ナポレオン
Napole'on |
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アベル・ガンス(脚)
アルベール・デュードネ
ジナ・マネス
アレクサンドル・クービッキー
アナベラ
シュザンヌ・ビアンケッティ
ダミア
アントナン・アルトー
ピエール・バチェフ |
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★★★★ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
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第一部:コルシカ島で勇敢だが変わり者としてして知られていたナポレオン=ボナパルト(ルーデンコ)の少年時代から、青年(アルベール・デュードネ)となり、パリに渡りフランス革命を体験し、頭角を現すまでを描く。
第二部:トゥーロンをイギリスから奪還したナポレオンが十月革命を経て国家の重鎮となり、ジョゼフィーヌ(マネス)と結婚。将軍としてイタリア遠征へと向かうまでが描かれていく。
西洋映画界では最も題材とされることが多いと言われるナポレオン。その半生を初めて映画化したサイレントの超大作。特に後半20分間は“トリプル・エクラン”(ポリビジョンとも)と呼ばれる三面の画面を使ったもので、はシネラマを先取りしたものとして話題を呼んだ。
本作はフランス政府の肝入りで国家主義プロパガンダ映画として製作された。ナポレオンはフランス人にとって本物の英雄とされる人物だけに、格好な素材だったのだろう(後年ソ連で国家予算を用いて作られた超大作『戦争と平和』もナポレオンが登場するが、プラス面でもマイナス面でもナポレオンの存在感はとても高いことを思わされる)。ガンス監督の思い入れもあるのか、本作の力の入り方は尋常ではなく、子供時代から非凡な生涯を送った存在として描き出している。
現代の目から観ても、この作品で使われていた技術は素晴らしいもので、特にラストのトリプル・エクランは狭いテレビ画面を通してさえも迫力が分かるし、ここに動員された人数も、当時の技術で作られた特撮も素晴らしい。
一方、物語の方は、いかにも好戦的な、本物のプロパガンダ映画だった。ここに描かれるナポレオンの姿は人間ではなく、完璧に揺るぎない信念を持った英雄そのものの姿で現されていた。その部分にはちょっと引いてしまうのだが、これもおそらく1927年のフランスと言う時代が作ったものだとは言えるだろう。第一時世界大戦の泥沼のような西部戦線で辛うじてドイツから勝利をもぎ取ったフランスにとって、なにかにつけ国威高揚を行わねばならない時期にあった。ここに最適な存在がフランスにはかつて存在していたというわけだ。改めて本作は時代背景とともに観なければならない作品であり、当時のフランスの理想として現れたのがナポレオンだったと考えるべき。
ここでナポレオンはイタリア遠征に向かって旅立つところで終わるが、そこでの盛り上げ方や、いかにも戦いが好き!と言った雰囲気も、これもかつて戦ったドイツやイタリアに対する気持ちが現れているようにも思える。
本作は二部作だが、当初ガンスはこの作品を第一部としてナポレオンの全生涯を描こうというプランを持っていたらしい。だが、莫大な制作費が必要なこと、3年後実用化に至ったトーキーの出現もあり、本作一作で止まってしまった。
しかも、世界配信される際、あまりに長いと言うことでカットされまくり、世界中にさまざまなバージョンが存在する(最短で80分と言うのもある)。それを全長版として再現させたのがフランシス=コッポラ。1981年のこと(バックのオーケストラ演奏は父のカーマイン=コッポラ)。なお、日本公開版はコッポラの他、黒澤明が監修に当たっている。 |
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