいる女性は口説き、支配者に対しては挑発しっぱなし。
 又しても全能者が登場。特に中期にはこういう存在がやたらと登場してる。ちょっと安易すぎる気もする。
 今回あんまり目立っている訳じゃないけどチェコフが結構良い味出してる。単なる女好きのように見えて、世話係の女性にめろめろになってるようで、しっかりふんじばってカークを待ってたりする。
 カークがいないエンタープライズ号では相変わらずスポックとマッコイの漫才が展開。カークの仲裁がないため、スポックの言葉は皮肉にしか聞こえなくなる。そのためボケとツッコミが見事に噛み合い、本当に漫才になってしまう。常に冷静を装ってはいるものの、エンタープライズ号に無茶な操縦させるなど、細かいところでカークを心配しているのが見え隠れ。
<とにかく邦題が悪い。
 惑星トリスケリオンでウラの世話係となったのは筋肉ムキムキな男性。その部屋に入った途端「ヘルプミー」の叫び声が…絶対狙ってるよなあ。
 口八丁でシャーナを懐柔しようとするカークだが、肩を抱いて、耳元で甘い口調で囁く…懐柔してるのやら口説いてるのやら。更に支配者によって苦しめられるシャーナを救った際、「誰かを助けるのは当然のこと」と言っておきながら、キスをする…やっぱ口説いてるじゃん。そんで連れて行ってと言うシャーナに対し、「駄目だ」とにべもなく…利用するだけ利用したらあとはポイかよ?
 支配者は闘技場での賭でカトルという貨幣(?)を使っているが、三人の脳は一緒にいるのであんまり意味がないような?>
第47話 復讐! ガス怪獣
“Obsession”

  監督:ラルフ・セネンスキー
  脚本:アート・ウォーレス
 新しい惑星を調査中のカークはダイヤの20倍以上の硬度を持つトリタニウムという鉱物を発見する。だがその時、カークにとって忌まわしい過去を思い起こさせる臭いが近づいてきた。
 ある惑星を舞台に謎のガス状生物との闘いが描かれる。ガス状生物はこれまでにも数多く登場。かなり好まれる素材らしい。
 カークとガス状生物との闘いは、カークにとってはかなり嫌な思い出があるらしい。これはカークにとって復讐戦だが、他の乗組員にはその行動が理解されない。結果的にカークの孤独な闘いが描かれることになる。
 どっちかというとカークのマッチョな部分がクローズアップされた話で、このシリーズではこういったストレートすぎる話は珍しい。結果的にカークの正しさは証明されるのだが、そのために払った犠牲も大きい。
 今回はカークが孤立しているため、珍しくスポックとマッコイが連携している。
 調査に向かった乗組員達はみんな真っ青な顔をして死亡している。それを見た途端カークはその病状をすぐさま口にしてる。かつて同じ経験をした。という事を示すには巧いやり方。
 クリスティンの意外な特技が登場。声色を変えて一人で会話を再現できる。
 スポックの血は緑色。このためにガス状生物の攻撃から救われるのだが、一人で密閉室に閉じ込められて怪物と戦う構図は『スタートレック2』で再現されてる。
<そう言えば今回カトーがいない。代わりにチェコフが攻撃類を全部やってる。
 乗組員を無視して怪物を追うカークは、一旦ガス生物に接触すると、「大切なのは乗組員とこの船だ」と断言。それがこの人の強さなんだろうけど、言ってることとやってることは矛盾してる。>
第48話 単細胞物体との衝突
“The Immunity Syndrome”

  監督:ジョセフ・ペヴニー
  脚本:ロバート・サバロフ
 長い航海で疲労困憊したエンタープライズ号は休暇を取るべく第6宇宙基地へと向かっていた。その途中でバルカン星のイントレピッド号とすれ違うはずが、交信前になんとイントレピッド号は破壊されてしまった。更にイントレピッド号が向かっていたという惑星4号までもが破壊されてしまう。調査に向かうよう指令されたエンタープライズ号がそこで見たものは…
 宇宙に存在する単細胞生物との戦いが描かれた話。惑星を含め、あらゆるものを取り込んで捕食する生物に取り込まれてしまったエンタープライズ号の危機が描かれる。これに取り込まれてしまうと、超音波によって人間の精神が限界になる。それに連れて乗組員の精神がささくれ立っていくのが見える。
 このような生物が突然現れ、しかも細胞分裂を起こすという事があり得るのか?という問題は些か残る。何らかの兵器かなにかというオチが付けば少しは納得がいくのだが…
 物語自体は映画版『スタートレック2』によく似てるんだが、そのプロトタイプかな?
 バルカン星人は多数の同胞が死ぬと精神交感によりそれが分かるのだとか。マッコイに告げるスポックはさすがに怒ったような顔をしている。今回の話では何故か妙にスポックが感情的だったし、皮肉も言ってる。
 今回の話は全てブリッジで行われているため、いくら死人が出ても、乗組員に危機が起こっても基本は全部会話。基本的に今回は会話で観るべき作品で、ラジオっぽい感じ。
<単細胞生物の調査を有人で行う際、マッコイとスポックとカークの誰が行くかで議論してるが、エンタープライズ号の中心人物のみで決めるなよ。>
第49話 宇宙犯罪シンジケート
“A Piece of the Action”

  監督:ジェイムズ・コマック
  脚本:デヴィッド・P・ハーモン
 100年前に遭難した宇宙船ホライズン号からようやく救難信号を受け取った連邦政府は惑星シグマ・イオタにエンタープライズを派遣する。通信したところ、話が噛み合わず、まず上陸することになった。ところがそこは1920年代のシカゴの街が広がっていた。ギャングの撃ち合いに巻き込まれてしまう。これはホライズンがイオタ人に影響を与えた結果だと推測するスポック。

 地球の1920年代のギャングに脅されてしまう話。人を食った話だが、たまたま遭難した船に積んでいた本の内容を模倣したのだとか。今回降下したのはカーク、マッコイ、スポックの三人。主役三人が揃っての最もバランスが良い話になる。
 話自体はかなりむちゃくちゃで、ギャング映画のパロディに近く、この星の混乱を収めるためにカーク自身がこの星の大ボスになって秩序を作り出すというものだった。誰も被害者は出てないとは言え、思いっきり文明への介入やってるので、連邦の規定を逸脱してる。諫めるべきスポックまでカークに同調してやくざまがいの言動になってるのが笑える。
 ラストでマッコイが通信機を惑星に忘れてしまったというのがあったが、それで一気に文明が進みそうな感じもある。このままこの続編で長編が出来そうだな。
 ギャングのボス役として出たのがアンソニー・カルーソーだった。似合いすぎ。
<シカゴの街を模倣したと言うが、住民の半数がトミーガンで武装してる。どこの国だよ。
 本一冊でトランプやレコードまで作っているのだが、一体その本にはどれだけの内容書かれているのやら。
 ギャングの服装で「流行の先端だ」と言ってたが、20年代の模倣のため、流行自体存在しないと思うけど。
 ギャングのボスになるためにスーツで決めるカークとスポック。スポックの方が違和感ありすぎる。
 しかしカークが大ボスになるのは良いが、後は任せっぱなしなので、無責任すぎだな。>
第50話 宇宙300年の旅
“By Any Other Name”

  監督:マーク・ダニエルズ
  脚本:ジェローム・ビクスビー
 救難信号を受け、未開の惑星へと降下したカークらの前にケルバ星のロージャンを名乗る男が現れ、エンタープライズ号をもらうと言ってきた。生物の動きを止める光線を使ってエンタープライズ号を掌握するロージャン。エンタープライズ号を改造してアンドロメダまで行くという。

 人類よりも遥かに高い科学力を持つ異星人との接触を描く話。あまりに文明のレベルが違いすぎるため、あっというまにエンタープライズ号は占領されてしまう。しかもケルバ星は征服以外のことを考えておらず、一度アンドロメダに帰ってから軍団で攻めて来ようとしている。カーク達が何をしても抵抗は無駄だった。銀河を守るためにはエンタープライズ号を自爆させなければならないところまで
 これでどうなるのやらと思ったら、人間の姿を取ったために人類と同じ感情を持つようになってしまい、任務以外の感情を覚えてしまったために、銀河で生きる事を選択するというオチだった。人類の体に慣れてもらうために食事や酒を振る舞うことが人類を救うことになった。カークは女性型のケルバ人にキスまでしてる。後は嫉妬を煽ったり、敢えて興奮剤を注射していらだたせるとか。
 ケルバ人は人間を一度結晶化させ、それを破壊する事で人間を殺している。新しいタイプの殺し型だ。血症がそこら辺に転がってる描写が結構怖い。
 バルカン人は自らの意思で仮死状態に出来るらしい。ケルバ人を騙すために使ったが、すぐにばれてしまった。
 あと銀河系をとりまくバリアの存在も明らかになる。これのために人類は銀河系から出ることができないが、ケルバ人の協力で出ることができた。
 珍しい食事シーンあり。色とりどりのゼリーを食べてるだけだけど。
<エンタープライズ号のクルーを殺すケルバ星人だが、直接の描写は無かったが、男性と女性のどちらを殺すかで女性の方を殺すというのが珍しい。>
第51話 地底160キロのエネルギー
“Return to Tomorrow”

  監督:ラルフ・セネンスキー
  脚本:ジーン・ロッデンベリー
 何者かに呼び寄せられ、人類未到の宙域に足を踏み入れたエンタープライズ号。そこでテレパシーで伝えられたメッセージは、死滅した惑星の地下160キロもの深くからカークを呼ぶ声だった。そして呼ばれるまま地底へと転送されるカーク、スポック、マッコイと宇宙生物学者のアン。
 又しても人間を凌駕する精神生命体との接触が描かれる話。風呂敷を大きく広げるのが特徴だが、ここではアダムとエヴァが同志だったかも?等と言われてる。
 それでカーク達は50万年以上も生きているという精神生命体と体を共有することとなる訳だが、結局いくら長く生きても争いは起こるというオチが付いてしまった。50万年生きて、簡単に命を諦めてしまうというのは切ない話ではある。
 こういう場合のカークの反応は話によって変わるのだが、ここではカークは精神生命体との知識共有を積極的に認めている。有能なだけにケース・バイ・ケースということなのかな?
 初登場となったアンとカークのキスシーンあり。
 今回はカークが精神生命体と同化してしまっているため、宇宙日誌はカークではなくマッコイが行っているのが特徴だが、日本語ではちゃんと「医療日誌」になってる。
 今回原子力の危機がカークから語られているが、これはおそらく冷戦構造の揶揄だろう。人類の知性はそれをも超えたと語っている。
<今回に限りスポックを連れて行こうとしないカーク。何でも「万一事故が起こった時に二人がいないと困るから」…説得力無いぞ。
 アン役のダイアナ・マルダーはとても綺麗な女優さん。そんなのと何度もキスできるとは、シャトナーは今回役得?>
第52話 エコス・ナチスの恐怖
“Patterns of Force”

  監督:ヴィンセント・マッケヴィーティ
  脚本:ジョン・メレディス・ルーカス
 歴史家ジョン・ギルが消息を絶った。彼がいた惑星エコスに近づくエンタープライズ号。だが突如熱核弾頭による攻撃を受けてしまった。降下したカークらは、なんとそこは第二次大戦時のナチス・ドイツ化している事を知る。更にその総統として君臨するジョンの姿が…
 なんと宇宙の果ての文明初期の惑星でナチス・ドイツと遭遇するという妙な話。騙すためにカークとスポックもナチス式の軍服を着たりしてる。
 よくある第二次大戦下を舞台とした冒険小説のSF版といった趣だが、結構無茶苦茶でいい加減な話になってる。話すべき事もたいしてないが、ストレートな冒険ものと言って良いかな?
 強いて社会的側面を挙げるなら、独裁者は常軌を逸したパーソナリティを持つが、それは時に薬のせいということもあるという事。カリスマは利用されやすい。
 スポックがもろ肌脱いだのは確か初めてのこと。ニモイは結構毛深い。今回のスポックはカメラマンの格好してナチス要人パーティに潜り込むことに妙に興奮してたり、修理したトライコーダーが完全に直っているかどうか「自信がない」と発言。不思議なこともあるものだ。
<ひょっとして「機動戦士ガンダム」のジオン公国はここから来てるのかも知れないね?
 メインの三人の中では一番軍服が似合ってるのはマッコイかも知れない。中間管理職っぽくて良いぞ。
 なんとか演説させるために強心剤を打ったジョンをぶん殴って起こしてる。カークも酷いことするな。>
第53話 恐怖のコンピューターM-5
“The Ultimate Computer”

  監督:ジョン・メレディス・ルーカス
  脚本:ローレンス・N・ウルフ
 宇宙ステーションからの急報を受けたエンタープライズ号だが、船に転送されたのはウエズレー准将だった。突然の高官の来訪に驚くカークだが、ウエズレーはディストロム博士が開発したという新型コンピュータM-5の性能テストを行うという。ウエズレーの命令で主要メンバー20名を除く全員が退艦させられ、エンタープライズ号はテスト飛行に旅立つが…
 コンピュータの叛乱。これは『2001年宇宙の旅』を初めとして本シリーズのみならず、必ずSF作品には出てくるテーゼであり、この話もそれに沿ってる。人間がなすべき仕事を機械が代わってくれたら?と言う事なのだが、ただ、エンタープライズ号にも相当高性能なコンピュータが入ってるはず。ちょっと時代的な古さを感じてしまう。そう言えば一人の狂った人間の思考をコピーしたコンピュータってのは、古いアニメにも結構見られる。
 味方に攻撃を仕掛け、2隻の船を破壊してしまうエンタープライズ号。ここまで無茶やらせたのは唯一だろう。
 いつも率先して未知の惑星に降り立つカークだが、M-5によれば、カークが降りる必要は全くないのだとか…それはその通りだが、それを言ったら元も子もない。それでむっとしてるカークの姿もあり。
 今回は珍しくスポックもマッコイに対して皮肉をかけてる。どんなに高性能のコンピュータも医師の代わりにはなれないのが残念なのだとか。今回の二人の掛け合いはかなり楽しい。
<しかし、高性能コンピュータに対して「論理的でない」と言い放つスポックは一体何者だ?>
第54話 細菌戦争の果て
“The Omega Glory”

  監督:ヴィンセント・マケヴィティ
  脚本:ジーン・ロッデンベリー
 惑星オメガ4付近で連邦の宇宙船を発見するエンタープライズ号。調査に向かったカークらは、この宇宙船が行方不明となっていた調査船エグゼターであることを知る。なんとこの艦の乗組員全員は全ての水分を失い、結晶化して死んでしまっていた。残されたボイスメッセージで、惑星に降りろと指示されたカークは、降下して調べることにしたが、そこで見たものはエグゼター艦長のトレイシーが住民の内政干渉していた姿だった…
 これもやはり不思議な惑星での調査の話。後期になると、やたら長寿の人間が登場するが、この住民も千年以上生きているらしい。
 ここでは東洋人が文明社会を築き、白人は野獣のような状態という描かれ方をしている。どうやらこれは冷戦構造下しいみら共産主義と民主主義のぶつかり合いを描いてる(コム人はコミュニスト、ヤン人はヤンキーなのだとか)。結果としてかなりマッチョな作品に仕上がっている。正直SFが現実に追従するようなものになってしまってはならないと思うのだが… 「自由」を何よりも重んじるというのは、良いことなんだが、それが全体主義に対するアンチテーゼになっちゃいけないよな。まさしくこれは『猿の惑星』と近似の話だ。
 しかもラストはヤン人の勝利と共にアメリカ国旗が堂々と…これは酷い。銀河連邦の元はアメリカ憲法かよ。
 何でもこの作品はパイロット版としてロッデンベリーが脚本を書いたものだが、あまりにも酷い出来だったためお蔵入りしていた脚本だったそうだ。話が足りなくなったので急遽作られることになったのだろうが、やっぱりこの話はちょっとなあ。
 今回登場したギャロウェイは23話でも登場してた。あっけなく殺されてしまったが。
<何が起こったか分からない宇宙船に艦長以下主だった人間が調査に向かう。いつもの事ながら、これじゃ船の管理が駄目だろ?
 惑星オメガ4は一旦生物を致死性のウィルスに冒し、その後自然治癒させるそうだ。でも、惑星に来て数時間で「完全に回復した」と言い切ってしまうのはどうかと思うぞ。
 マッコイは何度となくスポックが死にかけてることを指摘するのだが、最後まで死ななかったどころか元気そのものだった。>
第55話 宇宙からの使者 Mr.セブン
“Assignment: Earth”

  監督:マーク・ダニエルズ
  脚本:アート・ウォーレス
 歴史の検証のため、20世紀の地球へとタイムワープしてきたエンタープライズ号。だが何者からか発せられた牽引光線によって地球に引き入れられてしまう。更にエンタープライズ号に乗り込んできた男は、自分がセブンと名乗り、今自分は地球を救うために地球にやってくる途中で、エンタープライズに邪魔されたと言う。

 唐突に20世紀の地球を部隊にした話になってしまった。説明がほとんど無いため、かなりいい加減な設定に見える。そんな簡単に時を超えてもらっても困るし。しかし話としては無茶苦茶面白い。(何でも本来別企画の番組のための脚本を流用したらしい)。
 そこで地球を救うために来たという男と出会い、彼の言ってることが本当かどうか判断しなければならなくなった。本当であれば、彼を行かせることが正しいが、宇宙を転送出来るような技術を持った人間が地球人であるはずはないというのも確かな話。カークがその判断をしなければならなくなった。スポックもカークに対して「直感に従ってください」と言っていて、最後の最後にセブンを信用した。
 結果として、セブンは遥か遠くの宇宙の人類が地球の危機に送り込んだエージェントだったというオチで、むしろセブンの方が主人公で、カーク達はその正義執行を邪魔する悪人になってるというのが面白い構造。カークとスポックは地上に降りているが、セブンの邪魔するためだけで、ほとんど良いところなし。逆に自分たちを捕まえに来た警官をエンタープライズ号に入れてしまったりと、時間犯罪級のことまでしてる。一方、何も事情を知らずに巻き込まれてしまった地球人の女性もコミカルでなかなかよろしい。
 冷戦構造を揶揄するような内容の話で、今まさに何かのミスで原子爆弾が一つでも爆発したら地球は滅びるという綱渡りの時代を描いてる。「これで生きていけることが信じられない」とはセブンの台詞。本当に僅かな差で地球が救われたので、大変緊張感のある話になった。この事故は歴史で実際に起こったことらしく、この事故が元で地球は和平に向けて動くことになった。
<ベータ5のコンピューターは結構皮肉な性格をしていて、セブンの台詞に一々反発してたりする。まるで「銀河ヒッチハイクガイド」のマーヴィンみたい。
 ツッコミではないが、近くにいるだけで人を落ち着かせ、女性にも変身出来る黒猫のアイシスはとても欲しくなる。セブンのことを完全生物と言っていたが、むしろこっちの方が完全体っぽい。>
第56話 危機一髪! OK牧場の決闘
“Spectre of the Gun”

  監督:ヴィンセント・マケヴィティ
  脚本:ジーン・L・クーン
 未知の惑星の調査を行っていたエンタープライズ号に対し、惑星の住民は強力なテレパシーでエンタープライズ号の乗組員を西部劇の舞台に閉じ込めてしまう。OK牧場の決闘で、クラントン一味の方に配役されてしまったカークとスポック。なんとか決闘を回避しようとするが、相手であるワイアット・アープは聞く耳を持たず、決闘に持ち込もうとする。

 SFで西部劇をやるという人を食ったような話。カークの記憶を読んで、それを再現したらしい。元々50年代のSFは西部劇をベースにしていたこともあって、ある意味メタフィクションの話とも言える。特に有名なOK牧場の決闘を再現しているが、かなりパロディ性も持たせているらしい。
 基本アープ家が中心に描かれるはずだが、主人公をクラントン一家の側に持ってきたのは面白い。トゥームストーンの住民としてはアープもクライトンも正義とか悪とか関係なく、単純にアープの方が勝ったから正義になったというだけに過ぎないように描かれてるのが興味深い。実際この話ではアープ一家よりクライトン一家の方が町の人に人気ある。
 チェコフがノリノリで悪役を演じてるのが笑える。元々女好きで、西部の女を観た途端口説いてたりするが、それが丁度役と合ってたらしい。殺されてしまうのだが、それも催眠術によって自分が死んだと思い込んでるだけだった。
 結局銃を使わず、アープ一家を無力化したことで、メルコト人に凶悪な宇宙人でははないと判断され、銀河連邦との交渉へと向かって行く。ファーストコンタクトものにちゃんと踏襲してる訳だ。無力化するのも最初は眠り薬を作ったのだが、まるで効かず、スポックに催眠術を掛けてもらうことで事なきを得た。
 ラストシーンで、闘争本能を持つ人類が何故生き残ってきたのかとスポックが不思議がっていたが、これは人類にとっての永遠の命題かもしれない。
<最初の警告で「着陸するな」と言われたのだから、一度それに従った上で交渉に持ち込まねばならないはずだが、強引に星に着陸させてる。カークが無能に見えるぞ。
 それにしてもOK牧場の決闘をここまで再現出来るほどカークは精読してたんだろうか?
 この世界では思い込んだことが真実になるのだが、睡眠薬が通用しなった。思い込んでたら効くはずなんだけど。>
第57話 トロイアスの王女エラン
“Elaan of Troyius”

  監督:ジョン・メレディス・ルーカス
  脚本:ジョン・メレディス・ルーカス
 極秘任務でクリンゴン領域に近いテラン恒星系エラス星へとやってきたエンタープライズ号。実はトロイアス星とエラス星の和平交渉が行われる事になり、エラス星人の王女をトロイアス星に送り届けることが任務だったが、エラス人は大変傲慢な種族のため、カークは礼儀作法を教える任務を担わされることになってしまった。

 タイトルからすると、「トロイのヘレン」の翻案になる気がするが、だいぶ話は異なる。
 国同士の交渉の難しさを描く話で、なんというかそのまま冷戦構造の東西側の交渉に当てはめられてしまう。お互いを「野蛮人」「犬」と呼び合い、嫌い合ってる中でそれを取り持たねばならないカークの忍耐強い苦労が見所。観ていて大変ストレスの溜まる話だった。
 そんな中、スパイがいたりクリンゴンの攻撃があったりと話も色々盛りだくさん。絶体絶命の危機に陥りかけたとき、王女の持つ宝石が起死回生のヒントになるなど、緊張感もあり。
 エラス星人の女性の涙を肌に付けるとその女性の魅力に取り憑かれてしまうそうで、案の定カークは騙されて王女の虜になってしまった。それに打ち勝つのはカークの精神力だったというオチ。スポックに言わせると、「女性に対する魅力よりもエンタープライズ号に対する魅力の方に惹かれている」からだとか。今回はカークが格好良いのか悪いのか分からない。
 最後に王女が急に聞き分け良くなってしまうのもちょっと都合良すぎかな?
<カークの言い方「女性が論理的なのはバルカン人だけだ」。酷い嫌味に聞こえるが、ちょっと女性差別の感がある。
 エラス成人の女性の秘密を何も教えてもらってないカーク。根本的にこれだけで大問題だろうに。>
第58話 小惑星衝突コース接近中
“The Paradise Syndrome”

  監督:ジャド・テイラー
  脚本:マーガレット・アーメン
 小惑星の接近によって、存続の危機にある惑星に降り立ったカーク達。そこは地球そっくりな自然環境だった。奇妙な記念碑のようなものを発見したカークはそこに落ちてしまい記憶を失ってしまう。スポックは惑星の危機に対処するためカークを置いてエンタープライズ号に戻り、小惑星回避に向かうのだが…

 カークがなんと神の使いになってしまったという話。ファーストコンタクト作品では比較的多く見られる設定だが、肝心のカークが記憶を失ってしまって、どう振る舞って良いのか分からなくなってしまったというのがコミカルな設定となってる。結局2ヶ月間も滞在することになってしまい、そこで結婚までしてしまう。記憶を失っていても精神の方が休息を求めていたらしく、休暇を満喫していたようだ。どうやらこれも定められていた運命だったというオチ。なんと赤ん坊まで出来るのだが、生まれる前に母体と共に死んでしまった。最後は少々寂しい。
 カーク不在の間、スポックがエンタープライズ号の指揮を執っているが、スポックらしくもなく大変強引な指示をしているのが奇妙なところ。マッコイによれば、スポックも相当精神が参ってるらしい。これまでどれだけきつい任務が続いていたかを思わされる。
 保存者(偉大な者)と呼ばれる存在の言及あり。ヒューマノイドを銀河中に広めた存在と言われるが、この星にも小惑星を破壊出来るほどのビーム兵器を設置した。
 記憶を失ったカークに心理療法を与えるスポックの姿があるが、これは後に劇場版で使われることにもなる。
 この惑星の原住民はアメリカの先住民族とそっくりな辺りが、本作がアメリカで作られたことを思わせる部分だ。
<スポックは小惑星衝突を回避するためにエンタープライズ号に限界ギリギリのワープを行わせている。その前に惑星に降り立ったときには随分余裕があったようだが、実質的には地上に降りてる暇はなかったはず。
 エンタープライズ号の限界ワープでやっと来たところにある小惑星が2ヶ月後に惑星にやってくる。時間的にはだいぶおかしくないだろうか?
 ところでカークは記憶を失って翻訳機もないはずなんだが、どうやって言葉が通じるんだろうか?
 小惑星衝突まで二ヶ月もあるなら、エンタープライズ号一艦でなく、救援艦なり小惑星破壊用の人員を送り込むことも出来たと思う。
 そもそも小惑星からの危機回避であれば、破壊せずに一部を爆破して微妙に軌道を変えればそれで済むと思う。
 原住民によって殺されてしまったカークの嫁だが、連邦の科学力あればお腹の子供は助けられたような気もする。>
第59話 透明宇宙船
“The Enterprise Incident”

  監督:ジーン・メレディス・ルーカス
  脚本:D・C・フォンタナ
 ストレスのせいか苛々していたカークはエンタープライズ号を中立地帯を抜けてロミュラン星域に進路を命じる。だがそこはクリンゴン帝国の勢力範囲で、エンタープライズ号はクリンゴン宇宙船によって包囲されてしまう。これを館長の独断で、連邦は関係ないというスポックの言葉に激高したカークはなんとスポックによって殺されてしまう。

 クリンゴン帝国との交渉について描く話で、三期にはこの手の話が増えていく。今回はクリンゴンと同盟しているロミュラン星人との交渉となる。クリンゴンとは違いロミュランは人類と似ている。どっちかというと人類よりもバルカン人に似てる感じだが、実は進化の過程でバルカンとロミュランに分かれたからとのこと。
 いつもの定時報告はマッコイによるもので、カークは苛々していてそれどころではなかった。最初からストレスのせいかカークは苛々しっぱなしで、特にスポックに対して怒鳴り散らしてる。その仲違いで、ついにスポックがカークを殺してしまう…というとこで、ストーリーの行く末が見えてくる。結局遮蔽装置を強奪し、ロミュラン人司令官を捕らえると、一方的なだまし討ちにも見えてしまう。
 ロミュラン人の司令官は女性で、エンタープライズ号がスパイ行為をするためにこの宙域に来たとなじり、カーク亡き後のエンタープライズ号を自分のものにしようとし、スポックを懐柔しようとする。実は彼女の考えは正しく、新型の遮蔽装置をためにカークが一芝居打ったということだったが、スポックに惚れてしまってまんまと手に乗ってしまった。カークがロミュラン人の格好をするのだが、その格好はコスプレ臭が強い。
 通常女性を懐柔させるのはカークの役割だが、ストーリーの都合上、今回はスポックが女性に対応してるのが面白い。ちょっと無理がある感じもするが、普通に口説いてた。
 全体的にかなり無理のある脚本だった。
 ラストにスポックが言った台詞「軍事機密ほどはかないものは無い」は「ウルトラセブン」の「血を吐くマラソン」に通じるものがあった。
<ロミュランの宇宙船がクリンゴンのものと同じとなっているようで、同盟関係が強化されていることをうかがえるが、単純に予算の問題だろう。
 カークに対して「正気を失ってる」と断言するスポック。この時点でほぼ嘘を言ってることが分かるものだ。
 ロミュラン人の真似をしてるカークを見たチャーリーはニヤニヤしてた。まあそうだろうな。相当無理がある。
 ロミュラン人の格好をしたカークを見た仕官は、カークを長官だと勘違いしてた…えー
 ロミュラン宇宙船の遮蔽装置はソケットからそのまま抜き取れるもので、更にエンタープライズ号に装備までしてる。これも相当無理がある。
 ロミュラン人を完璧に騙すほど(笑)のカークの変装を見ても、エンタープライズ号の乗組員は一目でそれがカークだと見抜いてる。
 最初にロミュラン司令官は、バルカン人は嘘を言う事が出来ないと断言していたが、スポックは普通に嘘をついていた。>
第60話 悪魔の弟子達
“And the Children Shall Lead”

  監督:マーヴィン・J・チョムスキー
  脚本:エドワード・J・ラクソ
 惑星トリアカスからの救難信号を受けたエンタープライズ号は惑星に急行し、調査に当たるが、そこでの大人達は死んでおり、何故か子供達だけが楽しそうに遊び回っていた。
 ゴーガン登場。惑星トリアカスにいた異星人で人間に精神攻撃を加える。最初は人間の姿をしていたが、どうやら精神生命体だったらしい。
 精神攻撃をする宇宙の怪物との戦いが描かれる話。何故か大人に対しては恐怖を、子供に対しては楽しみを約束する。そして子供達自身が恐るべき力を持つようになり、実質的にはその子供達を操る人物との戦いとなる。
 操られる子供達は催眠術によってエンタープライズ号の乗組員を次々と惑わしている。相手が子供だと手が出せないのはどの国でも同じ。
 ただ、こういう時に本当に頼りになるのは理性を信奉するバルカン人。なるほど今回はスポックの力が重要な要素となったわけだ。何故か人間には防げないとか言われてる力をカークは防いでしまったが、その説明はなし。強いて言えば根性というべきか?
 結局の話、根性だけで話が終わってしまうので、話そのものはちょっと単純。
<トリアカスから離れていることを知らずに転送装置を働かしてしまったカーク。そう言うのはしっかりしてくれないと。お陰で転送した人間は宇宙空間に…>
第61話 盗まれたスポックの頭脳
“Spock's Brain”

  監督:マーク・ダニエルズ
  脚本:ジーン・L・クーン
 謎の宇宙船がエンタープライズ号に近づき、その直後女性がエンタープライズ号のブリッジに姿を現す。ブリッジの全員が突然意識を失い、気がつくと、なんとスポックの頭脳だけが消え去っていた…
 スポックの脳みそだけが抜き取られてしまったという衝撃的な話が展開。物語自体が後期のパターンである超越者の話になる。やっぱり最後はカークの口八丁で話は終わってしまうのはパターン過ぎ。
 脳を抜き取られ、インプラントを取り付けられてリモコンで動き回るスポックの姿があり。ますます無表情になっていて、かなり気持ちが悪い。結局これがロボットのように使われ、それが功を奏するのだから、話もそれなりにまとまってはいる。
 一方マッコイも憎まれ口を叩きつつ、スポックを助けるために命を賭けてるシーンもあったりして、なかなか良いトリオっぷりを見せてる。
 脳の摘出というのはかなりホラー性が高いのだが、自分の脳手術を自分自身で指示するスポックという奇妙な展開で、ホラーという寄りは二人羽織のコメディをやってる観たい。
 フェイザー銃は出る度に形が変わるが、ここでは銃型のものが使われてる。
<人間型だったら当然雄と雌がいるのだろうが、それを前提に喋ってるカークは、ちょっと変じゃないだろうか?
 スポックの脳を「これ」呼ばわりするルーマー。「これ」ねえ?
 スポックの脳を戻す手術してるマッコイには青いライトが当てられてるが、シーンとしては、かなり怖い。>
第62話 美と真実
“Is There in Truth No Beauty?”

  監督:ラルフ・セネンスキー
  脚本:ジーン・リセト・アローステ
 連邦の重鎮であるメデューサ人のコロス大使を母星に送り届ける任務を受けたエンタープライズ号。あまりの醜さに地球人は正気を保てないというメデューサ人に対応出来るのはバルカン人のみのため、その接待に当たるスポック。コロス自身はカプセルの中に入り、決して外に出ようとせず、テレパシストのミランダがメッセンジャーだった。
 今回はスポックが中心の話。バルカン人と地球人のハーフであるスポックは色々とコンプレックスもあるが、そんなスポックに対してコンプレックスを持つ女性を登場させることでスポックのアイデンティティを強化させる話だった。
 今回登場したミランダは自意識がとても高い人物で、こういう人は新しい世界を作るパイオニアになることもあるが、そのほとんどは迷惑なだけの人物。こう言うタイプの人が多かったのがちょうどこの時代。
 ドクターがミランダに何かと突っかかる描写も多いのだが、これはドクターなりにバランスを取ろうとしてのことらしい。実はミランダの目が見えないことを最初に察していた。
 今回は乗組員で死人は出なかったが、外から乗り込んできたボディガードが正気を失って死んでしまった。その際エンタープライズ号を勝手に暴走させてしまった。銀河系に戻るためにはメデューサ人の航行技術が必要となって、そのためスポックとミランダが協力し合わねばならなくなった。そのために使った方法は、カークの女たらし技術だったが、ミランダの目が見えなかったために失敗。結局言葉で説得して納得させた。
 スポックがメデューサ人と精神融合してしまったことで正気を失ってしまうシーンがあったが、その際狂気に陥ったスポック視点でコクピットを見ているシーンがある。面白い視点だった。
 あまりの醜さで正気を失うというコロスだが、姿を映すことが出来ず、光で表現してる。映画では何作かそういう描写で作られたものがあるが、ひょっとしてこれが最初になるのかな?
<コロスの姿は光で示されるが、光の明暗が激しくて目がチカチカする。いわゆるピカチュウショックに陥りそう。
 正気を失ったというラリーだが、すごく冷静に行動してエンタープライズ号を暴走させてる。凄いピンポイントな狂気だ。
 合ったばかりの人物にエンタープライズ号の舵取りを任せるチャーリー。やばすぎるだろ。
 ワープによって銀河系外に出ることもできるらしいことが分かった。銀河系を横断するのに数ヶ月以上かかるという設定なのに、銀河系外に出るのは一瞬。ワープ航行はとてもコントロールが難しいからなのだろうか?>
第63話 恒星ミナラの生体実験
“The Empath”

  監督:ジョン・エルマン
  脚本:ジョイス・マスカット
 もうじき恒星が新星化しようとしているミナラ恒星系。そこにいる観測員に避難勧告がなされたが、誰も応答がなかったため、エンタープライズ号に調査が命じられる。観測基地に転送したカーク、スポック、マッコイの三人だが、三人は捕らえられてしまう。彼らを捕らえたバイアン人はカーク達に目的不明の実験を繰り返し、ついにマッコイは瀕死の重傷を負ってしまう。

 この作品を象徴するファースト・コンタクトものの話で、人類を超える知能を持つ種族が人類をテストするという内容。ただし、テストを受けるのはカークたちではなく、この星域にいる種族にたいするものだった。彼らが憐れみの感情を持つならば星を救うというのだが、その理屈がよく分からない。ずいぶんな上から目線ではあるが。
 その過程で「実験」と称してカーク達が受けていたのは、希望を見せてはそれを失敗させるという精神的な拷問に近いもの。それを繰り返す内に。これは自己犠牲の精神を引き出し、それをミナラ恒星系人に教え込むというものらしい。テストというのも自己犠牲を強いるものばかりで、お互いを思いあうカーク達の結束がよく見える。人類を超える知能を持つバイアン人によれば、宇宙を生きる生物に最も必要とされるのは自己犠牲の精神だそうだ。それをミナラ恒星系人に教え込んだ上で彼らの星を救い、彼らが宇宙に出た時の手助けをすると言っている。ただ、その実験は半ば失敗。カークの説得で彼らを見守ることを決めたという。
 ミナラ恒星系人は強いエンパスを持つらしい。エンパスとはエンパシーのことで、相手の感情や痛みなどを感じる能力らしいが、痛みを自分で引き受けることが出来るらしい。それはエンパシーとは別能力では?
 今回は聖書の引用がいくつかある。面白い。スポックはそれを「論理的に考える価値はある」と言うに留めているが。
<ミナラ恒星系の生物は声帯を持たないヒューマノイド型生物だが、格好は地球人みたい。人類とは交渉してないはずなので、こんな格好するはずはないのだが。>
第64話 異次元空間に入ったカーク船長の危機
“The Tholian Web”

  監督:ハーブ・ウォーラーステイン
  脚本:ジュディ・バーンズ
      チェット・リチャーズ
 行方不明となったパトロール船デファイアント号の捜索に当たるエンタープライズ号。だが発見されたとき、デファイアント号の乗組員は全員殺されていた。調査を進めるカーク達だが、恐るべき事に死体も船も徐々に消えていく。
 異次元空間へ入ってしまったカークの冒険が描かれる話で、並行宇宙の存在を示す。ただし、ここでの話はカークではなくスポックが中心となっているのが特徴。
 カークの遺書まで登場するが、ギリギリになるまでカークを信じ、どんなパニックもはねのけるスポックの姿も同時に描かれていく。あくまで冷静ではあっても、スポックはそれだけカークのことを信用していると言うことだろう。一方のマッコイがすぐにあきらめるのとは対照的。
 更に領空侵犯したとして現れる異星人の船もあったりして、緊張感が途切れないのだが、緊張感ばかりで終わってしまったような気もするよ。
 同時にパニックに襲われることの恐ろしさも示し、今回は死体の山を見たチェコフが突然錯乱してしまう。
 錯乱を起こした人間の視点が魚眼になってるという面白い描写もあり。
 ラストシーンでカーク自身が自分の遺言のことを口にするが、それに対し嘘を言うスポックの姿があり。あれ?バルカン人は嘘を言わないんじゃなかったっけ?
<人間を凶暴化させる空気に対し解毒剤の開発を行うマッコイ。昼夜ぶっ通しで研究してると言ってたが、開発を開始してからそんなに時間経ってないんじゃなかった?
 ソリア人がエンタープライズ号に使ったのはエネルギーフィールドを張り巡らせることだったが、線を一本一本慎重に引いて、やがて格子状にしている。こんなのんびりしたやり方で実効あるんだろうか?しかもエンタープライズ号がテレポートしてしまったため、どのような威力かも全く分からず。>
第65話 宇宙に漂う惑星型宇宙船
“For the World Is Hollow and I Have Touched the Sky”

  監督:アントン・リーダー
  脚本:ヘンドリック・ボラーツ
 定期健診の結果、マッコイは多血球血症に冒されていることが判明した。その報告を行わねばならないのだが、カークはそれを先延ばしにしていた。そんな時旧式のミサイルによる攻撃を受けるエンタープライズ号。調査の結果、それはなんと小惑星型の無人宇宙船であることが発覚した。しかもその小惑星は植民星ダラン5に向かっている事が分かり、カーク達は調査のためその宇宙船へと降下するのだが、ここにはこの宇宙船を世界と思っている住民が存在した…
 ヨナダ人登場。1万年以上も前に放棄された小惑星型宇宙船を自分の国と思いこんでいる人々。
 一種のファースト・コンタクトの話だが、宇宙船を世界そのものとして生きている人々との接触が描かれる。具体的にはマッコイのロマンスになるのだが、これが結構都合いい話で、不治の病を得ているマッコイがこの星で特効薬をもらうという…まあ、結構いい加減というか出来過ぎというか。
 ヨナダの民は宇宙船の電子頭脳を神として崇めているが、言葉の端々からこれが旧約聖書の出エジプトの民のような存在であることが分かる。
 特撮としては結構チャチできついものがあり。全般的にちょっと薄味かな?
<女王ナティラの差し出す飲み物をなんの疑いもなく呷るカーク。これが罠とかは全く考えてないのか、それともこれが剛胆というものなのか。結局何ともないのだが。
 人の趣味はそれぞれ。とはいえ、マッコイに惚れ込むとは、ナティラの趣味って結構特殊だな。>
第66話 宇宙の怪! 怒りを喰う!?
“Day of the Dove”

  監督:マーヴィン・J・チョムスキー
  脚本:ジェローム・ビクスビー
 植民惑星から救難信号を受けたエンタープライズ号は急行するが、既に惑星の住民は死滅しており、しかもクリンゴン星の戦闘艦が近寄っていた。だがそのクリンゴン艦は突然爆発。地上で艦長のカングは、この自体はエンタープライズ号が起こしたものと決めつけ、カークらを捕らえてしまう。
 久々にクリンゴンとの争いが描かれる。この時点では休戦協定が結ばれているが、何者かによって艦が破壊されたことで一触即発の危機を迎えることになる。これ自体はかなり緊張感のある描写で、人類とクリンゴン人はよほど仲が悪いと言う事が分かる。
 今回は悪意ある精神生命体によって悪意をかき立てられたエンタープライズ号とクリンゴン船乗組員がいがみ合うことになるが、話が始まった時から何か揺れる光が常に登場してる。こういう分かりやすい描写は珍しい。この話ではキャラがそれぞれ「きっと」という推測をよく口にするが、それが精神的な話と言うことになるのだろう。正体は出てこないのだが、カークとクリンゴン人の共同で追い出すことが出来た。その方法は、憎しみを超えて和解すると言うことで、SFらしさに溢れてる。
 今回は珍しいことにスポックまでもが怒りを露わにしてる描写がある。
 ラストは精神生命体を追い出した途端に終わった。本作は余韻を大切にする話が多いので、結構珍しい描写だ。
<精神生命体という割には何故か武器を具現化させたりと、一体どんな生物だ?
 チャーリーは意外にレトロな武器のマニアであることが分かるが、前はこれカトーの役割だったけど?>
第67話 キロナイドの魔力
“Plato's Stepchildren”

  監督:メイヤー・ドリンスキー
  脚本:デヴィッド・アレキサンダー
 未知の惑星から救難信号を受けたエンタープライズ号は早速現地に向かう。その惑星は生物が存在する形跡はなかったがレアメタルのキロナイドの鉱床があることが分かる。そして降下したカーク達の前に、ギリシアの文明洋式を持った住民達が現れた。精神感応が出来る住民だが、医師が一人もいないこの惑星に疑問を覚えるカークら…
 節の惑星を舞台にした物語。人間を超えた能力を持つ住民との折衝が描かれる話は後期の特徴。
 念動力を持つ人間が暴走すると周囲の人間の体が勝手に動き出す。当然その辺は役者の演技力に負う事になるが、その不自然な動きがコミカルでなかなか楽しい。ただ、話そのものが精神レイプを延々と描写する話なので、爽快感はまるでなし。
 身体的にしょうがいがあるアレキサンダーに対し、人間の世界は体の特徴などで差別はしないと語るカーク。本当にそうだったらどれだけ良いことか。皮肉なのか、理想なのか。
 念動力によって踊り出すカークとスポック。特にスポックの変化ぶりは楽しい。タップや歌声まで披露してるが、この人芸達者だね。いつもスポックに憎まれ口を叩いてるマッコイも、スポックの豹変ぶりに戸惑いを隠せず。
 この話ではクリスティとスポック、ウラとカークがそれぞれキスシーン有り。レギュラー陣でのキスってとても珍しい描写。
 最後、キロナイドによってペルモンを圧倒する超能力を得たカークだが、この能力ってどれだけ続くんだろう?
 ラスト、アレキサンダーはこの地で力を得ることよりも星を逃げ出すことを選択。奴隷の身分にあって永遠に生きるよりも短い時間でも自由を選んだと言う事だろうか?今回の見所はこのキャラだけだな。
<菌に冒されたからと言って外部の医者を呼ぶプラトン人だが、外部から人が来ると、雑菌が更に増えないか?
 超能力の源はキロナイドによってなされることが分かった際、ペルモンのキロナイドを分離する事は考えず、カークに超能力を与える事にした。危険な方法じゃないかな?>
第68話 惑星スカロスの高速人間
“Wink of an Eye”

  監督:ジャド・テイラー
  脚本:ジーン・L・クーン
 惑星スカロスからの救援信号を受け、惑星に降下するカーク達。だが通信を送っているはずの住民は誰一人おらず、首を傾げながらエンタープライズ号へと戻ってきた。だがカークが帰還してからエンタープライズ号に異変が相次ぐようになった。計器の故障、医薬品の紛失など。それらは軽微なものばかりだが…
 スカロス人登場。惑星スカロスの住民。かつて90万人いたそうだが、今は5人しか残っていない。人間よりも遙かに速い速度で動く事が出来る。
 時間の概念の話となり、地球人よりも遙かに速く動けるスカロス人との折衝が描かれる。カークも加速されスカロス人と同じ速度になるのだが、その速度での色々な問題が描かれていく。
 スカロス人はもう5人しかいないが、子供を作らねばならないために、外部から男を連れ込まねばならない。その分ここに登場する女性ディーラは淫蕩な雰囲気を出している。
 ワンアイディアのひねりがない直球勝負の話だから、ちょっと物足りない感じは受ける。
 話も後半になると女性を手玉に取るカークの姿が見られるようになる。交渉を成功させるには相手の気持ちを自分の方に向けさせる事。その辺の機微が演出に用いられ始めたのだろう。一方、少ない材料から結論を導き出すスポックの姿も見られる。そして二人とも結論が出たらもう迷わない。この二人はなんだかんだ言っても良いコンビだ。
<加速されると空気抵抗が激しくなるはずだが、ここではそれは敢えて無視されているらしい。
 惑星スカロスの水は人間を加速させる。これを上手く使えばもの凄い武器になるのは確か。それを無視するのがSFドラマ。
 それまで全く存在自体が暗示されてなかった中和剤が最後に突然出てくる。都合良い事。>
第69話 無人惑星の謎
“That Which Survives”

  監督:ハーブ・ウォーラーステイン
  脚本:D・C・フォンタナ
 生まれてまだ数千年しか経っていないのに地球型の大気と植物を持つ不思議な惑星を目にしたカークは地上半を組織し、自ら惑星に転送する。転送直前にエンタープライズ号の中に女性が現れ、エンタープライズ号は遠くの宇宙に飛ばされてしまった。惑星に取り残されてしまったカークは生き残りのために調査を始める。

 パターンとしてよくある不思議な惑星の調査の話。超能力を使う女性が登場し、地上班とエンタープライズ号が引き離されてしまう。その女性が何者かが重要なキーとなる。
 オチはこの星は大昔に人工的に作られたもので、その操縦員で亡くなった人物の意思を継いだコンピューターによる防衛反応だったというオチ。カーク達を侵入者として自動的に排除しようとしていたことが分かった。パターンとしてはありきたりかな?
 今回の惑星降下はカークとマッコイはいつも通りが、スポックではなくカトーが同行している。結構珍しい。えらく好戦的なキャラとして描かれている。
 一方エンタープライズ号に残されたスポックは破壊工作が行われた
<エンタープライズ号を率いるスポックだが、何か言う度にウーラが微妙な目をしてスポックを見ている。なんか訳あり?
 フェイザーが破壊されるととんでもないエネルギーが放出される。大爆発が起こっているが、破片等一切落ちてこなかった。
 乗組員をあれだけ殺されながら、ロジラに敬意を表すカーク。その理由は「美しいものは美しいから」…結局は顔か。>
第70話 惑星セロンの対立
“Let That Be Your Last Battlefield”

  監督:ジャド・テイラー
  脚本:ジーン・L・クーン
 惑星アリアナスが恐るべき病原体に冒されたとの報を受けたエンタープライズ号は滅菌作戦のために急行する。そんなエンタープライズ号の前に救命艇が現れ、それを保護したところ、顔の左が黒く、右が白い人間型の異星人が乗っていた…
 ある星の政治的な話がエンタープライズ号に持ち込まれる話で、どうも惑星セロンというのは全体主義国家で、そのレジスタンスと政治家との闘争が描かれることになる。そのためか大変政治的な物語が展開する。ほんの僅かな差異でいがみ合うというのは、世界の情勢を鑑みてのことかも知れない。更にそれがエンタープライズ号にまで波及するという結構珍しいタイプの話になってる。
 明らかに体制側にいる方が高圧的だというのは、やっぱりアメリカ産の作品かな?
 何と体半分が白黒の皮膚を持つ異星人が登場。白黒がどちら側にあるかで争ってる。意外なエイリアンとして出したのだろうが、ちょっと凄いカラーリングだ。ただ、目とか口の中とかは人間のものだけに違和感だけは著しい。
 高圧的なベレに対し、カークも又高圧的に出る。カークの意志力を描こうとしてのことだろうか?にっちもさっちもいかなくなった時にはなんとエンタープライズ号の自爆まで命じてる。なんか『エイリアン』を思わせる話だ。
 エンタープライズ号の自爆にはカーク他、副長のスポックと技術主任のチャーリーの命令が必要なのが分かった。意外にチャーリーは重要な地位にいるらしい。
 ラストはあまりにも悲惨。結局母星が滅んでしまったとしても、憎しみを持つ者同士戦うしかないという救いようのない話となってる。
<回避されてしまうことが前提とは言え、危なくなったら簡単に自爆を指令するカークは、ちょっと短絡的な感じ。>
第71話 宇宙の精神病院
“Whom Gods Destroy”

  監督:ハーブ・ウォーラーステン
  脚本:リー・アーウィン
 隔離精神病院として使われているエルバ2号に新約を届けに来たエンタープライズ号。カークとスポックは旧知のコーリー医院長と会うのだが、実はコーリー院長はイザール人ガースによって捕らえられており、ガースがこの病院を乗っ取っていた。ガースはエンタープライズ号を奪取して逃げようとしていることを知る。

 精神病院を舞台にした話。誇大妄想に陥った人物と対話し、宇宙に逃がさないようにしないといけなくなる。
 ほぼ今回は会話のみで成立した話だが、これがスター・トレックの醍醐味でもある。ガースは何にでも化けられるという事で、自分が相対しているのが本当に本人かどうかということを探るのが面白い。カークが二人いる場合、スポックはどのようにそれを探るかと思ったら、変身は長続きしないから、ただ待ってれば良いとのこと。論理的かもしれないが、すごくつまらない答えだ。
 宇宙連邦政府の成立についてカークが話している。そこからすると、連邦が成立し、平和維持活動を行い始めてから、そんなに時間が経ってないとのこと。長い平和の中での出来事だと思っていたので、意外だった。
<ガースによってあっけなく無力化されてしまったスポック。バルカン人がこんな隙があるか?
 ガースは戴冠式を行うのだが、全部地球式で行っている。イザール人って設定はどこいった?
 ガースが作ったと言う高性能爆薬は、一滴垂らせば惑星まで破壊するそうだ。精神病院でそんな発明出来るもんだろうか?
 新薬を投与した途端に正気に戻るガース。あんまりにも簡単すぎないか?>
第72話 長寿惑星ギデオンの苦悩
“The Mark of Gideon”

  監督:ジャド・テイラー
  脚本:ジョージ・F・スレイヴン
     スタンリー・アダムス
 連邦未加入の惑星ギデオンに連邦加入を勧めに来たエンタープライズ号。そこでカーク一人だけなら来ても良いと言われ、転送されたのだが、そこは無人のエンタープライズ号だった。そこでカークと同じく気づいたらここにいたという女性オドーナと出会う。

 初めて連邦の人間として文明惑星に降り立ったカークの使命について。話は割と他愛ない感じなのだが、実際に文明の接触があった時に起こりえる出来事について丁寧に描かれた。それは宇宙からの道の伝染病が入り込むというやつで、地球でも中南米の国が滅びたという歴史的出来事もある。
 カークを引き入れることで病原菌が惑星に入り込んでしまうのだが、それを人口調整のためにわざと行っているというのが面白い。惑星のリーダーとして、敢えて惑星の人々の何割かを殺さねばならない重い決断を行っていた。更に最初の犠牲者として選ばれたのは大使の娘というのもなんとも。結局彼女はエンタープライズ号の医療によって助かるのだが、伝染病の保菌者としてこれから星の人工調整薬になるそうな。
 あまりにも長寿な種族のため、自然死できることを喜んでるようなシーンもあったが、なかなかシュールな話だ。
 一方、一人でギデオンの首脳陣と交渉するスポックの姿もあるのだが、冷静なスポックをして苛つかせる交渉相手というのが面白い。最も冷静に物事に対処するため、敢えて規則違反をするというのも面白い行動だ。
 転送失敗の可能性もあることが示唆された。何万分の一であったとしてもそれが本当に起こったら怖いな。
<一人でエンタープライズ号に残されたカークだが、誰もいないのに音声記録だけは行っている。
 惑星ギデオンは長命である上にベビーラッシュが起きて誰も死ななくなってしまったため、人口密度が極端にあがてしまった。調整のために国民を殺さねばならないというのが物語の骨子だが、それよりむしろ外宇宙に活路を見いだす方が良かったのでは?そもそもそのためにエンタープライズ号が来たのだから。
 ラブシーンを演じるカークとオドーナだが、スクリーンの向こう側には緑色の顔をした多数の顔がある。ホラーっぽい描写だが、むしろ羞恥プレイか?>
第73話 消滅惑星ゼータの攻撃
“The Lights of Zetar”

  監督:ハーバート・ケンウィツ
  脚本:ジェレミー・ターチャー
      シャリ・ルイス
 エンタープライズ号は新しい機器を設置するため技術者のミラ・ロメイン中尉と共に連邦の記録保管庫である小惑星メモリー・アルファへと向かっていた。だがその途中謎の光に包まれ、クルー全員が脳に干渉を受けてしまう。特にミラが酷い症状を起こしてしまう。

 ファースト・コンタクト話で、相手は人間の肉体に寄生する精神体のみの生物。割とありがちな設定で、これと言って強い特徴のない物語。ファースト・コンタクトだが、相手のことを理解しようともせずに駆除してしまうのはシリーズらしくないが。
 精神生命体に寄生されるのはゲストキャラのミラ・ロメインだが、女好きのチャーリーがすっかり惚れ込んでしまって、なにかとミラのために弁護している。今回は珍しいチャーリーの中心回とも言えるだろう。実は後に公式でこの二人は晴れて恋人同士になったという裏設定があるらしい。
 この話ではあんまり活躍出来なかったが、スポックが冗談めいたことを言っていた。珍しいことだ。あと、カークによれば、
<精神生命体は光そのものと言っていたが、光るアメーバーのようにしか見えない。
 精神生命体は宇宙を漂って近づいたものを捕食するという、蜘蛛かアリジゴクのような生命体だが、宇宙でそれやってたら何万年単位で捕食出来ないかと。
 エンタープライズ号の警告音がゲームのドンキー・コングのものとそっくりだな。>
第74話 惑星アーダナのジーナイト作戦
“The Cloud Minders”

  監督:ジャド・テイラー
  脚本:デヴィッド・ジェロルド
      オリヴァー・クロウフォード
 植民惑星の一つで植物の疫病が発生した。その疫病を治すためには惑星アーダナにあるジーナイトという鉱物が必要だった。その連絡を受けたエンタープライズ号は直ちに惑星アーダナに向けて出発したが、そこではテロリストと政府との戦いが続いており、惑星に降りたカークとスポックはテロリストに襲われてしまう。

 惑星の内戦に介入する話。この惑星の都市は雲の上にあり、まるで古代ローマのような格好をしている貴族階級と、地上で労働をする労働者階級の二つに分かれ、階級闘争が続いている。この階層社会をただすきっかけを作ることになる。
 惑星アーダナの女性に誘惑されるスポックの姿もあるが、それでまんざらでもない表情してるのが面白い。シリーズも終わりに近づきスポックもだいぶ丸くなったようだ。
 宇宙連邦では拷問は禁止されていることが分かる。捕まえたテロリストを平気で拷問する住民にカークが怒っているが、こう言う社会が来ないのが寂しい。
 必要なジーナイトを得るために執政官の言うことを信用するのか、それとも民衆を助けつつ目的を果たすのかという選択を強いられる事になるが、カークの答えは後者。ただしそのためにカークの最も強い武器、つまり口八丁を駆使して目的を果たすのだが、その際自らも実験台となるところがこの話の面白いところ。
<セットだから仕方がないが、とにかく人のいる場所が狭いところばかり。>
第75話 自由の惑星エデンを求めて
“The Way to Eden”

  監督:デヴィッド・アレクサンダー
  脚本:D・C・フォンタナ
      アーサー・ヘイネマン
 何者かによって奪われた高速宇宙船オーロラ号を追跡するエンタープライズ号。オーロラ号はオーバーヒートを起こして壊れてしまうのだが、かろうじて乗務員をエンタープライズ号に転送させることには成功する。彼らは著名な科学者セブリン博士を中心とした、惑星エデンを目指すグループだった。

 ヒッピー的な価値観を持った集団との交渉がメイン。彼らの大部分は著名な科学者であるが、楽天地であるエデンを目指しており、夢物語を追いかける存在として描かれる。役人を小馬鹿にし、規則を破ることと自然に還ることに価値観を持つ。まさに当時のヒッピー文化そのものを象徴してるようだ。音楽好きなところもそれっぽいが、スポックのバルカン・リュートがかなり重要な役割を果たしている。
 結果として、未開の惑星に到達はしたが、そこの植物は強力な酸を出すため、降下したグループは全滅してしまう。自由を求めた代償だが、このような蛮勇が時代を作ってきたという側面もあり。実際他のストーリーではカークも似たようなことをやってるシーンも散見される。
 ある意味人を拒絶する自然の惑星と言うことで、本当にここはエデンの園なのかもしれない。
 珍しくチェコフが中心になった話でもある。エデンを目指す一員の一人がアカデミー時代の恋人だったそうで、ちょっとロマンスの匂いもあり。チェコフはお堅い性格をしているが、本人はそれにちょっとコンプレックスを持っていることも語られている。
 意外なスールーの女好きも出ていて、女性に言い寄られたらニコニコしていた。あと何故かスポックが彼らに同情的。音楽好きという共通の趣味があるからだろうか?
 ちなみにこのストーリーは後に『スター・トレック5』にも似た部分が結構ある。
<エンタープライズ号に解析させたらあっけなく惑星エデンの場所が分かってしまった。これまで伝説だったんじゃないか?
 エンタープライズ号の警備は相変わらずザルだ。何回占拠されてるんだか。
 惑星エデンは強力な酸の植物が生える惑星だった。なんでそんな場所に普通の格好で降下するんだ?事前に分かるだろうに。
 メンバーの一人アダムはエデンの木の実を食べて死亡していた。スポック曰く「禁断の木の実」だそうだ。ダジャレか。>
第76話 6200歳の恋
“Requiem for Methuselah”

  監督:マーレイ・ゴールデン
  脚本:ジェローム・ビクスビー
 エンタープライズ号でリゲル星熱病が発生した。解熱剤であるライタリンを採取するために惑星ホルバーグに降り立ったカークら三人。ところが無人惑星のはずのこの星にはフリントという地球人が住んでいた。ライタリンの引き渡しを拒否するフリントに、なんとか考え直してもらえないかと頼むカークだが、フリントは娘というレイナとカークを引き合わせる。

 高度な文明を持つ人類との接触が描かれる。このパターンは結構多いのだが、相手がなんと不死種の地球人というのが面白い。そもそも地球の文明の発展に寄与してきたという人物で、ダビンチやブラームス本人だという。SFというよりオカルトっぽい話になってる。現代タイトルには「メトセラ」とあるが、SFはこの名前好きだね。
 美しい女性を前にするとすっかりハンターモードに入ってしまうカーク。いつもこれで成功するあたりこの作品が少々マッチョな雰囲気がある。カークを助けるために自ら命を絶つ女性の姿に激しく落ち込んでいる。
 今回はスポックが妙に饒舌。本物の美術品に囲まれると意識が高揚してしまうらしい。いつもは決して口にしないアルコールを飲むほどだった。リクエストに応じてピアノの腕も披露してる。ダビンチの未発表の絵を一目で見抜いたり、ブラームスのワルツが本人直筆のものと見抜いたりと、もはや超能力者だ。
<フリントの持つ美術品の中にはポロックのものもあるという。この作品だと20世紀も遠い昔の話か。果たしてこの時代までポロックの絵は残るものだろうか?
 一刻を争う時なのに、フリントの言葉を信じて女性と浮かれているカークの描写はちょっとイラッとするな。
 フリントの技術でエンタープライズ号を乗組員ごと縮小してしまうが、それは演出的にやりすぎ。こんな技術が地球人に作れないだろうし。>
第77話 未確認惑星の岩石人間
“The Savage Curtain”

  監督:ハーシェル・ドーティ
  脚本:ジーン・ロッデンベリー
 生命体がいる可能性のある惑星エクセルビアの調査に向かったエンタープライズ号。そこには全く生命体の影はなく、帰還の準備にかかったところ、宇宙空間になんとリンカーンが現れた。宇宙空間からのメッセージによると、惑星に招待したいという。その言葉に従い、転送して

 遠い宇宙の果てでリンカーン元大統領と出会うという話。宇宙空間に浮かぶ超人類だが、昔のアメリカの常識を持ったまま、今の時代の知識も豊富に持っている。そのアンバランスさに、マッコイとチャーリーは彼が敵だと思い込むが、スポックはその真意を探ろうとする。
 その狙いは惑星エクセルビアの現住生物セルネクによって人間同士闘わせられるというもの。そこには宇宙的な多くの偉人や悪人がおり、そこで闘わせられるが、闘いながらセルネクの真意を探ろうとする。
 結果的にこの戦いはセルネクの純粋な興味によるもの。単純に新しい知識を手に入れたいだけで人に試練を与えただけだった。その結論は、善人でも悪人でも戦いに強いられるとやることは同じだという。
 カークはリンカーンを尊敬しているが、その当人から現実には戦争を起こした張本人であるという事を言われ、複雑な表情をしている光景がある。かなり面白い設定だ。
 この世界では民族的な呼称は全くタブー視されていない。それは蔑称ではなく、単なる出身地と肌の色を表すものに過ぎないから。こんな未来世界こそが本当に望むべき未来だった。
第78話 タイムマシンの危機
“All Our Yesterdays”

  監督:マーヴィン・J・チョムスキー
  脚本:ジーン・リセット・アロステ
 恒星の死を迎えた星系で、唯一人類が存在する惑星からエンタープライズ号に通信が入る。調べに行ったカーク船長らだが、誰もいないはずのその惑星にはエトスという老人がいた。彼はカークに好きな時間に行けると謎の言葉を語りかける。理由も知らずに装置に入ってしまったカークは昔の地球に飛ばされてしまった。
 これまでに何作か登場したタイムトラベル作品の一本で、第一シリーズではこれが最後のタイムトラベルものとなる。
 事情も分からずに様々な時代や場所に飛ばされるカークやスポック達。ただやっぱり金が使われてないだけに描写がちゃちだし、物語も今ひとつこなれてないような?あんまり個性が見られない。
 ただ、この話ではこれまでになかなか見られないスポックの恋愛話が展開する。女性にほだされて送られた時代にとどまろうと考えてしまうなど、いつものスポックとは明らかに違ってる。なんか外伝的な話とも言えるかも。これは元々好戦的な種族だったバルカン星人に先祖返りしてしまったためと説明される。
<カークの危機に、事前調査をせずに飛び込むスポック。彼らしくないが、そんなにカークが心配だったか?それにザラベスから説明されただけで、もう戻れないとか言ってるのも珍しい。
 凍りかけているマッコイを暖かい部屋に放置するスポック。実はこれは絶対にやってはいけないことである。
 そう言えば今回エンタープライズ号の船内の描写が全くなかった。色々な意味で珍しい話だ。>
第79話 変身! カーク船長の危機
“Turnabout Intruder”
  監督:ハーブ・ウォーラーステイン
  脚本:ジーン・ロッデンベリー
 惑星ケイマス2からの救難信号を受信したエンタープライズ号は急行し、そこで放射能を受けた男女を救出する。その一人はかつてカークと共に宇宙局で働いていた女性ジャニスで、カークは彼女に付き添うことにするが、

 最初の「スタートレック」最終話となるが、基本的にはいつも通り。カークが精神を入れ替えられてしまい女性になってしまうと言う話。放射能汚染の上に薬で意識も遠のいてしまったため、何もできないまま事態の推移を見ているしかないというのが特徴。
 カークの精神を乗っ取った女性ジャニスは徹底的にカークのことを調べて知識についてはほぼ完璧だが、精神が異なるため、微妙なところでカークと異なってしまい、スポックとマッコイに突っ込みを受けてしまって、徐々に化けの皮が剥がれていく。その過程でスポックがかなり感情を露わにしてるのが面白いところ。
 事情を知ったスポックはカークのために働くが、何故かマッコイがジャニス側に立って擁護してる。それでカークは窮地に立たされる。結果は時間が経つと
 この作品の舞台設定は平等が進んだ世界だが、それでも宇宙船の船長は女性は誰もいないそうだ。この話では女性は感情的だからという説明になってしまうのだが、この点にかけては実際の歴史の方が平等になってる。
 ジャニスの日本語吹き替えは野沢雅子らしいが、成人女性の声を当てるのはどうも違和感あるな。
<ジャニスの目的は女性にはなれない宇宙船の船長になることだった。しかし有名人であるカークになるのは相当な無理がある。
 ジャニスはカークのことを徹底的に調べたらしいが、乗組員の性格まで把握してるのが凄い。>