乱暴者(あばれもの)
The Wild One |
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★★★☆ |
物語 |
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設定 |
思い入れ |
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山麓の田舎街ライツヴィルに、ジョニー(ブランド)をリーダーとしたお揃いの黒い皮ジャンを着こんだ柄の悪いバイクレースチームがやってきた。彼らは町の近くで行われているレースから締出されてしまい、うさ晴らしのためにトロフィーを奪ってやってきたのだ。酒場に陣取って乱暴狼籍をふるまう彼らに警察も手が出せない。しかもさらにチノ率いる彼らのライバルチームまでやってきて…平和な町に起こった一昼夜の出来事を描く。
社会派監督スタンリー・クレイマーが製作に当たった青春映画のルーツ。暴走族の実体を初めて本格的に描くいたことで多いに受け入れられ、大人社会への反抗を表すキーワードとして革ジャンの大流行を招いた。
ただ、これを現代の目で観ると、かなりきつい。そもそも社会に対する反抗と言うのは、世代がちょっと違っただけでも馬鹿にしか見えないものだが、さすがにそれが50年前となると、そのギャップはすごいもので、本人たちは格好良いつもりでも、今から観るとあまりにもイタすぎる。少なくともその時代を生きてこなかった人間にとって、この光景は本当の馬鹿げた行いにしか見えなかった。
それでちょっとげんなりしたが、実際物語もかなりぬる目で、話もオチがなく中途半端な感じ。ブランドのしゃべり方もくぐもっていてはっきりしてないし(実はこれこそがメソッドであった事が後になって分かったが)。
だけど、現代から観てぬるいと言っても、この時代性を考えるなら、これは大変画期的な物語でもあり。何せ当時のハリウッドは映画でマイナス要素を見せないように製作側を締め付けていた時代である。その時代に大人に対する反抗を前面に出し、しかもそれがちゃんと公開出来たと言う事実こそが何より重要な点であった。少なくとも、本作の存在あって以降のハリウッド躍進がある訳だから、本作は時代というフィルターを通して観るべき作品だとは言える。
何気ない台詞ではあるが、少女から「なんでそんなにつっぱるの?」と訪ねられた際、ブランド演じるジョニーは「じゃお前は何を手に入れた?」と訊ね返すシーンがある。この台詞こそ、実はこれまでのハリウッド的価値観を完全に逆転させたとも言える。若者の暴走は、理性を持った何者の言葉によっても止められるものではない。そんな当たり前の事実をはっきり出して見せたのだから。
それと、この作品によってブランドはその存在感を確立したと言う意味合いもあり。ここで反骨精神むき出しの青年を演じたことで彼のイメージは確立された…死ぬまでずーっとそのイメージで終わってしまった訳だから、ひょっとして罪深い作品だったのかな?
ちなみに本作に登場する暴走族の少女を指すスラング「ビートルズ」こそがビートルズの語源となる。
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