小樽の高校生シュウジ(窪塚俊介)は、同級生のちせ(前田亜季)とつきあいをはじめた。ぎこちないながらも、徐々に心が近づいていく二人。だがそんな小樽を突然襲う爆撃機の群れ。彼らが知らぬ内、日本は戦争状態になっていたのだ。そんなシュウジを助けたのは、背中から鋼鉄の翼を生やして舞い降りたちせだった。彼女は政府によって選ばれ、最終兵器へと変えられてしまったのだった…
いわゆる“セカイ系”と呼ばれる一連のメディアの中、その代表作の一本に数えられる原作を完全映画化…というのが売りだったと思うのだが、これはもう最初から失敗が約束されてたような話だった。
そもそもかつて“セカイ系”と呼ばれる一連の作品は、世界に何が起こっているのか、主人公は徹底して情報が遮断されており、その世界と関わりを持つ人物との交流が主軸となっていた。つまり主人公の物語は「世界なんかどうでも良い。彼女と一緒にいれば良いんだ」と言う姿勢に貫かれていながら、その彼女を通して自分のあずかり知らぬ間に自分自身が世界と関わりを強制させられるという物語となる。そのため物語のバランスがとても微妙なのだが、特にこの作品に関してはマンガだからこそ成り立つ物語だった。これを映像化すると最初から陳腐化するのは分かりきっていたことなのに、単に「流行っているから」というだけの理由で作ってしまったから。
何というか、最早映画として成り立ってすらいないというレベル。世界観がはっきりしてないため、観てると落ち着かない気分になるのは織り込み済みとはいえ、物語そのものがとてもきつい。恥ずかしくて背中が痒くなるレベル。
しかもキャラが凄まじくはまってない。前田亜季はそれなりのキャリアを持った女優ではあるものの、その立ち居振る舞いがSFに合わないことと、そもそも原作のちせは高校生にしては幼すぎる容姿という設定なのに、もはや歳がいきすぎてるってのもなんとも。更に凛々しさを強調したその姿は原作の片鱗すら無し。
『デビルマン』とまではいかないまでも、ここまでくると呆れてしまう。ま、地雷が分かってた分、劇場で観ないで良かったというくらいか? |