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ジェイコブ・チャン
張之亮
Jacob C.L. Cheung

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鑑賞本数 1 合計点 3.5 平均点 3.50
書籍
2008
2006 墨攻 監督
2001 夜間飛行 監督
1999 流星 監督
新・少林寺III 十三棍僧の巻 演出
新・少林寺II 泰王悲恋の巻 演出
新・少林寺I 天下争覇の巻 演出
1993 いつも心の中に 監督
1989 黄昏のかなたに 監督
1987 チャイナ・フィナーレ 清朝・最後の宦官 監督
1959 9'6 香港で誕生

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墨攻 2006
2006アジア映画男優賞(ラウ)

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ジェイコブ・チャン(脚)
アンディ・ラウ
アン・ソンギ
ワン・チーウェン
ファン・ビンビン
ウー・チーロン
チェ・シウォン
★★★☆
物語 人物 演出 設定 思い入れ
墨攻(書籍・コミック)
 BC370年。中国大陸は戦国時代に入っていた。“趙"と“燕"という両大国間の争いに巻き込まれた小国の王城“梁城"は、趙軍の大将軍・巷淹中(アン・ソンギ)が率いる10万の軍勢を前に陥落寸前であった。梁王は、「非攻」という専守防衛の精神を掲げる“墨家"に援軍を頼むが、派遣されて来たのは革離(アンディ・ラウ)という戦術家ただ一人であった。絶望的な状況の元、革離は淡々と戦の用意を進める…
 本作は中国古代史をベースとした小説で知られる
酒見賢一の同名小説を日本で森秀樹が漫画化。それを中国で映画化したという、やや複雑な経緯を持つ逆輸入作品。実はちょうどこの当時中国史に傾倒していたこともあって漫画の方は大好きで、これを連載してた時は、これ読むためだけに連載先のビッグコミックを買っていたくらいだった。それだけ好きだったにも関わらず、劇場ではスルーし、ビデオで拝見。

 レビューの前に、ここに登場する墨家について一言。
 中国史で最も熱い時代である春秋戦国時代は、いわば中国史におけるルネッサンスのようなものでもあり、思想の上でも大きく発展した時代でもあった。諸氏百家とまで言われる様々な思想と、それをベースにした派が権勢を誇った時代だった。神格化までされ日本でも馴染み深い孔子、「故蝶之夢」などで知られる道教の荘子、「性善説」の孟子、「性悪説」の旬子など、日本でもよく知られる中国思想の原点はすべてここから始まっている。
 その中で極めてユニークな思想で知られるのが墨子の思想だった。彼は戦乱の世の中にあって、絶対的平和を得るにはどうすればいいかを考え抜いた人物で、彼の思想は極めてややこしい。平和のためには絶対防衛が重要として、その思想は軍事的思想にあふれ、不殺を旨とするのに、人殺しの技術を徹底的に叩き込む。無茶苦茶矛盾する思想だった。日本語にもなってる
「墨守」という言葉もあるくらい(意味は古くからの伝統を頑なに守る。とか頑固とか)。恐らく著者の酒見賢一はこの「墨守」という言葉から、「僕攻」という言葉を考え出したのだろう。その辺のケレン味が私なんかにはたまらない魅力に映る。

 それで、このタイトルを活かした漫画版の出来も素晴らしく、エンターテインメントとしても一級品。それを忠実に映画化した本作も見所満載のサービス心あふれた出来となっている。映画としてもかなり楽しい作品だった。
 ただ、強いて言えば主人公革離役のラウはイメージより少々線が細く、大胆さが足りない気がしたことと、その革離に頼りつつ、最後は簡単に裏切ってしまう梁の民衆のパワーに説得力が足りなかったことだろうか
(表現的に難しいのは分かるが、民衆を無視して王の一声で全部決まってしまうのは、脚本的には逃げに見える)。その辺もうちょっと生々しく描いてくれたら、私には嬉しかったけど。
 後は、見所満載に見えて、実は
見せどころが散漫になってしまったのは、コミック原作の弱みだろう。マンガの場合構造的に見所を絞り込むことが出来ないように出来ているし、それをかなり忠実に映像化したのだからこれは仕方がないが、もう少し映画的な華を特定して作り込んでほしかった。

 国際的なコラボレーション作品なので、一見の価値はあり。

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