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日本沈没

日本沈没事典
<A> <楽>

1974'10'6〜75'3'30 

 小松左京原作の小説が元。社会現象ともなったこの小説は先に日本沈没が作られたが、そのヒットを受けてテレビドラマ化された。時間をかけてゆっくりと日本沈没が描かれるため、人間ドラマに特に力が入っており、更にテレビドラマとしては破格の製作費を投入。とても見応えのある作品に仕上がっている。

主な登場人物
小野寺俊雄 (役)村野武憲。
 潜水艇わだつみの操縦者。田所博士と共に調査中日本沈没の最初の兆候である南豆沖の地震を体験することになる。
田所雄介 (役)小林桂樹。
 学会からは異端視されている地質学者。日本沈没をいち早く推測し、その対策を練る。D計画の責任者。いつも小野寺は彼のお陰で酷い目に遭ってる。
阿部玲子 (役)由美かおる。
 地震で恋人を失った小野寺に吉村が紹介した見合い相手。最初は反発し合うが、数々の事件を経て小野寺と愛し合うようになる。阿部財閥のお嬢さん。
話数 タイトル コメント DVD
第1話 飛び散る海

  監督:福田 純
  脚本:山根優一郎
  特技監督:田渕吉男
 1974年初秋。日本は様々な世相が渦巻いていた。そんな中、南豆では潜水艦乗りの小野寺俊雄が田所という胡散臭い博士の要請で小笠原海溝の調査を行っていた。そこで遭遇した地震が全ての始まりだった。
 今回の地震地域は
南豆姫路
 物語は最初から溜めがなく、ほぼ突然深海探査から始まり、しかも突然海底地震というトラブルに見舞われる。偶然の話だが、いきなりの急展開。特撮で見せようと言う意気込みが感じられる話となっている。事実特撮部分にはかなり力が入っていて、潜水艇わだつみのシーンや姫路城の崩壊など見所が多いが、それ以外の演出もかなり力が入っていて、光線の加減など、なかなか凝った作り。今の目から観ると特撮部分に多少ちゃちさは感じるにせよ、見応え充分。
 原作や劇場版と大きく違っているのが小野寺の性格。真面目で実直な原作に較べ、こちらは70年代の青年らしくかなり正義感強く、感情豊かに性格付けされている。怒ると仕事もほっぽり出すし、喧嘩して留置場に入れられたりもする。学生運動に傾倒していた過去もあり。どっちかというとヒーローっぽい性格になってるのが特徴か。
 小野寺は婚約者までいるというおまけ付き。その恋人が地震で死んでしまったことでやりきれない思いを抱くが、それがこの作品のモチベーションとなる。
 ここではやはり田所博士役の小林桂樹が個性見せてる。学会から爪弾きに遭っていながら自説を曲げない姿や、地震に揺れるわだつみの艇内で、無理に降下させようとする鬼気迫る演技は素晴らしい。
 数多くの個性的なキャラが出てくるが、なんと阿部玲子まで登場。自然に人を使う我が儘お嬢様ぶりを発揮してる。
 今回は小野寺の個人的な話を中心として物語の展開がとにかく早い。小野寺の性格を変えたお陰で、学術的描写よりもドラマの方に力が入っていることを窺わせられる。
<玲子は酒飲んでポルシェ運転してたけど、飲酒運転の描写はドラマではまずいんじゃないの?
 姫路の直下型地震が描かれているが、これって阪神淡路大震災を思わせてしまうなあ。>

M-1.0
第2話 海底の狂流

  監督:西川 潔
  脚本:山根優一郎
  特技監督:田渕吉男
 一晩で沈没した太平洋上の島へと向かう地質調査団と小野寺だったが、海上を進む彼らの目前でベヨネーズ列岩の海底爆発が起こってしまう。それでも強引に海底調査を行うという田所に押し切られて日本海溝へと向かうわだつみ。
 今回の地震地域は
ベヨネーズ列岩天城山
 徐々に日本全体に何事か異変が起こっていることが見えてきはじめた。今回は日本海溝の底で乱泥流が発見される。そしてはっきり田所博士は「日本は沈没する」と名言している(原作では最後の最後までそれを言うのを避けていた)。
 今回も強引にそこで調査をしようとする田所と、それを止める小野寺というのが何度も出てくる。この構図はもう確立してるのかな?それで結局小野寺が押し切られてしまうのも。これがキャリアの差って奴かも知れない。そのお陰で恋人を失ったり、右手を失いかけたり…それでもつきあうのだから小野寺もたいしたもんだ。
 それと辰野という新聞記者が登場。厚かましいが妙に憎めない役柄を田中邦衛が好演している。
 今回も玲子が登場し、謎めいた言葉をかけていた。なんだかんだ言って小野寺とは縁があるわけだが、原作ではお見合いで強引に会わされていたのとはえらい違いだ(一応これも吉村によるお見合いってことになってる)。一般住宅街を馬で闊歩するなどのお嬢さんぶりは健在。
 今回も特撮部分はかなり力入っていて、日本海溝に潜るわだつみの姿などが見られる。ちょっとちゃちくはあるが、臨場感はたっぷりあり。ベヨネーズ列岩の爆発シーンはアイスランドでの海底火山のフィルムを買い付けて挿入したとのこと。
<新聞記者辰野が最初に現れたシーンではカップ酒を飲んでいたが、これは当時のスポンサーだったのだとか。
 潜水艇が通常任務を離れて日本海溝に向かうなど、通常あり得ないこと。と言うより、設定が違うと酸素とかの積載は大丈夫だろうか?
 深い所を潜っているのを示すために深海魚(リュウグウノツカイかな?)の姿が見られるのだが、全部イラスト。イメージなんだろうけどね。
 それにしても小野寺の行く所どこにでも田所が現れる。まるでストーカーだよ。>
第3話 白い亀裂

  監督:西川 潔
  脚本:山根優一郎
  特技監督:田渕吉男
 天城山の爆発に伴う津波に巻き込まれた小野寺は玲子を助けつつ、なんとか玲子の別荘にたどり着くが、右手の怪我が悪化して寝込んでしまう。その小野寺を献身的に介護したのは玲子だった。
 今回の地震地域は
姫路。1話に続いて2回目になる。
 話は小野寺が中心となるが、又してもストーカー田所が神出鬼没に小野寺の前に現れてくる。どこに逃げてもそこにいるってのは一種のホラーじゃないのか?今度はなんと会社を辞めて研究を手伝ってくれと懇願してる。それを「俺はまだ若い」と突っぱねる小野寺もまだ若い…が、それも全て小野寺の手の上。最後は拉致られて田所の所に連れてこられる。
 で、逃げた所が今度は行く先々で玲子が出没…この人の苦労は尽きない。それでどんどんしおらしくなっていく玲子の姿も見所。
 玲子と小野寺を結婚させようとするのは上司の吉村の差し金だが、これは政略結婚である事がはっきりと示された。吉村もなかなか底が見えないな。
 一方、田所の前に謎の男中田一成が現れる。自分のことを役人と言っているが、その強面ぶりは役員っぽくない。実際、何かバックのことを匂わせている。小野寺を拉致ったのはこいつ。総理府秘書官の肩書きを持つ。
 ちなみに渡老人の所でお茶を点てている和服美人は麻里とも恵。現在の阿川泰子である。
<玲子の我が儘ぶりが良く出ているエピソードだが、天城山の噴火によって退いた潮を見て、「行ってみましょう」とか小野寺に行って走っていく。小野寺の右手を庇うとかないのか?
 ただ、津波という割に普通の海岸線走ってるんだが。
 目に見える所で噴火が起こっているのに地震が一切起こってないのも不思議な所。
 その噴火の中心にいながら普通に東京に帰ってきた小野寺。どうやって帰ってきたんだろう?
 今回玲子が乗っている車はフェアレディ。ポルシェはどうした?というか、やっぱり金持ちなんだなあ。
 1話で姫路城が崩れ落ちる描写があったが、ここでは全く変わらずに健在。修復が早すぎるぞ。
 当時は横にバーの付いてないジープでも高速OKだったんだなあ。時代の流れを感じるよ。>
第4話 海の崩れる時

  監督:長野 卓
  脚本:山根優一郎
  特技監督:川北紘一
 強引に鎌倉に連れてこられた小野寺は玲子への伝言を吉村に頼むのだが、自分の思い通りに物事が進展しない事に苛立つ吉村は敢えて玲子に小野寺の事を黙っていた。一方、強引に田所とケルマディック号に乗せられた小野寺は日本海溝に向かっていた…
 今回の地震地域は
日本海溝姫路。姫路はなんと3度目の地震となり、2度の地震に耐えた姫路城がついに倒壊。
 故障したケルマディック号に閉じこめられた小野寺と田所の緊張したやりとりが話の中心。死を覚悟した田所が初めて小野寺に謝る姿が見られる。一方、そんな田所の姿を見て自分が誤解していたと気付く小野寺。危機を乗り越えると絆が増すというのを地でやってるみたい。
 そしてすっかりしおらしくなってしまった玲子と小野寺のすれ違いも同時に描かれる。結局お互いに出会おうとするのだが、最後まですれ違ってしまう。そしてなんと吉村は離婚するから玲子と結婚したいと申し出、危うく強姦未遂…SF作品としてはかなり異例。
 今回久々に新聞記者の辰野が登場。事件の臭いを嗅ぎつけるとどこにでも登場するという設定らしいが、こういう事件には裏があることも重々承知。どんどん存在感が上がっている。
 今回はどつき漫才師の正司敏江・玲児がテレビ番組で登場。今から観るとえげつないどつき具合だ。これだけでも結構面白い。この当時のお笑いが私にはしっくりくる。
 今回の特撮ケルマディック号の航行シーンだが、ミニチュア繰演はさほどのレベルではない(と言うと吊りのコーちゃんに悪いけど)。でも姫路城が崩れるシーンはかなりの迫力あり。テレビでよくやったもんだ。
<それにしてもどこかに出かけると、必ずそこで地震が起こる小野寺の行動は凄いな。雨男ならぬ地震男か?
 地割れに飲み込まれそうになる玲子。都合良く足下だけ崩れる確率って無茶苦茶低いんじゃないか?それより、悦子の墓参りに来た直後に地震ってのは、なんか暗示的だな。悦子の怒りか?>
VOL.2
<A> <楽>
第5話 いま、島が沈む

  監督:長野 卓
  脚本:長坂秀佳
  特技監督:川北紘一
 姫路で地震に見舞われた玲子は、幸い怪我も軽く、東京で静養に入った。だがそんな玲子をゆっくり見舞うことも出来ず、直ぐさま田所と共にケルマディック号で南洋へと向かう事になる。
 地震地域は
南ヶ島。南洋に浮かぶ離れ小島で大人はほとんど出稼ぎに出かけており、島に残っているのは子どもと老人ばかり。
 前半部分での最も悲惨な話に仕上げられた話。人口150人。子ども達がのびのび遊んでいる小さな島があっという間に海に沈んでしまうという話。話の前半で元気いっぱいに騒いでいる子供の姿を見せる事で悲惨さを際だたせている。子供一人が完全に生き埋めという、いろんな意味でとんでもない話で、今じゃ到底作れない作品だよ。
 島が沈むとなったら、パニックが起こり、島民の殺し合いが起こる。それを防ぐため、何も喋らない田所と、それでも島民を救うためやはり喋らずにはいられない小野寺の対比が素晴らしい。お互いに島民の事を真剣に考えているのだが、どちらも実際に地震が起きるその時まで全く理解されないのも虚しい話。
 それで島が沈むと聞かされた老人達はパニックを起こして田所や小野寺に殴りかかってくるし、訳を打ち明けた先生は一人でさっさと逃げてしまうし、人間性の恐ろしさってものをまざまざと見せつけていた。
 一方、小野寺に放っておかれた玲子の寂しさも描かれる。そんな玲子の前に吉村が連れてきたのは衣笠という男。まあ、このキャラが「キザ」を絵に描いたような人物で、実に面白い。短気ですぐに女性に暴力を振るうあたりも今じゃ作られないな。
 島一つが沈むというかなり凄い特撮が用いられ、学校が潰れてしまうシーンはかなりの迫力。テレビでここまでやるか?
<南ヶ島で子ども達に写生させて自分一人のうのうと昼寝してる先生。この当時はこういう大らかな先生が愛されていたのかも。一方、「島のために一生をかけます」とか言っておいてさっさと一人だけ逃げてしまうあたりの描写もあり。
 ケルマディック号を南ヶ島につけて滞在を決め込む田所と小野寺。潜水艇は精密機械だから、こういうのはまずいのでは?しかも実際に地震が起こるその時までケルマディック号を置きっぱなしなのもまずいのでは?つか島が沈んでるけどケルマディック号はどうなった?
 最後に死んだ子供の麦わら帽子が海面に浮かぶ。子供がかぶっていた時よりも綺麗になってるようだが。>
第6話 悲しみに哭く大地

  監督:西川 潔
  脚本:山根優一郎
  特技監督:田渕吉男
 日本各地で続く異変に東京でも徐々にその恐怖が浸透していく。小野寺の義弟周二は地価が安くなった東京の土地を買おうと小野寺に借金を申し込む。一方、学会の誰からも主張が受け入れられない田所は苛立ちを募らせていた。逗子で地震実験を行うというD1計画をなんとか阻止しようと奮闘するが…
 地震地域は
逗子横浜。逗子はそもそもD1計画で実験を行った場所で、それが地軸に影響を及ぼして本当に地震が起こってしまった。火遊びが火事になってしまったと言えるか。
 既に姫路、南ヶ島と連続して地震が起こったため、次は東京か?と新聞でも書かれていた。それでだんだん混乱が起こってる描写あり。話がキナ臭くなってきた。
 一方玲子とのすれ違いが続く小野寺はやっぱり苛立ちを覚え、田所はD1計画で全く自分の主張が受け入れられない事にやっぱり苛立ってる。
 金を借りるために小野寺に土下座までする義弟の周二の姿があるが、当時土地神話とまで言われた日本を揶揄しての事ではないかと思われる。事実土地の高騰はこの少し後に一旦止まってしまったという事実もある。皮肉は皮肉だが、あまりにも的中しすぎた。更に借金を断った小野寺は、その理由を言う事が出来ない辛さ。なかなかストレスの溜まる話だ。
 今回は鎌倉の名所見物も結構しっかりやってるけど、これって観光協会あたりとタイアップなんだろうか?
<小野寺のいる所に必ず現れる田所。今回は鎌倉でお寺行ってたら突然隣に田所が…玲子とはすれ違うのに田所とは赤い糸ででも結ばれてるんだろうか?>
第7話 空の牙、黒い竜巻

  監督:西川 潔
  脚本:山根優一郎
  特技監督:田渕吉男
 小野寺の元へと急ぐ玲子は途中で道路陥没に遭い、行方不明となってしまう。一方田所の調査旅行に嫌々つきあう小野寺だが、ついに二人は箱根で出会う。だが田所に急かされて箱根の調査を行うため再び二人は離ればなれに…
 地震地域は
芦ノ湖。湖底の大陥没によって完全に干上がってしまった。芦ノ湖に沈んでいたという逆さ杉までも全て大地の下に。
 折角出会えたのに、強制的に別れさせられる小野寺と玲子。この二人はなかなか縁がないようだ。しかし小野寺の気持ちに玲子はなかなか気づかないようだ。これだけ色々あったら小野寺が「危険だ」と言ったら本当に危険なことに気づけるようなものだが。
 玲子の父信太郎が初登場。吉村の提唱する海底レジャーランドの計画に乗り気のようだ。なるほどこのために吉村はこれまで暗躍していた訳か。
 そんで信太郎は嫌味な奴で、小野寺に対し玲子との交際を認めないと、わざわざ潜水艦の中で言い放つ。この状態で言ったら殺されてまうぞ。
 今回の話は、これまですれ違いが続いていた小野寺と玲子の二人の関係がクローズアップされた話となった。ただし、この番組だけに甘い展開は長くは続かない。
 本当に車を崖から落として炎上させてみたり、役者本人がいるところで岩(もちろん発泡スチロール製とは思うが)を落としてみたりと、かなり力が入った特撮が展開。
<それにしても玲子の行くところ必ず地震が起こる。雨女ならぬ地震女かもしれん。
 玲子を諦めるという小野寺に恋愛指南をする田所…二人の別れる原因を作った奴のくせに大上段な台詞だ。>
VOL.3
<A> <楽>
第8話 怒りの濁流

  監督:山際永三
  脚本:石堂淑朗
  特技監督:高野宏一
 潮来に起こった竜巻から辛うじて生還した小野寺と玲子。はっきりと愛情を確認し合った二人だが、阿部財閥の力はあまりにも強大で、二人は又しても離ればなれにされてしまう。その頃田所は地震の危険を政府に訴えようと働きかけるが…
 地震地域は
福島。既に予兆として野ねずみの集団逃亡やオーロラのようなものが起こってた後でいきなりダムが決壊してしまう。ダム決壊によって巻き込まれた人物もしっかり描写。よくやるよ。特撮も力はいってる。
 田所以外の地震研究学者によれば、関東で地震が起こる確率は0.001以下だとか。もちろん政府が信じるのは田所の説ではなくこちらの方。人間は自分に都合の良い説を信じるものだ。
 地震に対する社会の反応が描かれていく。日本沈没に対して概して意識は低い。そらそうだろうけど、確かに70年代っぽい反応もちらほら。
 金持ちが自立するってのは本当に難しい事がよく分かる話で、やることなすこと全部父親に妨害されてしまい、強引に静岡に連れられてしまう。金持ちは金持ちで色々苦労してるんだな。
 政府の話になったら久々の顔がちらほら。渡老人は今も健在で政府に働き続けているらしい。
<田所に励ましてもらったお礼を言いに来た小野寺はのろけっぱなし。田所に蹴り出されてしまった。結婚もせずに研究一筋に生きてきた男には毒なんだろう。
 玲子を連れ戻しに来た黒服の男達に対し小野寺が言った台詞は「なんだ君は?」だった。どうも志村けんを思い出してしまう。
 既にコンピュータは政府が導入しているようだが、その姿は現在の目からすれば…やはりちゃちさがなんとも。>
第9話 海底洞窟の謎

  監督:山際永三
  脚本:石堂淑朗
  特技監督:高野宏一
 田所の直感は又しても的中し、福島で大地震が起こってしまう。だが新聞記者に自分の直感のことを喋ってしまったため、防災会議では大騒ぎになってしまう。
 地震地域は
鹿児島佐多岬。小野寺がケルマディックで調査に向かった海底でたまたま機雷が爆発し、それが契機で地震となってしまう。
 そろそろ本式に日本の危機が噂されるようになってきた。これに対し、日本の経済的興隆を前に、そんなことは起こらないと信じたい政治家との駆け引きが描かれるが、自分の主張を歯に衣着せぬ物言いをする田所はどんどん窮地に陥っている。一方令子と同居を始めた小野寺はすっかり落ち着いてしまい、積極的に独自に調査を進めるようになる。いつの間にか立場が逆転してるよ。
 …とはいえ、今回の話はほとんど「失われた世界」で、いきなり熊襲の遺跡の話になってしまった。話の展開にはちょっと無理があるけど、シリーズものだとこういうのが入れられるから面白い。二千数百年の長きにわたり海底に存在し続けた文化遺産があっけなく消え去ってしまうのは極めて空しい話。
 令子が小野寺の部屋にいる事を知ったマリアが妙な嫉妬を起こしているのも特徴。
<ケルマディックを借り受けるために山城を拉致してしまう小野寺。刑事事件だぞ。頑張るにも程がある。ところでいつの間に鹿児島に連れて行ったんだろう?
 この当時は飛行機でも平気で煙草吸えたんだなあ。良い時代だった?
 徳光の父のしゃべり方は語尾に「ごわす」とか付けてる。その主張によれば、熊襲は大和朝廷によって滅ぼされたのではなく、突然海中に沈んでしまったのだとか…アトランティスか?>
第10話 阿蘇に火の滝

  監督:金谷 稔
  脚本:長坂秀佳
  特技監督:川北紘一
 佐田岬での地震は九州全体に影響を与えていた。田所は阿蘇が危ないと直感を働かせ、小野寺は再び九州へ飛ぶ。阿蘇山の噴火はもはや日常的なものとなっており、
 地震地域は
阿蘇。この時にも既に噴火は起こっていたが、それがますます激しくなっていく。
 前回に続き、今回も中心人物以外の人間のドラマが展開。今回中心となるのは阿蘇の観測所に勤めている青年とフィアンセと、たまたまやってきた沖田という青年の話になっており、成り行き上それに関わってしまった小野寺の活躍が描かれていく。
 覚悟を決めた小野寺にとって地震とはほとんど敵のようなものとなっており、ノリは怪獣映画っぽくなってきた。いや、だからこそここで書いてるんだけどね。
 田所の調査を妨害する何者かが登場。たまたまそこに居合わせた男沖田を小野寺はぶん殴ってしまうのだが、どうやらそこら中の人々がみんな気が立っているらしく、今回は暴力的な描写が多い。本能的に危機感を感じ取っているのだろうか?
 丁度良い具合に阿蘇の噴火がリアルタイムに起こっているので、そこでの撮影は特撮いらず。
 一方今回は珍しく田所は気弱で令子と共にバーに行ったり、ディスコで踊ったりと、なかなかひょうきんな一面を見せている。そう言えば娘がいるようなことをちらりと語っていた。
<この当時の録音はもちろんカセットテープ。でっかいテレコを抱えて録音してるのは、今から観るとむしろほほえましい限り。
 阿蘇の噴火音を録音している沖田は弟に向かって「前に観た怪獣映画で怪獣が住んでた星みたいだろう」と呟いてた。さて、なんの作品だろう?ガメラ対大悪獣ギロンかな?空の大怪獣ラドンだったらそのまんま阿蘇が舞台なんだが。>
VOL.4
<A> <楽>
第11話 京都にオーロラが !!

  監督:金谷 稔
  脚本:山根優一郎
  特技監督:高野宏一
 阿蘇山の爆発から辛うじて逃れた小野寺はすぐさま田所の元へ向かう。丁度その時渡老人からの連絡が入り、田所は再びD計画へと復帰することとなる。
 地震地域は
京都。北山の土砂崩れが描かれていく。タイトルは「京都にオーロラが」だが、東京にもオーロラが出ている。
 前々回、前回と九州が連発して地震が起こったが、今度は本州に戻る。日本沈没のスピードはかなり速まっているが、未だ国民の意識は低く、結果として焦っているのは田所と小野寺ばかりになっている。それでも収まりが付かないため、小野寺は荒れて令子のボディガードをぶん殴ってたりする。それで令子は連れ戻されそうになるが、今回は上手く撃退。小野寺の叔父さん叔母さんコンビは今回は大活躍だった。
 何を見ても信じようとしない山城は田所とは水と油。結局この二人が会うとこうなってしまうんだな。
 小野寺と令子の生活は同棲だが、こういう時に心配して言ってくれる人がいるのは良いことかもね。こういう口やかましいおばさんは、今では絶滅種…あるいは嫌味にしか聞こえないので、貴重。それを聞いた玲子は小野寺に結婚を迫るシーンあり。
 今回登場したオーロラの特撮はなかなか見事なもの。もちろん絵だが、上手く合成してる。
 おや、田所の弟子として東野英心が登場してる
<玲子役の由美かおるがピンク色のエプロン姿で登場。こういうのって結構いいよね?一方小野寺の叔父千造はパンツ丸見えで…これはいらん。>
第12話 危うし京の都

  監督:真船 禎
  脚本:山根優一郎
  特技監督:高野宏一
 京都の北山を調査中山崩れに遭ってしまった小野寺。辛うじて助かったものの、京都には小さな異変が数多く起こっていることを知る。現地を自分の目で見るための田所と合流し、調査を続ける小野寺だが…
 地震地域は前回に続き
京都。今回は金閣寺が崩壊してしまう。事前にそれを察知する田所だが、そこで何をすべきがが描かれていく。どうなるかと思ったら、なんとテレビでその事を放映した。かなり思い切ったことをする。おかげで京都の町は大パニックになってしまうが、エキストラの数も凄い。移動に取り残されたこどもが泣き叫んでる姿もシュールだ。これがモンタージュ技法という奴だな。更に今回の特撮は無茶苦茶力入ってる。金と時間をたっぷりかけられたんだろうな。
 田所が三高出身であることが語られる。成る程それで京都に思い入れが強いのだな。かつてこの町でロマンスもあったようだ。
 一方小野寺は京都の旅館の娘さんから一目惚れされて告白を受ける。ギリギリに追い詰められた人間はそう言う風になるんだろうか?結局死んでしまうため、ほんの僅かなロマンスだった。
 動物は人間よりも地震に敏感。京都の町からどんどん逃げていくのだが、登場する動物が蛇にゴキブリにネズミと、害虫ばかりというのはどういう事だろう?
 今回の見所はなんと言っても金閣寺の沈没だが、時間をかけて丁寧にセットをくんでるので、迫力がある。
<地震警報直後に映された京都の町は全く平常通り。直後にセットで大騒ぎしてる。
 パニックになると伝統的に出てくるのが大八車。ここでも大活躍してるよ。唐草模様の風呂敷に荷物いっぱい詰め込んで肩に担いで走るのもほほえましい。>
第13話 崩れゆく京都

  監督:真船 禎
  脚本:山根優一郎
  特技監督:高野宏一
 京都に起こった大地震は金閣寺を飲み込み、更に京都に戻っていた知子をも地割れの中に飲み込もうとする。一方、地震中心地にいながら生き残った田所は東京に緊急事態が起こり、急遽ヘリで東京に向かう。
 地震地域は前回に続き
京都。今回は清水寺と八坂神社が一気に崩れ去る。最初の地震でなんとか生き残っていた清水寺が二度目の揺り返しで完全に壊れてしまう。その描写もかなりねちっこい。流石に清水寺のミニチュア作るのも大変だっただろうしね。
 本格的な地震が起こり、一気にパニックに陥る京都の町が描かれるが、実写場面特撮場面共にえらく力が入っていて、見所は満載。まさしく特撮作品にふさわしいものに仕上がってる。これをテレビでやってしまうのだから、とんでもない話だ。
 今回は全般的にカメラアングルの凝り方が凄く、ホラー調やサイケ調なども含め、かなり力が入ってることも分かる。地震の場面になると般若心経が延々と続くのはかなりシュールだ。
 玲子がテレビで災害地域を観ているシーンがあるが、これは阪神淡路大震災の事を思い浮かべてしまう。時代の方が後追いしてたのかな?ちょっとうすら寒い思いをさせられる。
 大人向きの作品だけにしっかり濡れ場もあり。女性のヌードに弥勒菩薩を重ねるなど、映像の凝り方は凄い。しっかり玲子への操を守ってるが。
<倒壊した家の下敷きになった木村は骨董品を抱えて恍惚とした表情を見せる。マニア根性ここにありだな。
 総理府に呼ばれ、散々嫌味を言われた田所は一言。「真実は一つだ」。あれあれ?どこかで聞いたような?>
VOL.5
<A> <楽>
第14話 明日の愛

  監督:長野 卓
  脚本:長坂秀佳
  特技監督:川北紘一
 日本各地を襲う数々の異変。内閣はいよいよ本腰を入れて災害対策を練ることになるが、京都の大地震以来はしばらく平和な日常を取り戻したかのように見えたが…
 地震地域は
群馬。突貫工事中だった天神トンネルが崩れ去る。これは突発地震で田所でさえ予測できなかった。
 京都編が一段落して、これから新展開へと移るが、その前にこれまでの地震をバンクで映すが、何度観てもこれは凄い特撮だ。ミニチュアとは言え、生の迫力にあふれている。そして何人かの新キャラも登場。雰囲気が明るく変わっているが、これも更なる地震のタメだろう。
 日本はお正月。正月気分を満喫する小野寺や田所は凧揚げや羽根付きなどやって遊んでた。古き日本の伝統だな。
 今回は小野寺から離れるが、彼の友人天竜が働いている群馬の工事現場の話が展開。ここでの穂純隆信演じる大田黒という工事現場監督がえらく格好良い。仕事に誇りを持ち、ちょっとした異変も人命を最優先。事あらば命を投げ出す覚悟も持っている。これぞ男の生き様。と言った感じ。単発のドラマとして考えるべき作品。
 後、玲子の知り合いの桂という男が登場。船員らしいが、なんと五木ひろしだった。突発的な設定だが、彼が世界中の地震の映像を田所に送り続けていた。玲子に恋心を抱いていたようだが、小野寺の存在を知り、すっぱりと身を引く。
<玲子と久々にあったという桂は玲子の高校時代の写真を持っていた。しかし、セーラー服姿はちょっと無理が…
 桂が玲子に残したプレゼント。真珠のネックレスは確かにあったが、もう一つのプレゼントはカセットテープに録音した自分の歌だった。自意識過剰…ではないな。お陰でテーマ曲のフルバージョンが聞けた。>
第15話 大爆発・海底油田

  監督:長野 卓
  脚本:長坂秀佳
  特技監督:川北紘一
 一旦納まったかに見えた地震だったが、各地で突発的な地震や山崩れが起こっていた。その頃小野寺は、妹の治子の妊娠を知らされる。治子の夫周二の兄は秋田の海底油田で働いていると聞かされるが…
 地震地域は
山形秋田。オープニングシーンでいきなりの地割れ。丁度走っていた急行列車の転覆事故があり、その後は海底油田の崩壊シーンとなる。
 一週の時間をおき、これから物語は本式に日本沈没に向かって走り出す。日本の周囲の海ではもうぼろぼろになっている事が分かってきた。しかしそんな日本でも金儲けを考える人間がおり、それに踊らされる人間もやっぱりいる。金が無く追い詰められた人間の浅ましさも垣間見られてしまう。実質的な物語としては14話に続き、小野寺と田所は関わりはするが、基本は傍観者。
 治子の旦那周二はこれからの日本に漠然とした不安を感じており、こどもは作らない方が良いと考えているが、逆に妻の治子は、こういう時だからこそこどもを産みたいと主張。なるほどここで一般的な家庭を出してるわけだ。
 特撮的に言ってもかなりの力の入りよう。海底地震のシーンはこれまでにない特撮シーンなので、かなり新鮮だった。
 そう言えば飲み屋の女将さん、浜美枝ではないか。こんなところにでていたとは。
<秋田沖をケルマディックで調査した田所は「整備を済ませたらケルマディックで帰ります」と発言。海底調査艇って、通常航行はものすごく遅くなかった?>
第16話 鹿児島湾SOS!

  監督:山際永三
  脚本:山根優一郎
  特技監督:高野宏一
 小野寺が秋田に行っている間、又しても玲子の父により、強引な連れ戻し工作が行われた。幸い一緒にいた結城によって事なきを得るが、その結城は沈没船の調査に駆り出されることとなる。
 地震地域は
鹿児島桜島。桜島の噴火がますます激しくなり、ついには桜島そのものが消えてしまう。
 今回は結城が中心となる。玲子の父である阿部が又しても玲子にちょっかいを出してきたと思ったら、今回はその阿部の持ち船が沈んでしまった。なんでも全財産を動産に変えてカナダに持ち逃げしようとしたらしいが、それで沈んでしまったのでは泣くに泣けない。それで何とかそれを引き揚げようと結城に潜水を頼むこととなったらしい。結城、阿部、小野寺の中で人間ドラマを主軸としたドラマ展開となっている。
 結婚したばかりの結城は幸せいっぱい。それを見た玲子は凄く羨ましそうに見てる。小野寺の仕事上、どうしようもない所はあるのだが。
 そしてついに阿部から日本沈没のことを聞かされる玲子。阿部からはカナダに行くように勧められたが、玲子は北海道に向かっていった。
 今回占い師として牧伸二が登場。ウクレレ弾きながら占いしてる。胡散臭さが妙なはまり具合。
<玲子を守るため怪我した結城にすぐにわだつみに乗らせようとする社長。労務規定的にはかなりヤバイと思うのだが。
 小野寺なき今、結城がたった一人でわだつみに乗ってる。これも労務規定違反。
 故障して水中に取り残されたケルマディックに海中補給を試みるわだつみ。二隻の潜水艇が並ぶのはなかなか壮観。ただし潜水艇は電池で動くという事実を別にすれば。
 仲直りのため、結城の顔を殴る小野寺。ちら見だが、本当に当たってないか?>
VOL.6
<A> <楽>
第17話 天草は消えた!

  監督:山際永三
  脚本:山根優一郎
  特技監督:高野宏一
 玲子は北海道に疎開したが、それを知らぬ小野寺はD計画に従い天草に向かう。そこで宇宙ロケット発射に立ち合うこととなるが、そこでセスナ機でやってきた女性パイロット有吉摩耶と出会う。
 地震地域は
天草。ロケット打ち上げを見るためにやってきた小野寺が遭遇する。完全に天草は沈んでしまった。
 話は又小野寺に戻り、ここで又女性と出会う。結構出会いの多い人だが、出会った女性は次々に亡くなってしまってる。今回小野寺は摩耶という女性と出会うが、彼女は登場時の玲子以上のじゃじゃ馬。それで小野寺は無茶苦茶つれない態度を取ってるけど、それはいつものことか。結局情にほだされてしまうのもいつものごとく(笑)。一応まだ死んでない。
 ゲストで林家木久蔵が出てる。若いなあ…でも基本全然変わってないけど。
 そう言えば今回田所も玲子も登場せずに終わったが、これは他の撮影が押しているため出られなかったというのが理由らしい。ちなみに由美かおるは
『エスパイ』に出演中。
<逃げた先々で必ず地震に遭う玲子。雨女ならぬ地震女か?
 すっかり認知症の進んだおばあさんが登場。これ今じゃ出来ないね。
 素人を勝手にケルマディックに乗せてしまう小野寺。これが会社だったら免職ものだが、小野寺に換えがいないのはやっぱり強みか。
 地震避難の際、船に乗って逃げようとする天草住民。船はかえって危ないんじゃないかな?島が沈むなんて場合は仕方ないのか?
 島に残るというおばあちゃんを大八車に乗せて山に向かう描写あり。まるで乳母捨て山だ。おばあちゃんが歌を歌っているのも見事にはまってる。
 おばあちゃんを後部座席に乗せたまま地割れを前にバイクで大ジャンプを敢行する小野寺…地震以前にお亡くなりになりそうだ。>
第18話 危機迫る小河内ダム

  監督:西川 潔
  脚本:山根優一郎
  特技監督:高野宏一
 沈む天草からなんとか脱出した小野寺と摩耶。そして宇宙衛星から送られてきた写真から、日本沈没は避けられないと見た内閣は、日本脱出のD2計画を内々に発令する。一方奥多摩ダムでは不気味な鳴動が起こっていた。
 地震地域は
小河内ダム。いよいよ地震は東京に入った。なにせここは東京の水源。ダムをなんとか決壊させないための田所と小野寺の奮闘が今回の見所。
 ついに発動されたD2計画。ここから単に日本沈没だけでなく、国際社会の中で日本人を受け入れさせねばならないという国際的な問題に発展していく。
 今回も摩耶が登場。小野寺が田所の所に彼女を連れて行ったら、いきなり奥多摩湖を飛んでくれ。という無茶苦茶ぶり。それだけ余裕がないって事か。
 今回は実際にダムの破壊はなかったのだが、ちゃんと伏流の決壊によって家々が飲み込まれるシーンはちゃんとあり。
 今回ゲストキャラとして藤木悠の他、下條アトムと水沢アキが登場。今観ると二人とも初々しいね。
<流石大人向きと思えるのはD2を「ディートゥー」とちゃんと発音してることだな。
 東京に降り続く雨はなんと5日間で2000ミリに達したという。ダムの決壊以前に都内は水浸しになってるくらいの雨量じゃないのか?
 小野寺の行くところどこにでも現れる摩耶。女版田所博士って所だな。
 土砂崩れ現場を掘り起こすシーンでは、何故か掘ってる地面は全く変色してない。普通の地面に見える。>
第19話 さらば・函館の町よ

  監督:金谷 稔
  脚本:長坂秀佳
  特技監督:川北紘一
 九州の大惨事に日本人の目が向いているその時、玲子は疎開地の北海道にいた。こんな所にも異変は起こっており、普通現れることがない氷山が現れていた。一方、田所から馘を言い渡されてしまう小野寺は、憤懣やるかたなく玲子のいる北海道へと向かうのだが…
 地震地域は
小樽渡島半島。北海道壊滅の序章。
 話は玲子がいる北海道へ。ここで高校生と合流した玲子は賑やかな日常を送っているが、そんなところに本物の地震がやってくる。前半部分はその予兆で、太陽の光がやたら眩しくなってみたり、氷山が海の中から現れてみたりと言う感じ。そして徐々に盛り上げておいて、後半になって函館の街壊滅というかなり凄い出来事が起こる。特撮の方もかなり派手で、教会の鐘楼や五稜郭が見事にぶっ壊れてしまった。BGMの四季も雰囲気出してる。
 日本沈没がかなり具体化し、田所もかなり苦悩している。小野寺を馘にしたのは、後は民間人に迷惑をかけられないと言うことと、小野寺に残された時間を思い通りに生きて欲しいという親心かららしい。
 極大の地震が起こる中、極小の人間ドラマ。本作を象徴するかのような話になっていた。後半、玲子の友達がみんな湖に沈んでしまう描写は圧巻とも言える。よくやったよ。
<後半はいくつもの判断ミスが続く。リーダーを心配させてはいけないと、身体の不調をおして行軍するおばあちゃんも、それで高校生達を先行させて自分だけ残った小野寺も、先に行った高校生達も…しかし現実では実によくある出来事でもある。>
VOL.7
<A> <楽>
第20話 沈みゆく北海道

  監督:金谷 稔
  脚本:長坂秀佳
  特技監督:川北紘一
 最も沈没現象が遅いと思われた北海道が地震に襲われた。田所は日本沈没が急激に加速してきた事を予感し、残り時間があと僅かしかないという事実に絶望の色を深めていた。その間にも北海道の地盤沈下は加速度を増していく。一方怪我をして病院に運ばれた玲子を北海道で捜し続ける小野寺。
 地震地域は
夕張札幌。それ以前に北海道全てが沈んでしまう。ドラマも見所は満載で、沈没が来ることに対し意固地になる人、パニックを起こす人、あるいは自分が責任者だからと言ってふんぞり返る人。その中で人情を見せる人と、実に様々。
 もちろん特撮も力が入っており、札幌の大陥没はド派手。これだけのものを一気にぶっ壊すのはさぞかし快感だろうとも思う。今回もビバルディの四季がBGMで用いられており、それも凄い。
 首相の発言で「日本沈没はある」という言葉が出る。だが、それは田所の言った三ヶ月ではなく、三年という時間だった。これは苦渋の選択だったと思われるが、嘘をついたという事実は残る。これによって日本人は逆に落ち着いてしまったという。これが良かったのか悪かったのか。
 日本は沈没するという噂に対し、一人の老人がひたすら一人で雪祭りをしてる姿があり。日本に対する愛情溢れる発言はなかなか心打たれる光景だが、思わずそれを手伝ってしまう小野寺はおかしくないか?
 又しても摩耶が登場。小野寺にさかんにちょっかいを出していた。
<摩耶は小野寺がD計画から外れていることを知っていた。どこからその情報が来たんだ?
 沈む札幌駅前の看板には「DISCOVER JAPAN 美しい日本と私」の文字が…えれえ皮肉だな。>
第21話 火柱に散る、伊豆大島

  監督:長野 卓
  脚本:長坂秀佳
  特技監督:高野宏一
 松川首相の会見により、一応沈静化した日本だが、日本沈没はいよいよ二ヶ月に迫っていた。そんな中、D2計画から外されてしまった小野寺は当てもなく東京に戻ることとなった。だがわずか二週間の留守で、東京は大きく様変わりしていた。そんな時、伊豆大島で大きな異変が起ころうとしていた。
 地震地域は
伊豆大島。極端な地盤沈下で、そこに住んでいる人の家だけがずぶずぶと地面に沈んでいき、やがて島自体が大爆発。
 東京中の異変が描かれることになるが、それに対する人の反応は様々。東京の街中でシンナー遊びにふける若者達がいたり、一方温泉がわき出たというので喜んで温泉宿を作ろうと考える人もいたり。地震が当たり前になって少しくらいの揺れだと平気になってみたり。
 しかし、こういう時に真実を知っていながら蚊帳の外に置かれてしまった人間が一番困る。小野寺の精神はどんどん荒廃していく。田所は小野寺に国外脱出して欲しいらしいが、この人の性格を分かってないな。結局戻ってきてしまう。一方玲子の方も看護師として一生懸命働いてるけど、北海道にいたはずが何故か伊豆大島にいる。地震に追いかけられてきたか?
 今回は噴火だから、特撮部分の映像は凄い迫力ある。火山弾まで表現されてるので、なかなか芸が細かい。ダイナマイト爆発の嵐の中ジープを走らせるシーンまである。特技監督はここでは中野昭慶にやってもらいたかったくらい。しかしこれ現代じゃ到底許されないレベルの撮影だぞ。
 今回登場する大島にいたおじいちゃんは吉田義夫。「悪魔くん」の初代メフィストだよ。あと玲子の先輩看護師役で登場した大井小町が良い役やってる。
<伊豆大島が噴火してる。こんな危険な状態で普通に国内線が運行しているという事実が凄い。
 伊豆大島で家だけが地面に沈むとは、普通考えられない事態だが、それだけとんでもないことが起こっていることの証拠となるか。>
第22話 折れ曲がる、日本列島

  監督:長野 卓
  脚本:山根優一郎
  特技監督:高野宏一
 九州は沈み、北海道も大きく形を変えた。そしてついには東京近くの伊豆大島までが噴火。今や事態はのっぴきならない状態に陥る。やがてフォッサマグナを軸に日本は真っ二つに曲がってしまうと推測する田所。そんな中、田所が恐れていた長野で異変が。
 地震地域は
長野西伊豆。長野のフォッサマグナの活発化によって日本はついに分断。
 最早事態は本州の、しかも東京近くにまで来ている。今回は孤立した伊豆の灯台守の家族が話の中心となる。どこかに陰のある家族構成で、その和解が描かれるため、どっちかというと人間ドラマに重点が置かれ、それに小野寺が関わるという構成。
 日本救護センターで玲子と再会する小野寺。玲子の後を地震が追う。さもなくば小野寺が追う。
 前回と比べると特撮面がやや劣る感じだが、折れ曲がる灯台からの命がけの脱出など、見所はちゃんとある。ウィンチを使い、ケルマディック号で崖を登るなんて無茶なことまでやっていた。
 今回は特撮でお馴染みのキャラが続々登場。灯台守の石黒役は土屋嘉男、その次男役は「超人バロム・1」の白鳥健一役鷹の浩幸、灯台所員に「仮面ライダースーパー1」の幽霊博士役の鈴木和夫。さらに「愛の戦士 レインボーマン」ヤマトタケシ役の水谷邦久が登場。今回も何くれと無く玲子を気にかける先輩看護師役で大井小町が登場。なかなか味がある。
<伊豆で仲の良い少年少女が登場。てっきり恋人かと思ったら姉弟だった。随分スキンシップが発達した姉弟だ。
 人命救助のためにケルマディック号を陸地に上げるという大技を行う小野寺。物理的に無理なんじゃないか?ロープを渡すことが出来るなら、それを伝って渡ってくればいいのに。>
VOL.8
<A> <楽>
第23話 海に消えた鎌倉

  監督:金谷 稔
  脚本:山根優一郎
  特技監督:高野宏一
 日本沈没は最早世界的に知られることとなり、世界中に日本人を分散させることに合意が取れた。だが日本人の全輸送には時間がかかりすぎる。だが松川首相はなかなか全国民に対する脱出声明を出せないでいた。
 地震地域は
鎌倉。とうとう小野寺の家まで壊れてしまった。そして描写こそ無かったが、大阪も水没。原作でもあったが、大量のヘドロのために海は真っ黒くなっているのが芸の細かさ。
 いよいよD2計画が本格始動。日本人の全輸送が始まった話。いよいよ来るところまで来たと言った感じ。
 一方、これまでのD計画は終了。小野寺はもう不必要と言われてしまう。その変わりの責任者として赴任した邦枝は絵に描いたような官僚主義の権威主義者。事ここに至ってはこういう人間の方がスムーズに実行できるのだろうけど、おおよそ人間味のない国枝の行動に当然ながら小野寺は怒りつつも、それを受け入れざるを得ない。その姿が痛々しい。
 そして鎌倉壊滅に救援に向かう小野寺と玲子はここでも鉢合わせ。このところいつも遭ってるよね。小野寺の弟家族とも玲子は接触。一人でも患者がいる限り日本に残るという玲子の性格の変化が極端だ。
 田所には娘がいることが分かった。
 鎌倉の地震は町並みまで細かく作られ、これまた迫力あり。鎌倉の大仏が地面に没してしまうところまで細かく作ってる。
<田所は「よくこんな私にこれまで付いてきてくれた」と小野寺にしみじみと語る。ほとんどストックホルムシンドロームみたい。>
第24話 東京都民・脱出せよ

  監督:金谷 稔
  脚本:山根優一郎
  特技監督:高野宏一
 日本沈没は進み、四国が真っ二つに割れ、大阪も水没してしまう。世界各国の協力の下、日本国民は次々に国外脱出していく。その中で脱出計画遂行のため邦枝と共に脱出経路確保の爆破に奔走していた。
 地震地域は
東京。都内の70%は壊滅状態だそうで、いよいよ首都の壊滅が近づいてきている。
 こういう時に日本に居座ろうとする人もやっぱりいる訳で、そう言った人達をいかに脱出させようとするかが問題となる。そのためには非人道的な行いもしなければならない。元々が情が厚い小野寺も、邦枝の元で我を殺して任務遂行してる。かなり描写で言ってもきつい。
 その中でも小野寺と玲子の心温まる描写がちょっとだけあったりと、割とバランスも考えられてるみたい。
 邦枝の言った言葉だが、日本は沈んでも日本民族は生き延びねばならない。これは原作にもあった言葉で、原作者の小松左京が後の作品でも繰り返し語り続けていた。いよいよ原作のテーマに沿った物語になってきているようだ。
 そして後半になると、東京湾が隆起してしまい、それを防ぐために邦枝がとった方法は、なんと人間魚雷を参考にした爆破装置だった。恐ろしい事を考えついたが、確かに最小限度の被害で済ますにはこれが一番効率良い。そのためにケルマディックを使うというのだが、そのためには小野寺の腕が必要になってしまった。果たして小野寺は爆薬を積んだケルマディックから脱出できるのかどうか?東京都民のためには死んでも良いと呟きつつ、それでも玲子のことを思い、生き残りたいと願う小野寺。後半部分も盛り上がりはもの凄いものがある。
 冒頭に登場するのがヒッピー達で、ゴーゴーを踊ってる。時代がよく分かる描写だ。
<今回小野寺の叔父夫婦がかなり存在感出していて、相変わらずの夫婦漫才状態で、叔母さんのことを「お化け」と言ってしまう。夫婦の危機なのに、それで絆が強まったりする。
 海底1万メートルで脱出装置があるなんて無理じゃね?…と思ったら艦橋そのものを脱出ポッドに使うという方法が実際にあるらしい。>
第25話 噫々 東京が沈む

  監督:福田 純
  脚本:山根優一郎
  特技監督:高野宏一
 日本沈没はますます進み、都内は最早火の海と化していた。その中で脱出者の逃げ道を確保しようと脱出実行委員会はフル回転で消火活動を続けていた。一方田所は生き別れとなった娘を捜し、廃墟となった東京を彷徨う。
 地震地域は東京。最早地震と言うよりも激しい火災が起こりっぱなしで、それをなんとか消し止めるしか出来ない。小野寺も休む間もなく髭面で消火活動を続けてる。
 田所の娘とは、なんと小野寺の旧知のマリアであることが分かった。そう言えば最初の頃に、生き別れになった父を捜すために日本に来たと言ってたな。長い伏線だ。しかしそれが再会できたとき、マリアは土砂の中に埋まっていて、虫の息状態。最後にお互いを確認しあって「お父さん」と言うのが精一杯だった。
 ここのところ激しい話が続いていたが、今回の話の中盤は田所とマリアの叙情的な話が展開。息抜きのような話だった。
 後半になると、又してもアクションの連続。小野寺役の村野は本当に燃えさかる火の中を飛び込んだり脱出したりと、本当に危険なことをやってる。そして日から逃げ惑う玲子の方は目の前で次々と人が死ぬのを目にしなければならない。と、かなりキツイ描写が目立つ。
 邦枝の言葉だが、海外に出た日本人はどんどん子供を作って、その国の人間達と同化しなければならない。国際化の重要なポイントであろう。いつこれが本当のことになるのか分からないのだから。
 特撮面については、やはり東京タワーの倒壊に尽きるだろう。最後にここでラジオ放送をしてるのは
『ゴジラ』を彷彿とさせる。
<廃墟となった東京で再会する小野寺と田所。なんたる偶然…というか、普通あり得ないだろ?
 昼間に大きな地震が起き、火の海となった東京。しかし夜の火事場面の流用のため、時々暗くなったり明るくなったりする。
 そう言えば16話で田所がマリアのお母さんの名前を聞いていたが、その時は違う名前だったな。どっちかが芸名かな?>
VOL.9
<A> <楽>
第26話 東京最後の日

  監督:福田 純
  脚本:山根優一郎
  特技監督:高野宏一
 1975年春。もはや日本沈没は行き着くところまで行ってしまった。沈む東京の中で互いを求める小野寺と玲子。地下道に閉じ込められてしまった玲子は最後まで諦めていなかったが…
 地震地域は東京だが、もはや日本全部と言っても良い。最後の最後で富士山が大噴火するのは、やはり富士山こそが日本の象徴という思いがあってのことかと思われる。
 最終回。もはや日本沈没の救出活動など考えも及ばず、ただ小野寺と玲子、田所の出会いと脱出に特化して描かれていく。こんな中にもドラマはあり、日本の国土で最後に生まれた女の子の話や、最後の最後に結婚式を挙げる小野寺と玲子など。かなり叙情的な話になっていた。
 姿は見えないが、渡老人が言った言葉は「日本人はまだまだ若い」。これは日本人が未だ日本という国にのみ閉じこもっていることを語っているらしい。日本人が世界各国に出て行き、そこで日本人として生きることの意味はどこにあるか。これはダブルミーニングでもあり、これから国際化が進んでいく日本という国でどのようにアイデンティティを持ちつつ国際化を図るか。という現実問題にもつながっており、この作品のテーマとも言える。
 原作や映画版とは異なり、この作品では小野寺のみならず田所や玲子も生き残り、玲子と小野寺は結婚までしているのが特徴と言えば特徴。まあこれで良いんだろうね。
<都合良く出会える小野寺と玲子の構図は最早言うべき事はないが、玲子の救出に使うジープがキーまで付いてそこにある描写はいかがなものか?
 小野寺と玲子の結婚式で響くオルガンの音。誰が鳴らしているのか?二人の耳にしか聞こえないものなのかもしれんけど。>
第27話 日本沈没  総集編。