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ネオ・ウルトラQ

ネオ・ウルトラQ事典

 2013'1'12〜3'20

主な登場人物
話数 タイトル コメント DVD
第1話 クォ・ヴァディス

  監督:石井岳龍
  脚本:いながききよたか
 ある日を境に怪獣が出現し続けるようになった世界。ここでは怪獣保護派と怪獣駆除派が激しく対立するようになってしまった。そんな中、突如現れた怪獣ニルワニエは周囲の人々を振り回しつつ、ひたすらある地点を目指していた。
 
巡礼怪獣ニルワニエ登場。古代から日本に度々現れた怪獣で、古文書によれば「爾流王仁恵」とされている。雷と共に現れ、竜ヶ森にある御神木と同化した。
 なんと石井岳龍がメガフォンを取った監督回。突然現れ、別段人に危害を加えるでなく、ひたすら歩き続ける怪獣を相手に人間はどう対処するのか?と言う事を淡々と描く。ちなみにこの展開は横山光輝の漫画「マーズ」でも使われているが、その結果は全然違ったもの。ただ歩くだけの怪獣を、人間の都合で殺すことが正しいのか?と言う事を問いかけてくる。
 この作品を通して、実は本当の怪獣は人間の方であると言う事を語ろうとしているかのよう。ただ、ちょっと説明不足とも思えてしまう。
 色使いを抑えた演出と言い、まるで70年代を思わせるデモ隊の投石シーンと言い、随分古い時代に作られたっぽい演出が冴える。敢えてそれを狙ってのことだろう。今こう言うシーンを観ると、とても新鮮に見えてくる。
 一応主人公となる三人組が登場。その一人正平は怪獣怪獣保護派らしいが、何故そうなったかは現時点では不明。
<古文書の文字がやたらわかりやすい漢字であるのがちょっと気になるところでもある。>

VOL.1

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第2話 洗濯の日

  監督:田口清隆
  脚本:いながききよたか
 とある町で大人気のクリーニング店を取材に訪れた絵美子。全く顔を出そうとしない店主は実は怪獣ブレザレンだった。町の人々に受け入れられ、洗濯に精を出すブレザレンだが…
 
洗濯怪獣ブレザレン登場。洗濯屋を営む怪獣で、口から発する光の粒子で汚れを消し去る事が出来る。顔つきはガラモンに似てる。
 この世界は怪獣の出現が割と普通で、町に溶け込んでいたりもする。普通に商店街で買い物する怪獣とか、かなりシュールな光景が見られる。
 怪獣であっても、それをよく知る人からはきちんと受け入れられるが、知らない人からは排斥されるというのが本作の肝。たとえばこの怪獣というのを特定の宗教もしくは外国人にあてはめてみると、この作品の意味合いが見えてくる。
 この怪獣の出す光は、汚れを清めるというものだが、その光は人の心の汚れまで消してしまうと言う事で、なんだか洗脳のようにも見えてしまうのは、私の心が汚れているからか?それ以前に、どうしてもその裏ってものを勘ぐってしまうのは仕方ないか?
 この作品のオチは、ブレザレンによって浄化された地球は真っ白になって終わるというもの。何が言いたいのかよく分からんが、ひょっとして「ウルトラマン」のメフィラス星人の作戦が成功した例と言う可能性もある。
<ブレザレン一人の店なのに、ついには株式公開とか。とても人手が足りそうにないけど。
 国連事務総長が日本人で、普通に店先で「地球を綺麗にしてください」と頼んでる…なんだこの描写。>
第3話 宇宙から来たビジネスマン

  監督:入江 悠
  脚本:いながききよたか
      山本あかり
 突如姿を消したトップモデルの美樹。その足取りを追った絵美子はヴァルカヌス星からやってきたというビジネスマンのところに行き着く。美樹をヴァルカヌス星に連れ帰るという彼に対し、絵美子は対案を提示するのだが…
 
宇宙ビジネスマン ヴァルカヌス星人登場。ヴァルカヌス星の価値基準で「美しいもの」を持つ人間と契約を交わし、ヴァルカヌス星へと連れ帰るのが目的。
 人間とは美醜の価値判断が異なる宇宙人を通して人間的な常識というやつに一石を投じた作品。ヴァルカヌス星人による美醜は感情であり、負の感情が強い人間こそが美しくなると言う。
 ここで面白いのはヴァルカヌス星人は、あくまで同意に基づくビジネスとして人を連れ帰ろうとしているところが特徴で、侵略とか謀略とかは全く関係ない。実際本当に地球に宇宙人が来てるんだったら、大半はこういう目的だろうと思わせられる。
 1話目と2話目が怪獣の定義だったが、今回は宇宙人の定義をしようとしているのかもしれない。
 それで結果として、モデルの美樹はヴァルカヌス星に行くことを決意してしまう。コンプレックスを抱えたまま地球で過ごすのか、それとも見世物ではあっても美しさを賞賛される異星に行くのか?そもそも後者を選んだからこそ契約をしたので、自分が可愛ければ、そのまま行ってしまうだろう。当然の話だ。
 また、負の感情を失った人間は生きる気力まで失うと言うオチがついているところも面白い。
<今回初めて感情を出した絵美子だが、人を騙す結婚詐欺師なんか死んでも良いとか言ってるあたり、感情の激しさを感じさせる。こんなに過激なヒロインって珍しいな。
 屋島教授はヴァルカヌス星人からキーワードを聞いただけで、人間の負のパワーを集める装置やら磁場から負のエネルギーを採取する装置やらを作ってしまう。とんでもない天才だからだろうけど、そんな人間がいたらエネルギー問題とかあっという間に解決できそう。>

VOL.2

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第4話 パンドラの穴

  監督:石井岳龍
  脚本:いながききよたか
 目を覚ますと、何故か穴の底にいた男黒木は、そこに潜むマーラーと名乗る存在から地面にある蓋を開けるように言われる。これを開けることでマーラーは完全なる存在になるため、あの手この手を使い、黒木に誘いかける。
 
暗黒悪意マーラー登場。黒木の前に現れ、次々に幻想を見せることで閉じ込められた蓋を開けさせようとした。
 タイトルに「パンドラ」が使われ、「マーラー」が登場することで、本作は人間の心の内面を巡って神性を見つけていくという話になっている。神性というよりは、出てきたのは悪意そのものと言うオチはひねりが利いている。何が出てくるか分からないが、これを開けることで人生そのものが変わってしまうものを前にして、どう対処するか?という究極の選択が突きつけられる。
 2話もそうだが、完全なる世界を作ろうとしたオチとして、地球が何かに覆われて終わるってのは、この作品の特徴かな?1話ごとに世界そのものがリセットされているのかもしれない。
 描写は70年代から80年代に良くあった学生が作る8ミリ作品を丁寧に作ったという印象。
 絵美子と正平と仁は今回も登場するが、やってることは基本的に出来の悪いコントでしかない。それで登場する意味あったんだろうか?まあ、話のメリハリって事なんだろうけど。最後に無理矢理絡めた感じ。
第5話 言葉のない街

  監督:中井庸友
  脚本:いながききよたか
 南風原仁の元に田所博士の息子を名乗る男が現れた。50年前、人間の心を察する人造人間エピゴノイドを作ったものの、5年後にエピゴノイドと共に姿を消した田所の居場所を知ろうとする仁だが…
 
人造人間エピゴノイド登場。50年前に田所博士が愛を研究するために開発した人造人間。市場に出されたものの、人間の悪意に耐えられずに脱走し、開発者の田所博士の下で共同生活を送る。
 人の心をテーマにした話で、殊に「愛」を考えている。人の心が分かると愛が生じると考えて作られたエピゴノイドだが、実際には相手の心が分からないからこそ、悪意も知らずにいられ、だからこそ愛が生じると言うのが南風原の考えとなる。エピゴノイドも愛を知るために宇完全になりたいと願っているのが、人間社会の風刺のようになってる。
 南風原によれば、コミュニケーションにおける言語の割合は7%で口調は38%で身振り手振りは55%となるとのこと。そんなもんなのかね?
 今回はやっと主役の三人組が中心となって話が展開している。この方が物語としてはしっくりくる。動きが非常に少ないので、ちょっと退屈な感じもするけど。
 人造人間のメリ役は太田 莉菜。松田龍平の奥さんである。

VOL.3

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第6話 もっとも臭い島

  監督:田口清隆
  脚本:いながききよたか
      山本あかり
 太平洋の無人島に流されてしまった上田優希は悪臭を放つセーデガンという怪獣によって助けられる。だが救出され、東京に戻った時、セーデガンの体液を浴びた自分の体から芳香が出ていることを知り、それを香水として売り出すのだが…
 
悪臭怪獣セーデガン登場。巨大な花を持ったトロルのような姿の怪獣で、その鼻から出る液体はとても酷い臭いだが、時間が経つと芳香に変わる。又、その液体は治癒能力を持つ。危険生物に指定され、自衛隊によって駆除されてしまった。
 テレビからは臭いは感じられないが、それを敢えて使ってみたという実験的な話。悪臭が芳香に変わるという臭いの変化が面白い。最初に麝香の話を持ってきて、時間を経ると共に悪臭が芳香に変わるとしているのも良い伏線。
 ただ、この臭いの変化というのが、一体何を意味しているのか。実はもうちょっと深いものがあるのかもしれない。あるいは人によって匂いの感じ方が違っているとか、そんな風にも取られる。
 物語も、人間と怪獣のハートウォーミングな話のように思わせておいて、実は…というオチも皮肉が利いてる。セーデガンのエキスをかぶった優希が徐々に怪物化するということは、その香水を使用した女性は…
<セーデガンのデザインはトロルと言うよりダイゴロウに似てる気がするな。
 自衛隊はセーデガンを駆除するために戦車まで持ってきている。いかにも特撮っぽいが、リアリティはないな。>
第7話 鉄の貝

  監督:入江 悠
  脚本:いながききよたか
      加藤綾子
 全国各地に巨大な貝の怪獣が現れる。調査を進める屋島教授だが、屋島のライバルである福田教授は、巨大貝ガストロポッドがその原因だと主張する。
 
鉄貝獣ガストロポッド登場。深海に住む巨大貝で、熱エネルギーを求めて日本海近海に現れた。実はその存在のおかげで地震エネルギーを吸収していたのだが、駆除されることによって日本に大地震を引き起こしてしまう。
 本当は益虫なのに害虫として駆除されてしまったという、昔からの人間の愚かさを強調する話で、特撮は繰り返しこのテーマを作品にし続けている。その意味ではまっとうな特撮作品と言える話。
 この話の場合、東日本大震災で右往左往した政治家を皮肉ったとも考えられるが、それはうがちすぎかな?どっちかというと「山椒魚戦争」をベースにしてるのかな?
<そもそも生物が発生させる熱で日本が危機になるなどあり得ない話ではあるのだが、そこをツッコミ入れてるのは屋島だけ。>

VOL.4

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第8話 思い出は惑星を越えて

  監督:石井岳龍
  脚本:いながききよたか
 いつもぼんやりしている医学生の浩一の前に突然現れた宇宙人ハタ。実は浩一はハタの故郷ギ・ノール星の教皇の生まれ変わりだった。
 
ギ・ノール星人登場。ギ・ノール星では精神の生まれ変わりが信じられ、高校の生まれ変わりが地球に転生したと信じられている。その侍従長であり、教皇の転生体を探しにやってきた侍従武官のハタ・ギ・ノール。格闘の達人で、栄養補給のためのアルコールを得るため正平の前に現れる。
 静かな物語が多い本作の中では珍しくアクション主体となった話。登場する宇宙人は基本的に人間と同じ姿のため、生身のアクションが主体となっているが、大変見応えのある話に仕上がっている。
 転生体の話となると、チベット仏教を思い起こさせるが、数十年前にパンチェン・ラマの転生体がチベットと中国で分かれてしまったということがあった。この話はまさしくそのまんまで、とても政治的な話になってるのが特徴か。
 今回は正平がハタ・ギ・ノールを見守る役ででずっぱり。やっぱり「ウルトラQ」は主人公がしっかりしてる方が見応えがある。
 浩一役は染谷将太。日本の若手トップ俳優の一人だ。
<ギ・ノール星人は死ぬと消滅してしまうが、服まで消えるのは何故だ?>
第9話 東京プロトコル

  監督:田口清隆
  脚本:いながききよたか
      山本あかり
 東京で開催された地球サミットにより温室ガス削減の厳格な基準が定められた東京プロトコルが制定された。そのため日本では経済活動が停滞してしまうのだが、そんな時、温室ガスを吸収する生物プラーナが現れる。
 
吸引怪獣プラーナ登場。排出ガスを吸収する生物。果てしなくガスを吸い込んだ結果、ふくれあがってやがては爆発する。爆発の後で花が咲いたが、それが何を意味するのかは不明。
 温室ガス抑制は大切な事だが、それが行き過ぎた時、どのようになるのか?という一種のシミュレーションの物語。
 そしてそれが行き過ぎた時に現れた救世主。それがどのように変貌しても、経済活動の方を優先してしまう人間の愚かさというものを描くわけだが、これは第2話とほとんど同じプロットとなっている。オチも似ているけど、どんな異変が起こっても経済活動が続くことを喜ぶという人間のたくましさというか、業の描写がすごい。
 プラーナとは何なのか。話の都合で考えるならば、原発ということになるのだろうか。東日本大震災の後だけに、まさしくそんな感じだ。テレビニュースで政府見解を語る際は、必ず「直ちに環境への影響は無いそうです」と言っている辺り、皮肉っぽさがよく出ている。
 物語後半の好景気ぶりは第二次産業を中心にしてる。その描写はまるで50年前。全般的にそんな感じなので、敢えてやってるんだろうけど。
<明らかにプラーナは目に見えているのだが、海外からの問い合わせがあるってことから、ひょっとしてその姿が見えるのは日本人だけなのか?>

VOL.5

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第10話 ファルマガンとミチル

  監督: 中井庸友
  脚本:いながききよたか
      加藤綾子
 二度と歩くことが出来ないと診断された陸上選手のミチルの前に現れたのは見習い怪獣のファルマガンだった。ミチルを喜ばせようと、あの手この手で気を引くファルマガンだが…
 
見習い怪獣ファルマガン登場。ゴミやガラクタで構成される人型怪獣。ものを治す能力を持っている
 怪獣が普通にいる世界だと、怪獣と人間の間にも友情が芽生えるかも?と言う観点から作られた話。結果として、人を癒やすために怪獣の方が死んでしまうと言うパターンの話となるのだが、これは別段怪獣である必然性はなかった気もする。壊れたものを治す力を持った怪獣と、脚が動かない少女の組み合わせだと、こういう物語にするしかないし。
 怪獣が普通にいるからこそなんだろうけど、ミチルがファルマガンと出会った時になんのパニックも起こしてなかったのは説明不足かな?そこまで普通に怪獣とつきあえるんだったら、1話のような怪獣差別が大問題になるような話が出来るのか疑問となる。
 あと、ミチルの設定は普通の高校生としてリアルなんだけど、身勝手すぎるためにやや引く。ファルマガンの健気さを強調するにしても、何故ファルマガンがここまで尽くすのかが説明されない。結果、良い話なんだが、怪獣を利用して捨てた人間の話と言われても仕方が無い話になってしまった。
 南風原がミチルの心理カウンセラーとして登場してる。
第11話 アルゴス・デモクラシー

  監督:入江 悠
  脚本:いながききよたか
 テロリスト組織“怪獣解放戦線”は絵美子が取材していた怪獣対策措置法成立を進める議員の集会を占拠する。怪獣の解放を求める声明を出すのだが、そんな時、アルゴスを名乗る異星人によってビルが封鎖されてしまう。彼は一つのゲームを提唱するのだが…
 
知的恐球アルゴス登場。地球に興味を持ち、テロリストと確保された人質をまとめて、内閣総理大臣の命とどちらが大切かを日本国民全体に投票させた。
 何者かによって人間の命を天秤にかけさせられる日本国民を題材にした話。国民投票の是非を問う昨今、見事に時事ネタとなっている。やってることは70年代の過激派と同じで、この作品の設定が全般的に70年代に設定されてるのが面白くもある。
 投票によって人を殺さねばならないという事態に陥った時、人の取る行動を深く分析しているが、知り合いの命を優先するというのが基本的な人間の考え方。だが政府の方を選ぶのがやはり普通の人間の採る方法。その狭間にあってヒーローが存在すると考えると面白い。
 民主政治というのは不完全なシステムであると主張する南風原。民主主義はベターな選択で有り、ベストな選択では無いというのは、基本的な考え方。これを特撮でやってしまうとは、なかなか大胆な考え方だと思う。
 基本的にこの作品は怪獣の側に立って社会を見る作品だが、この話では怪獣を解放させようとするテロリストという存在を使っているのが面白い。
 アルゴスによる悪意あるゲームだったというオチがついたが、これが遊びだと思うとなんか空恐ろしくもなるな。
第12話 ホミニス・ディグニターティ

  監督:中井庸友
  脚本:いながききよたか
 ある日南風原の元を訪れた、二葉という男はある少女のカウンセリングをしてほしいと言ってきた。彼女は人間の寿命を延ばすための国家規模の重要な実験の被検体だとのことだが…
 
古代生物ソーマ登場。30年前に最古の地層から発見された三葉虫に似た寄生生物。動物に寄生させることによってその動物の寿命限界値まで生かせることが出来る。
 長い寿命と自由を両天秤にかけた場合、どちらを選ぶか?という問題に切り込んだ物語。実際に寿命と自由のどちらを選ぶ?と言われたらそれなりに悩むかもしれないが、特撮的には答えは明らか。それを地道にトレースしてるように見えたのだが、オチがそれなりにひねられていた。
 オチとして、実は南風原も又、ソーマに寄生された検体の一体であると言う事が分かったのだが、その際南風原が言った「君にそんな思いはさせない」という台詞を含め、それが何を意味するのかよく分からない。