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ドクター・フー

ドクター・フー事典

 2005〜2006

 世界最長のSF番組とされる作品で(最初の放映は日本の「ウルトラQ」をさかのぼること3年前の1963年)、1996年の放映以来10年ぶりのシリーズ再開作。これまで7期に渡って放映され、その度ごとに主人公ドクターと助手が変わっている。今回のドクターは9代目及び10代目に当たる(劇場公開作で8代目が登場しているが、これはTVシリーズにはカウントされていない)。
 雰囲気としては捻ったストーリー展開、皮肉なキャラクタの言い回し、歴史的考察の深さなどイギリス風のSF作というのがよく分かる作品で、特に前後編になった作品はボリュームも劇場作品並み。第9話「空っぽの少年」と第10話「ドクターは踊る」はヒューゴ賞まで受賞している。SFTV作品としては最高の出来と言えるのではなかろうか。

主な登場人物
ドクター・フー(9代目) (役)クリストファー・エクルストン。舞台俳優から初め、本国イギリスでは数多くの作品に出演している。
 愛称は“ドクター”。故郷の星を宿敵ダーレクとの戦いで失ったタイム・ロードと呼ばれる精神生命体。1963年に初めて地球に姿を現してから既に8回の転生を果たしており、今の姿は9代目。
ドクター・フー(10代目) (役)デヴィッド・テナント。
 12話で宿敵ダーレクを倒した際、9代目の肉体を損傷し、10代目として新生した。性格は全く変わってないが、年齢が若くなったため、見た目軽くなった。
ローズ (役)ビリー・パイパー。
 ローズ・タイラー。ロンドンに暮らす19歳。デパートの店員として働いていた時、倉庫の中で突然動き始めたマネキンに襲われたところをドクターに助けられ、以降ドクターと行動を共にすることになる。
ジャッキー (役)カミーユ・コデュリ。
 本名ジャクリーン・タイラー。ローズの母親。ローズをドクターに連れて行かれ、てっきり誘拐されたと思いこんでいた。後にドクターと和解し、時折二人の冒険に巻き込まれていく。夫のピートとは死に別れ。
ジャック (役)ジョン・バロウマン。
 キャプテン・ジャック・ハーネス。ドクター同様タイムトラベラーだが、詐欺師でドクター達を騙そうと試みるが、ドクターに命を助けられ、ターディスの新メンバーとなる。
ミッキー (役)ノエル・クラーク。
 ミッキー・スミス。ローズの恋人。少々頼りない所があるが、当初ローズをさらったドクターを仇扱いしていたが、和解後、ローズとドクターを必死に守ろうとする。19話からターディスの乗組員となるが、20話でパラレルワールドに止まる。
話数 タイトル コメント DVD
第1話 マネキンウォーズ
“ROSE”

  監督:ケイス・ボーク
  脚本:ラッセル・T・デイヴィス
 ロンドンのデパートで働くローズはある晩、デパートの地下で動くマネキンに襲われた。逃げ場をなくしてローズは、突然現われた“ドクター”と名乗る男に助けられるのだった。そして翌日、ローズの自宅にドクターが現れる。
 敵は
ネスティーン。プラスティック生命体。あらゆるプラスティック製品に特殊な信号を送って自在に操ることができる。公害物質を取り込むために地球に来たらしい。マネキンを操る。そしてオウトン。ネスティーンに操られるマネキンのことで、これまでのシリーズでも度々登場してきたのだとか。
 ドクターの登場が描かれる話だが、既に話自体は昔からあるため、観ている側には違和感なく受け止める事が出来るように出来てるのが特徴。
 話の作りは派手さを抑え、人間(?)同士の会話が主軸となっているので、特撮部分は最低限に抑えられているのが特徴かな?イギリス流のブラック・ジョークも満載。とくにドクターの語る、地球の運命については皮肉が込められすぎ。これもやっぱりイギリスっぽし。
 アクション部分のしょぼさは、まあ仕方ないにせよ、かなりのカルト作として楽しめる作品でもある。
VOL.1
第2話 地球最後の日
“THE END OF THE WORLD”

  監督:ユーロス・リン
  脚本:ラッセル・T・デイヴィス
 ドクターとローズはターディスに乗り、50億年後の未来。地球の最後の日にやってきた。ドクターたちが降り立ったプラットフォーム・ワンと呼ばれる展望宇宙船には、さまざまな種類のエイリアンたちが、地球消滅という一大イベントを鑑賞しに集まっていた。
 敵は
鉄クモ。実際は名称は無いので、これは仮称。時間戦争でプラットフォーム・ワンを壊すために何者かが放ったもの。
 2話目は突然地球の最後が語られる話。展開が早すぎるような気がするけど、これも又ジョークなんだろう。
 当然ながら50億年後には文化も変わっているようで、軽いカルチャーショックシーンも満載。それら一つ一つが軽めのジョークになってる。
 ドクターは精神生命体らしく、体を次々に取り替えている。今のドクターが実は9代目であることが発覚。前のシリーズで8人いたと言うことになるのか?観てないけど。
<ドクターがローズに「いつに行きたい?」と聞いて、いきなり50億年後って、ほとんど『タイム・マシン 80万年後の世界へ』(1959)の世界…と言うか、意識しまくり。事実あの話にオリジナル要素を加えたのが本作と言って良い。>
第3話 にぎやかな死体
“THE UNIQUIET DEAD”

  監督:ユーロス・リン
  脚本:マーク・ガティス
 ローズに未来を見せたドクターは、次にローズを過去に連れて行くことにした。1869年のクリスマス・イブのイギリスの町、カーディフに着いた二人は文豪、チャールズ・ディケンズと出会うのだが、何とこの日、この町では死体が動き回っていた…
 
ゲルス登場。ガス状のエイリアンで死体に入り込んで動き回る。元は肉体を持っていたが、タイム・ウォーにより肉体を失い、時空の裂け目から地球にやってきたのだという。
 前回未来で今回は過去。しかも実在の人物との遭遇という、タイムトラベルものの王道を行く作品に仕上げられている。実質的には幽霊話になってるが、ディケンズ自身に「クリスマス・キャロル」の朗読をさせるなど、なかなかシャレの効いた楽しい話になってる。ドクターはディケンズの熱狂的ファンだそうだが、この辺りもイギリスっぽさだ。
 霊は嘘を言わないというのは嘘である。オチもなかなか洒落てる。
 ローズが色々と引っかき回すのもいつも通りだが、それが上手く時代を説明するのに役立ってる。
 何かと面白い知識を付けてくれる話だが、今回「ファン」というのが「ファナティック(熱狂的)」からと説明される。それと、割と使い古されたギャグだけど、「エイリアン」を「異邦人」と言ってるシーンもあり。
<ドクターは物知りなのに、どこかずれてる。今回は19世紀のイギリスの正装はセーター姿であると思いこんでる。
 死体を動かすことを「リサイクル」と簡単に答えるドクター。なかなか皮肉な。
 起きあがった死体が襲ってくるシーンはそのまんまドーン・オブ・ザ・デッド(1978)。狙ったんだろうね。>
第4話 UFO ロンドンに墜落
“ALIENS OF LONDON”

  監督:ケイス・ボーク
  脚本:ラッセル・T・デイヴィス
 ロンドンに帰ってきたローズだったが、ドクターといた時間は僅か12時間のはずが、12ヶ月も過ぎていたのだ。母はローズの捜索願を出しており、恋人のミッキーはローズ殺人の嫌疑をかけられていた。丁度そんな折、ロンドンにUFOが墜落し、町はパニック状態となってしまう。更に首相を初め閣僚達は行方不明になってしまう。ローズには傍観を決め込むと言い残していたドクターだったが…
 
スリジーン登場。ラキシコリコファラパトリアス星出身の宇宙人。1メートルに満たない緑色の体とつぶらな目をしているが、性格は凶悪で、地球に金儲けにやってきたという。
 今回はそのままズバリ宇宙人による侵略で、極めてストレートな作品に仕上げられている。ファーストコンタクトの瞬間から、その悪が露見するまでを丹念に描くが、ストーリーそのものはこれまたまんま宇宙戦争(1953)だったりする。こういうケレン味があるから良いよね。
 流石900年も生きているだけあってドクターは咄嗟の場合の身の対処方法がよく分かっておられる。混乱自体での軍隊は、指揮系統を明確にすれば良いのだ。パニック中に命令口調で語るだけで済む。
<3話かかって元ネタがウェルズとディケンズと、イギリス作家が連発しているのがらしいところ。
 12時間のつもりが12ヶ月未来に来てしまったドクターとローズ。だったらもう一度ターディス乗って前の時間に戻ればいいと思うんだけど。
 ローズの母親のお陰で宇宙人と思われてしまったドクター。無理もないけど。でもこんな時にも全く動じないのがドクターだな。>
第5話 宇宙大戦争の危機
“WORLD WAR 3”

  監督:ケイス・ボーク
  脚本:ラッセル・T・デイヴィス
 スリジーンの襲撃を受けたドクター達はシェルターとなっている閣議室に逃げ込むが、同時に外に出られなくなってしまう。一方グリーン首相代行に化けたスリジーンは地球征服を企むエイリアンによる破壊兵器を確認したと発表し、宇宙戦争突入を宣言する…
 前回に続き
スリジーンの話。明らかに地球征服の目的を持って行動している。ちなみにこの名前は星人の名前ではなく、地球に来た彼らのファミリーの名称らしい。カルシウムの塊であり、酢をかけると爆発してしまう。
 首相官邸が爆発したとか、物語はなかなかに派手ではあるが、むしろ見所はドクターとハリエットの掛け合い漫才であるところが結構笑えてしまうが。そして活躍したのはむしろローズの恋人であるミッキーの方。今回のドクターはむしろ知恵の方で活躍していたのも特徴か。ミッキーはスリジーンの爆発に巻き込まれてぐちゃぐちゃになってしまったけど。
 テンポの良い会話と酷い目に遭う人間は徹底して貧乏くじを引くというのは、皮肉っぽくて良し。
<しかし、こうなってしまうと地球は宇宙人がいるという事実にようやく気付いたと言うことになる。ここからどういう物語が展開するのやら。
 10秒後に戻ると言い残して去っていったドクターとローズ。まあ、それで戻らないのが本作の特徴か?>
第6話 ダーレク 孤独な魂
“DALEK”

  監督:ジョー・アーン
  脚本:ロバート・シャーマン
 救助信号を受信したドクターは2012年のアメリカ・ユタ州にターディスを向ける。その地下深くにあるエイリアン博物館で、その持ち主ヴァン・ステインに捕らえられてしまったドクターとローズ…
 
ダーレク登場。ドクターの宿敵で、故郷ギャリフレイを滅ぼした張本人。現在はヘンリー・ヴァン・スタテンによって捕らえられている。外見は金属のロボットだが、実は中に軟体動物状の本体がいる。
 シリーズを通しての宿敵ダーレクとの接触が描かれる話だが、この話ではむしろイカレた金持ちヴァン・スタテンとの会話が主軸となっている。結局ドクターを窮地に陥れたのも、救うことになったのもローズだった。この作品のパターンそのものを象徴した話であろう。
 ダーレクの登場により、ドクターの過去やダーレクとの確執など、ストーリーの根幹部分が語られており、物語もハードで、演出も相当に派手。
 基本的に皮肉屋ではあるが優しいドクターがダーレクに対してのみ敵意を露わにしている。ダーレクから「お前の方がダーレクらしい」とまで言われるほどで、よほど憎かった事が分かる。なんとダーレクを閉じこめるためにローズまで見殺しにしようとした。
 そして何故かローズを殺すことが出来ないダーレク…むしろこの話ではダーレクの方が可愛く見えてしまう。
<前のシリーズは観てないからなんだけど、ダーレクのデザインは無茶苦茶レトロ。禁断の惑星(1956)のロビーかスター・ウォーズ(1977)のR2-D2っぽい。なんでも昔は階段を上れなかったそうだが、現在は浮遊することを覚えたのだとか。
 舞台をわざわざアメリカのユタ州に取ったと言うことは、あるいは製作者はモルモン教に対し何らかの思いがあるのかな?
 ダーレクが階段を上れないと思いこんだローズはダーレクに対し高度を取るが、ダーレクは飛び道具持ってるんだけど…
 ダーレクが生物を殺すのは「自分とは違っている存在を悪と見ているから」だとか。皮肉に溢れてて良いね。>
第7話 宇宙ステーションの悪魔
“THE LONG GAME”

  監督:ブライアン・グラント
  脚本:ラッセル・T・デイヴィス
 ローズに加え、新しくアダムを加えた一行。ドクターは二人に人類史上最高の時代を体験させようと、2000世紀の宇宙ステーションに連れていく。だが、違和感を覚えたドクターは、この時代が完全にコンピュータによって制御され、人類は頭に埋め込まれたチップから膨大な情報を手に入れていると分かる。だが、平和を謳歌している人類は実は奴隷化されていたのだ…
 
ジャグラフェス登場。鋭い歯を持つ軟体動物。一見ナメクジのように見えて気持ち悪いが、知性は大変優れており、更にテレパシー能力も持つ。約100年の間、人類をコントロールしていた。
 今度も又未来の話。話はどこか『アイランド』(2005)に似ているが、あの映画自体古典SFのパクリだから、むしろ『タイム・マシン 80万年後の世界へ』(1959)と言ったところか。物語はイギリスよりはアメリカ風味が強い感じ。
 折角アダムというメンバーを加えたのに、好奇心の強すぎるアダムは結局ターディスにはいられなくなってしまった。これがルールなのだそうだが、この人には期待していただけあって、ちょっと残念だった。
<この時代の飲み物は牛肉味だとか。あんまり欲しくないな。
 ドリルを頭に突っ込むシーンはちょっと『スター・トレック2 カーンの逆襲』(1982)っぽいところもあり。>
第8話 父の思い出
“FATHER’S DAY”

  監督:ジョー・アーン
  脚本:ポール・カーネル
 赤ん坊の時に交通事故で父を亡くしたローズは父ピートの生前の姿を一目見たいとドクターに頼んで、父が死んだ1987年へとタイムトラベルする。ところが目の前で車にはねられそうになった父を見たローズは思わず駆け寄って助けてしまう。死を回避したことで喜ぶローズだったが、してはならない時空改変を行ってしまったため…
 
リーパー登場。時の流れが乱れると出現し、世界をどんどん喰いつくして、地球の全てを消し去ろうとする存在。巨大なコウモリのような姿が特徴。
 見所が多い作品で、時空の乱れを起こしてしまったことの悲劇が描かれる話。そう言えば『オーロラの彼方へ』(2000)が大嫌いな私にとっては、大変溜飲を下げる話に仕上がってくれた。そう。時間を変えるって事は、大きなリスクを負わさねばならないのだ。それをストレートにやってくれただけでも充分。
 ローズのせいで事件が起きるが、やっぱりそのろーずのお陰で助かるというのは本作のパターンだな。今回はローズ自身よりも父親のピートの方が目立ってたね。
 そう言えばツッコミ所がなかったけど、終わり方がちょっと単純すぎたかな?
第9話 空っぽの少年
“THE EMPTY CHILD”

  監督:ジェームズ・ホーズ
  脚本:スティーヴン・モファット
 宇宙を航行中のターディスはある船から発する危険信号を察知し、それを追う内に1941年のロンドンに着陸した。折しも第二次世界大戦下、ロンドン大空襲の真っ只中。その中で落下した宇宙船を探すドクターだが、ローズは屋根の上で「ママ、ママ」と呼ぶ子供の影を見つける。この時代に一体何が起きているのか…
 
ナノジーン登場。素粒子ロボットで人体を治癒する能力を持つ。
 そして“自称”色男のジャック・ハーネスが登場。見えない宇宙船に乗り、ドクターとは違った種族のタイムトラベラーで詐欺師という人物。
 ロンドン空襲下の話が展開。そこの人の格好などは確かにそれっぽい。今やCG技術のお陰でTVシリーズでもそこそこの空戦シーンが観られるのが面白い。ただ、話自体は結構ホラー調。ナンシーという少女が連れてきたのはドクター・コンスタンティンという医者。思いっきりマッド入ってるみたいだけど、こいつが突然体に変調を起こして防毒マスク付けた姿になるのは、なかなかにシュール。ラストも防毒マスクかけた人間の群れに襲われて…素敵だ。
 今回はローズがドクターに対し、「ミスター・スポックになってよ」と発言。どうやら本作も50年代のマッドサイエンティスト映画の多くからインスパイアを受けてるみたい。
<飛行船のロープにぶら下がった状態で「ロンドン空襲のど真ん中、イギリス国旗のTシャツ着て携帯いじってる」とはローズの言葉だけど、確かに設定的には凄いシュールだ。
 登場してる子どもは何故か防毒マスクをかぶってる。これだけでもかなりシュールな光景。>
第10話 ドクターは踊る
“THE DOCTOR DANCES”

  監督:ジェームズ・ホーズ
  脚本:スティーヴン・モファット
 空襲下のロンドンでは秘かにガスマスク姿の人間が増え続けていた。ドクターとジャックの機転で何とか宇宙船に逃れたものの、この奇病はとうとう空気感染までし始める。この状況を果たしてどう打開するのか…
 前回登場し、ローズの傷を癒した
ナノジーンが実は今回の黒幕。マイクロマシーンの集合体だが、偶然最初に癒した人間がガスマスクを付けていたため、これが人類の姿と勘違いして全ての人間を“癒す”ため人間を次々ガスマスク姿にしていく。
 前後編の後編。感染するとガスマスク姿になってしまう奇病と闘うドクター達の戦いが描かれる。ほとんどホラー映画っぽく演出されているのも特徴で「怪談」のむじなの話っぽくなってる。
 こういう危機的状況にあって、逆にジョークが多くなるのはやっぱり英語圏のSFの特徴。殺伐とした人間関係の中、それを緩和するためには必要なものなのだろう。特にドクターとローズの関係が深まっていくのが面白い。ドクターは長生きしてる割に結構短気な所があったりして、よく悪態を付くのだが、それが逆に魅力になってるよ。
 タイトルが結構ふざけていたけど、ドクターは果たして踊れるのか?というのは結構重要な要素になってる。
 そう言えばこれまでほとんどの話は何らかの元ネタが存在したが、今回は完全にオリジナルっぽい。かなり話も重い上に展開も意外で笑いの要素もふんだんに用いて。更にツッコミ所もない。とてもいい話だ。
第11話 悲しきスリジーン
“BOOM TOWN”

  監督:ジョー・アーン
  脚本:ラッセル・T・デイヴィス
 ウェールズ地方にあるカーディフでは新市長のもとで原子力発電所の建設計画が進んでいた。だが、その市長こそ、半年前ドクターによって退治されたはずのスリジーンの生き残りマーガレットだった。丁度その時、ミッキーも加えたドクター達一行もカーディフも滞在していたのだが…
 敵は
スリジーン。4〜5話で登場した存在で、その生き残りの女性マーガレットが今回の敵となる。カーディフの新市長に収まって原発開発にいそしんでいた。目的は原発を爆発させること。これによって地球は破壊されるが、そのエネルギーで宇宙に戻ろうとしていた。
 ターディスの新メンバー、ジャックを加えての新しい話。そこにミッキーも加えて大人数の話となった。ただ、その中で色々とキャラの変化やあり方が問われていく。ドクターは基本的に平和主義者だが、人の死を目の当たりにするのを徹底的に避けていたらしい。これまで彼が関わって死んだ人間も多いが、それに目をつぶっているという事実をマーガレットに指摘されて結構怯えていた。一方、ミッキーには彼女が出来たらしい。ローズもちょっとショックだったようだが、結局この二人は今は別れてしまうらしい。
 又、ターディスの中枢ユニットというのが今回出てきたのだが、その光に照らされたマーガレットは何故か卵に戻ってしまった。一体どんな秘密がターディスには隠されてるんだろう?
 地球の危機が叫ばれる一方、個々のキャラに焦点が当てられたバランスの取れた作品に仕上がってるが、なんか妙な感じ。いろんなものに決着が付いて、まるで“第一部完”みたいだ。
 今回の舞台カーディフは3話でも舞台になっていたが、どうやら過去シリーズでドクターとの関わりがあったらしい。言葉の端々にそれが現れてる。
 ここにも「バッド・ウルフ」の言葉が出てくる。ここではウェールズ語で「Blaido Drwg」という言葉になってるけど。
<今回マーガレットの名言がたくさん。「私が地球の大地に足を置いている限り、原発は安全である」と断言する。これは確かに間違えてはいないけどね。ドクターが「地球を爆発させようとしただろ?」と言ったら、「それだけでしょ」と答える。更にウェールズ地方の利権を熱弁したりと、なかなか良いキャラに仕上がってる。>
第12話 バッド・ウルフ
“BAD WOLF”

  監督:ジョー・アーン
  脚本:ラッセル・T・デイヴィス
      テリー・ネイション
 宇宙を航行中のターディスは突然2001世紀のTV局に転送されてしまう。無理矢理視聴者参加型番組に出演することになる3人だったが、実はこのゲーム、優勝者を除いて敗れた参加者全員が原子に分解されて殺されてしまうというとんでもないものだった。ドクターとジャックは脱出に成功したものの、ローズは生き残りを賭けて最後の問題に挑んでいた。
 7話で訪れた2000世紀から100年後の地球を舞台とした話で、ジャグラフェスはいなくなっているが、今度は地球人は増えすぎたため、人間を間引くため命がけのクイズ番組が作られていた。ドクター達が何故ここに送り込まれてきたのかを探るのが今回の話の肝で、非常に緊張感溢れたSFチックな話になってる。
 ドクターがジャグラフェスを倒したことによって地球は情報遮断の時代に入り、そこで起きた混乱がこの時代を作ったらしい。この理由はこの時代にもダーレクが存在しており、地球を支配していたため。7話のジャグラフェスも実はダーレクによって送り込まれていたらしい。
 滅びたはずのダーレクがなんと50万人以上も生き残っていたというのも衝撃的事実。どうやら滅びたと思えたのは間違いだったらしい。
 ダーレクにとっては唯一恐れるのがドクターだったが、ダーレクに対し憎しみを募らせるドクターは、ダーレクの申し入れをことごとく拒否している。
 ここでも又バッド・ウルフという名前が出てくる。ここでは2000世紀のテレビ会社の名前だった。バッドウルフとダーレクの関わりがどうなのか、それはこの後の話。
 物語の展開を見守るコントローラーはマイノリティ・レポート(2002)のプリコグみたい。
<2000世紀から見て、古代の地球大統領はシュワルツェネッガーだそうだ。
 ローズが応えるクイズ問題の中にはこれまでのおさらいも入ってる。なかなか興味深い。>
第13話 わかれ道
“THE PARTING OF THE WAYS”

  監督:ジョー・アーン
  脚本:ラッセル・T・デイヴィス
 ドクターたちはターディスでダーレクの宇宙船に乗り込んでローズを救出する。しかし、そこにはダーレクの大群とその皇帝が待っていたのだ。地球侵略に向けて発進したダーレク艦隊を前に、ドクターは最後の戦いを決意するのだった。
 敵は
ダーレク。タイム・ウォーで全滅したはずだが、皇帝だけが生き残っており、何世紀もかけて人間の肉体からダーレクを再生し、大量生産して軍備を整えていた。50万にも及ぶ大群が、地球を新たな母星にするために降りてくる。
 シリーズを通して天敵であるダーレクとの戦いが描かれる。節目となるだけあってほとんどギャグが無く、ドクター、ローズ、ジャックの個々の戦いも後がない決意に溢れていた。徐々に人間の所に近づいてくるダーレクに押しつぶされていく人間の群れと絶望の中デルタ・ウェーブを作るドクターは全人類抹殺の汚名を着るか、ダーレクを全滅させるかの選択を強いられる。一方、地球に戻ってからも話は終わらず。ローズはローズの戦いが待ってる。その展開も良い。ラストシーンだけがちょっと間に合わせっぽいが、全般的に言えば素晴らしい話だ。
 バッド・ウルフという言葉が今回も出てくるのだが、これはダーレクによるものではない事が発覚。この言葉は実はターディスと同化したローズが全てをこの時空に集めるため、自分自身に宛てたメッセージだった。バッド・ウルフという会社に注意せよ。って事かな?だとしてもちょっと中途半端な気がするが。
 11話に続き、今回もターディスの中枢が現れる。それが実は本作の最大の謎となっていたが、全てはダーレクと戦う一瞬のためにあった。一方、ローズからその力を自分の元に引き寄せたドクターは9回目の死を迎えることになる。
<話が詰まっていることは分かるが、ローズの救出が簡単すぎるのがなんとも残念な所。
 ゲーム・ステーションに侵入したダーレクはなかなかやってこないが、地球に降下したダーレクはあっという間に地球を征服してしまった。
 2001世紀でも使ってるのはM16?デザインは20万年かかって変わらないのかよ。>
第14話 クリスマスの侵略者
“THE CHRISTMAS INVASION”

  監督:ジェームズ・ハウス
  脚本:ラッセル・T・デイヴィス
 2006年に帰ってきたターディスを迎えるジャッキーとミッキー。だが、ドクターはまるで別人に変わっていた。再生に伴うエネルギー交換のため、眠りにつくドクター。だがそのエネルギーを感知したパイロット・フィッシュというモンスターが襲ってくる。一方、かつてドクター達と共に戦い、今や首相に就任したハリエットが推進する火星探査船が通信を中断し、再び送られてきた映像には異星人の姿が…
 第2シーズンの開始。放映時間も10分ほど長引いている。ドクターも新しくなり(?)、新しい展開が開始される…ドクターの性格は変わってないけど。
 それでパイロット・フィッシュとシコラックスという異星人が登場。パイロット・フィッシュは肉体再生に伴うドクターのエネルギーを求めてやってきたが、肝心なのはパイロット・フィッシュの動きに釣られてやってきたシコラックスの方で、人間を操って地球を征服しようとする。
 『インデペンデンス・デイ』(1996)
『宇宙大作戦』をくっつけたような内容の作品で、えらく力は入ってる。ドクターの力も改めて見せつける事になった。それで重要な役割を果たしたのはなんと紅茶というのもイギリスらしくって良い。
 ラストシーンはかなり重め。政治とは残酷なものだ。イギリスの黄金期とは、エイリアンからの襲来を完全に防ぐ防衛システム…「ウルトラセブン」を思わせる。
 ハリエットはエイリアンの襲来に際し、アメリカの要求を完全に拒絶する。イギリス人としてやってみたかったんだろうね。
 実に簡単に人を殺してしまうシコラックスの姿は、日本の特撮では観られなくなってしまったなあ。
<再生してもドクターの性格は変わってない。ジャッキーのお世話焼きぶりに対し、怒鳴りつけるなど。
 ミッキーは前に「彼女がいる」と言ってたけど、ずーっとローズにくっついてる。もう別れたの?
 ハリエットのスタッフはシコラックスを火星人ではないという。その理由は「似てないから」…何と?
 シコラックスの言葉の変換が面白い。例えば「イカす」とか…頭の柔らかい人が翻訳してるんだろうな。
 シコラックスが使うテレポートの方法はどうやら「宇宙大作戦」と同じようなものらしい。
 イギリスを潰すというドクターの言葉「彼女、やつれたな」…う〜む。単純な。>
BOX2
第15話 新地球
“NEW EARTH”

  監督:ジェームズ・ハウス
  脚本:ラッセル・T・デイヴィス
 西暦50億年後に来たターディス。既に地球は無く、人類は遠く離れた天体に移住していた。既に“人類”と呼ばれる存在はほとんどおらず、その中に放り込まれたローズは奇異の目で見られてしまう。実はこの都市のさる人物によって呼ばれている。というドクターなのだが…
 2話に登場した
フェイス・オブ・ボーおよびカサンドラと再開する話。フェイス・オブ・ボーは2話の時点で死にかけており、ドクターを呼び寄せ、“大いなる秘密”を伝えようとする。一方カサンドラはオリジナルの人類であるローズの肉体を手に入れようとする。そしてプレニチュードのシスターが登場。猫人間だが、奉仕の心を持って患者を診ている。
 2話に続き50億年後の話。地球は既に無いが、ここでドクターとローズは懐かしい顔に出会う。
 ローズの肉体を乗っ取ったカサンドラはいきなりドクターに熱烈なキス。ドクターの方がタジタジだった。これまでにない描写だね。
 ドクターがローズが変わったのを知ったのは、病気にされるために生かされていたクローン人間を見てローズが反応しなかった事から。ちょっと遅かったね。
 プレニチュードのシスターの襲撃を逃れるため、カサンドラがしたのは病原体に冒されたクローン人間の解放。その描写はほとんどリビングデッドもの。完璧にホラー描写だった。
 描写は面白かったが、オチそのものは結構単純だった。カサンドラが良い役やってるよ。
<50億年後も人間の治療に使われてるのは点滴なのね。随分と原始的な。
 カサンドラに意識を乗っ取られてしまったドクターは完全に女言葉になってしまった。いやはや凄い描写だ。それでドクターとローズが次々にカサンドラの意識が入れ替わってしまう。すげえ変。
 結局“大いなる秘密”を語ること無かったフェイス・オブ・ボー。後半のキーポイントになるのかな?>
第16話 女王と狼男
“TOOTH AND CLAW”

  監督:ユーロス・リン
  脚本:ラッセル・T・デイヴィス
 ドクターは1979年のロックコンサートにローズを連れて行こうとするが、ターディスは暴走してしまい、100年前のスコットランドに着陸してしまった。そこでヴィクトリア女王と出会う二人。馬車で旅する女王の護衛にちゃっかりと収まったドクターとローズだが…
 
狼男が登場。数百年前に地球に落下した異星人で、人間に寄生して生き続けてきた。ヴィクトリア女王に取り憑いて世界征服をしようとした。ヤドリギが苦手という特徴を持つ。
 なんとヴィクトリア女王が登場。流石イギリスの番組だけのことはあり。世代としては夫アルバートを失ってしばらくしてからの事。名君の一人とされるヴィクトリア女王は夫アルバートを大変に愛した女王としても知られるが、アルバートに政治に関わることは決して許さなかったという。その孤独がよく現れていた。
 話は狼男ネタだけにホラー風味満点。
 ペンは剣よりも強し。結局重要なのは知恵である。この命題はおそらく本作の重要な要素になっている。女性の強さも充分伝わってくる。伏線の生かし方も上手く、後に残る謎も多数。ウィットも効いていて、大変気に入った話。
 狼男だからバッド・ウルフの話が続いているのかと思ったのだが、それとは違っているような…あるいは関連があるのか?現時点では分からない。最後にヴィクトリア女王が狼男の遺伝子をもらったのかどうか、その事は最後まで不明。もし本当に噛まれてたら、21世紀には王族から狼男が出るはず。
<スコットランドを表現するのに日本語にすると、完璧に田舎もんの言葉になってしまった。まあ、この訛りが結構重要な要素にもなってる。
 異星人慣れしたローズだけに、狼男を見た瞬間、すぐに彼が異星人だと気づいてる。こういう慣れはイヤだな。本物の狼男に出会えたことで喜んでさえいる。
 狼男を見たドクターはひと言。「美しい」。この人の美的感覚も相当おかしい。
 ヴィクトリア女王の持つ世界最大のダイヤを見たローズは「ママがいなくて良かった。素手で狼男と戦ってたよ」で、ドクターは「きっと勝つな」…良いジョークだ。>
第17話 同窓会
“SCHOOL REUNION”

  監督:ジェームズ・ハウス
  脚本:トビー・ホワイトハウス
 イギリス。ある学校で新校長フィンチが赴任して以来、生徒たちの成績が急激に向上。不審に思ったミッキーからの連絡を受けて現代に戻ってきたドクターたちは、学校の潜入調査を始めるのだった。
 
クリリティーン登場。あらゆる種族の遺伝子を自らのものにして進化し続ける異星人。人間の子供の能力を利用してスケイサス・パラダイムを解析することにより、宇宙支配を企てた。現在はコウモリのような姿をしている。
 舞台は現代。学校の潜入操作の話になっている。異星人ものには違いないが、これまでの展開と較べ、かなり異質な話になってる。学校の話だが、その基調は大変大きな話で、なんとアカシック・クロックに関わる話だった(ここではスケイサス・パラダイムという名前だったが)。K9の自爆という、悲しい話もついているし、盛り上がりも派手。これはこれで大変面白い話だった。
 まだ観ていないのだが、どうやらこれまでのシリーズに関わっている人物やアイテムが多数登場。サラ・ジェーンというのは昔のドクターの相棒だったらしい。この辺ちょっと知りたいな。特にサラ・ジェーンとローズはお互いにライバル意識剥き出しってのが笑えるよ。
 ドクターの苦悩も語られている。人間とは違った時間を過ごすドクターは、友人が歳を取っていくことに耐えられずに、結果的に逃げ出し続けてきたとのこと。タイムロードとしてのこれが彼の悲しみか。
 サラ・ジェーンはK9を本当に大切にしていたようで、なんと車の中にずーっと置いていたらしい。
<ミッキーは「侵入と捜査は俺の得意だ」と言っていたが、それって自分が泥棒だって言ってるのと変わらないぞ。
 K9は5000年後の技術で出来ているらしいが、デザインはもの凄くレトロ。まだAIBOの方が未来的。なんせ足さえ無いんだから。まあ、このシリーズが長く続いている事をよく示している。
 ミッキーは自分がどれだけ役に立ってるかを語り始めるが、喋ってる内に「俺ってブリキ犬か?」と自分の立場を理解していく。更にそのK9と一緒に黄昏れてるのが妙にはまる。可哀想なミッキー。最後に活躍はするけどね。>
第18話 暖炉の少女」
“THE GIRL IN THE FIREPLACE”

  監督:ユーロス・リン
  脚本:スティーヴン・モファット
 新たにミッキーを加えて3千年後の宇宙空間に出たターディスはそこで難破船と遭遇する。船内に人影はなく、ある部屋にはアンティークの暖炉があった。その暖炉をのぞき込むと、そこにはレネットという名の18世紀フランスに住む美少女の姿があった。暖炉の向こう側は18世紀のフランス・パリにある彼女の部屋だったのだ…
 
修理ドロイド登場。宇宙船“マダム・ポンパドゥール”の修理保全を行っているロボット。宇宙船の修理をするため、あらゆるパーツを使おうとする。その中には人間もあり。お陰で宇宙船は人間の目や心臓を使ったパーツもあり。37歳のポンパドゥール夫人の脳味噌を狙って18世紀のフランスへと現れる。
 未来と過去がつながってるという、SFらしい設定が楽しめる作品。それが何故?と言うのが本作の肝。ただし、空間のねじ曲がりは随分変わっていて、18世紀の方は時間が随分変わってしまう。そこに登場するレネットは7歳から37歳まで成長してしまった(登場したのは7歳、23歳、32歳、37歳、43歳)。しかし、その本名を聞いてこっちもびっくりしたよ。ジャンヌ・アントワネット・ポワソン。ポンパドゥール夫人じゃないか。ルイ15世の愛人であり、革命前フランス王国最後の輝きの中心人物である。お陰で話が派手だが、ドクターのことをほぼ完全に推測して見せたり、自分の未来に起こることを直視してもそれをきちんと受け入れるなど、非常に聡明な人物として描かれている。
 今回もドクターが「踊り」を強要される。ドクターと踊りって、実は結構重要な関わりがあるのでは無かろうか?それと何故かドクターになつくアーサーという馬が出てきている。
<「探し回るな」というドクターに対し、全く話を聞いてないローズ。まあ、これだから本作は話が展開する訳だから。
 フランスを「よその惑星」と断言するドクター。イギリス人にとってはそうなんだろうな。なんだかんだですっかりはまってしまうドクターだが。
 “マダム・ポンパドゥール”の修理ドロイドは仮面をかぶっているが、それを外すと機械剥き出しの顔。しかしそれはとてもレトロチック。この辺のケレン味がなんとも。>
第19話 サイバーマン襲来
“RISE OF THE CYBERMEN”

  監督:グレアム・ハーパー
  脚本:ジョン・マックリー
 ターディスの事故によりパラレルワールドに入り込んでしまったドクター達。同じ時代のロンドンでも、そこには飛行船が飛び回り、ローズの父ピートも生きている。その世界を牛耳っているのは大実業家ルーミックで、ピートもその会社ヴァイテックスで働いていた。そしてルーミックは人類の“究極のアップグレード”を目指していた…
 
サイバーマン登場。人間の脳と機械の体を持ったサイボーグ。パラレルワールドのロンドンを牛耳る大実業家ルーミックによって製造された。なんでも初代からの因縁があるらしい。道理でレトロなデザインだ。
 前後編の前編。パラレルワールドのロンドンが描かれる。この世界では科学が進んでいるのかいないのか。飛行船が空を飛んでたり、洗脳装置が出ていたり。その矛盾が面白い話。
 ここではイギリスは大統領制になっており、ローズの父ピートも生きている。ちなみにローズもいるが、何故か犬だった。
 冒頭からターディスの死!という衝撃的な事実が描かれるが、。結局ターディスは生きていたが、その代わり、ドクターは10年寿命を縮めてターディスを救う。
 実は本作はミッキーが中心となった話でもあり。この世界にも彼はおり、政府のお尋ね者になっているが、そこで彼自身が大活躍する話になってる。
<ミッキーはとても勘が良い。微妙に違う風景を見ただけでこの世界がパラレルワールドであることを看破してる。
 イギリスは大統領制になってる。王制が敷かれているのに、それは無茶ではないか?しかし、この手の作品だと大統領はみんなアフリカ系だな。
 ドクターは寿命を10年縮めてターディスを救うが、前にドクターは無限の命を持ってると言ってた気がするけど…
 この世界で流れてる音楽って…「ライオンは寝ている」?なんで?>
第20話 鋼鉄の時代」
“THE AGE OF STEEL”

  監督:グレアム・ハーパー
  脚本:トム・マクリー
 サイバーマンによる襲撃を受けたドクターたち。反体制組織プリーチャーのムーアの助けで脱出する。やがてサイバーマンたちはロンドンを占拠。イヤポッドを通してルーミックに操られた市民たちは、次々とサイバー工場へと行進していく。そして大統領を暗殺し、ロンドンを手中に淹れたルーミックは、自らサイバー・コントローラーとしてアップグレードする…
 サイバーマンおよびサイバー・コントローラー登場。サイバー・コントローラーは命を失いかけたルーミックが自分の脳を移植して完成。
 前後編の後編。
サイバーマンと、サイバーマンをコントロールするサイバー・コントローラーとの戦いが描かれる。ほぼ絶望的な設定から始まるのだが、それこそがSFの醍醐味って奴かも知れない。SFの醍醐味。それはやっぱり特攻にこそある。
 イヤー・ポッドはこの世界における携帯とよく似た機能を持つ。これはかなりの皮肉な物語とも言えるだろう。こういう部分があるからこそこの作品は楽しい。
 全員同じ企画にされてしまったサイバーマンは男も女もない。ジャッキーも男声のロボットになってしまっている。シュールだ。
 ドクターの考えた作戦は、全サイバーマンに現実を認識させること。そうすればサイバーマンは全員自殺してしまうと言う。凄まじい作戦だ。しかもそれはオチがなく、本当に敢行されてしまう。自分の姿に恐怖したサイバーマンが頭を爆発させる姿は大変シュールだ。パラレルワールドだから出来る方法だろうけど。
 最後はちゃんとミッキーに見せ場があるのも良し。この人はちょっと可哀想すぎるからね。結局なんとミッキーはパラレルワールドに残ると言い張る。それでラスト、「ミッキーは?」と訊ねるジャッキーに、「家に帰った」と言うドクター。なんか泣きたくなってしまった。
<工場に突っ込もうとするドクターは「何か考えつく」と言ってたが、実際危機の連続を経験し続けると、こうなってしまうのだろう。それで生き残ってきたのは奇跡だな。
 自分で企画したのに、最後までサイバー・コントローラーになることを拒否するルーミック。彼の本当の願いは人間として不老不死になることだったのかな?> 
第21話 テレビの中に住む女
“THE IDIOT’S LANTERN”

  監督:ユーロス・リン
  脚本:マーク・ガティス
 ドクターとローズは1953年のロンドンの下町にやって来た。数日後にエリザベス女王の戴冠式を控えて祝賀ムードに包まれていたのだが、この町が他とは大きく違っていたのは、テレビの普及率が異様に高いと言うことだった。格安で売られるテレビの意味は…
 
ワイヤー登場。電気信号生命体で、体を失った宇宙人。テレビに潜み、そこから人間の顔と脳を奪ってしまう。エリザベス女王の戴冠式を見ている人間を全て“喰って”しまおうとした。
 かなりホラー的な演出が映えた作品で、特にお婆ちゃんの部屋に入るシーンなんかはサイコ(1960)を彷彿とさせる。他にもいくつか細かい演出もあり。ただ、物語は実にストレートなアクション作品。時にはこう言うのも良い。
 今回についてはドクターよりもローズの方が活躍している。しかもドクターに引っ張られてではなく、自分の意志で事件を解決しようとしているのが特徴。ドクターとの旅が長いので、随分強くなったね。なまじ目端が利くお陰で酷い目に遭ってるのも事実だが…結局ローズまで顔を失ってしまう。
 同時にこの時代の常識と、家族のあり方を真摯に見つめているのが特徴だろう。
 エリザベス女王の戴冠式の模様が資料映像で見られる。これはこれでなかなか貴重。
<今回の目的はそもそもプレスリーに会うためだったと言うのだが、付いたのは何故かロンドン。ターディスの運転ってこんないい加減で良いのか?
 色々もの知ってるドクターだが、真空管を使って組み立てるのは実にレトロチック。1953年という時代に合わせてか?なんと真空管を使ってビデオを作ってしまった…って磁気テープとかどうやった持ってきたんだよ?昔は紙のテープに刷毛で磁気体塗ってたんだよな。>
第22話 闇の覚醒」
“THE IMPOSSIBLE PLANET”

  監督:ジェイムズ・ストロング
  脚本:マット・ジョーンズ
 ターディスが迷い込んだのはどこかの宇宙船の中。そこに書かれていた文字はターディスでさえ翻訳不可能な超古代文字だった。ここは実は遥かな未来。人類が異星人と共生している場所で、ブラックホールの軌道上にありながら、吸い込まれずにいる空気もない不自然な惑星だった。その現象の正体を探る探索隊と接触したドクター達だが…
 
ウード登場。人類の僕として使われている奴隷で、集合意識を持つ群体的生物。顔はイカのようだが、そのためアンモナイトのような顔付きをしてる。人に尽くすのが生き甲斐とされているが、
 遥かな未来でターディスを失う話で、ターディスを失うのはこれまで何度かあったが、今回はちょっと話が深刻。緊張感もあるけど、話としての完成度は今ひとつと言った所かな?前後編の前編らしい。
 純粋な科学的好奇心を持つ人物には親近感を持つドクターの性格がよく表れた描写あり。すぐにハグしている。一方、ターディスを失ったローズはドクターにちょっとした愛の告白もしてるね。
 前にも出てきたけど、ターディスは単なる機械じゃなく、生物のようだ。かつてのタイムロードの惑星で育ったらしい。
<これがアメリカだったら探査チームは絶対東洋人が入ってるはずだが、それがないのはイギリスだから?>
第23話 地獄への扉
“THE SATAN PIT”

  監督:ジェームズ・ストロング
  脚本:マット・ジェーンズ
 超古代の魔物“ビースト”が現れ、ビーストにコントロールされて蜂起したウード達は基地の電力供給を切り、基地内の人間も分断されてしまう。エレベータに閉じこめられ、酸素供給もなくなってしまったドクターは、意を決してビーストが封じ込まれていた地下へ潜ることにする…
 敵は
ビースト。小惑星クロプトールの地下に封印されていた存在で、調査に来た人間達によって解放された。強力なテレパシーによって人間の僕であったウードを意のままに操る。
 前後編の後編で、宇宙規模の“根源的悪”が登場する。CG多用で大変見栄えがするし、危機の演出もそれなりに優れているのだが、物語の展開がどこかで観たようなものになってしまったのが残念な所。オチも含め、「エイリアン」と「ヘルレイザー」かな?そう言えばどっちもイギリス人監督作品だな。
 ドクターとローズが別個に頑張っているのも特徴かな?ローズも強くなったね。
 失われたターディスが地下にある。ってのは予想の範囲内だけど、そこに衝撃緩和剤があったり、酸素が存在したりと、ちょっと偶然の要素も強すぎるかな?
 それでもドクターが「僕が信じるのはローズだけだ」とか、ちゃんと見所もあり。
<ところでターディスはえらい距離を落下したはずだけど、これもやっぱり衝撃緩和剤によって無事だったんだろうか?だとするとビーストって結構良い奴だな。
 結局ビーストは悪魔の入れ物に過ぎなかった訳だけど、それで悪を退治できたのかどうか。結局そこもよく分からないまま。>
第24話 エルトン君の大冒険
“LOVE & MONSTERS”

  監督:ダン・ゼフ
  脚本:ラッセル・T・デイヴィス
 ロンドンに住む青年エルトンは子供の頃ドクターと出会った記憶があり、その後再びドクターに出会ったことで、興味を持ち、ドクターのことを調べ始める。同じくドクターを調べている仲間と出会い、男女5人から成る“リンダ”という会を立ち上げる。その実態は仲良しクラブだったのだが、ある日ケネディという男が会に入ったことで、彼らは危機に見舞われる…
 
スイコロリン登場。スリジーンのお仲間。ビクターという男に化けてドクターを捜してる異星人。その過程で“リンダ”メンバーを吸い込む。ネーミングは「何でも吸い込む」という意味でエルトンが命名する。
 ドクターを調べているグループの話。ドクターは狂言回しのような存在だが、最後に接点を持つ。という構造になっている。エルトンがビデオに語る形式のため、時間の流れがかなりフレキシブルに仕上げられているのが特徴。なかなか面白い。
 前半部分はこれまでの話の総集編みたいなもので、これまで現代のロンドンで起こった事件をまとめている。中盤はドクター探しの苦労話。そしてオチは…かなり強烈だ。阿刀田高の小説にこんなのがあったような気もするけど。
<冒頭エルトンとドクターが出会ったシーンでモンスターと追いかけっこするのだが、ほとんどそれはドリフの世界。
 エルトンというと、どうしても例の歌手のことを思い出すのだが、見事にそれが言われてる。ジャッキーって結構ミーハー?
 スイコロリンは人間を次々に吸い込んで、その顔を体中に浮かび上げる。ジンメンか?
 パンツ一丁で町を走り回るスイコロリン。一見モヒカン頭のデブだけに、見たくない姿だぞ。>
第25話 危険なお絵描き
“FEAR HER”

  監督:ユーロス・リン
  脚本:マシュー・グラハム
 ローズにロンドンオリンピックを見せようとドクターは2012年にタイムスリップ。だがオリンピック会場近くでは6日前から子供が3人も行方不明になっていた。ドクターは大容量のイオン・パワーにより有機物がどこかに転送されていることに気づくのだが…
 
アイソラス登場。宇宙を旅する種族。その間長い長い幼年期を過ごすのだが、その過程で地球に落下してしまい、クロエという少女に寄生する。仲間を欲しがり、仮想空間を作って次々と子ども達を放り込んでいる。
 舞台は2012年のロンドン。ここでの連続失踪事件を捜査するドクター達。今回はドクターよりもローズの方が主体で、その分小品で終わってしまった感じ。ドクターは説明するためだけでほとんど何にも活躍してない。最後に何故か聖火ランナーになってしまうんだが。
 ドクターが猫嫌いだと発覚。これは15話のプレニチュードのシスターも関係しているとこのこと。
 ここに登場するケルという男が面白い。役人は頭が固いと言うのを体現したようなキャラで、なんの権力もないのに「役所が役所が」と連呼するばかり。
 最後にローズはドクターに「いつも一緒よ」と喋るけど、ドクターはそれを肯定しない。最終回の伏線だろうね。
<「素っ裸のギリシア人が競技してたのが昨日のようだ」と述懐するドクター。まあ、この人だったら本当に昨日見ることも出来る訳だけど。>
第26話 嵐の到来
“ARMY OF GHOSTS”

  監督:グラーミ・ハーパー
  脚本:ラッセル・T・デイヴィス
 久しぶりに現代のロンドンに戻ってきたドクターとローズ。だが何か様子がおかしい。日々ゴーストが現れ、それを全く不思議に思わない人々。ジャッキーによれば2ヶ月ほど前からこの事態が起こっているというのだ。その出所を突き止めたドクターだったが…
 
ゴースト登場。最初の内は何故出てくるのか明らかにされていないが、そのゴーストと共にサイバーマンが現れる。実はゴーストはサイバーマンの影であり、やがてゴーストは全てサイバーマンに置き換えられていく。それで最後の最後になんとダーレクが登場し、なんと一瞬のうちに世界は征服されてしまった。盛り上がりはかなり凄いものになってる。
 最終話の前編。舞台は現代のロンドンだが、何故かここには幽霊が出てきており、それを何の疑問もなく受け入れてしまっている世界。だが、それは異次元からの侵略を意味していた。最後にミッキーまで登場。いよいよ本当に最終回って感じ。
 ドクターもノリノリで、いきなりゴーストバスターズの歌を歌いながらゴースト探査してたりする。今回これまでの様々な異星人の話が色々おさらいされるので、なかなか興味深い。
 ジャッキーとローズの関係が改めて語られる話でもあり。変わっていく自分自身を指摘され、ドクターに従っているだけの自分に疑問を覚え始めるローズ。最終回っぽい演出だ。
 この話は低音がもの凄く、なまじ音響の良いスピーカーで聴くとビリビリ来る。部屋が揺れてたよ。
<ゴーストの出現に驚いたドクターは世界中のテレビをザッピングするのだが、その際日本人は案の定女の子達がノリノリで答えてた。この描写止めようよ。>
第27話 永遠の別れ
“DOOMSDAY”

  監督:グラーミ・ハーパー
  脚本:ラッセル・T・デイヴィス
 サイバーマンによって地球はあっという間に制圧されてしまう。そして次々と人間をサイバーマンに変えていく。一方球体から現れた4体のダーレクはジェネシス・アークと呼ばれる箱を持ってくる。
 
サイバーマンダーレクが登場。シリーズ全体を通してのドクターの敵二体だけあって、話は無茶苦茶な盛り上がり方を見せる。
 最終回。次元間の交流が描かれる話で、本来行き来出来ない次元を無理に通ってきたため、宇宙に穴が空いてしまったという。
 そして謎の物体「ジェネシス・アーク」が登場。ダーレクによれば、ここには「未来」が入っているそうだが、実はこれはタイム・ロードの作り出した刑務所であり、この中には数百万というダーレクがみっしりと詰まっていた。
 それで最後の最後。ドクターとローズは二人で次元を裂け、サイバーマンとダーレクもろとも消し去ろうとして、結果的に全ては元通り。だがローズはもう一つの地球の方に強制移動…これが「永遠の別れ」という奴だ。最後の最後、「バッドウルフ」というのが又出てきた。ドクターとローズのお別れの場所の名前だった。最後まで「バッドウルフ」は出てくるんだな。
<ダーレクとサイバーマンは一応共闘関係にあるようだが、お互いに嫌い合っている。どっちも頭の固いやつらばかりなので、会話は完全に漫才。
 ダーレクが使用するマニピュレータはトイレ掃除用の吸盤にそっくり。これを顔に押しつけられて殺されるのだけは嫌だな。
 ジャッキーは異次元のピートに対し、「20年間誰も近寄らせなかった」と語っていた。あれ?24話のエルトン君はどうなったの?(これが女性と言えばそれまでだが)
 ピートが生きていることだけで嬉しいというジャッキー。だけど、ピートが大金持ちと知ると、「どうでも良い」と言いつつ「どれくらい?」と聞き返すのは忘れない。この人は相変わらずだ。
 この世界はボロボロになってしまったが、ドクター一人が残る。まあ、シリーズは未だ続いているので、新しいパートナーを手に入れる事になるんだけど…これは本当の蛇足。>