5年の歳月を用いて撮影し、日本でもNHKで放映されて人気の「プラネットアース」の膨大な映像素材を元に、地球環境問題の視点も盛り込みつつ選りすぐりの映像を集めて劇場用として再構成した作品。長い冬が終わろうとする北極から始め、春を迎えたロシアのツンドラ地帯、乾季から雨季へと向かうアフリカの砂漠、赤道直下から南洋へと向かうザトウクジラの親子などの映像を綴る。
環境ドキュメンタリーはかなり古い歴史を持ち、古くはクストーによる『沈黙の世界』(1956)やディズニーの作った『砂漠は生きている』から始まり、現在に至るも連綿と続いている。ただ、その発表の場は主にTVに限られるようになっていったのだが、近年様々な装備の発展によって局地でも長期に渡る撮影が可能になったと共に劇場用としても再評価され始め、2000年代に入ってからは『WATARIDORI』、『皇帝ペンギン』、そして本作と同じくイギリスBBC制作の『ディープ・ブルー』と言った作品が次々と投入されている。
これが商業的に成り立つという事実もそうだが、そろそろ本式に地球環境を考える土壌を育てなければならない。という地球規模の環境の見直しが始まったからだろう。
私としても一度くらいこういう作品を劇場の大画面で観てみたいという重いがあっての鑑賞となり、それ自身は大満足に終わった。撮影技術の向上もあって、実に綺麗な風景と、それを蝕む地球規模の環境破壊が綴られていく。
ただ、問題は構成とナレーションだろうな。日本語版だと渡辺謙の暖かみのある声が当てられているのだが、地球規模の話であのしゃべり方は違和感があり。もっと突き放して、事実を淡々と述べてもらった方が心に来るよ。ナレーターが伊武雅刀だったらかなりはまっていたんじゃないだろうか?
それと、あたかも動物を擬人化したかのようにして説明したのもちょっと疑問あり。ドラマチックな音楽を使ってドラマ性を増しているのだが、ネイチャードキュメンタリーの場合はむしろ観ている側の想像に任せる方向でやってほしかった。作為的な構成の仕方はちょっと気分的に引く。映像的には最高得点をあげても良いんだが、その演出の持っていき方で気分が上がらず。
子供に観てもらうため。と割り切った作り方だったのかも知れない。
家庭に大画面の環境があるならば、こちらよりは「プラネット・アース」の方を観ることをお薦めしたい。 |