ノックは無用
Don't Bother to Knock |
|
|
ジュリアン・ブロースタイン(製)
ダニエル・タラダッシュ(脚)
リチャード・ウィドマーク
ジーン・キャグニー
エリシャ・クック・Jr
マリリン・モンロー
アン・バンクロフト
ドナ・コーコラン
グロリア・ブロンデル
ジム・バッカス |
|
★★★ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
3 |
4 |
3 |
2 |
3 |
|
|
マンハッタンのホテルに勤めるエディ(クックJr.)を頼って田舎から姪のネル(モンロー)が上京してきた。実は彼女にはパイロットの婚約者がいたのだが、1年前に彼を飛行機事故で失い、以来パイロットという単語を聞くと錯乱してしまうようになってしまったのだ。そんな彼女にホテルのベビー・シッターの職を見つけたエディ。だが、生来遊び好きなネルは、あずかった子供を寝かしつけると、その部屋のドレスと宝石を身につけてダンスホールへと向かうのだが…
それまでいくつかの映画の端役で登場していたモンローの初主演作。
物語自体はちょっとした悪戯心がどんどん悪循環していき、最後は破滅に至るという救いようのない物語。結局ただの善人であるモンローの叔父役であったクックJrが一番の貧乏くじを引いて終わる。気の滅入るような物語展開だが、ここでのモンローの使い方は決して悪くない。
モンローは役者としては大根で、数々の監督を泣かしたことでも知られるが、少なくとも何人かの監督はそれを上手く使いこなすことに成功している。
本作はそれがかなり上手いことはまった作品といえるだろう。何せ主人公であるモンローが割り振られた役が精神的な危機にあるという女性の役。普通ならこれは難役であり、中途半端に上手い役者がやるとどうしても嘘くさくなる。だから普通この役はよほどのヴェテランに振られることが多いのだが、それを逆手に取り、素人っぽさ丸出しで脚本棒読みのモンローにこの役を演じさせることにより、逆にリアリティが増す結果となった。虚ろな目で一本調子で話す様子がとても怖い。逆転の発想だが、これは見事なはまり具合だ。脇を固める役者がヴェテラン揃いで、上手くフォローできたことも大きい。少なくとも、モンロー主演作を観ていると感じる苛つきは本作では感じない。
ただ、別の意味で、私はこういったドロドロの愛憎劇が私は無茶苦茶に苦手。リアルに感情むき出しにするキャラを観ると、演じているのは分かっていても、思いっきり引く。それが本作に感じられないのは、モンローの下手さに助けられているのかも知れない。
一応本作がバンクロフトのデビュー作(ホテル専属の歌手)で、それなりに見せ場も用意されているのだが、モンローの強烈さにはやっぱり太刀打ちできず。ちょっと残念なデビューになったかな?今から観ると、かなり個性的な役でもあるのだが。
モンローが本作の主役に抜擢されたのはこの年、モンローのヌード写真が出回り、その事について聞かれたモンローが「お腹がすいていたから」と答えたことから、世間の同情を受け、人気者となったためだったという(これは後年の『七年目の浮気』(1955)でコミカルに見せられている)。
|
|