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飯田基晴

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鑑賞本数 1 合計点 3 平均点 3.00
書籍
2009 犬と猫と人間と 監督
2002 あしがらさん 監督・撮影・編集
1973 誕生

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犬と猫と人間と 2009

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★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 長年捨て猫の世話をしてきた稲葉恵子という女性に直接申し込まれ、現在の野良犬や野良猫の実態をドキュメンタリーにしてみようとした監督。だがその実態とは、監督自身が思った以上だった…
 猫好きな人間としては、実態を知って辛い思いになったのは確かだが、念のために言っておくが、以降のレビューは、
映画の内容にはほとんど触れてない

 ドキュメンタリーとは、極論を言えば結局
監督の主張が見えるかどうかと言う点が重要。単に映像をつなげているように見えても、そこには監督自身の恣意的な編集があるはず。ドキュメンタリー映画を観る場合、内容そのものよりもそちらを見つけることの方が楽しい作業だったりする(マイケル・ムーア監督がまさにそれで、この人の作品を観ていて「ドキュメンタリーはこう観ればいいのか」と自分なりに納得できた)。
 本作はそう言った“監督の主張”という観点から観るなら、不思議な作りの作品である。内容にはちゃんと監督の主張が入っている。だけど、それも最初から「こう作ろう」という意図があってのことではないのだ。最初にある女性との会話で、
「撮ってくれるように頼まれたから撮ってみた」と言う事をはっきり語っている。ここが面白いところで、監督には先入観は無かった。と言う事を一旦強調した後、取材を通してだんだんと考えがまとまってきたと言う事をはっきりと主張しているのだ。わざわざオープニングカットに女性との会話シーンを入れたのは意図的だろう。

 本作が面白く感じるのは、取材を通して監督が主張を持つに至ったと言う過程を描いているからに他ならない。だから、この作品を観ていると、犬とか猫がどうだと言うよりも、監督の考えが徐々に固まってきて、最後にはきちんと主張できるようになった。と言う成長の過程が描かれている。結果として本作は監督自身が主人公となり、一種の旅をしていくロードムービーであり、それに乗っかってわたし達もやはり旅をしていく。それがとても心地が良い。
 淡々とした映画に見えながら、実はドキュメンタリー映画の(裏の)面白さが詰まった作品だったりする。

 本作は本当に淡々としてるし、着地点も無難なのだが、そこに描かれるペットを捨てる人間、ペットを殺す人間、ペットを助ける人間、それら全てを監督は良いとも悪いとも言わないが、あくまで批判的な目で見つめ、「これが日本の実態なんだ」と結んでいるところが面白い。“ペット大国”である日本という国の中。ペットという物言わぬ家族に対し、日本人はどの程度ちゃんと向き合ってるか?この問いは結局「日本という国はどんな国で、どこに向かおうとしているのか?」と言う事に通じている。過去と現在を撮ることで未来を暗示する。ドキュメンタリーの良い部分がしっかり作られてる。

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