02'10'07 |
すべての道はローマに通ず ローマ人の物語10
ローマの繁栄とは、実はハード、ソフト両面のインフラにこそあった、と看破した著者がそのインフラについて一冊を用いて描いた作品。
歴史作家では何人か好きな人がいるけど、日本人だと女性で良い歴史の本を書く人が多い。角田房子、犬飼道子、そしてこの著者塩野七生…その中でも著者の作品はとにかく面白い。割合すんなりと読める割りに非常に内容豊富で、読み応えもある。更に繰り返し読んでいても飽きない。これは多分著者がある意味でロマンチストだからなのではないかと思う。冷静に過去を見つめつつ、過去の中にいる自分。そしてそこから何が見えるのか。その事に想いを馳せるからこそ、こういう読んでいて楽しい作品が描けるのではなかろうか?かなりの数読んでいるが、その中でもデビュー作の「チェーザレ・ボルジア」が好きだったのだが、この「ローマ人の物語」のシリーズを読むと、ますます文章はこなれていて、本当に読んでいて楽しいし、本シリーズのお陰で多くの古典良書にも巡り会えた。私にとっては大変重要なシリーズでもある。
それでいつもの展開だと思って読み始めたら、なんと一冊全部インフラのことだった。専門書でもないのにこんなのを書いたのは著者が最初じゃなかろうか?いつもの歴史も良いけど(本筋は現在ローマの五賢帝時代)、こう言うのもやっぱりロマンだよな。ローマにも行ってみたいなあ。 |
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03'04'15 |
終わりの始まり ローマ人の物語11
五賢帝による統治も末期。マルクス・アウレリウス帝の時代に始まったゲルマン人の侵入に端を発し、国内に混乱が始まった。息子コモドゥス帝の短い統治期間を経、再び次々と皇帝が達治台へと向かうローマを描く。
栄華の時代を経、再び混乱の時代に入っていくローマの姿。丁度この時代はリドリー=スコット監督による映画『グラディエーター』の時代の話だ。私がかなり酷評したこの映画も、著者は割合好意的に受け止めているところがなかなか興味深い。ところで後残り4巻ほどになってるはずだが、巻数から逆算するとぎりぎりで東西ローマの分裂の所までか?(東ローマの滅亡は既に著者は他の話で書いてるし)
いずれにせよ、目が離せない作品であることは確か。 |
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04'08'09 |
迷走する帝国 ローマ人の物語12
3世紀に入り、ローマ帝国は内憂外患の時を迎えた。新興国ササン朝ペルシアとゴート人の来襲。そして内乱により、ガリア帝国とパルミラ王国がローマ内で分裂。その中で、次々と現れる皇帝達。崩壊をつなぎ止めていた彼らの活躍を描く。
この時代は本当に悲惨なもんで、読んでいてもかなり寂しくなる。日の出の勢いはどこへやら。って感じ。しかし、その中でも賢帝と呼んで良い皇帝も現れ、それがなんとかローマという国を作っていったのだ。としみじみ感じさせられる。歴史とは、崩壊をも合わせて考える必要があるんだな。
それにしてもかかったな。読み始め、読み直しを含めると、確か4ヶ月くらい読んでたよ。 |
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05'10'18 |
最後の努力 ローマ人の物語13
3世紀末に皇帝となったディオクレティアヌスは帝国を四分割。それぞれに皇帝を配して異民族の襲来に備えた。しかし強権とカリスマ性を持ったディオクレティアヌスの治世が終わり、代替わりすると、四分割された帝国それぞれが互いを攻撃する内乱へと発展していった。その中で再び帝国を統一したコンスタンティヌス帝の誕生までを描く。
ヨーロッパ中世を学ぶならば、まずコンスタンティヌスを学ぶ必要がある。いわば、この皇帝の誕生からヨーロッパは中世へと突入していく訳だ。当然元のローマ帝国とは全く似ても似つかぬ形として。
本作は古いローマ帝国の崩壊と、新しいローマ帝国の始まりまでを描いた作品と見て良し。 |
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06'07'20 |
ローマ人の物語14 キリストの勝利
コンスタンティヌス帝によりローマは一度一つとなったが、ペルシアのシャプール2世、ゲルマン人の侵入などに対処するため、その後の後継者達によって又しても分裂していった。そしてテオドシウス帝による再統合までの歴史と、その中でキリスト教がいかにしてローマ国教として確立していったかを描く。
壮大なローマ帝国史を描く本作もいよいよ残り一冊となった。まさか本当にここまで来るとは私自身思ってなかったけど、相変わらず面白い。実は同時期に「ローマ帝国衰亡史」も読んでいるけど、やはり二次資料が多いし、日本人が書いていると言うこともあって、こちらの方がやっぱり読みやすくて良い。さて、最終巻は一体いつになるのか? |
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