狼の紋章 1973 |
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石森史郎
福田純
松本正志(脚)
志垣太郎
安芸晶子
松田優作
伊藤敏孝
加藤小代子
本田みち子
沢井正延
今西正男
林孝一
富田浩太郎
西尾徳
河村弘二
水城蘭子
黒沢年男 |
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★★ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
2 |
3 |
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2 |
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横浜にある私立高校博愛学園に犬神明(志垣太郎)という少年が転校してきた。カリスマ的な孤高さを持つ明に、学園中の生徒も教師も彼の挙動を見つめるだけだったが、学園番長の羽黒獰(松田優作)は、そんな明を煙たく思い、暴力で屈服させようとする。無抵抗で暴力を受け続けながら決して屈しない明に、羽黒はますます苛立ちを募らせていった。そして羽黒の攻撃はついに、明と何かと縁のある女教師青鹿晶子(安芸晶子)に向かっていく…
本作は日本映画史における一種の珍品で、松田優作の映画デビュー作としてのみ語られる傾向のある作品。噂ばかりは聞いていながらなかなか観ることは出来なかったが、先日ようやく拝見することが出来た。
確かに珍品と言えば珍品。何事も中途半端だし、物語のつなぎも悪い。特撮に至っては最早失笑レベル。というか、あまりに酷すぎるため、本作を特撮と言ってしまって良いのか?と言う根本的な疑問さえ感じられる。
さすがにこれを一本の映画として観るには痛々しすぎるのだが、それだけで終わらせて良いのか?と言う気もしている。
実際本作をじっくり観てみると、様々な挑戦部分が感じられもする。カットバックの多用、光と闇の対比、誇張されたアングル、剥き出しの暴力描写、等々。これらは監督がこの作品に叩きつけようとした挑戦と受け取ることが出来よう。
折しもこの年代はATG流行りの時代であり、そう言った映画の洗礼を受けた監督が真剣に「映画って何だろう?」と考え抜いて作ったのが本作ではなかったか?これは監督が考える映画そのものであり、そして既存の映画界に対する挑戦状でもあった。そう考えたら、本作の評価も少し変わってくるのではないだろうか?少なくとも「俺の考える映画!」と言う思いで作られた作品というのは、それだけで観る価値があるというものだ。
ただ、惜しむらくは、それらの挑戦は全て松本監督の頭の中だけで形作られたものであり、実際の映画作りの技量に欠けていたと言う点。簡単に言えば経験不足。結果として、学生が作った自主製作の映画っぽくなってしまった。もう少し監督が経験積んだ上で作ってくれていれば…そこが惜しい。
それでも流石松田優作の怪演ぶりはたいしたもの。到底高校生には見えない顔つきではあるが、その存在感はデビューにして突き抜けた感あり。原作にあった、どこか脆い所があるいじめっ子ではなく、主人公の存在すら食ってしまうほどのロボット的な超人ぶりを見せつけてくれていた。ここまでくるともはや化け物。 |