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ウール・グロスバード
Ulu Grosbard

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鑑賞本数 2 合計点 6 平均点 3.00
書籍
1999 ディープエンド・オブ・オーシャン 監督
1995 ジョージア 監督・製作
1984 恋におちて 監督
1981 告白 監督
1978 ストレート・タイム 監督
1971 ケラーマン 監督
1929 1'9 ベルギーのアントワープで誕生

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恋におちて 1984

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マイケル・クリストファー(脚)
ロバート・デ・ニーロ
メリル・ストリープ
ハーヴェイ・カイテル
ダイアン・ウィースト
ジェーン・カツマレク
ジョージ・マーティン
デヴィッド・クレノン
ジェシー・ブラッドフォード
★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 クリスマス・イヴ。マンハッタンの書店でぶつかってしまった建築技師のフランク(デ・ニーロ)と、重傷の父を看病しに来ているモリー(ストリープ)。慌てて謝り合い、笑って別れた二人だが、お互いの包みを間違えて持ち帰ってしまう。その後偶然通勤電車で合った二人は包みを交換するために同じ電車に乗ることを約束する。やがて毎朝の電車は二人の空間へとなっていく…
 ニューヨークを舞台に、偶然の出会いから始まる恋を描いた作品。作り方そのものはリーン監督の
『逢びき』によく似ているのだが、グロスバーグ監督の独特の美的感覚がよく出ており、舞台をニューヨークの、しかも冬の日差しを浴びながらのため、非常にタッチは柔らかく、大変オシャレな感じに仕上がっている。不倫ものを扱っているにしてはドロドロ感がまるでなく、むしろ透明感さえも感じるような演出は流石。
 当初デ・ニーロとストリープが主演と知り、
よくこんな濃い二人を主役に持ってくるもんだ。とか思っていたものだが、意外なことに二人とも、全くの自然体に見えてしまうのが不思議。なんだかんだ言っても「名優」と呼ばれるだけのことはある。更に輪をかけて濃いカイテルまでもがしっかり引いた演技をしてるので好感。
 少なくとも、演技の質と演出に関しては相当に良い線行っていると思う。映画的な意味で言えば、高得点作品だ。
 だけど、根本的に不倫ものを扱い、しかもそれを肯定して終わるという物語展開にははなはだ疑問。それこそ
『逢びき』のように、ラストは“その後”を感じさせてもらいたかったところ。この終わり方だと、“その後”は更なる泥沼状態しか待ってない。それを感じさせてしまったところが問題。
 私なりには物語に大いなる不満…というか、あのラストシーンでは納得いかない。残念ながら根本的なところではまれなかったため、どうしても好きになれず。
ケラーマン 1971
1971米アカデミー助演女優賞(ハリス)
<A> <楽>
ダスティン・ホフマン
バーバラ・ハリス
ジャック・ウォーデン
ドム・デルイーズ
デヴィッド・バーンズ
ガブリエル・デル
★★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 ポップスミュージック作曲家の頂点に立つジョージ(ホフマン)は今の地位を築くため、友人はおろか妻や息子まで全てを犠牲にしてきた。数多くの女性と浮き名を流しつつも、一人に戻るとNYのコンドミニアムで孤独を噛みしめるジョージだが、そんな彼の元に嘲笑的な電話や手紙が次々に舞い込むようになった。送り名は“ハリー=ケラーマン”。無視するように務めるジョージだったが、やがてケラーマンの手は巧妙化していき、元妻や知り合いに次々と悪評を流すようになる。ノイローゼにかかってしまったジョージは様々な場所を徘徊し、ケラーマンを見つけようとするのだが…
 演劇畑出身で、本作が初監督作となる(製作も)グロスバーグによるバックステージものの作品。
 原題は
『Who Is Harry Kellerman, and Why Is He Saying Those Terrible Things About Me?』という長い名前の作品だが、要するに「俺を苦しめるヘンリー=ケラーマンって誰よ?」と言う意味で、正体を見せないケラーマンなる存在に翻弄される主人公のほぼ一人称の物語が展開していく。
 一言で言ってしまえばこれはメタ作品で、孤独のあまり妄想に取り憑かれてしまった人間が、何者かの陰に怯えて徐々に狂気に落ち込んでいくという手法で作られている。これは小説ではよく使われる手法で、先日映画化された『シークレット・ウィンドウ』(2004)の著者スティーヴン=キングもこういう作品を得意としている。
 一応ケラーマンとは誰?と言う謎が命題になっているが、実はそれ自体はあまり意味を持たず、むしろ主人公ジョージの精神が徐々に均衡を崩していくのを見るべき作品。現実と虚構、現在と過去が入り交じり、不思議な精神世界が展開される。本作の場合、敢えて虚構の世界の描写は抑えめにして、人物描写を中心に持ってきているのが特徴だろう…ここでやりすぎると『裸のランチ』(1991)になってしまうので、このくらいがバランスとしては丁度良い。
 私はこういうメタな作品が大好きだし、特にホフマンが目を開けたまま夢の世界を彷徨いだしていく辺りの描写はなかなか痛々しくて良いぞ…それが飛行機に乗っている時だから、観てるこっちも緊張しっぱなしになるけど(笑)
 すっかり大俳優として有名になったホフマンだが、実は元々は俳優よりはジャズピアニストになりたかったそうで、俳優業が忙しくなればなるほどその夢から離れていくことを嘆いていたそうだ。そう言う意味では、この役はぴったりの役で、
それこそメタフィクションそのものとも言える。
 しかし、これがなんで未公開だったんだろう?無茶苦茶好みなんだが。

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