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特撮事典

雨宮慶太

牙狼 〜RED REQUIEM〜


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2010年
 ある町に“使徒”と呼ばれるホラー、カルマが現れた。鏡の仲に潜み、手足となる人間を用いて人間を鏡の中に引き込み、人間ごと欲望を吸い取ってしまうのだ。そんな使徒ホラーを消し去るために派遣された魔戒騎士冴島鋼牙(小西遼生)は、そこでアカザ(斎藤洋介)、シグト(倉貫匡弘)、烈花(松山メアリ)という三人の魔戒法師と出会う。三人の協力を得てカルマの居所を探る鋼牙だが…
 2005年に大人向け深夜番組として放映された特撮番組「牙狼 GARO」の劇場用新作。テレビ版は特撮マニアにはかなり受けたが、一般的にはそこまでヒットした訳ではなかった。ただし、その後パチンコ台で息の長いヒットを記録したお陰で今回の劇場作品にこぎ着けることが出来た。
 “特撮”と言うキーワードに反応してしまう映画ファンは
相当ニッチな存在とされる。ましてやそれが映画監督となると、極端に少ない。そもそも監督という存在は様々なジャンルをこなす人がほとんどなので(日本の特撮第一人者と呼ばれる本多猪四郎だって元々は普通の作品を作ってる人だった)、特撮だけ作っていて、しかもそれを続けられる監督なんて言ったら、日本では河崎実と雨宮慶太しかいないだろう。二人とも並々ならぬ情熱を特撮に燃やしているが、河崎実については完全にネタに走る人のため、純粋に自分自身でヒーローを作り出し、劇場スクリーンで見せる事に情熱を燃やしているのは雨宮監督しかないと言っても良い。
 そんな雨宮監督が一度テレビで“大人向きの仮面ライダー”を作ってみようとしたのが「牙狼 GARO」という作品だった。内容的にも、人間の欲望そのものが怪物を作り出してしまう(正確には結びついてしまう)ため、次々に怪物は生み出され続け、それを消すために永遠に戦い続ける戦士の物語。と言う終わりのない物語で、相当に暗い雰囲気の作品に仕上がっていた。
 そして放映終了から5年が経過し、それで作られる劇場作品が本作となる。
 本作を観る側の関心としては、専らテレビ版とどう関わりを持たせるのか?と言う点にあった。
 作りとしてはいくつか方法がある。テレビ版の完全続編という形で作る方法、外伝として作る方法
(シリーズのスペシャル版として「白夜の魔獣」という作品が作られたが、これはそのままこのパターン)、そしてもう一つは完全新作として作る方法。
 結果として本作は完全新作として作られることになった。これは実に正しい選択だったと思える。
 設定と主人公キャラは同じかもしれないが、下手にテレビシリーズに囚われることなく、キャラも抑え(実際テレビ版から引き継いで登場するのは主人公の鋼牙とザルバしかいない)、物語も全くのオリジナル。この思い切りの良さで劇場単独で観られる新しい特撮映画として創る事が出来た。

 まあ物語があまりに一本調子であったり、出来すぎの人間関係があったりもするが、その辺の弱さは3Dの強みを活かした演出でカバーしているし、やたらと格好良いセリフが連発する(ついでに言うならフェティ性もかなり高い)ので、オタクが作りたいように作った作品としては最上級のものと言って良いだろう。
 願わくば、これが受けて続編が作られることを期待したい。
牙狼<GARO>~RED REQUIEM~魔戒之書 R

 

アカザ
【あかざ】
 港町の魔戒法師。この町の元締めのような存在だが、カルマとの因縁を持つ。 甘崎
カルマ
【かるま】
 7体の使徒ホラーの一体。鏡の中に住み、人間の欲望をエネルギー源とする。基本的に自分からは現世に干渉できないため、手足となる人間を使うが、鏡の中ではほぼ無敵。 甘崎
ガロ
【がろ】
 黄金騎士の異名を持つ、黄金色に輝く装甲を持った魔戒騎士の鎧。一旦はカルマによって鏡に吸収されてしまうが、自ら鏡の中に入った鋼牙の元に帰る。 甘崎
クルス
【くるす】
 カルマに仕える人間で、カルマの力を受けてホラー以上の異形と力を手に入れている。実はかつては来栖謙一という老画家だったが、愛する女性シオンを甦らせたいという強い執着がカルマを呼び寄せたと言う経緯がある。 甘崎
来栖謙一
【くるす-けんいち】
 老画家。既に死んだ愛するシオンの絵を描き続けていたが、その重みに耐えられず、シオンを甦らせる事を条件にカルマと取引をしてクルスとなった。 甘崎
ケンギ
【けんぎ】
 烈花の父の魔戒騎士。カルマとの戦いで鏡の中に吸い込まれ、その魂は今もカルマの魂に囚われたまま。 甘崎
轟天
【ごうてん】
 ガロの愛馬。ガロと同じく黄金色の装甲を身に纏った馬で、呼べばどこにでも現れる。 甘崎
冴島鋼牙
【さえじま-こうが】
 黄金騎士牙狼に変身する魔戒騎士。7体の使徒ホラーを倒すために派遣され、この作品で2体を倒した。 甘崎
ザルバ
【ざるば】
 魔導輪。鋼牙の指輪で、魔戒騎士のサポート役。 甘崎
シオン
【しおん】
 クルスと対になって行動している女性。人間でもホラーでもなく、死んだクルスという女性の精神をこの世界に留めている入れ物。カルマの力を受けることでこの世界に存在し続けている。 甘崎
シグト
【しぐと】
 港町の魔戒法師。アカザの弟子で、まだ実力は低い。 甘崎
使徒ホラー
【しと-ほらー】
 ホラーの中でも最凶と呼ばれる7体のホラーで、人間界に解放されてしまった。 甘崎
烈花
【れっか】
 港町へと戻ってきた魔戒法師。カルマに父を殺されており、カルマを憎み、特訓をしている。女性故に魔戒騎士にはなれないが、魔戒法師としての実力は充分で、剣技もこなす。 甘崎

 

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