ある町に“使徒”と呼ばれるホラー、カルマが現れた。鏡の仲に潜み、手足となる人間を用いて人間を鏡の中に引き込み、人間ごと欲望を吸い取ってしまうのだ。そんな使徒ホラーを消し去るために派遣された魔戒騎士冴島鋼牙(小西遼生)は、そこでアカザ(斎藤洋介)、シグト(倉貫匡弘)、烈花(松山メアリ)という三人の魔戒法師と出会う。三人の協力を得てカルマの居所を探る鋼牙だが…
2005年に大人向け深夜番組として放映された特撮番組「牙狼 GARO」の劇場用新作。テレビ版は特撮マニアにはかなり受けたが、一般的にはそこまでヒットした訳ではなかった。ただし、その後パチンコ台で息の長いヒットを記録したお陰で今回の劇場作品にこぎ着けることが出来た。
“特撮”と言うキーワードに反応してしまう映画ファンは相当ニッチな存在とされる。ましてやそれが映画監督となると、極端に少ない。そもそも監督という存在は様々なジャンルをこなす人がほとんどなので(日本の特撮第一人者と呼ばれる本多猪四郎だって元々は普通の作品を作ってる人だった)、特撮だけ作っていて、しかもそれを続けられる監督なんて言ったら、日本では河崎実と雨宮慶太しかいないだろう。二人とも並々ならぬ情熱を特撮に燃やしているが、河崎実については完全にネタに走る人のため、純粋に自分自身でヒーローを作り出し、劇場スクリーンで見せる事に情熱を燃やしているのは雨宮監督しかないと言っても良い。
そんな雨宮監督が一度テレビで“大人向きの仮面ライダー”を作ってみようとしたのが「牙狼 GARO」という作品だった。内容的にも、人間の欲望そのものが怪物を作り出してしまう(正確には結びついてしまう)ため、次々に怪物は生み出され続け、それを消すために永遠に戦い続ける戦士の物語。と言う終わりのない物語で、相当に暗い雰囲気の作品に仕上がっていた。
そして放映終了から5年が経過し、それで作られる劇場作品が本作となる。
本作を観る側の関心としては、専らテレビ版とどう関わりを持たせるのか?と言う点にあった。
作りとしてはいくつか方法がある。テレビ版の完全続編という形で作る方法、外伝として作る方法(シリーズのスペシャル版として「白夜の魔獣」という作品が作られたが、これはそのままこのパターン)、そしてもう一つは完全新作として作る方法。
結果として本作は完全新作として作られることになった。これは実に正しい選択だったと思える。
設定と主人公キャラは同じかもしれないが、下手にテレビシリーズに囚われることなく、キャラも抑え(実際テレビ版から引き継いで登場するのは主人公の鋼牙とザルバしかいない)、物語も全くのオリジナル。この思い切りの良さで劇場単独で観られる新しい特撮映画として創る事が出来た。
まあ物語があまりに一本調子であったり、出来すぎの人間関係があったりもするが、その辺の弱さは3Dの強みを活かした演出でカバーしているし、やたらと格好良いセリフが連発する(ついでに言うならフェティ性もかなり高い)ので、オタクが作りたいように作った作品としては最上級のものと言って良いだろう。
願わくば、これが受けて続編が作られることを期待したい。 |