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アホでマヌケなアメリカ白人(書籍) _(書籍) |
2020 | |||||||||
2019 | |||||||||
2018 | 華氏119 監督・制作・脚本 | ||||||||
2017 | |||||||||
2016 | |||||||||
2015 | マイケル・ムーアの世界侵略のススメ 監督・製作・脚本・出演 | ||||||||
2014 | |||||||||
2013 | |||||||||
2012 | |||||||||
2011 | |||||||||
2010 | |||||||||
2009 | キャピタリズム マネーは踊る 監督・製作・脚本・出演 | ||||||||
2008 | |||||||||
2007 | シッコ 監督・製作・脚本・出演 | ||||||||
2006 | |||||||||
2005 | マイケル・ムーア in アホでマヌケな大統領選 出演 | ||||||||
2004 | 華氏911 監督・製作・脚本・出演 | ||||||||
ザ・コーポレーション 出演 | |||||||||
2003 | |||||||||
2002 | ボウリング・フォー・コロンバイン 監督・製作・脚本・出演 | ||||||||
2001 | |||||||||
2000 | ラッキー・ナンバー 出演 | ||||||||
1999 |
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1998 | |||||||||
1997 | ザ・ビッグ・ワン 監督・脚本・出演 | ||||||||
1996 | |||||||||
1995 | |||||||||
1994 | ジョン・キャンディの大進撃 監督・製作・脚本 | ||||||||
1993 | |||||||||
1992 | |||||||||
1991 | |||||||||
1990 | |||||||||
1989 | ロジャー&ミー 監督・製作・脚本 | ||||||||
1988 | |||||||||
1987 | |||||||||
1986 | |||||||||
1985 | |||||||||
1984 | |||||||||
1983 | |||||||||
1982 | |||||||||
1981 | |||||||||
1980 | |||||||||
1979 | |||||||||
1978 | |||||||||
1977 | |||||||||
1976 | |||||||||
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1954 | 4'23 ミシガン州フリントで誕生 |
タイトル | |||||||||||||||||||||||||||
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華氏119 2018 | |||||||||||||||||||||||||||
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2016年11月9日。民主党ヒラリー・クリントンと共和党ドナルド・トランプの一騎打ちとなったアメリカの大統領選挙で、当選したのはトランプだった。支持率でも総得票数でもヒラリー・クリントンを下回ったトランプが当選できたのかを分析し、それ以降のアメリカが陥っている”今”の状況を克明に描く。 主張の強いドキュメンタリー映画監督の第一人者となったムーア監督の最新作。過去『華氏911』でブッシュ大統領でも同じ事をやっており、同じく共和党の大統領を描くドキュメンタリーと言う事で、まさにそのタイトルを少し変えた形で本作が投入された。 内容的には大変興味深い。2016年の大統領選挙では民主党の支援者達が初の女性大統領の誕生をお祝いしていたところ、どんでん返しが起こってしまったことから始まり、ほとんど思いつきで過激な主張をするポピュリストが大統領になれてしまった理由。そして現在のアメリカ全土の政権支持基盤、さらには前のオバマ政権時代からの政治のゆがみも含めて克明に語る。 面白いのはこの話が単なるトランプ憎しだけでなく、怒りは民主党にも向けられているし、反理性的になってしまったアメリカという国そのものに対しての怒りというものも語っている点。 一方、ミシガン州トロントで行われた水道鉛害は、今の日本においても重要な意味を持つ。なんせ2018年現在、日本でも水道民営化が法制化が進んでいる。トロントで起こっている事は日本の未来なのかもしれないのだ。 その意味ではとても興味深い話だった。 ただ、これを観ていて、これまでにはなかった居心地の悪さを感じてしまったのも事実。ムーア監督のドキュメンタリーは確かにこれまでも居心地の悪さがあったが、それとは別種のものだ。 かつての『華氏911』はブッシュ大統領の過去と、共和党におけるその位置づけ、そして連続爆破テロ事件の影響、すべてブッシュ憎しという監督の意思によって作られた。 その極端な主張こそが監督らしさであり、面白さとなっていた。 てっきりこの作品もその面白さが出ているのではないかと思って行ったのだが、ちょっと予想とは違うと言うか、わたしが求めていたものとは異なっていた。 わたしが求めていたのは、歪んではいてもサービス精神に溢れたユーモアだった。ところが本作にはユーモアはほとんどなかった。ただここで見られるのは監督の怒りばかり。 話はいろいろ拡大してまとまりはないのだが、根底にユーモアなく怒りだけで作られたことで、本作は観ていてかなり痛々しいというか、精神に痛みを覚える作品になってしまった。 監督の攻撃性はますます増し、大統領となったトランプだけでなく、共和党そのものにも、そしてアメリカという国そのものに向けても放たれる。 これまでの作品にあった、絶望の中でも「私たちにできること」の主張も後退し、ただ現状を語って、文句を言うだけになったような感じになった。 監督の本性がダダ漏れなので、これを楽しめるなら良いのだが、悪意の塊を延々見せつけられることで気分的にきつい。 げんなりと言うより、胸焼けがするような気分になってしまったので、点数はそんなに上げられない。 |
マイケル・ムーアの世界侵略のススメ Where to Invade Next |
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キャピタリズム マネーは踊る 2009 | |||||||||||||||||||||||||||
2009放送映画批評家協会ドキュメンタリー賞 | |||||||||||||||||||||||||||
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2008年9月。サブプライムローン問題により世界有数の証券会社リーマン・ブラザーズが破綻、これを契機に金融危機が巻き起こり、世界は空前の大不況に陥った。対照的に、そのサブプライムローンで暴利を得てきた巨大金融機関に対し保護政策が取られるという皮肉な事態を起こす。アメリカの資本主義(キャピタリズム)は、こんな不条理なことになってしまったのか… デビュー作以来、自ら行った突撃取材を題材としたドキュメンタリーを作り続けているムーア監督が、今度は2008年に起きたアメリカ金融危機を題材に作り上げた作品。 これは確かに面白い。監督の原点ともいえる『ロジャー&ミー』の時に一旦戻り、自分自身の家庭に起こったことと、アメリカに起こっていることを直結させ、下からの目線で政治を斬る。大変分かりやすいし、それでこれから市民がなすべき事をしっかりと伝えていく。極めてシンプルながら、シンプル故の説得力に溢れた作品となっている。 映画ファンにとっても、数々の映画からの引用もあって、そう言う小ネタの数々でも楽しめる作品に仕上がっている。 ただ、面白いのだが、観ているうちにだんだんと痛々しさを感じてしまった。 なんだろう。この寂しさは。 それは、映画に登場するムーア監督が、妙に疲れてしまって見える事が大きな理由だろう。これまでアメリカ政府に対してあれだけ攻撃的だったムーアが、今度は「俺には理解できない」と言いつつ、淡々と事実を述べていく。ピケを張ったりもしてるけど、それもポーズっぽく、最後には「俺一人じゃ無理だ」とまでつぶやく。 それで分かったのだが、私がムーア監督に求めていたのは、どんなに偏っていたとしても、「自分の主張こそが正しい」と言って、ガンガン突っ込んでいく姿だったのだ。たぶん私が見たかった姿は、ドン・キホーテであることを自覚しながら、それを演じている姿だったように思える。 そんな姿を見たかったのに、ここで自信のない姿を見せられてしまい、少々物足りなかった…と言うか、自分を役者として見せようとして欲しかった。それが出来る人なんだから。下手に良識ぶったコメンタリーでも、批評家でもなく、理不尽でも良いから怒りをどこかに本気でぶつけて欲しかった。その姿を観たくて劇場に行ったのに、肩すかしを食ってしまった。 それと、悪いがここで描かれたことのほとんどは、昨年NHKでやってたことばかりだったので、目新しさを感じなかったのも痛いところ。テレビ観てた時には感心したけど、ここではそれをなぞってるだけと言う印象を受けてしまった。下手に情報を集めた後で観に行ったのはまずかったか(アメリカの優秀な人材はみんなウォール街に行くという部分もどこかで見たと思ったのだが、後になってそれは小説版の「ライジング・サン」に書かれていた事だと思い出した。そうすると80年代の後半からアメリカは既にウォール街を中心に回っていたと言う事になる。とんでもない空洞化状態が起こってるんじゃないのか?) 内容はとても良いのだが、その周辺で入り込めなかった自分自身の問題だ。 |
シッコ 2007 | |||||||||||||||||||||||||||
2007米アカデミードキュメンタリー長編賞 2007放送映画批評家協会ドキュメンタリー賞 2007シカゴ映画批評家協会ドキュメンタリー賞 2007ゴッサムドキュメンタリー賞 2007ゴールデン・トマト・アウォーズドキュメンタリー、大規模公開作品第4位 2007アメリカ製作者組合ドキュメンタリー映画賞 |
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先進国で唯一公的な国民健康保険制度を持たない国アメリカ。民間による健康保険は高額に上り、多くの国民は無保険の状態に置かれており、保険に入っていたとしても営利を追求する民間企業によって難癖をつけられて保険が適用されていないことがある。この事実に目をつけたムーア監督がアメリカの医療制度が抱える問題点を、諸外国との比較や、医療の現場で実際に起きている事実を実際にレポートして描きだすドキュメンタリー。 毎度過激なレポート・ドキュメンタリーで知られるムーア監督が投入した新作。キューバへの半ば密入国までやらかして、本当かどうかは知らないが、当局に睨まれて公開自体が危ぶまれたとも言われている。そんなことで、とりあえず無事公開されたこと自体は評価したい。 まず、本作を観て一つ思うこと。 ムーア監督、老けたなあ。前作『華氏911』の時と比べ、肌はかさかさだし、疲れきっているように見える。なんだかいらない苦労を多数背負いこんでるんじゃないだろうか?医療制度に切り込む以前に自分自身が病気で倒れるんじゃなかろうか?…それもあって医療に目が向いたのかもしれないな。それに画面から怒りというものが漂ってこないのだよな。これまでのムーア監督作品って、良かれ悪かれ、彼の憎悪が滲み出してきていた気がしたのに、本作は憎悪よりは諦めの感情の方が高いように見える。 話そのものは現在アメリカが抱えている問題点を明らかにしていて、相変わらず切り口も過激だし、キューバ密入国なんて無理をやっているから、ドキュメンタリーでも物語性が高まっていている。そう言う意味ではこれまで以上にサービス精神は高く仕上げられてる。 実はこれまでアメリカが公的健康保険を持っていないということはまるで知らず、それがないとこんな悲惨なことが起こりえるとは思ってもなかった。途中まで「私が住んでいるのはまだ日本で良かった」などと考えていたものの、ヨーロッパの先進国諸国の実態を観るうちに、日本の保険制度の弱さも改めて考えさせられてしまう。特に近年国民健康保険が極端に上がり、これまでのような手厚い保護もできなくなっていると言う事例をいくつも見せられているので、観ていて心が痛い。これまでのムーア監督作品はアメリカ国内を舞台としていたので、対岸の火事程度の認識しかなかったが、現在の日本のことまで考えさせてくれた。と言うことで、今までの中では最も切実さがあったと思う。 ただ一方、ムーア監督の突撃インタビューはあくまで一つの事例の一面だけを扱っているだけというところもあって、作り方自体がとても恣意的なものを感じさせられる部分もあり。これまでもそうだったが、過激さを売り物にして一方的な観方を強いるテレビの延長上にある作品なので、どこか素直に観られないままっていうのも確かにあり。 保険問題はどの国も問題を抱えているのだから、一方的に外国はすばらしいで終わってしまうでは、やっぱり片手落ちなんじゃないかな?ほんのちょっとでいいから、外国の医療の問題点も語ってほしかったところもあり。 |
華氏911 2004 | |||||||||||||||||||||||||||
2004カンヌ国際映画祭パルム・ドール(ムーア) 2004NY批評家協会ドキュメンタリー賞 2004サンフランシスコ映画批評家協会ドキュメンタリー賞 2004ワシントンDC映画批評家協会ドキュメンタリー賞 2004シカゴ映画批評家協会ドキュメンタリー賞 2004ヨーロッパ映画インターナショナル賞(ムーア) 2004ゴールデン・ラズベリー最低主演男優賞(ブッシュ)、最低助演男優賞(ラムズフェルド国防長官)、最低助演女優賞(ブリトニー=スピアーズ、ライス大統領補佐官)、最低スクリーン・カップル賞(ブッシュ&ラムズフェルド、ブッシュ&“彼の”『Pet Goat』) 2004放送映画批評家協会ドキュメンタリー賞 2004セザール外国映画賞(ムーア) 2004英インディペンデント映画外国映画賞 2004ピーター・トラヴァースベスト 2004全米BOXOffice第18位 |
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2000年の大統領選挙で接戦の末当選し、アメリカ合衆国大統領となったジョージ・ブッシュ。彼が大統領選挙でどのような振る舞いに及んだか、そして連続爆破テロに至るまで、何をしていたか。連続爆破テロ後、いかにしてイラク攻撃に至ったかを様々なメディアやデータを元に描いた実話そのもののドキュメンタリー映画。 アメリカ本国では相当なヒットを飛ばしつつも、賛否両論を巻き起こし、話題に事欠かないムーア監督の最新作。特に一昨年公開された『ボウリング・フォー・コロンバイン』が大変面白い出来だったので、期待して、公開当日に観に行く。 確かに面白かったは面白かった。それは認めるし、興味深い点も多々あった。それも認める。 しかし、これは一体なんだ? …いや、なんだ?と言われれば、確かに映画には違いないのだが、ここまでストレートに悪意に満ちた…と言って悪ければ、ここまで憎悪に満ちた偏向した作品は初めてお目にかかった。ちょっと目が丸くなった。ストーリー性もなければオチもない。ただブッシュ大統領が2000年に当選した瞬間からイラク攻撃までの時間軸に沿って、自分の主張するデータだけを抜き取って、それをただ流しているだけ。ここまでやるか?って言うか、映画というメディアをここまで恣意的に用いた作品とは他に例を見ないのではなかろうか?実際、本作は映画の作り方をしてない。監督の政治的な主張のみが透けて見えるだけの作品だ。 当時の大統領選挙で大接戦となり、特にフロリダ州での投票で疑惑まで出たというブッシュ大統領当選のニュースをいささか苦々しい思いで私も見ていたが(当時もマイノリティ無視とか強引な票集めとか、色々言われていたものだ)、改めて出されると、本当に不正で大統領になったという思いにさせられたし、その後、続々と入ってきたニュースで、多分こいつは歴史上に残る無能な大統領として記憶されることになるだろうとは思っていたが、それが輪をかけてそのような思いにさせられた(まさか911テロに至るまで、40%以上の時間を休暇に使っていたとは思いもしなかった)。 ブッシュ大統領の価値観が変わったのは911テロにおいて。まさにこれはブッシュにとっては捲土重来の大チャンスとなっていたわけだ。それまでの無能ぶりから、国を救うヒーローに、そして国際法まで無視してのイラク攻撃へと向かわせる原動力となった。更に、これは彼と彼の家族が株主になっているテキサスのエネルギー産業にとって大変好都合だったと言う側面もあり。 確かに彼は父と共に、いやそれ以上に歴史に残る大統領になった。 その過程をこの映画では克明に追っていってる。 確かに何故イラクへの攻撃に至ったか、私なりに持っていた疑問はこの映画によって氷解した。ブッシュ大統領とビン・ラディン一族との癒着こそが色々な意味での悲劇をもたらしたというのは、大変分かりやすい説明で、たいへんうなずくことが出来た。 時折挿入される残酷な描写も含め、どれほど今のイラクが悲惨な状況にあるのかも、よく分かった。少なくとも、これを観たら、間違いなくブッシュ大統領を嫌いになれる。 しかし、これまではこのような描写はテレビ若しくは書籍で行われていたはずで、それを本当に映画にしてしまうと言うのはいかがなものなのだろうか? 私は一介の映画好きに過ぎないし、「だったら観なければいい」の一言で返されてしまうのは確かなのだが、なんかこう、映画というものを馬鹿にされたような気にさせられたのも確かな話だ。 だからこれは私にとって、たいへんに疑問に残る作品でもある。 …こういう事を言う奴がいるからこそ、本作は賛否両論の激しいものとなり、売れるんだろう。色々言っているが、是非広く観て欲しい作品であるのも事実だ。ムーア監督自身、このような反応を見越して…と言うより、このような反応を欲しがってるんじゃ無かろうか?私のような奴が「こんなの映画じゃねえ!」と主張すればするほど、本作は特異な位置づけがされ続け、結果として観る人間が増えていく。実はそれこそがムーア監督の狙っていたことなのかもしれない。監督が欲するのは、映画としての完成度ではなく、ニュース性に他ならないのだから。 ただ、これはこの作品だけにして欲しい。以降このような形で映画が作られないことを願おう。 |
ボウリング・フォー・コロンバイン 2002 | |||||||||||||||||||||||||||
2002米アカデミードキュメンタリー長編賞 2002カンヌ国際映画祭55年記念特別賞(ムーア)・パルム・ドール 2002放送映画批評家協会ドキュメンタリー賞 2002インディペンデント映画ドキュメンタリー賞 2002セザール外国映画賞 2002TIMEベスト第7位 2002オンライン批評家協会ドキュメンタリー賞 |
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全米に大きな衝撃を与えたコロンバイン高校銃乱射事件を足がかりとし、銃社会アメリカの実態に迫るドキュメンタリー映画。 1999年にムーア監督の出身地の近く、コロンバイン高校で起こった少年二人による銃乱射事件を主軸として、銃社会アメリカを問い直す作品。ちなみにボウリングというのは、コロンバインで銃を乱射した少年二人はその直前まで近くのボーリング場でゲームをしていたからとか… ドキュメンタリー映画なのだが、作りが非常に凝っているし、ドラマとしての盛り上げもしっかりあるので、かなり面白い。本来目を背けてはならない重要な所をしっかり捉えているし、インタビュアーを務める監督自身の言葉にユーモアがあって、飽きさせない。アカデミー好きのする題材だろう。アカデミーが目の敵にするようなマット=ストーン(とトレイ=パーカー)による『サウスパーク』風のアニメが挿入されているのは監督の確信犯的な演出だと思う。マリリン=マンソン(この人の歌は正直嫌いだが)やチャールトン・ヘストン(言うまでもなく名優。しかし、彼は全米ライフル協会の会長でもある)とのインタビューなど内容も盛りだくさん。 大きな問題を見てみると、世界中で起こっている大きな紛争の大部分(否、全てがと言っても良い)はアメリカという国が引き起こしているものだ。先日進攻が終わったイラクのフセインに対しても、イラン・イラク戦争時にイランの牽制のために多量の武器供与を行ったのだし(そのため湾岸戦争時で自分たちが与えた武器で自分たちが攻撃されるという皮肉な結果を生んだが)、ビン・ラディンに至っては、中東諸国の反共のため、テロリストとして養成したと言う経緯がある。『ブラックホーク・ダウン』(2001)の舞台ソマリアとか、挙げる気になればいくらでも出てくるし、『ロード・オブ・ウォー』(2005)では端的に主人公にそれを語らせてもいる。世界平和を守ると豪語しているアメリカは世界に次々に戦争を起こしている(大局的に見るなら、アメリカが関与してなければ、もっと増えていると言う考え方もあるんだけど) 一方国内問題に話が移ると、正直、怖いと思った。 統計を取ったところ、世界で突出してアメリカという国が銃による犯罪が多いと言うこともあるけど(世界的に見て、他の国と較べ数十倍〜百倍も銃による殺人が多いとのこと)、一番薄らざむく感じたのは、マスコミというのは、何事も出来事を派手に、危機感を煽るように報道すると言うこと。それによって精神的均衡を失わせることも充分あり得るんだな。 誤解して欲しくないのだが、これは映画の中で繰り返し流していたテレビニュースの事だけじゃない。この映画そのものも、全く逆のベクトルで危機感をあおり立ててるのは違いないんだから。 ニュースやドキュメンタリーというのも、作り手によってどのようにも作られ得るもんなんだな。良い勉強になったよ。 ちょっと気になったことが一つだけあるので、言わせて欲しい。 劇中「(アメリカは)ドイツや日本ほど(戦争で)人殺しをしてない」と言った所があったけど、日本がそれほど戦争で人殺しをしたわけではない、と思うんだが…(中国では日本と戦争していた時より、国共戦争の方が死んだ人が多かったはずだ) 尚、これはドキュメンタリーだが、フィクションではあるが、コロンバイン高校での銃乱射事件は『エレファント』(2003)でも取り上げられている。こちらも名作なので、是非一見をお薦めしたい。 |
ザ・ビッグ・ワン 1997 | |||||||||||||||||||||||||||
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新しい本を書き、講演会のために全国の書店を回っている監督が、その合間に様々な町の企業や人々を訪ねて突撃取材をした内容をドキュメンタリーとして仕上げた作品。 前作『ロジャー&ミー』が監督の故郷ミシガン州フリントでの突撃取材が元となっているが、そのヒットを受け、そのままそれをアメリカ全土でやってみよう!というのが本企画だと思われる。やってることは基本的に前作と変わりはしない。ただし不況のただ中で失業者が溢れるフリントを舞台に、一貫性があった前作とは異なり、この作品はいろんな都市を回ってる分、やや話が分散してしまった感があり。これは映画にするよりもテレビシリーズ化して10話くらいでやっとくべき作品だったんだろうな。 やってることは、自分の言いたいことを言って、後は視聴者の判断に任せる。って作りなので、それが鼻につくかつかないかで判断は分かれるだろう。私なんぞは単純だから、これだけでも結構楽しめた。これがずっと続くと鼻につくようになっていく訳だが、まだこの時は尊大さよりも真摯さの方が見えていた。 あくまで本作は問題提起という観点で観るべき作品だろう。その中で監督の主張を楽しんで観られればいい。 |
ロジャー&ミー 1989 | |||||||||||||||||||||||||||
1989全米批評家協会ドキュメンタリー賞 1989NY批評家協会ドキュメンタリー賞 1989LA批評家協会ドキュメンタリー賞 |
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撮影にケヴィン・ラファティ。 |