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ダン・シモンズ

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ハイペリオン

ハイペリオン

03'01'21 ハイペリオン
 全銀河にウェブが張り巡らされた未来。辺境の惑星ハイペリオンには「時の墓標」と呼ばれる不思議な空間があり、そこに棲息すると言われている時を操る怪物シュライクを信奉する者達の巡礼の地となっていた。だが銀河では人類とアウスターとの戦いが続いており、ウェブからは外れたハイペリオンは徐々に顧みられなくなっていった。そんな時、6人の巡礼者が選ばれる。それぞれがかつてハイペリオンと浅からぬ関係を持ち、再び呼び寄せられるようにやって来ていたのだ。6人の話を主軸とした旅の話。

 正直、私は著者はホラー作家として見ていなかった。それで一時期本作がえらく受けた時も結構醒めた目で見ていたし、本書を購入したのも文庫になってからだった。しかも文庫の上巻を読み終えてからしばらく放っておいた。要するに前半部分だけだと大して面白いとは思えなかった。
 ところが、下巻を読み始めた途端、止まらなくなった。仕事をしつつも2日で下巻を一気読み。それで上巻も又飛ばしつつ読み直してしまったほど。
 これは確かに凄い作品だ。6人の話がそれぞれ全く違った文体で書かれていて、しかもそれぞれが定式となったSF小説の体裁を取っている。50〜60年代の古き良きスペースオペラ時代、ハードSF流行りの70年代。そしてサイバーパンクに代表される80年代全ての文体がここには詰まっている。著者の博識ぶりには頭が下がるし、よくぞここまでコピーしたものだと感心する事しきり。言ってしまえば、20世紀SF小説の総まとめを10年前にやってしまったと言う感じ。こんなのが出てしまったから90年代のSFが駄目になってしまったんじゃないかと勘ぐってしまいたくなる。
 オチも素晴らしい。ここまで読ませておいて、これかよ!続きを読まねばならないじゃないか!
<A> <楽>
03'03'04 ハイペリオンの没落
 巡礼者達が見守る中、ついにハイペリオンの「時間の墓標」が開いた。かつてハイペリオンと何らかの関係を持っていた巡礼者達は、本人も自覚しないまま、自分たちが為すべき役割を果たしていく。一方ウェブ内ではブローン=レイミアの恋人のコピー、セヴァーンが彼らの行動を夢で見、それを報告していくのだが…

 前半部分はさほどではないけど、やはり後半部分になってからの盛り上がりが凄い。著者の面白いところは、海外SFではさらりと流す部分が多いアクション部分が非常に臨場感を持って描かれているというところにあると思う。ストーリーも読ませるし、謎解きもしっかりした上にそう言う部分も巧い。良い作家だ。
 まるでパズルのように登場人物がそれぞれのパーツに合った部分に収まる過程が見事。
 しかし、本作は本当に悔しい思いをした。推理小説では初歩の初歩のトリックが仕掛けられていて、伏線もしっかり張ってあったのに、それに気付かなかったとは。当然予測の範囲に入ってるべきだったのに…返す返すも悔しい
<A> <楽>
03'08'19 エンディミオン
 ウェブが封鎖され3世紀が経過した。かつてウェブに存在した人間の世界は、聖十字架を用いて新しいカトリック“パクス”の与える不老不死の技術のお陰で再建していた。そんな状況の中で惑星ハイペリオンに生を受けたロール・エンディミオン。彼は処刑寸前の所を500年以上も生き続ける詩人サイリーナスによって命を助けられ、一つの願いを託される。それはやがて“時の墓標”から現れるはずのブローン・レイミアの娘アイアーネーを助け、共に失われたオールド・アースを探して欲しいというものだった。アンドロイドのA・ベティックという仲間も加え、旅を始める3人。だが、アイアーネーの身柄を欲するパクスはデ・ソヤ神父大佐という人物に特命を与え、彼らを追跡し始めた。

 「ハイペリオン」4部作の第3部目。新展開が用意され、読み応えは充分。内容も面白い。ただ、やはり本作は第4部「エンディミオンの覚醒」を前提にした物語であり、どこか中途半端な部分を併せ持っていたが。
 「ハイペリオン」及び「ハイペリオンの没落」ではいくつかの設定上説明不足なものがあったが、その中で大きなものは聖十字架の存在意義だった。それが本作の設定にはしっかり食い込んでおり、設定マニアとしてはほっと一安心。物語の都合上まだまだ解けてない謎はいくつもあるが、それを「覚醒」でどのように解いてくれるのか、かなり楽しみではある。
<A> <楽>
<A>
03'09'06 エンディミオンの覚醒
 オールド・アースで4年間を過ごしたロール、アイネイアー、A・ベティックの3人。小さな共同体の、穏やかな生活に満足していた3人だったが、やはり旅立ちの時が来た。しかもこれまでいつも三人一緒だったのに、アイネイアーはロールに、今回は別々に旅立たねばならない事を告げる。数年後の再会を約し一人旅立つロールだったか、数年後、まさしく女性となって再開したアイネイアーは、神秘の度合いを深めていた。ロールにとっても、そして宇宙全体にとっても…

 「ハイペリオン」4部作の最終章。これまで設定上説明してこなかったもの、あるいは設定上の矛盾の多くをこれでちゃんと説明してくれた。多分著者自身こんな展開になるとは「ハイペリオン」の時点では思ってもみなかったんじゃないかな?例えば「虚空界」と「コア」の関係とか、シュライクの正体とか、最初から考えてたようには思えない。しかもラストがアレだしなあ…
 ところで本作の物語形式を考えると、哲学や宗教とSFを結びつける形式と言い、本作専用の専門用語の乱用と言い…ストーリー自体はなんだか70年代、しかも前半のSFにそっくりなんだよな。語り部としての能力は高いから、現代のものとして楽しめるんだけど、色々付属したものを取り払ってしまうと形式そのものは結構古めかしいものだったりする。
 別段それが悪い訳じゃない。だって私はこの時代のSFを一番よく読んでるんだし、かなり好きな方向性だ。


 それと、ここは完全にネタばれになってしまうが、オチ部分を読んだ時、「ジョウント」と呟いたのは決して私だけでないと思いたい…(笑)
<A> <楽>
<A>
 

 

  

その他

09'08'04 エデンの炎 上
 大富豪のパイロン・トランボがハワイに持つ巨大ホテルマウナペレ・リゾート。トランボはこれを日本人に高値で売りつけようとしていたが、半年前からここでは行方不明者が続発していた。丁度そんな時、ホバーリン大学教授のエレノア・ベリーは、活性化している火山を見るためハワイへとやってきた。だが、彼女の到着と時と同じくして更なる異変が…

 著者による超常的な冒険小説ということになるが、どっちかというとホラー性が高い作品。上巻の本巻は今のところ種まきと言ったところ。
<A> <楽>
09'08'17 エデンの炎 下
 マウナロア火山が火を噴き、ハワイには次々と怪異が起こり続けていた。そしてその出来事はエレノアの大伯母の手記と全く同じで、実はハワイの神々同士の戦いに、人間が必要とされていたのだ。エレノア、エレノアと友となった女傑のコーディ、ホテル王のトランボが課せられた運命とは…

 ホラーと思ったら、伝奇性の高いストレートな冒険もので、読みやすい一方、ストレート過ぎて読み応えはなし。もう少しひねったものを期待していたのだが…
<A> <楽>
02'12'26 夜の子供たち
 免疫学の女医ケイトはチャウシェスク政権が倒れた直後のルーマニアで難病に冒された一人の赤ん坊を養子にし、アメリカへ連れ帰った。ジョシュアと名付けたその子供は複数のレトロウィルスに冒されているにも拘わらず、輸血をするだけでその症状が軽減する。この子の血清を研究することにより、HIV治療への道が拓かれると直感したケイトは早速研究を始めるが…

 「ハイペリオン」を途中で放り出してるって言うのに、何故か同じ著者の作品を読み始めてしまった。元々著者の作品と出会ったのが「カーリーの歌」というホラー小説だったから、むしろ著者はSFよりホラー作家として見てしまう傾向があるな。
 本作は吸血鬼をレトロウィルス(普通ウィルスはDNA→RNAへの転移のみで、元のDNAに影響を与える事はないが、レトロウィルスと呼ばれる特殊なRNAのみがDNAそのものに干渉できる。HIV、つまりエイズがその例)と関連づけて考察するという、伝承と科学をまとめた作品で、観点がとても面白いのだが、ストーリーそのものは普通の冒険活劇になってしまったのがちょっと残念。それでも当時のルーマニアの政情や免疫学など、色々な知識が詰まった作品なので、設定好きな人間には充分楽しめる内容となっている。後、勿論吸血鬼ものの小説が好きな人にも充分お勧めできる。
<A> <楽>