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紅茶の話9

紅茶の話 その49  紅茶がコーヒーに勝るものと考えると、まあ色々あるだろうが、その種類の豊富さが一つにあるだろう。
 実際紅茶には本当にたくさんの種類がある。私が良く行く紅茶屋では300種類もあるとあるが、実際には数千種類はあると思われる。産地の数は限られているのになんでそんなに種類があるのかと言うと、その大部分はフレーバードティと言うものだから(日本では主にフレーバーティと呼ばれることが多い)。
フレーバードティ。日本語では着香茶(ちゃっこうちゃ)と書くが、これは乾燥仕上げした茶葉に香りを添加したもの。
 これには大きく分けて
3種類ある。
 一つは茶葉に香料を吹き付けたもので、正確に言うなら、これが
フレーバードティと呼ばれる。
 これで代表的なのものはアールグレイ。これはイタリア産の柑橘類であるベルガモットで作られる香油を乾燥させた茶葉に噴霧したもの。主に中国産の紅茶が用いられるが、ダージリンやスリランカなど他の茶葉で作られたものもある。他に有名なものとしては紅茶ではないが、ジャスミン茶もフレーバードティとして有名。
 二つ目は茶葉に花や果実、スパイスなどを混ぜ込んだもので、これは細かくはフレーバードティとは区別され、
センテッドティと呼ばれている。
 このセンテッドティこそが紅茶の多様性を表していると言っても良い。乾燥した茶葉は強い吸着性を持つことを利用し、様々な香りをそういう形で付け足す訳である。
 これは本当に色々なものがある。私のいきつけの紅茶屋では200種類もの種類を誇るが、その大部分はセンテッドティである。実際センテッドティはいくらでもできる(それが美味しいかどうかは別問題だが)。果実系だとアップルティやストロベリーティ、ピーチ、ライチなど。花だとローズヒッブティを始め、ラベンダーなどがあり、日本では桜の花びらを使ったものもある。又、ハーブティもハーブのみを使ったものだけではなく、茶葉に混ぜるものもあり、これもセンテッドティとして飲まれる事も多い。
 最近になって日本でもよく飲まれるようになったチャイも、本式には普通の茶葉を煮出し、いくつかのスパイスを混ぜ合わせるが、今ではスパイス入りのティバックも結構売られており、これもセンテッドティの一種と言って良かろう。
 上記の二種類のフレーバードティは一応個人でも作れるものの、基本的にはそのまま売られているものを購入することになるが、もっと定義の範囲を広げるならば、もっと簡単にこれらでも出来る。
 それが三つめになるが、これは紅茶を普通に淹れ、そこに果物や香りの元を入れる方法。ありていに言ってしまえば、我々が割合普通に飲んでいるレモンティがその代表。できあがった紅茶にレモンスライスを入れるだけでレモンフレーバードティの出来上がりだ。シナモンティなどもその一つのヴァリエーションだし、オレンジの輪切りを紅茶に浮かべるとシャリマティになる。

 我々が普通に飲めるフレーバードティは、このみっつがあるが、結構ややこしいのがレモンティだったりする。実はレモン果汁を茶葉に噴霧した、文字通りのフレーバードティもあるし、乾燥させたレモンピールを茶葉に混ぜ込んだセンテッドティもある。
一口にレモンティが好き。と言う場合もちょっとだけ注意して欲しい

 さて、蘊蓄はともかく、家庭で作ることが出来る簡単なアップルティのレシピなどを公開しておこう(生リンゴを用いる場合)。
 1.リンゴを皮付きのまま四つ切りにし、それを銀杏切りにする。
 2.一人分あたり2〜3切れのリンゴを茶葉を入れたポットに入れ、普通にお湯を入れて紅茶を作る。
 3.カップにリンゴ1〜2切れを入れ、上から紅茶を注ぐ。
これだけ。
 スリランカ茶を用いるのが一番良く、心持ち茶葉を少なくするのが良い。ほのかな甘さを楽しむならストレートで。ふくやかさを味わうためならミルクティで(砂糖は入れない方が良い)。それと、リンゴは是非紅玉を使って欲しい。
 これは応用が利くので、リンゴだけじゃなく、イチゴやマスカット、ライチと言った果実でも出来る…やったこと無いけど。

 要するに、紅茶は色々と応用が利く。と言うことだけ覚えてもらえれば。
アップルティー

ストロベリーティ 100g(紅茶のフレーバーティ)
ストロベリー

ウィッタード ピーチティー125g
ピーチ

LYCHEE TEAライチティー
ライチ

HerbTeaローズヒップティー(125g)
ローズヒップ

ラベンダーティ(100g)『紅茶のフレーバーティー』
ラベンダー

桜紅茶(50g)と、キャラメル・チャイ(70g)♪
桜&
キャラメルチャイ
紅茶の話 その50  リーフティを買おうとした時、同じ産地の紅茶のはずなのに、紅茶の名前の後に妙なアルファベットがついた紅茶を見たことが無いだろうか?それで値段も随分違っているだろう。
 そもそもこれはもっと早くやっておくべきだったがもしれない。随分遅くなったが、等級についてちょっとお話ししておこう。
 
SOUCHONG(スーション):枝先から数え、5番目の葉を用いた茶葉。一番葉が大きく、主にブロークンタイプとして用いられ、基本的にこれは表記されることは少ない。
 
PS(PEKOE SOUCHONG ペコ・スーション):枝先から4番目の葉を用いた茶葉。スーションと較べると茶葉は小ぶりだが、それでも葉としてはかなり大きい。
 
P(PEKOE ペコ):枝先から3番目の葉。標準的な紅茶がこれ。
 
OP(ORANGE PEKOE オレンジ・ペコ):枝先から2番目の小さな葉。
 
FOP(FROWERY ORANGE PEKOE フラワリー・オレンジ・ペコ):枝先の新芽。貴重な高級品。
 
TGFOP(TIPPY GOLDEN FROWERY ORANGE PEKOE ティッピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコ):金色の新芽(ゴールデン・ティップス)が含まれるFOP。この多さが最高級紅茶の等級を決める(ゴールデン・ティップスについてはそのうちに書こうと思ってる)。
 
FTGFOP(FINEST TIPPY GOLDEN FROWERY ORANGE PEKOE ファイネスト・ティッピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコ):TGFOPの中でもゴールデン・ティップスをより多く含む上級品。
 
SFTGFOP(SPECIAL FINEST TIPPY GOLDEN FROWERY ORANGE PEKOE スペシャル・ファイネスト・ティッピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコ):FTGFOPの中でも特にゴールデン・ティップスを多量に含む最高級品。茶葉の色はほぼ金色。
 
TSFOP(TIPPY SILVER FROWERY ORANGE PEKOE ティッピー・シルバー・フラワリー・オレンジ・ペコ):SFTGFOPを越える本当の最高級品。シルバー・ティップスと呼ばれる茶葉のみを使った茶葉。ただ、これは生産されること自体がほとんどないため、日本で探すのは苦労すると思う。私も話に聞くだけ。
 
BPS(BROKEN PEKOE SOUCHONG):ブロークンタイプのペコ・スーション。
 
BP(BROKEN PEKOE):ブロークンタイプのペコ。
 
BOP(BROKEN ORANGE PEKOE):ブロークンタイプのオレンジ・ペコ。
 
BOPF(BROKEN ORANGE PEKOE FANNING);BOPを更に細かく砕いたもの。
 
GBOP(GOLDEN BROKEN ORANGE PEKOE):ゴールデン・ティップスを含むBOP。
 
FBOP(FROWERY BROKEN ORANGE PEKOE):ブロークンタイプのFOP。
 
TGFBOP(TIPPY GOLDEN FINEST TIPPY GOLDEN FROWERY ORANGE PEKOE):ブロークンタイプのFTGFOP。ブロークンタイプの最上級品。
 
CTC(CRUSH TEAR and CURL):茶葉を潰して丸めたお茶。

 ご参考までに。
ダージリン紅茶FOP 50g
FOP

ダージリンTGFOP 100g缶入り
TGFOP

ダージリン紅茶サーボ茶園DJ28 FTGFOP1(TippyCL)(50g)
FTGFOP

ダージリン紅茶プッタボン茶園DJ54 SFTGFOP1(50g)
紅茶の話 その51 インド産紅茶
 紅茶の産地というのは世界的に結構多いのだが、その中でも特に有名な場所は三カ所ある。一つはスリランカ。旧名セイロンで、ここの紅茶の生産量は世界最大を誇る。もう一つは中国。中国の場合、紅茶はさほどではないにせよ、何せ茶の発祥の地。とにかく種類も多く、その中での紅茶のファンもいる(私がそうだ)。スリランカに関しては又後でやるつもりだが、今日はもう一つの産地、インドについて少々話してみたい。
 インドのお茶といえば、真っ先に思い浮かべるのが
ダージリン。特にここのファーストフラッシュは紅茶の最高級で、私がいつも飲んでる紅茶の3〜4倍の値段がする(ちなみに私は安いセカンドフラッシュしか飲んだことがない…それでもキーマンの倍くらいする)。ここはヒマラヤ山脈の麓にある茶畑で、ここの特徴は高度にある。その37ですでに書いたとおり、紅茶の産地は標高が高い方が良いとされるため、ここは紅茶には理想的な栽培場所である。尤も、ここでの紅茶の生産の歴史は結構浅く、19世紀になってからである。イギリスの開拓者がここに中国種の茶を植えたのが始まりとなる。ダージリン特有の渋みと、マスカットにも似た鮮烈な香りが特徴。ここの紅茶は是非ストレートで飲んで欲しいが、ダージリン茶のミルクティも結構味わいは深い。この紅茶を淹れる時は、よく時間に注意しないと、すぐに苦みが強くなるので、おいしいダージリンを淹れるにはそれなりの努力が必要。私もほんの一時期凝っていたが、何せ高すぎる上に、おいしく淹れる成功率が異様に低いため、今はほとんど飲んでない(なんせ500グラムくらいのお茶を使って、本当においしかったのは2回くらいしかない)。しかし、本当においしく淹れられた時は、飲むのが勿体ないくらいの甘さと香りが楽しめる。確かに最高の紅茶である。
 インド=ダージリンという頭があるが、実はインドにはまだまだ多くの産地がある。
 一つは
アッサム。インドの東にある平野で栽培されている。同じインド茶でありながら、ダージリンとは全く違った味わいと香りを持つ紅茶。これには理由があり、このアッサムの紅茶は中国種ではないのだ。このアッサムの地に自生していた茶樹で、これはイギリス人によって発見され、以降その茶樹をベースにここでも栽培が始まった。茶葉の大きさは中国産のものより大きく、その分少々大味であり、低地で作られているためか、茶の味は少々癖が強く、香りもさほど特徴があるわけでない。だからむしろミルクティ用に用いられることが多い。チャイとして使用される事も多い。値段もかなりお手軽なので、一度この茶葉を使ってチャイを作ってみると良い。
 そしてもう一つ有名なのが南インドにある
ニルギリ。なんでもここの茶畑は自然風味いっぱいで、茶以外にもユーカリやミントなども同時に栽培されているとのこと。そういうわけでもないと思うが、特有の風味が楽しめる。値段は結構ばらつきがあるが、飲むなら高いのを。風味に驚かされる。
 ほかにもいくつかインドには産地はあるが、とりあえず手に入りやすいのだとこのくらいだろう(というか、これ以外は私も飲んでないので、語れない)。名前だけ挙げておくと、
シッキムとかカングラとか言うのがある。
ダージリン紅茶・ファーストフラッシュ(50g)
ダージリン

アッサム紅茶・ソカイエティング茶園SFTGFOP1(50g)
アッサム

ニルギリ 50gX2袋
ニルギリ

シッキム紅茶 テミ50g
シッキム
紅茶の話 その52  私が毎日飲んでるのは、これまで書いてきた通り、キーマンなのだが、好きなだけに機会がある度に新しいのを買ってる。一種の趣味とも言える。
 それで最近にになって二種類のキーマンを手に入れたので早速飲んでみた。
 一つは
野性キームンという奴。愛用している紅茶専門店に置いてあったので、早速これを購入。“野性”と銘打っているだけあって、茶葉はかなり固めで、フルリーフなのでかなり大きめなのが特徴。茶葉の香りはあんまりしない。
 これを最初普通私がいつも飲んでいる通りの抽出時間で蒸らしてみたが、これは失敗。茶葉が固かったため、抽出が遅く、とても薄味になってしまった。
 それで二回目からはかなり時間を長目にとって抽出してみるが、そうすると、確かにキーマンの味がたっぷりするお茶が得られた。ただ、野性というからゴツゴツした味になるかと思ったら、そうでもない。結構すっきりした味わいだった。値段は結構高かったが、50グラム分でも飲めばそれで充分か。と言うレベル。
 それでもう一つ手に入れたのはキーマンの最高級品と銘打ったもの。これはネットで購入したが、30グラムで2000円近くした(私がいつも愛飲してるのは100グラム1300円)。茶葉は極めて細く、ハーフリーフ程度の大きさなので、おそらくは茶葉を摘む際、先端(フラワリー・オレンジ・ペコ)のみで作られているんだろう。ゴールデン・ティップスも結構入ってる。香りもかなり良いが、なんかキーマン以外の香りがほのかに。これが特徴なのか、混ぜものをしてるのかはこの時点では分からず。
 それで一服してみると驚くほどの繊細な…というのを期待していた割には、普通のキーマンだった。何度か飲んでみて、抽出時間を結構色々取ってみたが、かなり長く抽出しても、渋みがあまり出ないと言う程度か。それになんかこれを飲んでると、キーマン以外の味がしてくるんだよね。やっぱり特徴じゃなくてどうやら混ぜものしてるようだ。その部分の味がどうも気に入らず。
紅茶の話 その53
 そろそろ夏が近付いてくると、時に紅茶もホットではなくアイスで欲しくなることがある。
 英語でいうところの
iced tea。前に一度書いたことがあったが、いくつか情報を得たため、補足として。
 紅茶というのは中心的にイギリスというイメージがあるが、これに関してはアメリカが元。
1904年にセントルイスで行われた博覧会で出されたのが最初と言われている。
 実際知ってみると、比較的近年になって始まったようだが、考えてみると人が容易に氷を食することができるようになったのは電気の普及によるものなので、アメリカが最初というのは頷ける話ではある。

 それと、製法についても、現代のメインは先述したように、オンザロック方式だが、それ以外の方式として
「冷却方式」及び「水出し方式」がある。
 
「冷却方式」というのは普通にいれた紅茶を冷蔵庫などで冷やす方法で、いわば麦茶方式。この方法のメリットは、かなり多量に作ることができる点で、後付けでさまざまなフレーバーを付け加えることができる。一方デメリットは、単独ではやや苦味が強くなってしまい、さらに香りも抜けてしまう。だからこの場合、甘味及び香り付けは必須とも言える。複数のお客を迎える時など、用意しておくには似合っているだろう。フレーバーで個性を出すなら、かなりセンス良い振る舞いとなるだろう。
 もうひとつの
「水出し方式」は最近になって流行ってきた方法。簡単なやり方は、蓋付きの大きい筒状の入れ物に水と茶葉を入れ(目安は水1リットルに茶葉30グラム程度)、よくかき混ぜて冷蔵庫などにいれて数時間(6〜9時間程度)待って、茶葉を濾してから、必要に応じて更に冷やして用いる。最近は茶濾しのついた専用の容器も売っているので、それを利用するのも良いだろう。
 このメリットは、熱湯を通さないためにクリームダウンが起こらず、クリアな水色が常に得られる事と、苦味があまり出ない事。すっきりした味わいなのでストレートでも飲める(香りはほとんどないので、風味を味わう気で)。
一方デメリットは、できるまでに時間がかかることと、味の調整が難しい事。濃くなる分には調整が効くが、薄くなると、飲みにくくなってしまう。
 これも好みなので、自分なりのレシピを探してみると良い。
 アドバイスをひとつだけ言わせてもらうと、アイスティにダージリンはなかなか合いにくいので、慣れない内は避けた方が良い(ダージリンは香りが信条だし)。
水出し紅茶にもおすすめの10gティーバッグ 10...

アイスティー ガラスシェーカーサイズS
紅茶の話 その54
 このサイトを立ち上げて結構な時間が経ったが、ここでの雑文も既に50を越えた。その間にも数多くのサイトやブログが立ち上げられ、紅茶について書かれているのもかなり多くなった。
 そういうサイトで興味深い事を書いてあるサイトには大きな特徴がある。
 良い事書いてあるな。と思えるところの多くは、自分で飲むためと言うよりは、いかにして人に紅茶を供するか。と言う点に中心を置いていると言う特徴を持っているものだ。
 日本にあって、紅茶は一人静かに飲むよりは、家族のためだったり、お客を迎えるための特別なものである場合がまだまだ多いと言う事だろうが、人に美味しい紅茶を飲ませたいと言う事は、大変重要であると言う当たり前の事に今更気づいた。
 紅茶に限った事でなく、お客を迎えるために出される食べ物は心を込めて作る事が大切だが、紅茶も、客用に特別なものを用意したい。
 紅茶の本場イギリスでも、こう言う紅茶をあらかじめ用意していく風習があり、これを
「優れた紅茶」"a nice cup of tea"と呼んでいるらしい。これは思わずお代わりをしたくなるようなお茶を意味する。
 最近私も客を招くことが多くなった。時にはその人のために紅茶をいれる事も出てきたが、そう言う時に限っては、ウバ茶をガラス製のティーポットで、ミルクも用意して迎える。紅茶を抽出する時間もガラスごしに見ると、なかなかオツなもの。ここにたっぶりのミルクを沿えて。これだけだって結構なおもてなしだ。
 あんまり考えてなかったけど、今度からお菓子も添えてみよう。
 ただ、お客を迎えるに当たって、重要なのは迎え人の心と会話になる。紅茶はそれを助けるものとして用いてほしい。